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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)120号 判決

原告

ザンドツ・アクチエンゲゼルシヤフト

被告

日本化薬株式会社

主文

特許庁が、昭和49年4月18日、同庁昭和42年審判第1850号事件についてした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1当事者の求めた裁判

1  原告

主文と同旨の判決

2  被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

第2当事者の主張

1  請求の原因

(1)  特許庁における手続きの経緯

原告は、特許第434624号「非水溶性モノアゾ染料の製法」(昭和34年7月1日スイス国出願に基づく優先権主張により昭和35年6月30日特許出願、昭和39年12月10日登録)の権利者である。

被告は、昭和42年3月29日、本件特許につき無効審判の請求をし、上記請求は昭和42年審判第1850号事件として審理された結果、昭和49年4月18日、本件特許を無効とする旨の審決があり、審決書の謄本は同年5月25日原告に送達された。

(2)  本件特許発明の要旨

「(1)下記式

のアミンをジアゾ化し、これを

下記式

の第3級アミンとカツプリングすることを特徴とする

下記式

の非水溶性モノアゾ染料の製法(式中Xは水素、塩素、臭素、シアン、トリフルオルメチル又はニトロ、Yは水素、塩素、臭素、低分子アルキル又はアシルアミノ、Zは水素又は低分子アルコキシ、R3は低分子アルキル、低分子アルコキシアルキル又は低分子アシルオキシアルキル、R2は低分子アシルオキシアルキルを意味する)。

(2)下記式

のモノアゾ化合物(式中Xは水素、塩素、臭素、シアン、トリフルオルメチル又はニトロ、Yは水素、塩素、臭素、低分子アルキル又はアシルアミノ、Zは水素又は低分子アルコキシ、R3は低分子アルキル、低分子アルコキシアルキル、低分子アシロキシアルキル或は低分子ヒドロキシアルキル、R4は低分子ヒドロキシアルキルを意味する)を低分子カルボン酸或はその感応性誘導体でエステル化することを特徴とする、下記式

で示す非

水溶性モノアゾ染料の製法(式中Xは水素、塩素、臭素、シアン、トリフルオルメチル又はニトロ、Yは水素、塩素、臭素、低分子アルキル又はアシルアミノ、Zは水素又は低分子アルコキシ、R1は低分子アルキル、低分子アルコキシアルキル又は低分子アシルオキシアルキル、R2は低分子アシルオキシアルキルを意味する)。」

(3)  審決の理由

1 本件発明の要旨は前項記載のとおりであると認める。

2 これに対して請求人が証拠として提出したフランス特許第829010号明細書(昭和14年4月22日特許局陳列館受入。以下「引用例」という。)には、構造式

(式中Xは水素原子あるいは置換したまたは置換されていないアルキル、アラルキルまたはアリル残基を表わし、Yは水素原子あるいは置換したまたは置換されていないアルキルまたはアラルキル残基を表わす。R1はアシルアミノ基を表わし、R2は酸性でないいかなる基でもよい)の化合物と一般式

(ベンゼン核はさらに他の置換基をもつていてもよい)のジアゾ化合物を反応させて価値ある新アゾ染料を製造する方法、該染料による染色例について記載があることが認められる。

まず、本件特許の第1番目の発明(以下「本件第1発明」ということがある。)について検討するに、ジアゾ成分としてXがシアンである場合、即ち1アミノ―2,4―ジニトロ―6―シアノベンゼンについては、引用例に具体的に記載されたジアゾ成分にも同一の化合物が示され、両者のジアゾ成分は一致し、カツプリング成分については、一般式の第3級アミンにおいてYがアシルアミノ基を表わす場合には、引用例に記載されたカツプリング成分が、具体的に例示されたもののヒドロキシ基がエーテル化、エステル化されたものの使用を示している記載からみて、R1が低分子アルコキシアルキル、低分子アシルオキシアルキルの場合は、引用例に記載されたカツプリング成分と解することができる。

