大判例

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東京高等裁判所 昭和25年(う)2187号 判決

被告人

高橋旭

主文

本件控訴はこれを棄却する。

当審における未決勾留日数中九十日を本刑に算入する。

当審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

弁護人馬場東作の控訴趣意について。

弁護人の控訴の趣旨は原判決には弁護人を附せずして審理判決した違法があると主張するものである。仍て按ずるに本件被告人に対し、最初昭和二十四年九月二十六日附起訴状を以て窃盜罪(原判決判示第一の(一二)の事実につき)の公訴の提起あり、原審は同月二十七日附を以て被告人に対し弁護人選任の有無を照会したところ、翌二十八日附を以て被告人より弁護人は自分では選任しない旨の回答があつたこと、次いで同月三十日附追起訴状を以て被告人に対する窃盜、詐欺、横領(原判決の判示第一(一)乃至(一一)及び(一三)、第二、第三の各事実並びに原審で無罪の言渡のあつた事実に対するもの)の公訴の提起があり、これに対しても同年十月五日被告人より自分では弁護人を選任しない申出があつたので、裁判所は即日弁護士大城朝申を被告人の為弁護人に選任したこと、裁判所は右両起訴にかゝる事件を併合して同年十一月十一日第一回公判を開廷して以来右弁護人大城朝申出頭の下に公判の回を重ねて審理を進めその判決を為したものであること、その間昭和二十四年十二月二十八日附を以て被告人は被告人に対する窃盜、詐欺、横領被告事件につき弁護士村川保蔵を弁護人に選任する旨の選任届提出したが、右選任後の最初の公判期日たる昭和二十五年一月十三日の第四回公判期日には右村川弁護人に対する呼出がなかつた為、その出頭なく右期日は延期せられて次回は同年二月三日と定められたところ右二月三日附を以て被告人より同弁護人を解任する旨の解任届及び同弁護人の辞任届が提出せられたこと、従つて当初の大城弁護人に対しては何等解任等の手続が為されなかつたことは記録上明らかなところである。当初大城弁護人に対する裁判所の選任書は記録編綴のその控に依ればその事件名を單に窃盜被告事件とのみ表示してあることは明白であるが、これを以て單に当初の起訴にかゝる窃盜事件についてのみ若くは追起訴の分をも含めて窃盜事件についてのみの選任であると解することは相当でない。即ち前記の経緯に徴すれば右選任当時は被告人に対する本件被告事件は、二回の公訴提起によつて全部裁判所に係属しており、而も裁判所はその各起訴にかゝる被告事件につき被告人からいずれも自分では弁護人を選任しない旨の回答を得ていた際のことであるから、かゝる場合特段の事情のない限り裁判所が被告事件の一部につき弁護人を選任し一部につき選任しないと為すようなことは有り得べからざることである。されば前記選任書の被告事件名はその表示を誤り、窃盜、詐欺、横領被告事件とすべきところを冒頭の窃盜被告事件のみを記載したものと解すべきものである。(裁判所及び弁護人を選任する場合は被告人等がする場合と異り法令上特段の要式行為ではなく、只記録上これを明らかならしめれば足るものと云うべきである。)結局本件において弁護人大城朝申の選任は被告事件の全部について為されたものと云うべく、従つて同弁護人が終始関与立会した原審の審理には所論の如き違法は存しないものと云わなければならない。即ち論旨は理由がない。

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