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東京高等裁判所 平成8年(ネ)555号 判決

平成八年(ネ)第四四三号事件控訴人・同第五五五号事件被控訴人

第一審原告

宮園好文

右訴訟代理人弁護士

井堀周作 秋山努 新井悦郎 池田利子 池田裕道

石井麦生 伊藤俊克 伊藤まゆ 井上玲子 茨木茂

宇都宮健児 江上千恵子 大西英敏 角田淳 加園多大

加藤晋介 金井重彦 釜井英法 木下淳博 久保田紀昭

小林政秀 近藤早利 犀川千代子 齋藤雅弘 佐竹真之

佐藤むつみ 佐渡誠一 沢藤統一郎 清水由規子 下島正

末吉宜子 水津正臣 杉本文男 瀬戸和宏 宗村森信

園部洋士 高池勝彦 高木敦子 高澤廣茂 高木康彦

高橋利全 田中裕之 千葉肇 遠山秀典 中城剛志

中田利通 新津勇七 畠山正誠 林浩二 原口健

林敏彦 林史雄 日野昭和 平澤慎一 平沢郁子

福本悟 藤井誠一 前田幸男 正野建樹 松島宇乃

丸山武 御園賢治 村田敏 村田文哉 村千鶴子

森田太三 守屋和昭 山岡宏敏 山岸美佐子 山崎和代

山本至 湯本岩夫 横谷瑞穂 渡部公夫 渡邊信

平成八年(ネ)第四四三号事件被控訴人・同第五五五号事件控訴人

第一審被告

千代田トラスト株式会社

右代表者代表取締役

本田喜一郎

右訴訟代理人弁護士

岡崎國吉

荒井鐘司

主文

一  第一審被告の控訴を棄却する。

二  第一審原告の控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

1  第一審被告の第一審原告に対する東京法務局所属公証人中野國幸作成平成五年第九〇三号債務弁済契約公正証書に基づく強制執行は、これを許さない。

2  第一審被告は、第一審原告に対し、金二九万七九二五円及びこれに対する平成六年八月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  第一審原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを一〇分し、その一を第一審原告の、その余を第一審被告の負担とする。

四  この判決の主文第二項の2は、仮に執行することができる。

事実及び理由

一  当事者の求めた裁判

1  第一審原告

(一)  原判決を次のとおり変更する。

(二)  第一審被告の第一審原告に対する東京法務局所属公証人中野國幸作成平成五年第九〇三号債務弁済契約公正証書に基づく強制執行は、これを許さない。

(三)  第一審被告は、第一審原告に対し、金四〇万円及びこれに対する平成六年八月六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(四)  (三)につき仮執行宣言

(五)  第一審被告の控訴を棄却する。

2  被控訴人

(一)  原判決中、第一審被告敗訴部分を取り消す。

(二)  第一審原告の請求を棄却する。

(三)  第一審原告の控訴を棄却する。

二  事案の概要

1  本件は、第一審被告から一〇〇万円を借り受け、その弁済に関して公正証書が作成されている第一審原告が、右債務は弁済ずみである(予備的に相殺による債務消滅を主張)として、当該公正証書に基づく強制執行の不許を求め、かつ、既に第一審原告から債務整理に関し委任を受けた弁護士が受任通知をしているにもかかわらず、第一審被告が第一審原告の給料債権を差し押さえたことは、不法行為を構成するとして、その損害賠償を求めた事案である。

原判決は、第一審原告の弁済を一部認め、その限度で請求異議を肯定したものの、なお、債務が残存しているとして、その余の請求異議を棄却し、また、第一審原告主張の不法行為の成立を否定して損害賠償請求を棄却した。

第一審原告及び第一審被告の双方が、各敗訴部分につき控訴した。

2  前提事実(争いがある点は、各項末尾に掲記した証拠により認定した。)

(一)  第一審被告は、貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)三条による登録をした貸金業者(登録番号・関東財務局長(2)第〇〇八一四号)であるが、平成五年六月三〇日、第一審原告に対し、次の約定により金一〇〇万円を貸し付け(以下「本件貸付」という。)、その際作成された金銭消費貸借契約証書(乙一、以下「本件証書」という。)の写し(甲一、以下「本件証書写し」という。)を第一審原告に交付した(甲一、乙一、四の1ないし3)。

(1) 利息

年39.785パーセント(年三六五日の日割計算)の割合で一か月毎の後払い

(2) 弁済方法

平成五年七月から平成九年一二月まで(五四回)、毎月二三日(支払日が、土曜日、日曜日、祝日に当たる場合には、翌営業日)限り、四万円宛の元利均等分割返済(ただし、最終回は九二八一円)。うち第一三回(平成六年七月)までの弁済期日は、別表(1)記載のとおりである。

(3) 遅延損害金

年39.785パーセント(年三六五日の日割計算)

