大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

東京高等裁判所 平成7年(行ケ)151号 判決

東京都千代田区丸の内2丁目2番3号

原告

三菱電機株式会社

代表者代表取締役

北岡隆

訴訟代理人弁護士

尾崎英男

東京都新宿区西新宿2丁目4番1号

被告

セイコーエプソン株式会社

代表者代表取締役

安川英昭

訴訟代理人弁護士

羽柴隆

古城春実

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1  当事者が求める裁判

1  原告

「特許庁が平成6年審判第8241号事件について平成7年5月8日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

2  被告

主文と同旨の判決

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告(審判被請求人)は、名称を「原稿読取装置」とする特許第1515042号発明(以下「本件発明」といい、本件発明の特許を「本件特許」という。)の特許権者である。なお、本件発明は、昭和52年12月13日に特許出願(昭和52年特許願第150270号)、昭和62年12月24日に特許出願公告(昭和62年特許出願公告第62101号)され、平成1年8月24日に設定登録がなされたものである。

被告(審判請求人)は、平成6年5月16日、本件特許を無効にすることについて審判を請求し、平成6年審判第8241号事件として審理された結果、平成7年5月8日、「特許第1515042号発明の特許を無効とする。」との審決がなされ、その謄本は同年5月24日原告に送達された。

2  本件発明の要旨(別紙図面A参照)

原稿平面を撮像する光学系と、この光学系の結像面に配設された多数の光電変換要素からなる1個のラインセンサと、それぞれ異なった波長域を有し上記原稿平面を照射する複数の光源と、これらの光源を所定期間づつ所定の順序で点灯させる点灯装置と、上記各光源の点灯と同期させて上記ラインセンサの多数の光電変換要素を一巡する周期で走査する読出装置とを備え、上記原稿平面の情報を上記複数の光源の各波長ごとに区分し時系列的に配置された電気信号として読み出すようにしたことを特徴とする原稿読取装置

3  審決の理由の要点

(1)本件発明の要旨は、その特許請求の範囲1に記載された前項のとおりのものと認める。

(2)被告の主張

本件発明は、公知文献に記載された発明から周知の技術的知見に照らして、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許は同法123条1項2号の規定により無効とされるべきものである。

(3)引用例の記載内容

被告提出の文献には、次のような記載がなされている。

〈1〉 昭和52年特許出願公開第52523号公報(昭和52年4月27日出願公開。以下、「引用例1」という。別紙図面B参照)

a 「色バランス調整が簡単にできる固体撮像装置」(2頁左上欄9行)

b 「第1図を参照すると、本発明の一実施例は、色分解光学系として赤、緑、青の三原色に分解するカラーフィルターディスク3を用い、電荷転送素子として、光電変換素子が一列の一次元素子6を用いている。被写体1からの入射光はレンズ2を通ってカラーフィルターディスク3に加えられる。カラーフィルターディスク3によって時分割に、赤、緑、青の三原色成分に分けられた各波長成分は電荷転送素子6に照射され、その表面に像5を結像させる。これによって各波長成分は、電荷転送素子6の光電変換部によって電気信号に変換される。電荷転送素子6の出力信号は映像増幅器7に供給されて増幅され、出力端子8に赤、緑および青の映像信号がそれぞれ時分割に得られる。一方、同期信号入力端子9からの第2図(a)に示すような同期信号aはクロックパルス発生器10に供給される。クロックパルス発生器10は、入射光に比例する電荷を蓄積するため蓄積電極に加えられる第2図(c)に示されるような蓄積用クロックパルスc及び蓄積された電荷を転送するため転送電極に加えられる第2図(b)に示されるような転送用クロックパルスcを発生する。蓄積電極下の電荷を転送電極下に転送するためのクロックパルスは本発明で本質的でないので、省略する。第2図において、(c)のパルスの正側にある期間が蓄積期間でこのパルスの立下りのタイミングが蓄積電極から転送電極に転送する時である。そして第2図(b)の縦線の部分が転送電極下を転送している期間である。期間toは映像信号の1ラインに相当する時間である。従来の固体撮像装置においては、これらのクロックパルスbおよびcは電荷転送素子に直接供給されるが、本発明による固体撮像装置においては、蓄積用クロックパルスcはゲート回路14を経て電荷転送素子6に供給される。」(2頁右上欄6行ないし左下欄20行)

「第2図(k)は入射光のそれぞれの色成分が電荷転送素子6に、照射されている期間を表わし、第2図(l)は電荷転送素子から送り出されているそれぞれの色成分の期間を表わす。」(3頁左上欄16行ないし20行)

c 「上にのべた実施例においては、三色分解光学系としてカラーフィルタディスクについて述べたが、被写体に照射する光源を切換えても同様の結果を得る。」(3頁右上欄1行ないし4行)

