大判例

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東京高等裁判所 昭和24年(新を)3536号 判決

被告人

丸山作蔵

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役一年に処する。

原審における未決勾留日数中四十日を右本刑に算入する。

但し、本裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。

押収に係る被告人名義の探偵手帳一冊は之を没収する。

理由

弁護人森鋼平の控訴趣意について。

記録を閲し昭和二十四年十月二十九日附原審第二回公判調書をみると、被告人の原審弁護人森鋼平は、当時被告人においては被告人の本件犯行に因る被害の弁償手続が完了していないから其の完了を証する示談書提出のため判決言渡期日を延期せられたい旨申立て、之に対し原審裁判官は、右申請を許容して言渡期日を延期し、同期日を同月三十一日午後一時に指定して之を訴訟関係人に告知した旨の記載があり、次に同月三十一日附第三回公判調書には、同公判期日において弁護人森鋼平が出頭しないまま裁判官は判決の言渡を為した旨の記載あること孰れも所論のとおりである。而して右十月三十一日当時原審(東京地方裁判所)における刑事の公判期日が特別の事情のない限り、午前十時に開始されることは当裁判所に顕著な事実であり、本件に関しても第三回公判期日の開始に付き何分特別障礙のありしことを認め難いから矢張り一般の事件同様午前十時頃に開始されたものと解するを至当とする。そして斯ように期日の変更については弁護人に対して予め意見を聴く方法を採つたこと又は之を聴いている遑のない程急速な変更を必要とする事情の存在したことは共に全く見出せないから、原審は右第三回の公判期日を職権を以て変更しながら、特に急速を要する事情もないのに之に付き弁護人の意見を聴かなかつた違法ありと謂わざるを得ない。而して当審において職権により事実の取調をした結果によれば、右弁護人森鋼平は同月二十八日附で被告人のために作成された被告人の父丸山倉之助及び被害者潮田八重子共同作成名義の示談書と題する書面(本件記録に編綴)を用意して右第三回公判期日には弁論再開等の手続により被告人の本件犯行に因る損害の弁償ありし事実を立証すべく期待していたことを推認し得るから、原審の右違法なる訴訟手続により右立証の機会を逸するに至り而も此のことは原判決に影響を及ぼす性質のものなりしこと明らかであるから、論旨は理由あり、原判決は破棄を免れない。而して本件は訴訟記録竝に原審及び当審において取調べた証拠によつて直ちに判決することができるものと認めるから、刑事訴訟法第三百九十七条第四百条但書により、原判決を破棄した上左のとおり判決する。(以下省略)

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