(4) 本件債務の一部でも遅滞又は不足したときは、当然期限の利益を失い、債務全額に約定の遅延損害金を付して直ちに完済する。

(二)  本件貸付に関し、平成五年七月一五日、次の内容の主文掲記の債務弁済契約公正証書(以下「本件公正証書」という。)が作成された(甲二の1)。

(1) 原因契約 平成五年六月三〇日付金銭消費貸借契約

(2) 利息 年一五パーセント

(3) 弁済方法 平成五年七月から平成九年一二月まで毎月二三日(支払日が、土曜日、日曜日、祝日に当たる場合には、翌営業日)限り、二万五四九三円の元利均等分割返済(ただし、最終回は二万七六六三円)。

(4) 遅延損害金 年三〇パーセント

(5) 元利金の支払いを一回でも怠ったときには、当然期限の利益を失い、直ちに債務を完済する。

(6) 本件債務の債務不履行のときは、第一審原告は直ちに強制執行に服する。

(三)  当事者双方が作成した執行認諾約款付の本件公正証書の作成嘱託に関する委任状(甲二の2、以下「本件委任状」という。)には、前記本件貸付(契約日、利息、損害金、弁済方法等前記(一)のとおり)の債務の弁済につき、第一審原告及び第一審被告が債務弁済契約公正証書の作成を嘱託する趣旨のほか、「当事者双方は、利息制限法に基づく限度内の利率に引き直して公正証書を作成することを承諾する。」旨の記載がある。

本件公正証書は、この本件委任状を用いて作成されたものである。

(四)  第一審原告は、本件貸付につき、平成五年七月から平成六年六月まで、約定期限から数日の遅れはあっても(右各支払いの遅れによっては期限の利益を喪失させないものとする暗黙の合意が、支払いの都度成立している。)、別表(2)記載の①から⑫までのとおり毎月四万円を支払った(持参払い、銀行振込の別は、同表記載のとおりである。以下「本件支払い」といい、個別には「本件支払い①」のようにいう。)が、同年七月二五日期限の支払いをしなかった(乙二の1ないし15)。

(五)  第一審原告の代理人である井堀周作弁護士(本件訴訟の第一審原告訴訟代理人、以下「第一審原告代理人」という。)は、第一審被告ほか一四社の借入先(いずれも金融業者)に対し、同年七月二八日付けで、第一審原告の債務負担状況の調査票の返送を依頼し、かつ、調査終了次第、第一審原告としての解決案を提示する予定であること、第一審原告本人に対して直接支払いの催告等することのないよう、照会は代理人に対してすること等を記載した書面を郵送した(甲三の1、2)。

(六)  浦和地方裁判所は、第一審被告の申立てにより、同年八月五日、第一審被告の第一審原告に対する請求債権(本件貸付残金、利息損害金合計九一万〇一七六円)の弁済に充てるため、第一審原告の勤務する商事会社を第三債務者として、本件公正証書に基づき、第一審原告の同社に対する給料債権を差し押さえる旨の債権差押命令をし(浦和地裁平成六年(ル)第一一三一号。以下「本件差押え」という。)、右命令は、同月一五日までに第一審原告勤務会社に送達された。

(七)  第一審原告代理人は、同年八月一六日、第一審被告に対し、本件差押えに抗議するとともに、六六万三八四〇円(本件貸付につき既弁済額をすべて利息制限法所得の制限利率により元本充当計算した残元金及び同日までの未払利息、遅延損害金)を銀行振込の方法で支払ったが、第一審被告への指定口座への入金が同月一七日になったため、同日、遅延損害金一日分五二九円を銀行振込の方法で支払った。

(八)  第一審被告は、同月二二日、本件差押命令申立事件を取り下げた。

(九)  第一審原告は、同月二五日、浦和地裁に本件訴訟を提起するとともに、本件差押えの執行停止を申し立てた(その後、第一審被告が本件差押えの申立てを取り下げていたことが判明したため、執行停止の申立ては取り下げられた)。

(一〇)  第一審原告は、平成七年二月二七日の原審第三回口頭弁論期日において、第一審被告のした本件差押えが不法行為であることを前提に、本件支払い後において本件貸付残債務があるとしても、その損害賠償債権(四〇万円)をもって、これと対当額で相殺する旨の意思表示(以下「本件相殺」という。)をした。

3  本件の争点及びこれに関する当事者の主張

(一)  本件貸付における利息及び損害金の利率は本件公正証書の作成により改定されたか。

(1) 第一審原告

本件債務に関し、利息・損害金について本件証書と異なる利率を定めた本件公正証書が作成された以上は、これが当事者を規律する効力を有するものと解されるから、本件債務の利息・損害金の利率は、利息制限法の制限内に改定する旨の合意が成立したものというべきである。