〈2〉 Xerox Disclosure Journal(1977年6月発行)2巻3号53頁(以下、「引用例2」という。別紙図面C参照)

a 「線順次カラースキャニング用電荷結合素子」(表題)

b 「線順次カラースキャニング用電荷結合素子10。素子10は、複数の光電変換要素を有する光学活性化イメージアレイ12を含んでいる。三色分離を行うために、素子は三個の並列接続された光学非活性化アナログシフトレジスタ14、16及び18を含んでおり、これらはイメージアレイ12と同じ半導体基板上に形成することができる。書類または画像イメージ20のそれぞれのラインは、各色の分離に応じた波長光域のみを通過させる部分(例えば、赤、緑、青)に分割されたカラーフィルター輪22を通して順次、アレイ12上に露光される。」(53頁1行ないし11行)

〈3〉 米国特許第2、343、971号明細書(1944年3月14日発行。以下、「引用例3」という。別紙図面D参照)

a 「テレビスタジオ照明」(発明の名称)

b 「シーンの照明は、一原色カラー成分のみでフィールド毎に行われるため、また光源自体が適切にカラーフィルタ処理された照明光を発するために、カメラの前部にフィルタディスクを用意する必要のないことが理解されよう。」(1頁右欄34行ないし39行)

c 「図6を参照すれば、(中略)例えばシーンは、複数のフラッド・ライト65とスポットライト67とで照明される。各照明装置への電源供給はランプ電源75から行われ、また、各照明装置は、フラッシング制御装置73により制御される。該フラッシング制御装置は、フラッシングカメラの走査に同期して行われるように同期発生器71により同期し、即ち、ランプのフラッシングは走査期間内のブランキング間隔に行われるように制御される。フラッド・ライト装置は、それぞれ予め規制されたスペクトル光、例えば、赤、緑、青の光を発する三つの個別のランプ191、193、195を含む構成で、図4に記載した形態をとることも可能である。(中略)照明装置は、個々のランプが相互に緊密に隣接され、通常は撮影されるシーンから少し離れて位置決めされるため、順次にフラッシングする三つのランプは、一本の光源と同等のものに見える。図1を見れば、各ランプのフラッシングの順序は理解できよう。」(2頁左欄45行ないし75行)

(4)対比

本件発明と引用例1記載のものとを対比すると、本件発明における「原稿平面」も引用例1記載のものにおける「被写体1」も、ともに「撮像対象」ということができ、本件発明の「原稿読取装置」は、上位概念でとらえれば、「撮像対象読取装置」であるということができる。また、引用例1記載のものにおける「レンズ2、光電変換素子が一列の一次元素子6」が、本件発明における「光学系、ラインセンサ」に相当することは明らかである。

次に、引用例1のcの記載によれば、引用例1記載のものは、三色分解光学系としてカラーフィルタディスクを用いる代わりに、被写体を照射する光源を切換える方策を採り得るものであり、そのような方策を採った場合には、cの記載中の「光源を切換える」との記載から、当然に光源は複数であることが明らかであって、また、「三色分解」という前提から、必然的にその複数の光源は、三色に相当する「それぞれ異なった波長域を有する複数の光源」が想定されるので、引用例1中に、上記の「複数の光源」を用いることは、実質的に記載されているというべきである。

さらに、引用例1のbの記載及び第1、2図を見ると、引用例1においては、三色分解光学系としてカラーフィルタディスクを用いた場合の実施例として、クロックパルス発生器10からの蓄積用クロックパルスcの制御の下に電荷転送素子6に各色毎の1ライン分の電荷を順次蓄積し、上記クロックパルス発生器10からの転送用クロックパルスbの制御の下に電荷転送素子6からの各色毎の1ライン分の信号を順次読み出すことが記載されており、カラーフィルタディスクを用いることに代えて「それぞれ異なった波長域を有する複数の光源」を切換動作させて用いた場合には、当然に、上記「クロックパルス発生器10」が発生する蓄積用クロックパルスc及び転送用クロックパルスbは、上記「複数の光源」の切換動作と同期して発生するものとなると認められるから、引用例1記載のものは、「複数の光源の切換動作と同期させて電荷転送素子6から各色毎の1ライン分の信号を順次読み出す読出装置」を実質的に開示しているということができる。

そして、上記電荷転送素子6の具体的構造としては、引用例1中に「光電変換素子が一列の一次元素子6」(2頁9行)との記載があり、そのような構造の場合、上記「読出装置」は、「複数の光源の切換動作と同期させて一次元素子6中の多数の光電変換要素を一巡する周期で走査する読出装置」となることは明らかである。

一方、本件発明においては、点灯装置により複数の光源を所定期間づつ所定の順序で点灯させ、上記複数の光源の点灯と同期させてラインセンサの多数の光電変換要素を一巡する周期で走査する読出装置を備えており、この「読出装置」も、上位概念でとらえれば、「複数の光源の切換動作と同期させてラインセンサの多数の光電変換要素を一巡する周期で走査する読出装置」であるということができる。

したがって、本件発明と引用例1記載のものは、ともに、「撮像対象を撮像する光学系と、この光学系の結像面に配設された多数の光電変換要素からなる1個のラインセンサと、それぞれ異なった波長域を有し上記撮像対象を照射する複数の光源と、上記複数の光源の切換動作と同期させて上記ラインセンサの多数の光電変換要素を一巡する周期で走査する読出装置とを備え、上記撮像対象の情報を上記複数の光源の各波長ごとに区分し時系列的に配置された電気信号として読み出すようにした撮像対象読取装置」である点で一致し、次の点において相違する。