ところで、引用例には、目的染料については具体的な化学構造を示していないが、ジアゾ化、カツプリングは極く普通の方法であるから、前記のように原料成分が一致すれば、目的染料も当然に本件特許の上記発明の場合と同一の染料が生成していると推定することができる。

したがつて、本件特許の上記第1番目の発明において、前記のようにジアゾ成分、カツプリング成分を選ぶ場合には、該方法の特許発明は、引用例に記載された発明であると認められるので、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許を受けている。

また、本件特許の上記第1番目の発明において、その余の成分を使用する場合については、該成分はいずれも上記成分と同様に使用できる相互置換容易の化合物であり、さらに生成染料について、本件特許明細書には、該染料が、ある特定の成分を使用した場合のみ著しく価値あるものとすべき十分の根拠を示していないことから判断して、夫夫生成染料は上記染料と同程度の価値のものとしての認識を出ていないものと解するを相当とする。

したがつて、この場合の方法の特許発明は、引用例に基づいて容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けている。

以上説示のとおりであるから、本件特許の第1番目の発明の特許は、特許法第123条第1項の規定によつて無効としなければならない。

つぎに、本件特許の第2番目の発明(以下「本件第2発明」ということがある。)について検討するに、上記第1番目の発明との相違点は、カツプリング成分である第3級アミンについてはカツプリング終了後該部分のエステル化を行う点にあるものと認められる。

しかしながら、エステル化の順序を前後させることは、染料の製造において必要に応じて行うべき慣用の手法であるところからみてこの点に格別の技術的意義があるとすべき根拠の見出せない以上、結局当業者が適宜実施し得べき程度のこととしなければならない。

したがつて、上記第2番目の発明は、引用例に記載する発明に基づいて容易に発明をすることができたものと認められ、該特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許を受けているので、特許法第123条第1項の規定によつて無効としなければならない。

(4)  審決を取り消すべき事由

引用例には審決認定の記載のあることは認めるが、以下に述べる理由により審決は違法として取り消さるべきである。

1 原告は、昭和52年7月14日、本件特許発明の明細書における特許請求の範囲の記載を、審決が本件特許発明の要旨として認定した前掲掲記のものから、下記のとおりに訂正すること等を内容とする訂正審判の請求をしたところ、昭和52年審判第9653号事件として審理され、昭和53年4月11日、本件特許発明の明細書の訂正を認める旨の審決がなされ、この審決は確定した。

(1) 下記式

のアミンをジアゾ化し、これを下記式

の第3級アミンとカツプリングすることを特徴とする下記式

の非水溶性モノアゾ染料の製法(式中Xは水素、塩素、臭素、シアン、トリフルオルメチルまたはニトロ、Yは水素、塩素、臭素、または低分子アルキル、またはXがニトロ基の場合だけアシルアミノ、Zは水素または低分子アルコキシ、R1は低分子アルキル、低分子アルコキシアルキルまたは低分子アシルオキシアルキル、R2は低分子アシルオキシアルキルを意味する。)

(2) 下記式

のモノアゾ化合物(式中Xは水素、塩素、臭素、シアン、トリフルオルメチルまたはニトロ、Yは水素、塩素、臭素、または低分子アルキル、またはXがニトロ基の場合だけアシルアミノ、Zは水素または低分子アルコキシ、R3は低分子アルキル、低分子アルコキシアルキル、低分子アシロキシアルキルあるいは低分子ヒドロキシアルキル、R4は低分子ヒドロキシアルキルを意味する)を低分子カルボン酸あるいはその感応性誘導体でエステル化することを特徴とする、下記式

で示す非水溶性モノアゾ染料の製法(式中Xは水素、塩素、臭素、シアン、トリフルオロメチルまたはニトロ、Yは水素、塩素、臭素、または低分子アルキルまたはXがニトロ基の場合だけアシルアミノ、Zは水素または低分子アルコキシ、R1は低分子アルキル、低分子アルコキシアルキルまたは低分子アシルオキシアルキル、R2は低分子アシルオキシアルキルを意味する。)」