そして、第一審原告が第一審被告にした本件支払い分のうち利息制限法所定の制限利率を超過する部分を元本に充当すると、本件債務は、全て弁済により消滅している計算になる。

仮に、本件公正証書が、便宜上作成されたものであり、本件債務の利息及び損害金の定めが本件証書のままであるとすれば、本件公正証書は、真実の契約内容と異なる内容で作成されたことになるから、不実の公正証書として無効であり、執行力を生じる余地はない。

(2) 第一審被告

第一審原告の主張は、争う。

当事者間の金銭消費貸借契約において、利息制限法の制限を超える利息及び損害金が約定されても、公証人が右合意に沿った公正証書を作成することを拒否している現状において、当事者は、右利率を同法の制限利率内に「引き直して」公正証書を作成するとの合意に基づいて、その趣旨の公正証書の作成嘱託をしているのであって、これにより、強制執行の範囲が制約されるという効果は生じるものの、本来成立している利息及び損害金の合意内容が変更されることにはならない。

このように解すると、本件債務と本件公正証書の記載との間に齟齬はなく、本件公正証書は有効なものとして、執行力を有する。

(二)  本件支払いと貸金業法四三条一項(三項)の適用

(1) 第一審被告

第一審原告からされた本件支払いのうち、制限利率超過分の支払いは、いずれも貸金業法四三条一項(三項)の要件を充たすものとして有効であり、したがって、本件債務は、未だ消滅しておらず、本件公正証書の執行力は、有効に残存している。

a 本件証書写しは、同法一七条一項の要件を充たしている。

第一審原告の後記主張は、いずれも理由がない。すなわち、

ア 印紙代及び公正証書作成費用は第一審被告において負担しており、第一審原告は負担していないから、第一審原告の主張は、その前提を欠く。

イ 納税証明書は、単なる参考資料であって、本件証書写しに記載する必要はない。

ウ 本件証書写しに銀行振込の方法のみを記載したのは、債務者の便宜を考慮してのものであって、持参払いを否定する趣旨ではない。

エ 期限前弁済の場合の解約手数料及び調査料等の支払いについて空欄のままになっているのは、そのような合意がないことを示すものである。

b 本件支払いのうち、持参払い分については、同法一八条一項の要件を充たす受取証書を第一審原告にその都度交付している。

契約番号は、契約締結の時点では確定せず、融資を実行し、領収書兼残高確認証(乙二の1)を発行する時点で始めて確定するため、本件証書には記載せず、口頭で説明している。

c 本件支払いのうち、銀行振込分については、第一審原告に対して受取証書を交付していないが、第一審原告が毎回払い込むべき利息元本の内訳を記した償還予定表(乙四の1ないし3)を予め交付して、これを知らせており、右予定表は受取証書の充当内容に代替する内容を含んでいるのであるから、このような場合に、わざわざ受取証書を別途送付する実益は存しない。第一審原告は、履行を遅滞したときは遅延損害金が発生することは、当初から認識しているのであるから、履行遅滞の後にした支払いの結果と予定表に基づく支払いとの間に誤差の生じることは知りうる立場にある。

d 本件支払い⑬は、第一審原告がその代理人である弁護士と相談の上、利息制限法の利率を計算して支払ったものであって、任意の支払いであることは明らかである。

(2) 第一審原告

第一審被告の主張は、争う。

第一審原告がした前記本件支払いについては、いずれも貸金業法四三条一項(三項)の要件を満たすものではなく、利息制限法の制限を超える部分は、その都度元本に充当されたものというべきであるから、本件債務は、既に消滅し、本件公正証書の執行力は失われた。

a 本件貸付に際し、第一審被告が第一審原告に交付した本件証書写し(甲一)は、貸金業法一七条一項所定の要件を充たすものではない。

すなわち、

ア 第一審原告は、本件貸付を受けるに際し、印紙代一〇〇〇円、公正証書作成費用七二〇〇円余りを負担させられたが、本件証書写し(一一条(2))には、「公正証書作成のために要した費用は、債務者及び連帯保証人が負担します。」との記載があるだけで、具体的な金額の記載がなく、同法施行規則(以下「規則」という。)一三条一項一号ニの要件を充足していない。

仮に、第一審被告が公正証書作成費用を負担しているとするならば、それは真実に反する記載をしたものとして、やはり、前記要件に反するものというべきである。

また、仮に、第一審被告が印紙代を負担しているとするならば、そのことについての明示を欠く本件証書は、やはり、前記要件に反する。

イ 第一審原告は、本件貸付時に、第一審被告に対し、源泉徴収票、健康保険証の各写し、納税証明書を交付したのに、本件証書写し(五条)には、その旨の記載がない。規則一三条一項一号ハにいう「貸付に関し貸金業者が受け取る書面」の意義を、貸付債務に関連する権利義務の発生変動に利用されるおそれのある受取書面に限定する根拠はなく、また、仮に、右の解釈を採ったとしても、前記各書類は、右受取書面に含まれるものというべきである。

