大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(く)10号 決定

少年 C(昭和一四・三・三〇生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、右抗告人作成名義の抗告申立書と題する書面記載のとおりあつて、その要旨は、抗告人は少年なるところ、脅迫窃盗保護事件に付昭和三十四年一月十三日長野家庭裁判所上田支部に於て中等少年院送致決定を受けたが、非行事実第一の脅迫の件に付いては、昭和三十三年七月三十日友人の処へ行く途中上山田温泉附近で、二人の女と行き会いお寺の境内で話をしただけで、女の人を脅したこともなく身体にも手を触れたことも無いのに、住職が女の人と一緒に行き警察へ知らせると云つて電話をかけたので何故電話をかけたかそれを聞こうとして手紙を書いたところそれが脅迫文にとられた次第である。又非行事実第二の窃盗の件に付いては、自分は昭和三十三年十一月十二日勤め先の○○食品株式会社をやめ同日午前九時頃部屋を出て午後四時頃実家へ帰つたがダスターコートは東京から持つて来たものではなく町内の○○ミシンに居るDと云う友人から借りたもので、同年十一月十四日同人に返した。其の他昭和三十三年十二月二日関知美方よりラジオ及びカメラを窃盗した旨嫌疑を受けたが、自分は同日足が痛かつた為め一日中自宅で本を読んで寝て居たので悪いことはして居ないのだから、原決定は誤つて居る、尚昭和三十三年十二月六日上京したが父に無断上京したのでもなく、昭和三十三年四月十五日××××寮退院後映画も余り見ないし前よりもよい人間になつたと自分は思つて居るから、原決定は不当であると云う趣旨に解せられる。

よつて案ずるに本件記録並に原決定書によれば昭和三十四年一月十三日長野家庭裁判所上田支部に於て抗告人たる少年に対する脅迫窃盗保護事件に付少年を中等少年院に送致する旨決定し其の非行事実として少年は(1)昭和三十三年七月三十日午後五時頃長野県更級郡上山田町八坂十一面観音境内で通行中のE子他一名に話しかけたことから同観音住職が警察に電話で申告すると、これを恨み同日午後八時頃同町大字○○○×××番地E子方に至り同人の母を通じ「ただではおかない体に気をつけろ」等と書いた書面を手渡し暗に上記E子の身体に危害を加える旨を通告して脅迫した。(2)同年十一月十二日午前八時頃東京都○○区××△丁目△△△番地○○食品株式会社二階六畳間において早津正三所有のダスターコート一着を窃取した。との事実を認定摘示して居るが、右(1)の事実は犯意の点をも含めて脅迫状一通(東京高等裁判所昭和三十四年押第○○○の○)長野家庭裁判所上田支部昭和三十三年少第○○○号記録中F名義の答申書、G名義の答申書及び任意提供書、梅沢恵美子、住職滝沢弘光、E子(E子)の司法巡査に対する各供述調書、F、Gの司法警察員に対する各供述調書、少年本人の司法警察員に対する昭和三十三年八月二日附供述調書、少年本人の検察官に対する昭和三十三年八月四日附供述調書、昭和三十三年八月二十二日附調査報告書中少年本人の陳述により優に肯認することが出来るのであつて、記録を調査検討して見ても少年の警察に於ける供述が任意にされたものでないとの疑は認められない。次に右(2)の事実は同庁昭和三十三年少第○○○○号記録中早津正三名義の被害届、Hの司法巡査に対する昭和三十三年十二月十八日附供述調書、昭和三十三年十二月十四日附調査方回答と題する電話聴取書(右記録中右窃盗に関するもののうち第三〇丁)、少年本人の司法警察員に対する昭和三十三年十二月十五日附同月十八日附各供述調書により優に之を肯認することが出来るのであつて、尚関知美方よりラジオ及カメラを窃取したとの点は原決定が非行事実として摘示していないのである。

以上のとおり原決定が少年の非行事実として前記(1)脅迫(2)窃盗の事実を認定したのは正当であつて、原決定には決定に影響を及ぼす重大なる事実の誤認も法令違反もない。そこで右保護事件の非行事実と記録に現われた少年の性格、年齢、生育歴、家庭の情況、生活環境等諸般の事情を総合勘案するときは、少年を中等少年院に送致した原決定は相当であつて、抗告人主張のような著しく不当の処分とは考えられない。

よつて本件抗告は総て理由がないから少年法第三十三条第一項、少年審判規則第五十条により本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 中西要一 判事 山田要治 判事 鈴木良一)

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