〈1〉 本件発明の撮像対象が「原稿平面」であるのに対し、引用例1記載のものにおいては、単に「被写体」としか記載されていない点

〈2〉 本件発明が、複数の光源を所定期間づつ所定の順序で点灯させる点灯装置を備えるものであり、上記複数の光源の切換動作と同期させて行う読出動作を上記複数の光源の点灯と同期させて行うようにしているのに対し、引用例1記載のものにおいては、複数の光源の切換動作を具体的にどのように行うか、そして、複数の光源の切換動作と読出動作との同期を具体的にどのように行うかについての明示の記載がない点

(5)判断

〈1〉 相違点〈1〉について

引用例2には、「順次カラースキャニング用電荷結合素子」を用いて書類(document)をライン毎に三色に分解して読み取ることが記載されている。すなわち、一列の一次元素子(ラインセンサ)を用いて平面状のものを三色に分解して読み取ることが記載されている。

そして、引用例1記載のものも、一列の一次元素子(ラインセンサ)を用いて被写体を三色に分解して読み取るものであるから、引用例2記載のものを参照すれば、引用例1記載のものにおいて、被写体すなわち撮像対象を「原稿平面」に特定することは、当業者が適宜になし得たことにすぎないものと認められる。

〈2〉 相違点〈2〉について

撮像対象を三色に分解して撮像し読み出す技術として、引用例3には、「フラッシング制御装置」(点灯装置)により三つの異なる波長域を有する光源を順次所定期間づつ点灯させ、その点灯と同期させてカメラの走査を行うことが記載されている。

そして、引用例1記載のものも、引用例3記載のものも、ともに撮像対象を三色に分解して撮像し読み出す技術に関するものであることは共通しているので、上記の技術的思想を引用例1記載のものに適用し、複数の光源の切換動作を、点灯装置により複数の光源を所定期間づつ所定の順序で点灯させることによって行い、複数の光源の切換動作と同期させて行う読出動作を、上記複数の光源の点灯と同期させて行うようにすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。

さらに、本件発明の要旨とする構成によってもたらされる効果も、引用例1ないし引用例3記載のものから当業者ならば容易に予測することができた程度のものであって、格別のものということはできない。

(6)以上のとおり、本件発明は、引用例1ないし引用例3記載のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条1項2号に該当するので、無効にすべきものである。

4  審決の取消事由

各引用例に審決認定の技術的事項が記載されており、本件発明と引用例1記載のものとが審決認定の各相違点を有することは認める。しかしながら、審決は、各引用例記載の技術内容を誤認して、本件発明と引用例1記載のものとの一致点の認定を誤り、かつ、各相違点の判断をも誤って、本件発明の進歩性を否定したものであって、違法であるから、取り消されるべきである。

(1)一致点の認定の誤り

審決は、「引用例1記載のものは、三色分解光学系としてカラーフィルタディスクを用いる代わりに、被写体を照射する光源を切換える方策を採り得るものであり、そのような方策を採った場合には、(中略)「光源を切換える」との記載から、当然に光源は複数であることが明らかであって、また、「三色分解」という前提から、必然的にその複数の光源は、三色に相当する「それぞれ異なった波長域を有する複数の光源」が想定されるので、引用例1中に、上記の「複数の光源」を用いることは、実質的に記載されているというべきである。」としたうえ、「カラーフィルタディスクを用いることに代えて「それぞれ異なった波長域を有する複数の光源」を切換動作させて用いた場合には、当然に、上記「クロックパルス発生器10」が発生する蓄積用クロックパルスc及び転送用クロックパルスbは、上記「複数の光源」の切換動作と同期して発生することになると認められるから、引用例1記載のものは、「複数の光源の切換動作と同期させて電荷転送素子6から各色毎の1ライン分の信号を順次読み出す読出装置」を実質的に開示しているということができる」と認定している。

しかしながら、引用例1には、「実施例においては、三色分解光学系としてカラーフィルタディスクについて述べたが、被写体を照射する光源を切換えても同様の結果を得る。」(3頁右上欄1行ないし4行)と記載されているにすぎない。光源として蛍光灯を用いるカラー撮像装置が実用化されていなかった本出願前の技術水準からすれば、引用例1の上記記載から、三色に相当する異なった波長域を有する複数の光源を用いること、まして、「複数の光源の切換動作と同期させて電荷転送素子6からの各色毎の1ライン分の信号を順次読み出す読出装置」が開示されているというのは誤りである。例えば、一つの光源と被写体との間に三色分解フィルタを設け、フィルタを透過した光で被写体を撮像するものにおいて、三色分解フィルタを順次に切り換えるように構成すれば、光源は一つであるが、「被写体を照射する光源を切換えて」いるということができるから、引用例1に、三色に相当する異なった波長域を有する複数の光源を用いることが実質的に開示されているとはいえない。この点について、被告は、「光源」とは自ら光を放射する発光源のことであるからフィルタは「光源」に該当しないと主張するが、原告は、フィルタが光源に該当すると主張するものではなく、光源の前の三色分解フィルタを切り換えれば照射光源を切り換えたといえると主張しているのである。