ウ 本件証書写し(六条)には、支払方法及び支払場所として、第一審被告の指定口座への銀行振込のみが記載されている。しかし、本件債務の支払方法としては、銀行振込のほか第一審被告店舗への持参払いも許容されていたものであるから、本件証書写しには、その旨をも記載する必要があったものというべきである。したがって、規則一三条一項一号トの要件を充足していない。

エ 本件証書写し(四条)には、債務者は、期限前に弁済する場合及び期限の利益喪失後に弁済する場合には、いずれも解約手数料を支払うべきものと定めているが、その手数料の算出割合につき記載がなく、白紙のままとなっている。このような解約手数料の具体的金額が不明の条項は、貸金業法一七条一項七号及び規則一三条一項一号ニ及びリの要件を欠くものというべきである。

オ 本件証書写し(三条)には、債務者は、融資事務取扱手数料、調査料を支払うこととされているが、その数額の部分が白紙のままとなっている。このような不明確な条項は、規則一三条一項一号ニの要件を欠くものというべきである。

b 本件弁済のうち、持参入金分について、第一審被告から交付された各受取証書は、貸金業法一八条一項所定の要件を充たすものではない。

すなわち、各受取証書には貸付日、貸付額の特定がない。各受取証書に契約番号の記載はあるが、第一審原告が交付を受けた本件証書写しには契約番号の記載はないから、結局、右契約番号の記載をもって貸付日、貸付額の記載に代えることはできない。乙二号証の一記載の契約番号の契約が本件証書写しの契約と同一である保証はないし、本件証書写しに契約番号を記載することは容易なのであるから、右契約番号の記載をもって本件証書写しの記載の不備を補うことは許されない。

c 本件弁済のうち、銀行振込分については、受取証書の交付がない。

事前に交付された償還予定表をもって、これに代えることは許されない。

d 本件弁済⑬は、第一審被告が本件差押えによって第一審原告の給料債権を差し押えたためやむなくしたものであり、任意の弁済ではない。

(三)  本件相殺による債務消滅

(1) 第一審原告

仮に、本件支払いによって、本件債務全部が消滅していなかったとしても、第一審原告が第一審被告に対してした本件相殺(自働債権たる不法行為債権の内容は、次に記載するとおり)によって、本件債務の残額は、全て消滅した。

(2) 第一審被告

右主張は、争う。

(四)  本件差押えの不法行為該当性

(1) 第一審原告

a 第一審被告は、第一審原告代理人から債権調査の依頼書面を受け取るや、第一審原告代理人に何ら連絡をすることなく、本件公正証書に基づき第一審原告の給料債権を差し押さえた。

b 第一審被告のした本件差押えは、弁護士である第一審原告代理人からの受任通知を受けた直後にされたもので、貸金業法二一条に違反し、かつ、昭和五八年九月三〇日付蔵銀第二六〇二号大蔵省銀行局長通達「貸金業者の業務運営に関する基本事項について」(以下「本件通達」という。)の第2の3(取立て行為の規制)の(1)(貸金業者等がしてはならない行為)のハの(ロ)「債務処理に関する権限を弁護士に依頼した旨の通知、又は、調停その他裁判手続をとったことの通知を受けた後に、正当な理由なく支払い請求をすること」に該当し、同4(取引関係の正常化)の(1)(貸付条件の掲示等に関し執るべき措置)のロの(ロ)「債務者、保証人その他の債務の弁済を行おうとする者から、帳簿の記載事項のうち、当該弁済に係る債務の内容について開示を求められたときは、協力しなければならない。」に違反する違法な行為である。

すなわち、第一審原告のようないわゆる多重債務者を救済し、再び自立させるために債務整理を行うためには、弁護士の援助とこれに対する貸金業者側の協力が不可欠であり、そのために、貸金業者は、前記の本件通達内容に従って、弁護士の受任通知を受けた後は、弁護士に協力して債権内容を開示し、弁護士からの弁済に関する提案がされるまでは、正当な理由のない限り取立行為を自制することが社会通念上のルールとして確立しているのである。

c また、本件差押えは、弁護士からの受任通知に対し全く折衝することなしにされたもので、正当な権利行使の方法を逸脱した権利の濫用行為として違法というべきである。

d 更に、本件支払いにより本件差押え当時、第一審原告に履行遅滞はなく、また、本件公正証書による強制執行は許されないから、履行遅滞の存在及び本件公正証書の有効性を前提とする本件差押えは、違法というべきである。

e 本件差押えにより、第一審原告は勤務会社における信用を失い、多大な精神的損害を被った。

この精神的損害に対する慰謝料は三〇万円を下らない。

また、本件差押えによる執行を阻止するため、第一審原告は、弁護士を選任して、本訴を提起すると同時に本件差押えの執行停止を申し立て(執行停止申立ては、第一審被告が本件差押えの申立てを取り下げたのに応じて、第一審原告も取り下げた。)、着手金として五万円を支払い、報酬として更に五万円を支払うことを約した。この弁護士費用一〇万円も第一審被告の不法行為による損害というべきである。

