大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(行コ)40号 判決

控訴人(原告) 大塚チカ 外一五名

被控訴人(被告) 建設大臣

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

第一  控訴代理人は、「原判決を取消す。本件を東京地方裁判所に差し戻す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

第二  当事者双方の主張並びに証拠の提出、援用及び認否は、次のとおり補正付加するほかは原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

一  原判決一一丁表一行目と二行目の間に次のとおり挿入する。

「控訴人らは、本件告示改正前にはあたかも昭和四一年法律第九三号借地法等の一部を改正する法律附則八項の規定によつて本件告示改正前の『従前の統制額を超えて賃料を提供あるいは供託しなくても契約を解除されない法的地位』というものが保障されていたかのように主張するが、右規定は、地代・家賃の増額について当事者間に協議がととのわない場合に裁判確定に至るまでの間賃借人が一応暫定的に支払つておくべき地代・家賃の額を単に抽象的に令による統制額をもつて基準とするということを定めるにすぎないものであり、当然のことながら裁判確定に至るまでの間には事情の変更により右の統制額に変動がありうることを前提とし、統制額に変動があつたときは賃借人はその時々における統制額を支払うべきことを意味するものであつて、かつ右の理は本件告示改正の前後においても変わりない。従つて、本件告示の改正による統制額の変動は右附則八項との関係における賃借人の地位にいささかも法的変動を与えたものではない。」

二  原判決二二丁表一〇行目末尾に次のとおり付加する。

「従つて、賃借人は、賃料が裁判等で決定される場合でも令の存在が前提となり、少くとも令の趣旨が尊重され、統制額も考慮されるという意味で令により利益を保護された地位を有しているというべきである。さらに、裁判によらない増額請求がなされた場合には、賃借人は統制額によつて直接に利益を保護されているのである。それ故、控訴人らは、まさに、従前の統制額を超える賃料を請求されないという法的地位を有しているといえる。」

三  原判決二三丁表六行目から九行目の「考え方がある。」までを次のとおりに改める。

「しているのである」と解する考え方(香川保一「借地法等の一部を改正する法律逐条解説」法曹時報一九巻七号五〇頁)がある。」

四  原判決二四丁表二行目末尾に次のとおり付加する。

「そして、賃貸人より賃貸借契約を解除した場合に、賃借人が解除の当否を争う過程で当然に当該賃料増額請求の当否を争うことができるといつても、賃借人が相当額と考えた統制額以下の賃料額をそのまま供託することは危険で到底できるものではない。裁判所が適正賃料額についてどのような判断を下すかは、率直に言つて予断を許さないものであり、場合によつては統制額に著しく影響された判決が出る可能性も否定しきれないからである。従つて、賃借人は賃貸人の増額請求があると、安全のため統制額又はそれを下回るにしても本来相当額と考える賃料額より高めの金額で供託せざるをえなくなる。それ故本件告示は賃借人に対し右のような圧力を直接増悪する効果があり、右圧力を与えること自体賃借人の権利を侵害するものであるといわなければならない。なお、令五条に基づく告示は、法律の下位規範であり、前記法律附則八項の存在を当然の前提とするものであって、告示の賃借人に与える右のような影響を、借地法、借家法の問題で、右告示の効果でないとすることはできない。

五  当審において、控訴代理人は、甲第一四〇号証を提出し、被控訴代理人は、同証の原本の存在及び成立を認めた。

理由

一  当裁判所も、控訴人らの本件請求に係る訴えをいずれも却下すべきものと判断する。その理由は、次のとおり補正付加するほかは原判決理由のとおりであるから、これをここに引用する。

1  原判決三二丁裏七行目の「行政処分」を「行政庁の行為(行政事件訴訟法にいう処分)」と改める。

2  原判決三三丁表一〇行目の「原告らが主張するように」を削除する。

3  原判決三六丁裏八行目の「いうほかない。」の次に「また、裁判等で賃料が決定される際統制額も考慮されるのが通常であろうが、前記のように統制額に拘束されるものではないから、賃借人が令の上で従前の統制額を超える賃料を請求されないという特別の法的地位を与えられていると解するのは相当でない。」と挿入する。

4  原判決三七丁表九行目の「このことは」から次行末尾までを「右裁判等により定められる賃料が統制額を超える場合は令三条、五条の例外であるとしても以上の結論を左右するものではない。)。」と改め、同丁裏七行目の「法律上の地位」の次に「ないし客観的な客観的な適正賃料額を超えた過大賃料の提供又は供託を余儀なくされないという法律上の利益」と挿入する。

5  原判決三八丁表二行目の「定めるものではないのであつて、」を「確定するものでないことは前記のとおりであつて、」と改め、同三行目の「また」から同丁末行までを次のように改める。

「さらに、貸主からの賃料増額請求につき当事者間に協議がととのわないときには、前記法律附則八項により、借主は本件告示による統制額を提供又は供託することを余儀なくされる場合があるとしても、右は裁判により適正賃料が確定するまでの暫定的な支払いであつて、右の支払いにより借主が当然に右統制額を正当な賃料額と承認したことになるものではなく、また、右統制額を支払わなかつたことが当然に契約解除事由となるものではないから、右附則八項との関係において控人らがその主張するような法律上の地位ないし利益を有するものということはできない。なお、右の関係は本件告示の前後により変りはなく、本件告示により控訴人らの法律上の地位に格別の変動を生ぜしめたことにはならない。」

6  原判決三八丁裏三行目及び同三九丁表五行目の「行政処分」を「行政庁の行為(行政事件訴訟法にいう処分)」と改める。

二  よつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 外山四郎 海老塚和衛 鬼頭季郎)

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