のみならず、引用例1記載の技術内容は、光エネルギーは色ごとに異なり、各色に対し電荷転送素子(受光素子)を同一時間動作させると色バランスが失われるので、色ごとに電荷蓄積時間(受光時間)を制御することによって色バランスを調整するというものであるが、もし複数の光源を用いているならば、色バランスの調整は各光源の明るさを可変抵抗により電流制御することによって容易に行うことができ、電荷転送素子の電荷蓄積時間を制御するというような複雑な構成を採用する必要はない(可変抵抗による電流制御は、光源がたとえ蛍光灯であっても、可能である。)。また、引用例1記載のものの撮像対象である被写体1は、引用例1に「映像増幅器」(2頁左上欄3行、4行)、「映像信号」(同頁左上欄19行)と記載されていることからみて、原稿平面ではなく立体の被写体と考えられるところ、複数の光源をもつ装置で立体の被写体を撮像すると各光源ごとに異なる影が生ずるので、「色むら」を避けるための複雑な手段が必要であるが、引用例1にそのような手段について何ら記載がないことからみても、引用例1記載のものが複数の光源を想定していないことは明らかである。

この点について、被告は、カラー光学系において単一光源・複数フィルタと複数光源のいずれを採用するかは、対象とする機器に応じて適宜に選択しうる周知技術にすぎないと主張する。しかしながら、被告が援用する乙第5号証記載のカラーファクシミリ装置は本件発明と異なる構成のものであり、色ずれが生ずる原因も、したがってこれを解決する手段も本件発明とは異なっている。また、乙第7号証はカラープリント焼付機の光源装置、乙第8号証は複写用照明装置、乙第9号証は色識別光電検出装置、乙第17号証はカラー電子写真における露光方法に関するものであって、いずれも本件発明とは技術分野を全く異にし、それらのものにおいて複数の光源が採用されている理由も本件発明の技術的課題とは全く関係がない。

以上のとおりであるから、本件発明と引用例1記載のものとが「それぞれ異なった波長域を有し上記撮像対象を照射する複数の光源と、上記複数の光源の切換動作と同期させて上記ラインセンサの多数の光電変換要素を一巡する周期で走査する読出装置とを備え、上記撮像対象の情報を上記複数の光源の各波長ごとに区分し時系列的に配置された電気信号として読み出すようにした撮像対象読取装置」である点において一致するとした審決の認定は誤りであり、これによって看過された相違点の判断の遺脱が、本件発明の進歩性を否定した審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

(2)  相違点の判断の誤り

〈1〉 相違点〈1〉の判断について

審決は、「引用例1記載のものにおいて、被写体すなわち撮像対象を「原稿平面」に特定することは、当業者が適宜になし得たことにすぎない」と判断している。

しかしながら、本件発明は、撮像対象が原稿平面であるからこそ、色むらを危惧する必要がなく、複数光源の採用が可能となったのである。これに対し、引用例1にはその撮像対象を平面にすることは開示されておらず、また、引用例2記載のものの撮像対象は原稿平面ではあるが、光源は一つである。したがって、仮に引用例1に複数の光源を使用することが開示されているとしても、引用例1及び引用例2記載の各技術的事項を組み合わせることによって、複数光源で原稿平面を照射して色むらを防止するという構成を得ることは困難であるから、相違点〈1〉に係る審決の判断は誤りである。

〈2〉 相違点〈2〉の判断について

審決は、「複数の光源の切換動作を、点灯装置により複数の光源を所定期間づつ所定の順序で点灯させることによって行い、複数の光源の切換動作と同期させて行う読出動作を、上記複数の光源の点灯と同期させて行うようにすることは、当業者が容易に想到し得た」と判断している。

しかしながら、審決がこの判断において援用する引用例3は、本件発明と技術分野を全く異にするテレビジョンスタジオ照明に関するものであって、複数の光源をどのように点灯し、それに基づく信号をどのように読み出すかは、対象とするものに即して様々な手法がありうるであり、引用例3は複数の光源の点灯、読出しの方法について何ら具体的な示唆を与えるものではないから、引用例1記載のものに引用例3記載の技術を適用して相違点〈2〉に係る本件発明の構成が想到容易であったとはいえない。したがって、相違点〈2〉に係る審決の判断は誤りである。

〈3〉 本件発明の作用効果について

審決は、「本件発明の要旨とする構成によってもたらされる効果も、引用例1ないし引用例3記載のものから当業者ならば容易に予測することができた程度のものであって、格別のものということはできない」と判断している。