(2) 第一審被告

第一審原告の主張は争う。

本件差押えは、正当な権利行使であって、不法行為を構成することはない。

三  当裁判所の判断

1  本件貸付における利息及び損害金の利率は、本件公正証書の作成により改定されたか。

(一)  本件証書、本件委任状及び本件公正証書の各記載内容は、前記のとおりである。

これによると、本件証書における利息及び損害金の各利率は利息制限法の制限利率を超過する年39.785パーセント(年三六五日当たり)とされているところ、本件委任状においては、右利率を維持するものとした上で、これらを利息制限法所定の制限利率内に「引き直して」公正証書を作成することを承諾するものとされ、これに基づき、利率を利息制限法所定の最高利率(利息につき一五パーセント、損害金につき三〇パーセント)とする内容の本件公正証書が作成されるに至ったことが明らかである。

(二)  そして、利息制限法の制限利率を超える利率による利息・損害金の定めは、利息制限法一条一項により無効とされる一方、貸金業法四三条一項(三項)所定の要件を充たす場合においては、当該利息・損害金の支払いが有効なものとみなされる関係にあるところから、当事者間においては、利息制限法の制限利率を超過する利率を定めた合意を維持する実益があるとともに、公証人法二六条の規定により、利息制限法所定の制限を超える利率を定めた公正証書を作成することは許されないため、債務不履行の場合に備えての執行認諾約款付公正証書は、右制限利率内のものとして作成するほかないこととなる。以上のような法律関係を反映して、本件証書及び本件公正証書における利率の定めについて、右のような方法がとられたものであることは明らかというべきである。

そうであるとすれば、本件委任状の前記引直し条項を受けて本件公正証書が作成されていることをもって、約定利率を利息制限法所定の制限利率まで減縮する旨の合意があったものと認めることはできず、かえって、当事者間においては、本件証書で約定された利息・損害金の利率を維持しつつ、債務不履行の場合の強制執行の範囲を利息制限法所定の最高利率の範囲内に限定する意図であったものと認めるのが相当である。証拠(乙二の5ないし8、10ないし12)及び弁論の全趣旨によれば、第一審原告も、その任意に支払いをした利息等が当初約定のとおり年39.785パーセントの割合で計算されていることにつき、なんら異議を述べなかったことが明らかであり、この事実は右認定に沿うものといわねばならない。

他に本件債務の利息等の利率が第一審原告主張のように改定されたことを認めるに足りる証拠はない。

なお、右のように解する以上、本件債務の契約内容と本件公正証書の記載との間に齟齬があるということはできないから、本件公正証書は有効に成立したものとして、執行力を有するものというべきである。

第一審原告の主張は、採用することはできない。

2  本件支払いと貸金業法四三条一項(三項)の適用の有無について

(一)  本件貸付に際し、第一審被告が第一審原告に交付した本件証書写し(甲一)は、その記載に照らし、貸金業法一七条一項所定の要件を充たすものと認めることができる。

第一審原告は、前記のとおり右の要件の欠缺を主張するが、以下のとおりいずれも理由がない。

(1) 本件証書写しの記載をみると、同三条には、債務者は、融資事務手数料、調査料を支払うこととされているが、その数額の部分が白紙のままとなっていること、同四条には、債務者は、期限前に弁済する場合及び期限の利益喪失後に弁済する場合には、いずれも解約手数料を支払うべきものと定めているが、その手数料の算出割合につき記載がなく、白紙のままとなっていること、同一一条(2)には、公正証書作成費用は債務者が負担することとされていることが明らかである。

第一審原告は、これらの記載は、貸金業法一七条一項七号及び同法施行規則一三条一項一号ニ及びリの要件を欠くと主張する。

ところで、当審証人岩渕源宏(第一審被告債権管理部長)の証言によると、第一審被告においては、不動産担保を徴する融資の場合と本件のように不動産担保を徴しない消費者向けの融資の場合とに共通なものとして本件証書写しのような書式を用いているところ、前記の各事項については、いずれも不動産担保事案において適用をみるため、その場合には白紙部分を記入し、公正証書作成費用を債務者に負担させているが、本件のような消費者信用の事案においては、その適用がないため、白紙部分は空欄のままにし、また、公正証書作成費用も徴収しない取扱いであることが認められる。

