大判例

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東京高等裁判所 昭和40年(う)2062号 判決

被告人 村田任彬

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は、東京地方検察庁八王子支部検察官検事渡辺薫の控訴趣意書に記載されたとおりであるからこれを引用する。

論旨は、量刑不当の主張であつて、原判示第一、第三事実の窃盗は、その手口が巧妙悪質であり、原判示第二事実の傷害は、頭部を丸椅子で強打するという極めて危険な行為によつて生じた頭蓋内出血という重大な傷害であつて、刑の執行を猶予すべきものではないというのである。

そこで記録を調査すると被告人は、原判決後原判決書記載の住居を去り、その所在が明らかでないが、当時実兄村田鎮雄とは連絡があり同人を通じて検察官の控訴があつたことを知つていたものと認められるので、弁護人を国選した上当審の審理を進行することとし、記録並びに当審における事実の取調の結果を総合すると次のことが認められる。即ち右村田鎮雄は原審当時原判示第三事実の被害者渡辺悦子と示談を遂げたが、原判示第一、第二事実の被害者米田光一とは、同人が当時入院していた阿佐ヶ谷診療所及び武蔵野赤十字病院に見舞いに赴いた当時、面会謝絶の状態で面会できずにいるうち、同人が昭和三九年五月六日(受傷約五週間後)治癒退院して所在不明となつたためそのままに打ち過ぎていたところ、原判決後に判明したところによれば右米田は退院数日後進行性麻痺に基づく言語障害の疑いで三鷹市所在の新川病院及び杏林大学附属病院に強制的に入院させられ、進行性麻痺の治療を受けていたことを認めることができる。従つて同人の言語障害は、頭部打撲の結果というよりは進行性麻痺に因ると考えられ、現在はその病気も治癒して退院しその所在は確認できない状態である。そして最近に至つて右光一と連絡のあるその長男米田洋一と前記村田鎮雄の間で本件について示談が成立したことを認めることができる。このように各被害者との間に示談が成立していること、原判示第二の傷害が危険な行為であることは所論のとおりであるが、幸いに約五週間で治癒したと認められること、既に犯行後七年余を経過していることを考えると、現時点において原判決の科刑を変更することが相当とは認められず、論旨は理由がないことに帰する。

よつて、刑事訴訟法第三九六条により本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。

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