大判例

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東京高等裁判所 昭和46年(ツ)23号 判決

上告人

根本正七

代理人

小原美紀

被上告人

宮内賢志

外四名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

本件上告の趣旨は、原判決を破棄する旨の判決を求めるというにあり、上告の理由は別紙記載のとおりである。

上告理由第一点について

原審の判断中上告人指摘の各地点の設定のしかたが必ずしも一様でないことおよび原審の認定した境界線が各樹木の中心点を結んだ線から四尺五寸隔たつた線と正確には合致しないことは上告人のいうとおりである。然しながら、右樹木の植わつていた土堤が多少の出入りのある不整形のものであり、かつ右樹木の列が概収土堤の中心をなしていたとはいえ、正確にその中央に並んでいたものとはいえないことは原審の説示するところであり、かつ、その摘示した証拠によりこれを認定したことに格別違法とすべき廉はない。換言すれば、樹木の中心点から東方に四尺五寸の距離というのは平均値を示すものであつて、必ずしもこの線に添つて境界を確定しなければならないものではない。原審もまた同様の見地に立つて、前記の事実を有力な手がかりとしつつ弁論の全趣旨を含む多数の証拠を総合して本件境界を確定したものであることは、原判決理由を通読すれば容易に理解し得るところである。

而して境界確定の訴訟において明白確実な資料がない場合には、訴訟に顕われに全資料を比較検討して、真実の境界線に最も近いと判断する線を境界線と定める外はないこと勿論であり、いわば近似値を求めるに似た心理過程たるを免れない以上、その確定した境界が真実に反するものであることが明白である場合を除き、その判断は相当たるを失わないものとせざるを得ない。本件においてかかる事情が存在することは認められないから理由齟齬、判断遺脱の違法ありということはできない。

上告理由第二点について

その前段において主張するところは、原審の採用した各証拠によつて概ね否定されているところであり、他にも同趣旨の証拠が見受けられる(これを原判決にいう弁論の全趣旨に含ませることは穏当ではないが)。而して原審は上告人の主張を支持する証拠の代表的なものとして上告人の本人尋問の結果を措信し得ないとし、かつ他に原審の認定を左右するに足るものなしと説示しているのであつて、その証拠の取捨、判断が特に不当と思われる点はない。

その後段についても右と同様の指摘ができるのみならず、原審が採用した証拠、特に証人棚谷清の証言および原審被控訴人本人尋問の結果中には上告人のいうU字形の部分に言及したところであり、宮内静、宮内彰一の各所有地と本件甲地との相互関係が上告人のいうように明確なものではない旨の供述もみられる。而してこの部分をも含め右各証拠を全部採用した原審の判断には格別違法不当と目すべきところはない。

これを要するに、上告人の主張は原審が適法になした事実認定を争うに帰し、適法な上告理由ということはできない。

上告理由第三点について

上告人の指摘する地形、地積の比較対照、建物等地上物件の位置等が境界を確定するについて重要な事項であることは勿論であるが、常にこれをもつて境界を確定することを要するものではなく、他に有力な証拠があつて右の各事項と全部または一部相容れない判断がなされる余地のあることもた多言を要しないところである。これを要するに、事は判断資料の取捨選択の問題であつて、それが経験則に違背すること明白である場合を除き、事実審の専権に属するところというべきである。而して原審の判断に右のような違法の点は見当らないから、上告人の主張は採用できない。

以上説示したとおり、本件上告は理由がないから、民事訴訟法第四〇一条に則りこれを棄却し、上告費用の負担につき同法第八九条、第九五条を適用して主文のとおり判決する。

(近藤完爾 田嶋重徳 吉江清景)

別紙・上告理由書《省略》

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