大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ラ)145号 決定

抗告人 野本よね

主文

本件抗告を却下する。

理由

抗告代理人は「原決定を取消す。さらに相当な裁判」を求める旨申立て、その理由として、別紙記載のとおり主張した。

本件記録によれば、原裁判所が昭和三十二年二月二十日午前十時に本件競落許可を言渡し、同日原裁判所の掲示板にその旨の公告をしたが、抗告人が本件即時抗告状を当裁判所に提出したのは昭和三十二年三月九日であることを認めることができる。よつて抗告人が本件即時抗告書を当裁判所に提出したのは、本件競落許可決定が言渡されて、その公告がなされた日から、即時抗告期間の一週間を経過していることが明である。抗告人は抗告の理由に主張しているように、昭和三十二年二月十五日午前十時の本件競売期日の通知を受けなかつたから、競落許可決定をも知るに由なく、右即時抗告期間は経過していないと主張するようだから、この点について判断する。競売法第二七条第二項によれば、利害関係人には競売期日については通知しなければならないが、競落期日及び競落許可決定については特に通知をしなければならないとは規定していない。また同法第二七条第一項及び第二九条第二項、民事訴訟法第六六一条第一項によれば競売期日の公告については、裁判所の掲示板と不動産所在地の市町村の掲示板に公告するを必要とするが、競落許可決定の公告については競売法第三二条第二項、民事訴訟法第六七九条第二項によつて裁判所の掲示板に掲示すればいいと規定されている。競売と競落期日又は競落許可決定を全く別個に取り扱つている右規定の趣旨から考えれば、利害関係人である抗告人に対する関係でも、本件競落許可決定に対する即時抗告の期間は、本件競落許可決定が公告された昭和二十二年二月二十日から起算するを相当とする。そうであるから、抗告人の本件即時抗告は即時抗告期間経過後に提出されたものであるから、不適法であるといわなければならない。もつとも、本件については、抗告人に対し昭和三十二年二月十五日の本件競売期日について通知がなされたことについては、本件記録により知ることができないから、通知がなされなかつたことを知らないについて、或はその責に帰することのできない事由があつたかも解らないが、抗告人は民事訴訟法第一五九条による追完の申立をもなしていない。

よつて本件抗告はこれを却下して、主文のように決定する。

(裁判官 柳川昌勝 村松俊夫 中村匡三)

別紙 抗告の理由

一、抵当権実行に基く不動産競売手続において競売期日を利害関係人に通知することを要することは競売法第二十七条二項により明かである。

しかるに原裁判所は本件競売手続において昭和三十二年二月十五日午前十時の競売期日を本件競売の申立人である抗告人に対し通知せず競売手続を進行して競落許可を決定したのは違法である。

本件の競売申立は申立外宮川武雄が競売物件たる不動産の二番抵当権者として始め競売申立をなし第一回競売期日が昭和三十一年十二月廿日午前十時(本期日は抗告人に通知あり)と指定され抗告人代理人は右期日に出頭したところ申立人宮川武雄の延期申請により同日の競売手続は延期となり次回期日は追て指定となりたるため抗告人は右期日の指定を俟ちたるも原裁判所より指定なかりしため抗告人は昭和三十二年二月七日競売の申立をなし期日の指定を原裁判所に申立てたところ原裁判所は本件は既に競売申立あるを以て抗告人の申立はこれに添付し期日は決定次第通知するとの事であつたしかるに前記昭和三十二年二月十五日午前十時の競売期日については抗告人には何等の通知なく競売手続を進行し前記の如く競落許可決定をなしたことは利害関係人たる抗告人の権利を無視したる違法なる競売手続である。

以上の次第にして本件の競落決定は明らかに法律に違反し公平の原則にも違反するので再審の理由に該当すると思料するに付茲に抗告申立をなす次第なり。

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