大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(行ウ)2号 決定

申立人 江沢節子

被申立人 千葉県知事

主文

本件申立を却下する。

理由

申立人の本件停止命令の申立の原因は別紙行政処分停止命令申請書中申請の原因に記載するとおりである。

よつて案ずるに、申立が本件申立によつて求めるところは、要するに、被申立人のなした代執行によつて申立人所有の建物が除却されて空地となつて換地上に、第三者の建物を移築しようとする被申立人の行政処分の執行を防ぐことを目的とするものであることは、右申請理由によつてあきらかで、みぎは抗告人が本案訴訟においてそのとりけしを求めている家屋除却命令そのものの執行の停止ではなくて他のあらたな仮処分を求めるものにほかならないから、行政事件訴訟特例法第十条第七項の趣旨にてらし許されないものといわねばならない。

されば、本件申立は主張自体失当であつて却下をまぬかれず、主文のとおり決定した。

(裁判官 牧野威夫 谷口茂栄 満田文彦)

申請の原因

一、本案事件御庁昭和三十四年(ネ)第二、二一五号家屋除却命令取消請求控訴事件

二、被告は千葉都市計画事業復興土地区画整理事業施行者である。

三、第一宅地第二宅地は共に千葉市椿森町五四一ノ三石橋康司の所有し居るものである。

石橋は訴外花沢に対し第二宅地(従前の土地)を賃貸した、同地は戦災地であり土地区画整理事業として道路に予定せられて居たがその必要までと謂うことで花沢は同地上に仮設建築地の許可を得て住居を建てた(必要の時は何時でも収去する旨の誓約書を被告に提出した)

第二宅地は色々の経緯はあつたが結局昭和二十七年五月十日第一宅地に仮換地となり第二宅地は従前の土地として使用禁止となつた。

花沢は借地権の届出をしないので借地権の仮換地の指定は受けず換地は石橋の自用地となつた、その為石橋は花沢に対し右自用地を貸すこととした、併し花沢は従前の土地は実際に使用はして居るものの法律上の使用禁止地であり仮換地の方は当時事実上使用して居ないと言う理由で賃料を支払はないので仮換地を貸すと言う契約は昭和三十一年八月一日石橋に於て之を解約した。

斯くの如くして石橋は第一宅地(仮換地)を申請人に賃貸し、申請人はこの第一宅地上(仮換地)に無許可のまま建物(第一建物)を建てた。被申請人は、第二建物を第一宅地に移築する為申請人に対し、この第一建物を土地区画整理法第七六条第四項に基き除却せよとの命令を出した。

これは本件の概要である。

二、本案裁判は千葉地方裁判所に昭和三十三年(行)第二〇号家屋除却命令取消事件として繋属し同裁判所に於て昭和三十三年行(モ)第六号として行政命令の停止の仮処分命令を出されたが本案判決は昭和三十四年九月十八日原告敗訴の判決の言渡があつた、そこで被告は時を移さず本件第一建物を除却してしまつた、目下空地となつて居るが除却命令の効果として更に第二建物を第一宅地上(仮換地)に移築しやうとして居るのである。之等の被告の行為は何れも違法であることは勿論であるので本申請をなす所以である。

三、土地区画整理法第七六条第四項に基き除却命令の出し得る場合仮令それが許可を得ていない場合でも「土地区画整理事業の施行に対する障害を排除するため必要な限度に於て」のみ可能である、本件事案を按ずるに成程花沢の土地は従前の土地上(第二宅地)にあり道路開通の予定地である為、之は除却の必要はある、申請人の建物費仮換地上にあるので道路の開通には全く差支えい、この仮換地を空地にして見ても花沢と石橋との関係は既に賃貸契約が解除となつて居るので花沢は仮換地上に其の建物を移すことは私法上の問題として出来ないし公法上の問題としてどうかと言うと花沢は前述のやうに借地権の届出をしないのであるから被申請人は之に対し借地の仮換地を指定する訳には行かないことは土地区画整理法九十八条第一項により明らかである。本件に於ける花沢の建物の如き場合之に対し仮換地指定をしないで移転命令を出す場合には移転先を指定しないで移転命令を出すべきものであることは最高裁の判決を始め幾多の判例で明らかである。(昭和二八年(オ)第三四七号同三一年一一月二七日最高裁第三小法廷判決最高裁民集第一〇巻一一号一四六八頁御参照)

されば結局被申請人は花沢に対し移転先を指定しないで移転命令を出す外に命令の出しやうがないのである、被申請人が花沢に対し「移転先なき移転命令」を出した場合そして花沢が之移転せぬ場合代執行で被申請人は之を収去することは出来るだろうが命令の内容にも表示してない、又出来ない、本件仮換地上に移築することは代執行の範囲の逸脱である。何となれば花沢には収去義務はあつても仮換地上に移築する私法上権利も公法上の義務もないからである。代執行は謂うまでもなく私人の公法上の義務不履行を公権が代つて履行せしむることで従つて其の範囲は私人の公法上の義務の範囲内に厳に限定せらるべきものである。

右述ぶる処により明らかのやうに被申請人が申請人に対し本件除却命令を出すことはそれ自体無意味のことに属し違法である。被申請人はそれにも拘らず原審本案に於て申請人(控訴人)敗訴となるや時を移さず之を除却してしまつたがこの地に未だ移築は行なつて居ない。併し目下花沢に対する代執行による移築の準備中である移築は更に違法である。移築せられんか申請人は再び之を収去するに被申請人或は花沢に対し訴を以てする外なくさすれば日時がかかり甚しい損害が発生するので之を防止する為この申請に及ぶ次第である。

右の通り行政処分停止命令を申請す。

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