債務者に交付されるべき貸金業法一七条一項所定の契約書面及び同法一八条一項所定の受取証書が法の求める要件を充足しているか否かを判断するに当たっては、当該契約の内容又はこれに基づく支払いの充当関係が不明確であることなどによって債務者が不利益を被ることになってはならないという法の趣旨に合致するか否かという実質的な観点を踏まえて検討することを要するところ(最高裁第二小法廷平成二年一月二二日判決・民集四四巻一号三三二頁参照。)、前記の事実関係のもとにおいては、本件証書写しの前記のような記載は、債務者である第一審原告に不利益をもたらすものということはできないものというべきであるから、第一審原告主張の要件の不備があるとみるのは相当でない。

(2) 次に、当審証人岩渕源宏の証言によると、第一審原告は、本件貸付を受けるに際し、本件証書に貼付すべき収入印紙代一〇〇〇円を負担したことが認められる(これに反する原審証人石原真司の証言は採用できない。)。

第一審原告は、本件証書写しには、収入印紙代について具体的な金額の記載がなく、規則一三条一項一号ニの要件を充足していないと主張するが、本件証書写し三条には、債務者はこの契約作成に関する必要費用を支払う旨の記載があるところ、右収入印紙代は、本来作成者である債務者が負担すべきものであることが明らかであり、その金額も、債務者が法令の規定により容易に計算することが可能で、しかも、貸金の額に比し少額なものであるから、本件証書写し上に具体的金額の記載まではなくとも、前記要件に欠けるというべきではない。

(3) 原審証人石原真司の証言及び弁論の全趣旨によると、第一審原告は、本件貸付時に、第一審被告に対し、源泉徴収票の写し、健康保険証の写し及び納税証明書を交付したことが認められるところ、本件証書写し五条には、第一審被告が第一審原告から公正証書作成用委任状一通ほかの書面を受取った旨の記載はあるものの、右各書面を受領した旨の記載はない。

第一審原告は、右各書面は、規則一三条一項一号ハにいう「貸付に関し貸金業者が受け取る書面」に含まれると主張する。

確かに、規則の右文言には何の限定もされていないことからみて、右各書面が規則にいう書面に該当しないと解することは困難である。しかしながら、これらの書面は、一次的には、第一審原告の身元、収入等の事実確認のための資料であって、直接、権利義務の発生変動に影響するものとはいえず、また、源泉徴収票や健康保険証は、原本ではなく、写しであり、納税証明書も必要があれば、更に交付を受けることが可能な書面であって、いずれも運転免許証や年金証書のように社会生活上必要な書面にも当たらないから、前記の実質的な観点を踏まえて検討すると、本件証書写しにこれらの受領に関する記載を欠くからといって、債務者である第一審原告に不利益をもたらすものということはできないものというべきであって、第一審原告主張のような要件の不備があるということはできない。

(4) 本件証書写し六条には、支払方法及び支払場所として、第一審被告の指定口座への銀行振込のみが記載されている。しかし、本件債務の支払方法としては、銀行振込のほか第一審被告店舗への持参払いも許容されていたことは明らかであるところ、持参払いの記載がないことによって、第一審原告が何らかの不利益を被った事実を窺うこともできないから、本件証書写しに持参払いをも許容する趣旨が欠けていたからといって、規則一三条一項一号トの要件を欠くとすることはできない。

(二)  本件支払いのうち、持参払い分(本件支払い④ないし⑥、⑧、⑨)について、第一審被告から交付された各受取証書(乙二の5ないし8、10ないし12)は、その記載に照らし、貸金業法一八条一項所定の要件を充たすものと認めることができる。

第一審原告は、前記のとおり右の要件の欠缺を主張するが、以下のとおり理由がない。

すなわち、右各受取証書には、貸金業法一八条一項二、三号所定の貸付日及び貸付額の記載はないが、契約番号(20704072)の記載のあることが明らかである。そして、受取証書に契約番号の記載のあるときは、規則一五条二項により、前記各項目の記載に代えることができるものとされているから、右要件の不備はないものということができる。本件証書写しには契約番号の記載はないが、契約日当日、本件証書写しとともに第一審原告に交付されたことが認められる乙二号証の一(前記各受取証書と同一書式の書面、備考欄に新規貸付の記載があり、お客様署名欄には第一審原告の署名がある。)には、右契約番号の記載があり、当該書面の作成日付及び貸金の額の記載によれば、その書面が本件貸付について作成された書面であることを債務者である第一審原告が容易に認識できるのであるから、第一審原告が本件貸付の契約番号を誤認する可能性は少なく、第一審原告が何らかの不利益を被ることも考えられないのである。

(三)  本件支払いのうち、銀行振込分(本件支払い①ないし③、⑦、⑩ないし⑫)については、受取証書の交付がなく、貸金業法一八条一項所定の要件を充たすものと認めることができない。

