大判例

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東京高等裁判所 昭和59年(く)184号 決定

少年・K・K(昭四一・八・一九生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、少年本人名義の抗告申立書に記載されているとおりであるから、これを引用するが、所論は、要するに、「中等少年院送致(長期処遇)を言い渡されたが、長期処遇では重すぎる」というのであり、処分の著しい不当を主張するものである。

そこで、記録を調査して検討すると、本件非行事実は、二回にわたる窃盗(被害金品合計二二、四九九円位)であるところ、少年は幼少時から身体が弱く、小学校四年のとき女の子に袋叩きにあつた等のことから、登校拒否が始まり一時養護学校に入所したことがあつたこと、一二歳のころ住居侵入、窃盗等の初発非行が始まり、昭和五四年四月中学校入学後も公然わいせつ、万引などの非行が続いたこと、昭和五七年四月定時制高校に進学したが、同年七月中退したこと、昭和五六年一〇月二三日窃盗で審判不開始の、昭和五八年六月一〇日毒物及び劇物取締法違反、窃盗で保護観察の、同年九月七日占有離脱物横領で審判不開始の、各決定を受けていること、右保護観察後においても少年の素行は改まらず、喫茶店従業員、美容師見習、ゲイバー従業員等として就職しても長続きせず、いわゆるホモ行為によつて小遣銭稼ぎをしながら徒食するうちに本件非行に及んだものであること、少年は、知能がやや低く情緒面での偏りが大きく、被害意識が強く、社会適応能力が劣ること、少年の両親も保護者としての適性に欠けるところがあり、その監護に多くを期待できないことを考え合わせると、少年の将来の健全な育成を図るためには、少年を相当期間専門の施設に収容し適切な矯正教育を施す必要があると認められるから、少年を中等少年院に送致し、短期処遇相当の勧告をしなかつた原決定の処分は相当であつて、これが著しく不当であるとはいえない。

よつて、本件抗告は理由がないから、これを棄却することとし、少年法三三条一項、少年審判規則五〇条により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 海老原震一 裁判官 和田保 小田健司)

抗告申立書〈省略〉

〔参照〕原審(東京家 昭五九(少)五七〇〇、九六六四号 昭五九・七・一八決定)

少年を中等少年院に送致する。

理由

(罪となるべき事実)

少年は

第一 昭和五九年二月二三日午前三時五〇分ころ、新宿区○○×丁目××番×号○○ビル一階スナック○○店舗内においてB子所有の現金八、五〇〇円及びショルダーバック一個他四点(時価合計八、〇〇〇円相当)を窃盗し

第二 同年六月二二日午前六時三〇分ころ、調布市○○町×丁目××番地××○○荘××号室B方において、同人所有の現金二、九九九円及び茶色ビニール製財布(時価三、〇〇〇円相当)他六点を窃盗し

たものである。

(法令の適用)

各事実につき、刑法二三五条

(処遇の理由)

1 本件は、昭和五八年六月一〇日東京家庭裁判所において、保護観察の決定を受けた少年が犯した置引と侵入盗各一件であり、少年の非行性が高いことを窺せるに足るものである。

2 少年は、幼少期から身体が弱く、父は職が定まらず、飲酒のうえ小言が多く、気まぐれで、母は行動的で一方的な対応が多かつたなど、両親の養育態度にも好ましくないところが見られ、小学校四年生のころ、女の子に袋叩にされたことから、登校拒否が始まり、一時養護学校に入所する止むなきに至るなど問題の多い生育歴を経て、一二歳のころから住居侵入、窃盗等の初発非行が始まり、昭和五四年四月中学校に入学後も、公然わいせつ、万引などの非行が続き、同五七年三月中学校を卒業後も職を転々としつつ、不良交遊のうちに、シンナー吸入、いわゆるホモ行為、家出などの非行があつて、現在まで、上記保護観察決定の外、いずれも東京家庭裁判所において同五六年一〇月二三日窃盗により審判不開始、同五八年九月七日占有離脱物横領により審判不開始の各決定を受け、その都度、保護的措置を受けている。

3 少年は、知能がやや低く(IQ七六)、情緒面での偏りが大きく、被害意識が強く、社会適応能力が劣る。

4 少年の両親は、上記の如く保護者としての適性に劣るところがあり、在宅処遇により更生に導くことは極めて困難である。

5 以上、本件非行内容、少年の非行歴、保護の経過、生育歴、性格、能力、交友関係、保護環境を総合すると、少年に対する保護処分は中等少年院送致をもつて相当とする。

よつて、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条三項により、主文のとおり決定する。

裁判官 多田周弘

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