大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(ネ)3160号 判決

控訴人 石田基吉

右訴訟代理人弁護士 中田長四郎

被控訴人 株式会社 国民相互銀行

右訴訟代理人弁護士 斎藤兼也

同 村山芳朗

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し金二〇〇〇万円および内金一〇〇〇万円に対する昭和四二年五月一日以降、内金一〇〇〇万円に対する同月一五日以降各完済に至るまで各年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、証拠の関係は、控訴代理人において、新たに甲第八号証を提出し、当審における控訴人本人尋問の結果を援用し、被控訴代理人において、右甲号証の成立は不知と述べ、双方代理人において、次のとおり主張したほか、原判決事実欄の記載と同一であるから、これを引用する。

(控訴人)

控訴人は、昭和四二年一月三一日および同年二月一四日にいずれも被控訴人銀行常盤台支店において、同支店支店長梅沢譲および訴外山路昌己の両名から控訴人を表示する方法として訴外山路昌己の氏名を用い定期預金をしてもらいたい旨の申込を受け、これを承諾し、それぞれ原判決事実欄記載の請求原因一、(1)(2)の各預金をしたものである。すなわち、控訴人は、右各預金契約に当り各現金一〇〇〇万円を所持し、右梅沢および山路から、右各定期預金証書は被控訴人銀行がこれを控訴人のため受託保管すること、控訴人において右証書と山路姓の認め印とを使用していずれも右各定期預金債権を行使処分できる旨の約束をとり、右認め印の交付を受けたので、右認め印および定期預金証書預り証と引換えに梅沢に対し現金を交付して預金契約をしたものである。したがって、控訴人は、右(1)(2)の定期預金の債権者であり、その返還請求権を有するものである。

(被控訴人)

控訴人の右主張の事実は全部否認する。控訴人主張の二回の定期預金は訴外山路昌己が被控訴人銀行に対してしたものであり、控訴人の主張は事実を歪曲した虚構のものである。

理由

当裁判所も控訴人の本訴請求は失当であり、棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり附加するほか原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。

控訴人は、本件定期預金はいずれも控訴人が同人を表示する方法として訴外山路昌己名を用いてしたものである旨主張する。そして成立に争いのない乙第四号証、原本の存在と成立に争いのない甲第三号証、表面の部分の成立については争いがなく、裏面の部分については〈証拠〉を総合すると、控訴人と訴外山路昌己が昭和四二年一月三一日被控訴人銀行常盤台支店において山路名義の金一〇〇〇万円の定期預金契約を締結した際、控訴人において同支店支店長梅沢譲に対し金一〇〇〇万円を交付し、定期預金証書の一時預り証(乙第二号証)と山路姓の認め印の交付を受けたこと、同年二月一四日同様右支店において山路名義の金一〇〇〇万円の定期預金契約を締結した際、控訴人が右梅沢の求めにより右山路姓の認め印と右預り証および金一〇〇〇万円を同人に交付したところ、同人から山路昌己宛の担保受取証(乙第四号証)と右認め印を手渡された事実を認めることができるけれども(この認定に反する原審における証人梅沢譲の証言は信用できない。)本判決の引用する原判決の認定する本件各定期預金が訴外山路昌己名義になっている事実と後記認定のような事実の認められる本件において、右認定のような事実のみで、控訴人が山路昌己名を用いて本件各定期預金契約を締結したということはできない。すなわち、前記甲第三号証(告訴状写)によって認めることのできる、控訴人が昭和四二年一月三一日および同年二月一四日の二回にわたり訴外山路昌己、同村山亮一、同梅沢譲の三名にいずれも金一〇〇〇万円を騙取された旨告訴した告訴状には、右同日控訴人が訴外山路らの欺罔により合計金二〇〇〇万円を同人に貸付けることとなった旨の記載のある事実、成立に争いのない乙第二五号証(杉本光祥の検察官に対する供述調書)によると、控訴人が昭和四二年二月一四日第一銀行上野支店において金一〇〇〇万円の手形貸付を受けた後、同年三月上旬同支店貸付係杉本光祥に対し右金員は控訴人において訴外東照興業(代表者山路昌己)が伊豆山の土地を買う資金として同会社に貸付けた旨述べていた事実、成立に争いのない乙第二六号証(石田多加子の検察官に対する供述調書)によると控訴人が昭和四二年一月三一日夜娘である訴外石田多加子に対し、同日訴外山路昌己、同村山亮一に金一〇〇〇万円を貸付けた旨述べていた事実、原審における証人山路昌己の証言によって認めることのできる昭和四二年二月一四日控訴人が山路とともに被控訴人銀行常盤台支店に出向いて定期預金をした際、支店長梅沢譲に対し東照興業に金を貸付けるのは大丈夫かと聞いていた事実、原本の存在と成立に争いのない乙第六、第七号証に右山路証言および原審における控訴人本人尋問の結果を総合して認めることのできる控訴人が昭和四二年一月三一日、同年二月一四日の二回にわたり山路に対し各金一〇〇〇万円を貸付けた利息として金額六〇万円の小切手二通を受取り、小切手金の支払いを受けている事実、以上の事実から考えると、本件各定期預金は訴外山路昌己が控訴人から各金一〇〇〇万円を借受け(この借受けについて山路および梅沢譲が控訴人を欺罔したかどうかは本件では問題となっていない。)てしたものというほかなく(この認定に反する当審における控訴人本人尋問の結果は、採用できない。)、当審における控訴人の主張は理由がないものといわなければならない。

よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用については民事訴訟法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 桑原正憲 裁判官 大和勇美 濱秀和)

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