この結果、本件特許発明の明細書の特許請求の範囲の記載は、当初から、訂正された明細書の特許請求の範囲の記載のとおりの内容(Xがニトロ基の場合だけYがアシルアミノ基を意味することに減縮した。)のものとみなされるに至つた。

2 上記の特許請求の範囲の減縮によつて、本件無効審決の結論の基礎をなす本件特許発明の要旨の認定に誤りがあることになつた。

2 被告の認否と主張

(1)  請求の原因(1)ないし(3)は認める。

(2)  請求の原因(4)について

1 1の主張は認める。

2 2の主張は争う。

訂正審決の確定の結果、引用例に記載された染料の製法と一致する部分が除去され、新規性を欠くとの無効事由は回避されたが、審決が指摘した特許法第29条第2項該当事由は全然解消しておらず、本件特許を無効とした審決に違法はない。

このことを具体的に明らかにするため本件特許発明の実施例番号5の染料をとりあげて説明すると、上記実施例番号5の染料は、次の式

(以下(ハ)式という。)の構造のものであるが、引用例には次の式

(以下(ニ)という。)で示した染料が実質上記載されているので、両者を比較してみると、両者の間には置換基の一つがニトロ基(-NO2)かシアノ基(-CN)かの相違しかなく、しかも本件特許発明の明細書にはこの置換基の相違によつて生成した染料に格別作用効果上の差がある旨の説明はない。したがつて、原審決が本件第1発明につき引用例に記載されていない染料につき特許法第29条第2項の適用をみとめた根拠であるところの、成分の相違は相互置換容易であり公知染料とは同程度の価値のものに過ぎないという事情は、訂正後も依然としてあてはまることが明白であり、本件第1発明が引用例に示された公知事実から容易に推考しうる程度のものであつて特許法第29条第2項に違反しているということに変りはないのである。

また、第2発明についても、エステル化の順序の変換という慣用手段を加味して判断すればよいわけであるから、同様に進歩性を欠くとの無効事由は維持されている。

なお、本件特許発明におけるジアゾ成分と引用例のジアゾ成分は共に本件特許発明の優先権主張日前アゾ染料のジアゾ成分として周知のものであり、カツプリング成分が特定されれば、希望する色相等に応じて当業者が適宜変更しうる程度のものであり、相互置換容易であるとした審決の認定は相当である。

3 被告の上記主張(2(2)2)に対する原告の主張

(1)  原審決が訂正後の発明について審理判断していないことは明らかである。特許請求の範囲が減縮され、訂正された場合には、再度審判手続で訂正クレームとの関係での審理判断がなさるべきである。訂正審決によつて対比さるべき発明自体が変更され、訂正された発明と従前の具体的公知事実との対比が全くなされていないからである。訂正によつて発明が減縮された以上、これについてあらためて特許庁の審理を必要とするのであつて、訴訟手続でこれを代行することはできない。昭和51年3月10日言渡の最高裁大法廷判決の立場に立つ限り本件は特許庁に差戻さるべき事案といわなければならない。

(2)  訂正後の本件特許発明も進歩性がない旨の被告の主張は争う。訂正後の本件特許発明の進歩性があることは確定した訂正審決により公権的に判断されている。

また、無効審決は、引用例と同一である旨の判断については詳細に示しているが、進歩性に関する点についてはきわめて抽象的な判断しか示しておらず、それ自体理由不備なものといわざるをえない。

引用例には、被告主張の(ニ)式は記載されておらず、これを推測しうるのみである。

4 原告の上記主張(3(1))に対する被告の主張

(1)  本件の訴訟物は無効審決の違法性であつて特許発明それ自体ではないから、訂正審決があつたからといつて自動的に無効審決が取り消さるべきではなく、当審において、訂正によつて従前の無効事由が妥当しなくなつたという裁判所の実体的判断があつたときはじめて無効審決の取り消しがなさるべきである。

