大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(ネ)2062号 判決

控訴人(原告)

長谷正子

ほか三名

被控訴人(被告)

土屋久重

ほか一名

主文

一  控訴人らの被控訴人土屋久重に対する本件各控訴を棄却する。

二  原判決中被控訴人土屋長治に関する部分を次のとおり変更する。

1  被控訴人土屋長治は控訴人らに対し、それぞれ金五九万一〇三七円及び内金五四万一〇三七円に対する昭和五一年一月二七日から各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  控訴人らの被控訴人土屋長治に対するその余の各請求を棄却する。

三  訴訟費用のうち、控訴人らと被控訴人土屋久重との間に当審において生じた分は控訴人らの負担とし、控訴人らと被控訴人土屋長治との間に原審及び当審において生じた分はこれを二分し、その一を同被控訴人の、その余を控訴人らの各負担とする。

四  この判決の第二項1は仮に執行することができる。

事実

一  控訴人ら代理人は、「原判決を次のとおり変更する。被控訴人らは連帯して、控訴人らに対し、それぞれ金一〇一万一四三〇円及び内金九三万一四三〇円に対する昭和五一年一月二七日から各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら代理人は控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の事実上の主張及び証拠の関係は、控訴人ら代理人において、

「1 被控訴人長治運転の加害車は、高さ二五センチメートルの中央分離帯に右側前後輪を乗り上げ、次いで中央分離帯をまたいだ状態で進行し、最後には積載中の機械が右に寄つた重味で左側車輪が中央分離帯に乗り上げ、対向車線に右斜めになつて進入し横転したものであり、中央分離帯の抵抗があるにもかかわらず、その間、被害車と衝突後横転までの約一八メートルを加え、約七〇メートルもの距離をスリツプしたまま暴走していること、本件事故現場である国道一六号線は常時トラツク輸送の多い幹線道路であり、早朝で歩行者、自転車等の少ない時間帯であつたのであるから、加害車は相当速度を上げていたものと推認されること、被控訴人長治には過去にも速度違反の検挙歴があることなどをあわせ考えると、本件事故直前の加害車の進行速度は、被控訴人ら主張の時速約六〇キロメートルといつた程度にとどまらず、少なくとも時速八〇キロメートル以上であつたものと推認すべきである。したがつて、加害車が右側前後輪を中央分離帯に乗り上げてから被害車と衝突するまでの時間は、僅か約二秒程度であつたにすぎない。また、本件衝突直前被害車の前方を四トン貨物自動車が走行していたから、被害車の運転者堀利弘としては、右先行車の陰になつて加害車が中央分離帯に乗り上げて暴走してくる状況が視界に入らなかつたものと推認される。しかも、本件事故現場付近の交差点は変則的に車線が片側二車線から三車線に拡がつており、堀にとつて対向車たる加害車が自車線内に進入しようとしていることの判定が困難であつたという事情も存する。以上によれば、被害車の運転者堀が、本件事故直前加害車の動静を把握し、結果回避の措置をとることは極めて困難であつたというべく、本件事故発生につき同人にも過失があつたとすることは到底できない。

2 控訴人らそれぞれと母貞子との生前の親密な交流、精神的結びつき等を考慮し、本件事故後の被控訴人らの不誠実な態度をもあわせ考えるときは、控訴人らが貞子の死亡により被つた精神的苦痛を慰謝するには、従前主張の各自金二〇〇万円をもつて最低限の金額とすべきである。」

と述べた。〔証拠関係略〕

理由

一  当裁判所は、控訴人らの被控訴人久重に対する本訴各請求はいずれも失当として棄却すべきもの、被控訴人長治に対する本訴各請求は、いずれも同被控訴人に対し、金五九万一〇三七円及び右金員から弁護士費用を除く内金五四万一〇三七円に対する本件事故発生の日の後である昭和五一年一月二七日から各支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において正当としてこれを認容し、その余を失当として棄却すべきものと判断するものであつて、その理由は、次のとおり付加・補正するほか、原判決の理由一ないし四と同一であるから、これをここに引用する。

1  原判決一四枚目裏三行目末尾に次の説示を加える。

「控訴人らは、本件事故発生につき被害車の運転者堀利弘にも過失があつたとする認定を争うが、その根拠として挙げる諸点のうち、被控訴人長治運転の加害車の進行速度の点については、中央分離帯に乗り上げる前のそれが、前記一、(二)認定の時速約六〇キロメートルを超えて控訴人ら主張のように時速八〇キロメートル以上であつたものと認めるに足りる証拠はなく、同認定の加害車の衝突直前の走行状況に前出乙第三号証をあわせれば、加害車は、中央分離帯に乗り上げて後、ある時間、底部をコンクリートに接触させながら走行していることが認められるのであつて、右乗り上げ後、ブレーキのきかない状態ではあつたが、少なくとも従前より速度を上げつつ走行したことをうかがわせる証拠はない。また、先行車があつたため、加害車の走行状況が堀の視界に入らなかつたものと推認されるとの点については、前出乙第九号証によると、本件衝突直前被害車の前方を貨物自動車が走行していたことはこれを認めることができるけれども、その具体的な位置関係を明らかにする資料はなく、右先行車により堀の視界がいかなる影響を受けたかは不明というほかない。なるほど、控訴人らも主張するように、前記一、(一)認定の本件事故現場付近の道路状況に前出乙第三、第四号証をあわせると、堀としては、自車の進路右前方に付加車線が拡がつていることなどから、加害車が該付加車線の右側にそつて存する中央分離帯に乗り上げ、自車線に進入しようとしていることを判定しにくい状況にあつたものと推認しえないではないが、この点を考慮に入れても、本件事故発生につき堀にも過失があり、その過失割合は一割をもつて相当とするとの認定、判断を動かすには足りず、他にこれを左右すべき証拠はない。」

2  原判決一二枚目表八行目に「乙第一五号証」とある次に「、乙第一七号証」と、同一七枚目裏六行目に「結果」とある次に「、当審における控訴人磯野養子本人尋問の結果とこれによつて成立の認められる甲第一三号証の二、当審における控訴人高橋慶子本人尋問の結果とこれによつて成立の認められる甲第一二、第一四、第一五号証の各二」と、同一八枚目表二行目に「遊びに行くなどして」とある次に「それぞれ貞子と親密な交流をもち、精神的なつながりをもつて」とそれぞれ加え、同六行目に「年齢等、」とあるのを「年齢、原審における控訴人長谷正子、当審における控訴人磯野養子、同高橋慶子各本人尋問の結果によれば、被控訴人長治が本件事故後今日に至るまで、控訴人らの精神的苦痛を和らげるための努力を全くしていないことが認められることなど、」と、同八、九行目に「金一五〇万円とみるを」とあるのを「金二〇〇万円をもつて」と、同一〇行目に「金一三五万円」とあるのを「金一八〇万円」と、同枚目裏二、三行目に「金三〇六万三、五三七円」とあるのを「金三五一万三五三七円」と、同六、七行目に「金九万一、〇三七円」とあるのを「金五四万一〇三七円」と、同一九枚目表三行目に「金一万円」とあるのを「金五万円」とそれぞれ改める。

二  してみると、原判決中控訴人らの被控訴人久重に対する各請求に関する部分は相当であつて、控訴人らの同被控訴人に対する本件各控訴は理由がないからこれを棄却し、原判決中控訴人らの被控訴人長治に対する各請求に関する部分を前記のとおりに変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九五条、九六条、八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小林信次 鈴木弘 河本誠之)

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