大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)3952号 判決

控訴人 原審弁護人 小沢茂

被告人 宮本三郎こと金丙松

弁護人 小沢茂

検察官 原長栄

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は弁護人小沢茂作成の控訴趣意書の通りであるからこれを引用し、これに対し当裁判所は次のように判断する。

論旨第一点について。

刑事訴訟法第三二一条第四項に「鑑定の経過及び結果を記載した書面で鑑定人の作成したもの」というのは、裁判所が命じた鑑定人の作成した書面に限ることなく、搜査機関によつて嘱託された者の作成した書面をも包含するものと解するを相当とする。

所論鑑定書は司法警察員より鑑定の嘱託を受けた警視庁警察技師石川正清が作成したものであり、右同人は原審第四回公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述しておるのであるから、被告人がこれを証拠とすることに同意しなかつたに拘らず、原審がこれについて証拠調をなし断罪の資料として採用したことは何等違法ではない。従つて原審の訴訟手続の法令違反を主張する論旨は理由がない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判長判事 小中公毅 判事 渡辺辰吉 判事 河原徳治)

控訴趣意

第一点訴訟手続の法令違反

原判決は証拠として警視庁警察技師石川正清作成の鑑定書を採用しているが、かかる鑑定書は同意がなければ証拠として採用し得ないものである。即ち刑事訴訟法三二一条四項に規定する鑑定人とは、裁判所の命じた鑑定人のみを指称するものと厳重に解釈すべきであつて本件の場合の如き搜査官が書面を以て委嘱した所謂鑑定人は包含されないものと解するのが相当である。原裁判所は弁護人の反対及び異議あるにかかわらず前記の鑑定書を証拠として採用したのであるが、これは刑事訴訟法の規定に違反したものと謂わなければならない。

しかるに原判決の挙示する証拠中前記鑑定書以外には、被告人が製造した本件目的物が、真実にフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する覚せい剤であることを立証する証拠は存在しないのであろうから、右の訴訟手続の法令違反は判決に影響を及ぼすことが明かであり、従つて原判決は破棄さるべきものである。

(その他の控訴趣意は省略する。)

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