しかしながら、本件発明によれば、〈1〉 色ずれを防止でき、〈2〉 高速動作が可能な、〈3〉 安価で信頼性が高いカラー原稿読取装置を得ることができる。

これに対し、引用例1記載のものは、色成分間の光量バランスの調整を目的としており、仮に引用例1に複数の光源が記載されているとしても、撮像対象を平面とすることによって色ずれを防止する効果は示唆されておらず、少なくとも前記〈1〉及び〈3〉の作用効果を奏することはできない。また、引用例2記載のものは単なる従来技術にすぎず、前記〈1〉ないし〈3〉のいずれの作用効果も奏し得ない。さらに、引用例3記載のものの奏する作用効果は、TVカメラに対する振動、スタジオ内の高感度マイクロフォンに対する騒音の防止であって、TV画像の走査速度を高速化するという作用効果は全くないし、色ずれ解消の作用効果も期待されていない。

したがって、本件発明の奏する作用効果が引用例1ないし引用例3のものから容易に予測できる程度のものであるとした審決の前記判断は誤りである。

第3  請求原因の認否及び被告の主張

請求原因1(特許庁における手続の経緯)、2(本件発明の要旨)及び3(審決の理由の要点)は認めるが、4(審決の取消事由)は争う。審決の認定判断は正当であって、これを取り消すべき理由はない。

1  一致点の認定について

原告は、引用例1中に「複数の光源」を用いることが実質的に記載されているというべきであるとした審決の認定は誤りであると主張する。

しかしながら、引用例1には「被写体を照射する光源を切換えて」と記載されており、この記載は切換え前の照射光源が消灯して別の照射光源が点灯することを意味するから、引用例1記載のものは、異なる複数の光源が存在する構成を当然の前提としている。そして、カラー光学系において単一光源・三色分解フィルタと三色光源のいずれを採用するかは、引用例3あるいは乙第5号証、第7ないし第9号証、第17号証に開示されているように、対象とする機器に応じて適宜に選択しうる周知技術にすぎないし、原稿平面の読取りに用いる光源として原稿平面の幅方向に延びる管状の光源である蛍光灯を用いることも本出願前の慣用手段である。したがって、当業者であれば、引用例1の「三色分解光学系としてカラーフィルタディスクについて述べたが、被写体を照射する光源を切換えても同様の結果を得る」という記載を、三色分解フィルタに換えて、三色光源を順次に切り換え点滅させる構成についての説明であると当然に理解できるというべきである。

この点について、原告は、光源が一つであっても三色分解フィルタを順次に切り換えるように構成すれば「被写体を照射する光源を切換えて」いるといえると主張する。しかし、「光源」とは自ら光を放射する発光源のことであるから、フィルタが「光源」に該当せず、したがって三色分解フィルタを切り換えることが「光源を切換え」ることにならない。

また、原告は、引用例1記載のものがもし複数の光源を用いているならば、色バランスの調整は各光源の明るさを可変抵抗により電流制御することによって容易に行うことができ、電荷転送素子の電荷蓄積時間を制御するというような複雑な構成を採用する必要はないと主張する。

しかし、引用例1記載のものにおいて、回転フィルタに換えて複数の光源を用いるときは、各光源がクロックパルスに同期した一定時間にわたり切換え発光して光をラインセンサの受光素子に送り、受光素子は上記一定時間内に電子回路により調整されれた電荷蓄積時間にわたり動作して、その時間内の受光を電荷に変換することになる。蛍光灯の劣化等により各色の発光の光量バランスが変化しても、複製された画像には適当な色バランスが得られるように受光素子の電荷蓄積時間を調整しようとすれば、引用例1記載のものを利用できる。また、蛍光灯の発光量を可変抵抗によって変化させることは可能であるが、このことは、各色成分の光量バランスの調整を電荷蓄積時間の調整によって行うことができないことを意味するものではない。各色の光量バランスの調整をそのいずれによって行うかは、適宜に選択できる設計事項にすぎないから、原告の前記主張は当たらない。

また、原告は、引用例1に「映像増幅器」、「映像信号」と記載されていることを理由に、引用例1記載のものの撮像対象は立体の被写体であると主張するが、「映像増幅器」とは映像信号を増幅する増幅装置であり、「映像信号」とは被写体から得られる輝度ないし色度情報を光電変換した電気信号であって、被写体が平面状か立体状かを問うものでなく、引用例1の実施例も一般に原稿平面に広く用いられるラインセンサを使用した装置について説明しているから、原告の上記主張も当たらない。

2  相違点の判断について

(1)  相違点〈1〉について

原告は、本件発明は撮像対象が原稿平面であるからこそ色むらを危惧する必要がなく、複数の光源の採用が可能となったのに対し、引用例1には撮像対象を平面にすることは開示されておらず、引用例2記載のものの光源は一つであるから、引用例1及び引用例2記載の各技術的事項を組み合わせて相違点〈1〉に係る構成を得ることは困難であると主張する。

しかしながら、引用例1にはその撮像対象が「被写体」とのみ記載されているが、実施例において原稿平面の走査に適する「光電変換素子が一列の一次元素子6」、すなわちラインセンサが用いられているから、平面原稿を被写体とすることが十分に示唆されているし、引用例2にはラインセンサを用いて書類を読み取ることが明記されているのであるから、「被写体すなわち撮像対象を「原稿平面」に特定することは、当業者が適宜になし得たことにすぎない」とした相違点〈1〉に係る審決の判断に誤りはない。