したがつて、被告の前記2(2)2の主張について本件において実体的審理がなさるべきことは当然であり、しかも訂正された本件発明は本件無効審決における「その余の成分を使用する場合」に相当し、原審決の審理を既に経ているのである。

(2)  審決取消訴訟の事実審理の範囲の判断に当つては、単に形式にとらわれず、当事者の利益、手続の迅速化、訴訟経済等の実質的要素を考慮すべきである。原告主張のようにひたすら特許審判の尊重ということになるとすれば、いたずらに審判と訴訟の重複を招来し、行政訴訟は機能しなくなるであろう。

本件の場合、被告が本件特許につき無効審判を請求したのは、昭和42年3月29日であるのに、原告は、訂正審判を2回にわたり請求したため審決が大巾におくれ、さらに本件訴訟提起後も原告が訂正審判請求を繰返したため、本件特許の存続期間は余すところ僅かとなつた。

このように原告は訂正審判請求権を乱用して無効審決の確定を阻止し、被告の主張が裁判所において審理される機会をひき延してきたのである。ここで、本件を実質審理をすることなく特許庁へ戻すということになれば、それは明らかに被告の司法救済を阻むということになるから、被告の裁判請求権の否定であり、憲法32条に違反するといわざるをえない。

理由

1  請求の原因(1)ないし(3)の事実は当事者間に争いがない。

2  そこで、審決を取り消すべき事由の有無について検討する。

(1)  審決が本件特許発明を無効とした事由は、前記審決理由の要旨に示すとおりであり、審決の判断は次に述べる訂正前の特許請求の範囲に基づく要旨認定を基礎とした判断であることは審決の趣旨から明らかである。

(2)  ところが、請求の原因(4)1は当事者間に争いがない。

上記争いのない事実によると、本件特許発明の明細書の特許請求の範囲における本件第1発明の反応式中カツプリング成分のYの定義は、訂正前の「Yは水素、塩素、臭素、低分子アルキルまたはアシルアミノ」から「Yは水素、塩素、臭素または低分子アルキル、またはXがニトロ基の場合だけアシルアミノ」となり、ジアゾ成分のXがニトロ基(-NO2)の場合だけカツプリング成分のYがアシルアミノ基(-NHGO-R)を意味することに、出願時に遡つて限定されたものと解される。

(3)  そこで、上記訂正が審決の適否にいかなる影響を及ぼすかについて考察する。

1 上記訂正により本件特許発明におけるジアゾ成分とカツプリング成分の組合わせに変更を来し、本件特許発明の要旨として審決認定のものが妥当しなくなつたことは明白である。

2(1) そうすると、審決の判断中、ジアゾ成分としてXがシアン(シアノ基)である場合で、カツプリング成分については一般式の第3級アミンにおいてYがアシルアミノ基をあらわす場合には引用例記載の発明を含むとしてこのことを本件特許発明の無効事由としている部分は、その判断の基礎に、結論に影響を及ぼす変更があつたことにより、これを正当といえなくなつたことは見易い道理である。

(2) つぎに、審決の判断中、「その余の成分を使用する場合」は引用例に記載された発明に基づいて容易に発明できたと判断した部分の当否が上記訂正によつて左右されることがないといえるかどうかについて考えてみる。

審決にいう「その余の成分を使用する場合」とは、文理上、審決が認定した本件特許発明の要旨中引用例に記載されていると指摘された成分すなわちジアゾ成分のXとしてシアノ基(-CN)、カツプリング成分のYとしてアシルアミノ基を用いた場合を除くその余の場合を意味すると一応解されるが、具体的な説明がなされていないため、審決は、XとYとの組合わせ中Xがシアノ基でYがアシルアミノ基の場合を除くその余の一切について進歩性を否定したものか、あるいは進歩性があるとは認められないものを一部に含んでいると判断したものか、判然としない。

