大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(ま)4号 決定

申立人 福田良治

主文

本件請求はこれを棄却する。

理由

本件請求理由の要旨は請求人は昭和三二年五月二四日強姦致傷被疑事件により長岡簡易裁判所裁判官の発布した勾留状により長岡拘置支所に勾留され、昭和三二年一二月一八日新潟地方裁判所長岡支部において強姦、猥褻拐取罪により懲役二年未決勾留日数中一二〇日通算の判決言渡を受け、同年同月一九日控訴を申立たところ、昭和三三年六月二六日東京高等裁判所において原判決中有罪の部分は破棄され、勾留に係つた強姦の点は無罪となり、不拘束であつた猥褻拐取の点のみにつき有罪として懲役一年原審未決勾留日数中一二〇日を右懲役刑に算入する旨の判決の言渡を受けたので、右勾留状はその時直ちにその効力を失い、請求人は当然即日釈放されるべきものであつたにも拘らず釈放されず、翌二七日に至つて釈放されたものであつて、二日間不当に拘束を受けたのである。よつてその二日間に対する補償として金千円を刑事補償法に従つて請求するというに在る。

そこで、請求人に対する昭和三三年(う)第一〇二号強姦、猥褻拐取、猥褻結婚拐取被告事件記録によれば、請求人がその主張の如く勾留され、新潟地方裁判所長岡支部においてその主張の如き判決を受け、これに対し控訴を申立たところ、その主張の如く東京高等裁判所において強姦の点につき無罪の言渡を受けたにも拘らず即日釈放されず、翌日に至つて釈放された事実はこれを認めるに十分である。

而して、刑事補償法によつて請求し得る場合は同法第一条に規定するとおりであつて、就中勾留による補償の請求を為しうるのは、勾留された被告人がその勾留に係る被告事件につき無罪判決の言渡を受けてこれが確定した場合であつて、この時請求に理由があれば、勾留状によつて勾留された期間に対し一日二〇〇円以上四〇〇円以下の割合による補償が為されるのである。しかるに、本請求は右主張自体によつて明白である如く、勾留被告事件が無罪となり勾留状が無効となつたので、当然釈放されるべきものを当該公務員の故意或は過失によつて即日釈放されず、翌日に至つて釈放され二日間不当に拘束されたので、その二日間に対する補償を求めるというのであつて、これは右の如く勾留状による勾留期間に対する補償を求めるというのとは異り、勾留状によらない不当拘束に対する損害賠償を請求するものと認められるのである。

しからば、このような請求は公務員が職務を行うについて故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、その賠償の請求を為すことのできる旨を定めた国家賠償法に基づいて為すのならば格別、勾留状による勾留期間に対する補償を求めるものである刑事補償法に基づいて補償を求めうる筋合のものとは到底認められないのである。

よつて本件請求は理由のないものと認められるから、刑事補償法第一六条後段に則りこれを棄却すべきものとして、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 山本謹吾 判事 渡辺好人 判事 石井文治)

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