(2)  相違点〈2〉について

原告は、引用例3は本願発明と技術分野を異にするテレビジョンスタジオ照明に関するものであり、解決すべき技術的課題も本願発明とは異なるから、引用例3の記載のみから相違点〈2〉に係る本件発明の構成が想到容易であったとするのは不当であると主張する。

しかしながら、本件発明と引用例3記載の発明は、いずれも被写体からカラー像を得る光学系の技術である点において共通しており、色ずれの防止が要求されるという点においても共通しているから、そのいずれかに関する技術手段は他に適用しうることは当然である。そして、複数の光源を順次に切り換え光電変換装置で読み出す装置においては、光源の切換えと読出し動作とを同期させねばならないところ、引用例3には三色光源を切り換え使用する場合の同期手段の一例が示されているのであるから、原告の上記主張は当たらない。

(3)  本件発明の作用効果について

原告は、本件発明の作用効果は引用例1ないし引用例3のいずれによっても得ることができない顕著なものであると主張する。

しかしながら、原告主張の本件発明の作用効果のうち色むらの防止は、ラインセンサを1個とし、組立て時の位置決め微調整が容易な順次式に共通する当然の作用効果にすぎず、その余の作用効果は各引用例の記載から自明のものというべきであって、この点に関する審決の判断にも誤りはない。

第4  証拠関係

証拠関係は、本件訴訟記録中の書証目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

第1  請求原因1(特許庁における手続の経緯)、2(本件発明の要旨)及び3(審決の理由の要点)は、当事者間に争いがない。

第2  そこで、原告主張の審決取消事由の当否を検討する。

1  成立に争いのない甲第2号証(特許出願公告公報)及び第3号証(特許法第64条の規定による補正の掲載)によれば、本件明細書には、本件発明の技術的課題(目的)、構成及び作用効果が次のように記載されていることが認められる(別紙図面A参照)。

(1)  技術的課題(目的)

本件発明は、フアクシミリ等の原稿読取装置、特に原稿上の情報を色信号に分解して読み取る装置に関するものである(公報1欄20行ないし22行)。

従来のカラーフアクシミリの原稿読取装置としては、第1図に示すような「同時式」のものがあり(同1欄23行ないし25行)、原稿1は撮像レンズ3によって撮像され、ダイクロイツクミラー4,5及び全反射ミラー6,7によって赤、緑、青の三色に分解され、それぞれ固体撮像素子8、9及び10の受光面上に結像するので、固体撮像素子8から赤信号、9から録信号、10から青信号が取り出せる(同2欄3行ないし9行)。しかし、この同時式は、色ずれを防ぐためミラーや固体撮像素子の配置を非常に精度よく行う必要があるうえ、ダイクロイツクミラー及び3個の固体撮像素子を必要とするので、非常に高価になる等の欠点がある(同3欄13行ないし18行)。

これに対し、第2図に示すような「順次式」のものも従来から知られており(同2欄19行、20行)、回転フィルター11に赤、緑、青の三色フィルターを取り付け、固体撮像素子12の走査と同期させて回転フィルターを回転することによって、赤信号、緑信号及び青信号を一つの固体撮像素子12から順次取り出す(同2欄25行ないし3欄3行)。この順次式は、固体撮像素子は1個でよいが、回転フィルターという機械的な構造のため信頼性が悪く、高速読取りに適しない欠点がある(同3欄3行ないし6行)。

本件発明は、このような従来技術の欠点を解消し、簡単な構造で安価な原稿読取装置を提供することを目的とするものである(同3欄7行ないし9行)。

(2)  構成

上記課題を解決するために、本件発明は、その要旨とする特許請求の範囲1記載の構成を採用したものである(特許法第64条の規定による補正の掲載の「記」1行ないし6行)。

(3)  作用効果

本件発明によれば、印字ずれを少なくできるとともに、読取速度を高速化でき、さらに、機械的要素がなく、多数の光電変換要素からなる1個のラインセンサで構成されているため、安価で簡単な読取装置を得ることができる(公報5欄3行ないし12行)。

2  一致点の認定について

原告は、引用例1中に「複数の光源」を用いることが実質的に記載されているというべきであるとした審決の認定は誤りであると主張する。

検討するに、引用例1に「実施例においては、三色分解光学系としてカラーフィルタディスクについて述べたが、被写体を照射する光源を切換えても同様の結果を得る。」(3頁右上欄1行ないし4行)と記載されていることは当事者間に争いがない。そして、「切り換える」という用語が、一般に、それまで使用していたものに換えて別個のものを使用するという意味で使われることは明らかであるから、上記のように「光源を切換え」ると記載されている以上、当業者であれば、この記載は、引用例1に実施例として示されている一つの光源に換えて、光を三色に分解するために異なった波長域を有する新たな複数の光源を備えることを想定していると容易に理解できるというべきである。

この点について、原告は、引用例1には三色に相当する異なった波長域を有する複数の光源を用いることが一義的に開示されているとはいえないとし、例えば一つの光源の前の三色分解フィルタを切り換えれば照射光源を切り換えたといえると主張する。

