大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

東京高等裁判所 昭和28年(ラ)12号 決定

抗告人 山本美惠子

事件本人 山本重雄

主文

本件抗告を棄却する。

理由

抗告人は、原審判を取消し、相当な裁判を求める旨を申立てたところ、その理由の要旨は別紙記載のとおりである。よつて案ずるに、事件本人山本重雄の母である抗告人はその夫である山本勇と協議の上離婚することとなり、その届出書まで作成したが、抗告人が山本重雄の親権者となることにつき山本勇と協議することができないから、右のとおりに抗告人を親権者と定める審判を求める旨の申立を原審裁判所になしたことは、本件親権者指定の申立書の記載に徴し明かである。而して、原審における抗告人審問の結果によれば、抗告人と山本勇との間に離婚の協議が成立したことを窺いうるところ、この場合に親権者指定の申立をなすについて協議上の離婚が既に効力を生じていることは必ずしもこれを必要としないものと解すべきであるから、原審裁判所が本件申立に基き諸般の事情を考慮した上、山本勇を山本重男の親権者に指定する旨の審判をなしたことは毫も違法ではない。しからば本件抗告は理由がないから主文のとおり決定をする。

抗告理由

一、抗告人は昭和二十七年五月三日、前橋家庭裁判所太田支部に対し、離婚に基く、右事件本人の親権者として実母である抗告人を指定せられんことの審判を求めた。

二、同裁判所は之を受理し、且つ同年七月十日職権に依り、之を同裁判所の調停に付す旨の決定をなし、同調停委員会が開かれた末、父たる訴外山本勇の反対に依り不調に了つた。(協議上の離婚は成立しなかつた)

三、依つて原審裁判所は民法第八一九条第五項に依り事件本人の父である訴外山本勇を右重雄の親権者と指定すと審判した。

四、然れども右審判は左の点において違法であるから本申立に及んだ次第である。

民法第八一九条第一項は父母が「協議上離婚するときは」とあり、先ず第一次的意義において父母は其自由なる意思の合致に依り協議に依り離婚が決定したること。

而して第二次的に此の場合父母の内其一方が親権者となることを定むることを要することを定めてある。而も此の親権者となるべき話合いが出来ない場合、又は不能のときにおいて、家庭裁判所は父母請求により指名の為の協議に代る審判が出来るのである。然るに本件抗告人の申立は右民法第八一九条第一項の協議上離婚が調つた場合でなく単に離婚の下話しだけで事件本人の父(抗告人の夫)勇が承諾しないから、家庭裁判所で右共同親権者たる勇を除き抗告人のみを親権者と指定せられんことの申立てあることは申立書記載のとおりである。従つて民法第八一九条第五項の「同条第一項の父母の一方を親権者と定むるに付協議が調はないとき」に該当しないから直ちに審判に依つて離婚を前提とする指定をすることは出来ない。勿論家庭裁判所は離婚を強制することも出来ない(家事審判法第二十四条)要之に本申立事件に付離婚が協議上調つておらないのに民法第八一九条第五項の父母の一方を親権者と指定するが如きは行き過ぎである許りでなく、事実上(戸籍吏が離婚届の受理がないこと)無意味に属せん、故に此点において是正を免んずと思料す。

右抗告する。

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com