もし、前者だとしたら、訂正後の本件特許発明は審決によつて進歩性を否定された範囲に含まれていることになるが、後者だとしたら、進歩性を否定された部分は訂正によつて減縮された部分に含まれているのか、残存部分に含まれているのか全く不明である(訂正前の発明の要旨と訂正後の特許請求の範囲を対比して考えると、XとYの組合わせとして、訂正前は30の組合わせがありえたのに、訂正後は25の組合わせ減縮されたことになるから、審決によつて引用例に記載されているものと認定された組合わせのほかにも四つの組合わせが減縮されたと解される)から、訂正によつてもなお審決の判断が妥当すると当然にはいえない。また、前者だとしても、審決は、進歩性が認められない理由として「その余の成分」は訂正前の発明の要旨中引用例記載のものと一致すると指摘した成分(ジアゾ成分中のXがシアンの場合でYがアシルアミノの場合)と相互置換容易の化合物で、その余の成分を使用する場合に生成する染料も上記の成分を使用した場合と同価値のものと認められると述べているだけで、その具体的根拠を示していないから、審決の判断を正当として是認するに由ないものといわざるをえない。(なお、そもそも、特許発明がその一部について引用例記載のものと同一のものを包含する場合、その発明はそれだけで全部無効とすべきものであるから、本来その余の部分の判断を必要としない筈であり、進歩性が認められない旨の前記判断部分は、新規性が認められないから無効であるとした前記判断部分に付随的に傍論として付加したとみる余地がなくはなく、新規性を否定した前記判断部分が訂正によつて正当として是認できなくなつた以上、上記付随的判断のみによつて審決を正当とすることができるかどうかは疑問といわざるをえないのである。)

(3) 本件第2発明は第1発明と同一の非水溶性モノアゾ染料を製造する方法であるが、第1発明では最初からエステル化されたカツプリング成分を使用しているのに対して、エステル化されていないモノアゾ化合物を原料としこれをエステル化して目的とする染料を得る方法であり、第1発明との相違点はカツプリング成分である第3級アミンについてはカツプリング終了後にエステル化を行う点にあるに過ぎない。

そうすると、第2発明についての審決の判断は、第1発明についての審決の判断が正当であることを前提とすることは多言を要しないから、前記のように第1発明についての審決の判断を正当として是認できない以上これを正当として是認できない。

(4)  結局、上記のように訂正によつてもなお審決理由に示された判断が妥当するといえない以上、審決は違法として取り消しを免れない。

(5)1 被告は、事実欄2(2)2の主張について当審で実体的審理判断がなされ、審決の示した無効事由が妥当しなくなつたという裁判所の判断があつたときはじめて無効審決が取り消さるべきであると主張するけれども、訂正後の発明と引用例記載の発明について特許庁による専門技術的な見地からの対比判断を経ないで裁判所が独自の立場から上記の点について判断することは、特許性の有無に関する紛争についてはまず特許庁の審判手続を経、その審決に不服がある場合にのみ当裁判所に出訴しうるとした法の趣旨を没却することになるから、被告の上記主張は採用できない。

2 また、たとえ原告が訂正審判請求を反覆し、その結果、無効審判手続や本件訴訟手続の進行がおくれたとしても、そのこと自体は手続の運用の問題であつて、無効審判手続における審理判断を経ていない事項について裁判所が独自に審理判断しうるという根拠とはなりえない。

また、このように解して本件審決を取り消した結果、無効審判手続係属中に本件特許の存続期間が満了しても、被告としてはなお、本件特許が有効か無効かの審決を求めうるのであり、これに対して取消訴訟を提起する途もあるのであるから、被告の裁判を受ける権利が否定されるわけではない。

3 よつて、原告の本訴請求を認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条を適用して主文のとおり判決する。

(小堀勇 小笠原昭夫 石井彦壽は転勤のため署名押印できない。)

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