大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)453号 判決

被告人 根岸たかの

主文

原判決を破棄する。

被告人を原判示第一の罪につき科料二百円に、同第二の罪につき科料二百円に、同第三の罪につき科料二百円に処する。

右各科料を完納することができないときは、いずれも金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

本件控訴の趣意は、前橋地方検察庁検察官検事杉本覚一作成名義の控訴趣意書記載のとおりであるから、これをここに引用し、これに対して次のとおり判断する。

控訴趣意第一点について。

原判決が、罪となるべき事実として、所論摘録のような第一ないし第三の三個の未成年者飲酒禁止法違反の事実を認定判示し、これに対して、併合罪に関する刑法第五十三条第二項の規定を適用せず、その主文において一個の科料刑を言い渡していることは、所論のとおりであつて、所論は、右は法令の解釈適用を誤つたものであり、その誤が判決に影響を及ぼすことが明らかである旨主張するにより、審究するに、刑法第四十五条前段の併合罪の関係にある数罪中科料に処すべき罪が二個以上ある場合には、その科料刑を併科すべきものであることは、刑法第五十三条第二項の明定するところであるが、原判決書の記載に徴するときは、原判決においては、その判示第一ないし第三の三個の事実を包括して一罪が成立する趣旨の認定をしたものではなくて、右第一ないし第三の三個の事実をもつて刑法第四十五条前段の併合罪の関係に立つ三個の未成年者飲酒禁止法違反の罪が成立する趣旨の認定をしたものと解されるのであつて、同違反罪に適用すべき同法第三条の罰則規定には、法定刑として科料刑のみが定められているのであるから、右は、正に前示刑法第五十三条第二項所定の場合にあたるものというべく、従つて、原判決においては、同法条を適用して、各罪につきそれぞれ別個の科料刑を言い渡すべきであるのにかかわらず、同法条の適用を看過して、一個の科料刑を言い渡しているのであるから、原判決には、この点につき法令の適用に誤があり、その誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるというべく、原判決は、この点において破棄を免れない。

論旨は理由がある。

同第二点について。

原判決が、被告人に対し、同人を科料八百円に処しながら、刑法第二十五条第一項を適用して、裁判確定の日から一年間右科料刑の執行を猶予していることは、所論のとおりであつて、所論は、右は、原判決が刑法第二十五条第一項の解釈適用を誤つたものであり、その誤が判決に影響を及ほすことが明らかである旨主張するにより、案ずるに、科料刑に対し執行猶予を附することのできないことは、執行猶予の要件を定めた刑法第二十五条の規定の解釈上疑を容れないところであるから、原判決は、ひつきよう、独自の見解に基ずき、ことさら同法条の解釈適用を誤つたものというの外なく、その誤が判決に影響を及ぼすべきことは論を待たないところであるから、原判決は、この点においてもまた到底破棄を免れないものというべく、論旨は理由がある。

よつて、刑事訴訟法第三百九十七条第一項、第三百八十条に則り、原判決を破棄した上、同法第四百条但書に従い更に次のとおり自ら判決する。

原判決の認定した事実を法律に照らすと、被告人の原判示各所為は、いずれも大正十一年法律第二十号未成年者飲酒禁止法第一条第三項、第三条罰金等臨時措置法第二条に該当するところ、以上は、刑法第四十五条前段の併合罪であるから、同法第五十三条第二項により、各罪につき定めた科料を併科することとし、所定金額の範囲内で、被告人を原判示第一の罪につき科料二百円に、同第二の罪につき科料二百円に、同第三の罪につき科料二百円に処し、右各科料を完納することができないときは、同法第十八条に従い、いずれも金二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、当審の国選弁護人に支給した訴訟費用は、刑事訴訟法第百八十一条第一項但書を適用して、被告人にはこれを負担させないこととする。

よつて、主文のとおり判決する。

検事 大平要関与

(裁判長判事 中西要一 判事 山田要治 判事 石井謹吾)

(注) 月報所掲の原審裁判例中被告人「根岸たうの」とあるのは、「根岸たかの」の誤りにつき訂正いたします。

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