すなわち、右銀行振込分については、第一審被告が、第一審原告に対し、右条項所定の受取証書を交付していないことは当事者間に争いがない。

ところで、貸金業法一八条二項の規定は、口座振込の方法による弁済の場合、弁済者が同条一項の書面交付を請求しない限り、これを交付しなくとも刑罰を科されないというにとどまり、右書面を交付しなくとも、みなし弁済規定適用の利益を享受することができるとまで規定しているものではない。そして、同法四三条一項二号は、前記書面の交付を同法四三条一項適用のための積極要件として規定しており、これについて何らの除外事由を設けていない。また、弁済直後に受取証書が交付されてはじめて、債務者はこれを手掛りに法律上負うべき債務の内容を具体的に把握することができ、債権者に対する権利主張が可能となるものであるところ、そのような機会があったにもかかわらず債務者から任意に弁済がされるところに、みなし弁済を肯定する実質的根拠があるものと考えられる。以上の事柄を考慮すると、預金口座への入金があった場合において、貸金業者が利息制限法所定の利率を超過する支払いにつき、貸金業法四三条一項(三項)の規定の適用を受けるためには、預金口座への入金を通常知り得る時点で、その都度、直ちに所定の受取証書を債務者に交付ないし送付することを要するのであって、右交付等のない限り、右規定の適用を受けることはできないものと解すべきである。

そうすると、前記の事実関係のもとにおいては、前記の本件支払分については、右規定の適用はないものというべきである。

第一審被告は、第一審原告に対しては予め償還予定表(乙四の1ないし3)を交付しており、これは、第一審原告の債務不履行に伴う誤差はありうるものの、受取証書の交付に代替する機能を有しているから、改めて受取証書を交付しなくとも、右規定の適用があると主張するが、前記説示に照らし、採用することができない。

(四)  本件弁済⑬については、第一審原告の代理人において、本件債務を利息制限法所定の利率で計算し直した利息・損害金及び残元本についての支払いとしてしたものであることは前記のとおりであるから、貸金業法四三条一項(三項)の適用はないものというべきである。

(五)  以上によると、本件支払いのうち、持参払い分(本件支払い④ないし⑥、⑧、⑨)については、右条項の適用があるものとして、利息制限法所定の利率を超過する部分についても約定どおりの利息・損害金として支払われたものとみなすべきであるが、銀行振込分(本件支払い①ないし③、⑦、⑩ないし⑫)及び本件支払い⑬については、右規定の適用はないから、利息制限法所定の制限利率の利息・損害金等の支払いがされたものとして充当計算すべきである。

これによると、本件債務は、本件支払い⑬により、平成六年八月一七日現在、一〇万二〇七五円を残元本として、なお存在していることになる。その計算の経過は、(3)記載のとおりである。

本件債務が本件支払いによって全て消滅したとの第一審原告の主張は、以上の説示に照らし採用することができない。

3  本件差押えの不法行為該当性について

(一)  前記の事実関係によると、第一審被告は、平成六年七月二八日付で郵送された書面で、第一審原告の代理人である弁護士から受任通知を受け、第一審原告の負担している債務の内容についての調査協力及び代理人が債権者らの調査の結果に基づいて提案する予定の解決案に対する検討並びに直接の権利行使の自制の依頼を受けておりながら、同年八月五日付で本件差押えをし、右差押命令は、同月一五日までには第一審原告の勤務会社に送達されたというものである。右の受任通知を受けて、第一審被告が弁護士に対して何らかの回答等をしたか否かについて、第一審被告から一切主張・立証がないことからすると、第一審被告は、右の受任通知に対し、何らの対応をすることなく、本件差押えに及んだものと推認される。しかも、第一審原告は、別表(2)のとおり、平成六年六月までの割賦弁済金は、一日ないし三日遅れが数回あったものの、ほぼ期限どおりに弁済をしていたにもかかわらず、第一審被告は、同年七月二五日分の支払いを一回怠ったことを理由として、本件差押えに及んだものである。

もとより、債務名義を有する債権者が強制執行の挙に出ることは、その権利の行使として一般的に是認されるところであるが、権利の行使といえども社会通念上相当な態様と方法で行われなければならないことはいうまでもない。そこで、本件差押えが権利の行使として正当なものか否かについて検討することとする。