確かに、引用例1の前記記載は三色分解光学系としてカラーフィルタディスク以外にも「光源を切換え」る手段を採用しうることを述べるにとどまり、その具体的構成を述べてはいないが、当業者ならば、上記の記載から、複数の光源を切り換えて順次に被写体を照射することにより三色分解光学系を構成するという技術的思想を十分に把握しうるというべきである。なお、一つの光源の前のフィルタを切り換えて透過光が三色になるようにすれば、カラー撮像装置の三色分解光学系として機能することは事実であるが、それはあくまでも「フィルタの切換え」であって、これを「光源を切換え」たというのは牽強付会といわざるをえないし、そもそも、引用例1の前記「カラーフィルタディスクについて述べたが、被写体を照射する光源を切換えても同様の結果を得る」という文脈において、後段を、一つの光源の前の三色分解フィルタディスクを切り換えることと解したのでは、前段と同様の技術を説明することになってしまうから、原告の上記主張を採用する余地がないことは明らかである。

また、原告は、引用例1記載のものは色ごとに電荷転送素子の電荷蓄積時間を制御するという複雑な構成によって色バランスを調整するものであるが、光源が複数ならば各光源の光量を可変抵抗により電流制御することによって容易に色バランスを調整できるから、引用例1記載のものに複数の光源を想定するのは矛盾するという趣旨の主張をしている。

しかし、成立に争いのない甲第4号証によれば、引用例1記載のものは、色バランスの調整が簡単にできる固体撮像装置を提供することを目的とし(2頁左上欄8行ないし10行)、この目的を達成するため、電荷転送素子における蓄積時間を調整することによって、各色成分の光量の差、及び、使用される電荷転送素子の変換特性の差を補償し、結果として出力信号レベルにおける各色成分の間のバランスをとっているのであって(2頁左上欄19行ないし右上欄3行)、そのカラーフィルタディスク8に換えて複数の光源を用いた場合、各光源がクロックパルス発生器10から供給されるクロックパルスに同期して切換え発光し、その光を(光電変換素子が一列の一次元素子6からなる)ラインセンサの受光素子に送り、受光素子は所定の調整された電荷蓄積時間動作してこれを電荷に変換するものと認められるから、これが格別複雑で実用性のない構成とはいえない。そして、各色成分の調整をこのような手段によって行うか、複数の光源の光量を可変抵抗により電流制御することによって行うかは、各手段のメリットとデメリットあるいはコスト等を総合勘案して決定すべき技術的事項であって、複数光源の採用と、電荷転送素子の電荷蓄積時間の制御とが、直ちに矛盾する発想ということはできない。

なお、原告は、引用例1記載のものの撮像対象は立体の被写体と考えられるが、引用例1には立体の被写体を複数の光源によって撮像する場合に生ずる「色むら」を避けるための手段が何ら記載されていないと主張する。

しかし、前掲甲第4号証を検討しても、引用例1記載のものの撮像対象を立体の被写体に限定して考えねばならない理由はない。原告がその論拠とする引用例1記載の「映像増幅器」あるいは「映像信号」における「映像」なる語が立体的なもののみを意味しないことは、その用語自体から明らかであるし、成立に争いのない乙第14ないし第16号証によれば、これらの特許出願公開公報において平面的な原稿面から取り出される信号を「映像信号」としていることからも裏付けられる。また、「色むら」を避けるための手段が記載されていないことは、引用例1に三色分解光学系として複数光源が開示されていると解することの妨げとはなりえない。そして、引用例1記載の光源の切換えは、前記のように、「三色分解光学系」の手段として述べられているのであるから、備えるべき複数の光源を、三色に相当する「それぞれ異なった波長域を有する複数の光源」とすべきことは技術的に自明の事項である。

したがって、本件発明と引用例1記載のものとが「それぞれ異なった波長域を有し撮像対象を照射する複数の光源」を備える点において一致するとした審決の認定に、誤りはない。

ちなみに、原告は、「引用例1記載のものは、「複数の光源の切換動作と同期させて電荷転送素子6からの各色毎の1ライン分の信号を順次読み出す読出装置」を実質的に開示しているということができる」とした審決の認定は誤りであり、したがって、本件発明と引用例1記載のものとは「複数の光源の切換動作と同期させて(中略)ラインセンサの多数の光電変換要素を一巡する周期で走査する読出装置」を備える点において一致するとした審決の認定も誤りであると主張する。しかしながら、審決は、「複数の光源の切換動作を具体的にどのように行うか、そして、複数の光源の切換動作と読出動作との同期を具体的にどのように行うか」について引用例1には明示の記載がないとし、この点を本件発明との相違点〈2〉として認定判断しており、原告は相違点〈2〉に係る審決の判断の誤りを審決の取消事由として主張しているのであるから、審決の前記各認定の当否が審決の結論の当否に影響を及ぼさないことは明らかというべきである。

3  相違点の判断について

(1)  相違点〈1〉について

原告は、引用例2記載のものの撮像対象は原稿平面であるが、光源は一つであるから、仮に引用例1に複数光源を使用することが開示されているとしても、引用例1及び引用例2記載の各技術的事項を組み合わせて複数光源で原稿平面を照射して色むらを防止するという本件発明の構成を得ることは困難であると主張する。