(二)  貸金業法等が昭和五八年一一月から施行されるに当たり、その運用の適正を期するために定められた本件通達は、貸金業者の業務等に関し、取立て行為の規制、取引関係の正常化等の観点から、貸金業者がしてはならない行為、債権債務の内容開示のため貸金業者が執らなければならない措置等について個別的に列挙し、その中に、第一審原告主張の内容が定められていることは、当裁判所に顕著である。そして、証拠(甲六ないし一一、当審証人佐々木幸孝の証言)及び弁論の全趣旨によると、本件通達発出以来、その定める内容は、貸金業者において概ね遵守され、債務者から依頼を受けた弁護士が、貸金業者に対し、受任の通知をするとともに、債務の内容についての回答及び資料の開示を求め、更に債権者に対する調査結果を踏まえてする弁済方法の提案についての協力依頼をしてきたときは、貸金業者は、右の申出が誠意のない単なる時間稼ぎであるとか、財産の隠匿を目的としているなど不当なものである場合は別として、原則として、これに協力し、弁護士の提案を誠実に検討することにしており、たとえ、既に公正証書等の債務名義を保持している場合であっても、弁護士の協力依頼になんら対応することなしに、いきなり強制執行の挙に出ることは控えているのが一般であると認められる。そして、現在、多くの消費者信用業者から多額の信用供与を受け、その返済が不能又は著しく困難となったいわゆる多重債務者の存在が大きな社会問題となっていることは、周知のところである。このような多重債務者の経済的更生を図ることは、社会的な要請でもある。前記のような取扱いは、右の社会的要請にも応え、合理的なものであるということができる。また、多額の債務を負担し、その弁済が困難となった債務者が、経済的更生を図るために弁護士に債務の整理を依頼し、その依頼を受けた弁護士が債務の整理に着手した場合に、その弁護士と連絡をとることなく、財産の差押え等の強制執行を行うことは、特段の事情のない限り、法律に従った手続で経済的更生を図ろうとする債務者の利益を害するものということができる。

このような見地から考えると、貸金業者は、債務者との関係においても、当該債務者の依頼した弁護士からの前記のような受任通知及び協力依頼に対しては、正当な理由のない限り、これに誠実に対応し、合理的な期間は強制執行等の行動に出ることを自制すべき注意義務を負担しているものであり、故意又は過失によりこの注意義務に違反し、債務者に損害を被らせたときは、不法行為責任を負うものと解するのが相当である。

(三)  前記の事実関係のもとにおいては、第一審被告は、第一審原告代理人である弁護士の受任通知及び協力依頼を受けたのに、これに対し、なんら誠実な対応をすることなく、逆に、わずか一週間の短期間内に、しかも、第一審原告が一回の分割弁済金の支払いを怠ったことを理由に、本件差押えに及んだものであるところ、第一審被告にこのような措置に出る正当な根拠が存在したことを窺わせる証拠はなく、むしろ、弁護士に依頼したことに対する対抗措置として本件差押えに及んだものと疑われてもやむを得ない状況にあるといわざるを得ない。したがって、第一審被告は、このような場合の貸金業者としての前記注意義務に違反したものであり、右違反行為をするについて、少なくとも過失があったものというべきである。

(四)  原審における第一審原告本人の供述及び弁論の全趣旨によれば、本件差押命令が第一審原告の勤務会社に送達され、その内容が会社内に知られたことにより、社内での第一審原告の信用は毀損され、第一審原告はこれにより相当の精神的損害を被ったものと認めることができるのであって、これに対する慰謝料は、本件差押えの申立てがまもなく取り下げられたことを考慮に入れても、三〇万円を下らないものと認められる。

また、弁論の全趣旨によると、第一審原告は、本件差押えによる執行を排除するため、弁護士である第一審原告代理人を選任して、本訴を提起すると同時に本件差押えの執行停止を申し立て(執行停止申立ては、第一審被告が本件差押えの申立てを取り下げたのに応じて、第一審原告も取り下げた。)、相当額の報酬を支払うことを約したこと、そして、これにより弁護士に支払うべき報酬額は、一〇万円を下ることはないものと認めることができる。したがって、この弁護士費用一〇万円も第一審被告のした本件差押えに起因する損害というべきである。

(五)  以上によると、第一審被告は、第一審原告に対し、不法行為による損害賠償として四〇万円及びこれに対する不法行為の日(本件差押えが第一審原告の勤務会社に送達された日とするのが相当である。)から支払い済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務を負担したものというべきである。

4  本件相殺による債務消滅について

(一)  平成七年二月二七日の原審第三回口頭弁論期日において、第一審原告が、右不法行為債権四〇万円をもって、本件支払い後に残存する本件債務とその対当額において相殺する旨の意思表示(本件相殺)をしたことは前記のとおりである。

(二)  そうすると、本件相殺によって、平成七年八月一七日現在の本件債務残元本一〇万二〇七五円は全部消滅し、本件不法行為債権は、残りの二九万七九二五円及びこれに対する前記遅延損害金の限度で残存することになる。

5  第一審原告の請求について

以上のとおりであって、本件公正証書は、これに記載された本件債務が本件支払い及び本件相殺によって全部消滅したものであるから、これに基づく強制執行は許されず、本件請求異議は全部理由があり、また、第一審原告の損害賠償請求は、前記残存額の支払いを求める限度で理由がある。

四  結論

よって、第一審原告の控訴は一部理由があるので、これと異なる原判決を右の説示に従って変更し、第一審被告の控訴は、理由がないので棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官今井功 裁判官淺生重機 裁判官田中壯太)

別表  (1)~(3)〈省略〉

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