しかしながら、成立に争いのない甲第4号証によれば、引用例1には、実施例の説明として「電荷転送素子として、光電変換素子が一列の一次元素子6を用いている。」(2頁右上欄8行ないし10行)と記載されていることが認められるが、これがラインセンサを指していることは明らかである。一方、成立に争いのない甲第5号証によれば、引用例2は「CHARGE COUPLED DEVICE FOR LINE SEQUENTIAL COLOR SCANNING」、すなわち、「線順次カラースキャニング用電荷結合素子」に関するものであることが認められるが、この「線順次スキャニング用電荷結合素子」がラインセンサに該当することも明らかである。このように、両者はともにラインセンサによって対象を撮像するものであるから、引用例2に原稿平面を撮像することが記載されている以上、引用例1記載のものを原稿平面の撮像に適用することに何らかの困難があったとはとうてい考えられない。

そして、引用例1に複数の光源を使用することが開示されていることは前記のとおりであるから、この装置において撮像対象を引用例2に開示された原稿平面に特定して相違点〈1〉に係る本件発明の構成を得ることは、当業者が適宜になし得たことというべきである。引用例2記載のものにおける光源が一つであることは、上記の判断に何ら影響するものではない。

したがって、相違点〈1〉についての審決の判断に誤りはない。

(2)  相違点〈2〉について

原告は、引用例3は本件発明と技術分野を全く異にするテレビジョンスタジオ撮影に関するものであるから、この記載のみから相違点〈2〉に係る本件発明の構成が想到容易であったとするのは不当であると主張する。

しかしながら、審決が相違点〈2〉の判断に当たって引用例3の記載から援用したのは、「撮像対象を三色に分解して撮像し読出す技術」、すなわち、複数の光源の切換動作と、読出動作とをどのように関係付けるべきかという基礎的手段であって、その具体的構成ではない。そして、引用例1記載のものも引用例3記載のものも、対象をカラー画像で撮像する技術である点においては全く共通しているから、引用例3に開示されている「「フラッシング制御装置」(点灯装置)により三つの異なる波長域を有する光源を順次所定期間づつ点灯させ、その点灯と同期させてカメラの走査を行う」という手段(この手段が開示されていることは当事者間に争いがない。)を引用例1記載のものに適用することは、当業者ならば容易になし得た事項といわざるをえない。

したがって、相違点〈2〉に係る審決の判断に誤りはない。

(3)  本件発明の作用効果について

原告は、本件発明が奏する〈1〉 色ずれを防止できる、〈2〉 高速動作が可能である、〈3〉 安価で信頼性が高いという作用効果は、引用例1ないし引用例3のいずれからも予測しえなかった顕著な作用効果であると主張する。

確かに、前掲甲第4号証を検討しても、引用例1には、〈1〉 色ずれを防止することや、〈3〉 安価で信頼性が高いという作用効果についての記載は存しないが、前記〈1〉ないし〈3〉の作用効果は、三色光源を電子的に制御する静止的構成によって当然に奏される作用効果に他ならず、引用例1記載のものにおいて、それぞれ異なった波長域を有する複数の光源を採用し、これに引用例2及び3記載の技術を適用してこのような構成を得ることが容易であった以上、これらの作用効果は、この構成を採用したことにより当業者が予測し得た範囲内のものにすぎない。

したがって、本件発明の作用効果に関する審決の判断にも、誤りはない。

4  以上のとおりであるから、審決の認定判断は正当として肯認しうるものであって、本件発明の進歩性を否定した審決に原告主張のような誤りはない。

第3  よって、審決の取消しを求める原告の本訴請求は失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 春日民雄 裁判官 持本健司)

別紙図面 A

第1図は従来の原稿読取装置の1例の構成を示す図、第2図は従来の原稿読取装置の他の例を示す概念図、第3図はこの発明の一実施例の構成を示す概念図、第4図はこの実施例における蛍光灯の点灯時間と、固体撮像素子の走査周期および出力信号との関係を示す図である。

図において、1は原稿、2は蛍光灯、3はレンズ、12は固体撮像素子、13、14、15は蛍光灯である。なお図中同一符号はそれぞれ同一または相当部分を示す。

〈省略〉

別紙図面 B

第1図は木発明の一実施例を示すプロック図、第2図は第1図に示した実施例の各部における波形図を示す。同図において、1は 写体、2はレンズ、8はカラーフィルターディスク、4はモーター、5は像、6は1次元素子、7は映 増  、8は出力端子、9は同期信号入力端子、10はクロックバルス発生器、11は赤、緑、青パルス系生溜、12は制卸 圧切替装置、13は蓄積時間制御装置、14はゲート、15はモーター駆動増 装置、16、17、18は蓄積時間設定器、e、f、gは赤、緑、青パルス、t は映像信号の1ライン相当期間、tR、tG、tBは蓄積時間、tR1、tB1、tG1は制御パルスのパルス幅、R、G、Bは赤、緑、青の色成分を装わす。

〈省略〉

別紙図面 C

〈省略〉

別紙図面 D

〈省略〉

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com