大判例

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東京高等裁判所 昭和59年(ネ)367号 判決

控訴人(被告)

山口隆昌

被控訴人(原告)

阪本英一

ほか一名

主文

一  原判決主文1項及び2項を次の括弧内のとおり変更する。

「1 原審第二二〇一号事件につき、控訴人は被控訴人阪本英一に対し金二三万五五八五円及びこれに対する昭和五六年一〇月一〇日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2 同事件につき、被控訴人阪本英一の控訴人に対するその余の請求及び被控訴人永野哲司に対する請求を棄却する。」

二  原審第一五〇〇号事件につき、控訴人の被控訴人永野哲司に対する本件控訴を棄却する。

三  原判決主文3項を次の括弧内のとおり更正する。

「原審第一五〇〇号事件につき、控訴人及び被控訴人阪本英一は各自被控訴人永野哲司に対し金一九万八〇二〇円及びこれに対する昭和五六年二月八日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。」

四  訴訟費用は、第一、二審を通じて五分し、その一を被控訴人阪本英一の負担とし、その余を控訴人の負担とする。

事実

一  控訴代理人は、「1 原判決中控訴人敗訴部分を取消す。2 被控訴人らの各請求を棄却する。3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人阪本英一訴訟代理人及び被控訴人永野哲司訴訟代理人は、いずれも控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の主張及び証拠は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示と同一であるから、その記載を引用する(ただし、原判決六枚目表六行目「両名」を「各自」と改める。)。

1  控訴人の主張

(一)  控訴人の被控訴人阪本に対する責任について

(1) 被控訴人阪本の被つた損害については、控訴人には賠償責任はない。

すなわち、被控訴人阪本は、被控訴人永野の運転する普通乗用自動車(以下「永野車」という。)の後方を普通乗用自動車(以下「阪本車」という。)を運転して同方向に進行していたのであるが、時速四〇キロメートルで走行していたのであるから、制動距離約一六メートル以上の車間距離を永野車との間に保つべきであつたのに、これを僅か一三メートルしかとつていなかつた。このため、先行する永野車が控訴人運転の普通乗用自動車(以下「控訴人車」という。)に衝突して停止した際自車を永野車の手前で停止させることができず、永野車に衝突させてしまつたのである。阪本車が永野車との間に一六メートル以上の車間距離を保つていれば右衝突は避けることができたのであるから、右衝突は専ら被控訴人阪本の過失によるものであつて、控訴人車が永野車に衝突したこととの間には相当因果関係がないというべきである。

(2) 仮に右主張に理由がないとしても、被控訴人阪本には右に述べたように車間距離不保持の過失があるから、相当の過失相殺がされるべきである。

(二)  控訴人の被控訴人永野に対する責任について

(1) 被控訴人永野が本訴において請求しているのは永野車後部の修理代金であるが、永野車後部の破損は阪本車の追突によつて生じたものであり、かつ、右追突は前述のとおり専ら被控訴人阪本の過失によるものであるから、右損害については控訴人には賠償責任はない。

(2) 仮に右主張に理由がないとしても、被控訴人永野は本件交差点に進入するに際しては前方の安全を確認しつつ減速して進行すべきであつたのに、前方の安全を確認することなく漫然と時速四〇キロメートルのままで交差点に進入したため控訴人車と衝突したものであるから、相当の過失相殺がされるべきである。

2  被控訴人阪本の主張

控訴人の右主張は争う。阪本車と永野車の衝突は専ら控訴人が横道から一時停止もせずに永野車の前に飛び出してきたことにより惹き起こされたものである。阪本車と永野車との車間距離が一六メートル以上あれば右両車の衝突を免れたとの保証はないし、また、被控訴人阪本に対し控訴人がとつたような行動を常に予想しながら運転することを期待するのも適当ではない。

なお、永野車とこれに後続した阪本車との車間距離は約一三メートルで、阪本車のスピードは時速約三五キロメートルであつた。

3  証拠

当審における証拠関係は、当審記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所は、原審第二二〇一号事件につき、被控訴人阪本の控訴人に対する請求を二三万五五八五円及びこれに対する本件事故発生の日の後である昭和五六年一〇月一〇日から完済に至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において正当として認容し、その余を失当として棄却すべく、原審第一五〇〇号事件につき、被控訴人永野の控訴人に対する請求を正当として認容すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決の理由と同一であるから、その記載を引用する。

1  原判決九枚目裏一行目「ので、」から二行目「理由がある」までを削り、九行目「ない。」の次に行を変えて次のとおり加える。

「(六) ところで、前記認定事実、成立に争いのない乙第一号証の一ないし一〇、原審における控訴人山口隆昌及び被控訴人阪本英一各本人尋問の結果を総合すれば、阪本車は、昭和五六年二月七日午後一〇時三〇分ごろ、相武台駅方面から相模原駅方面に向つて県道六号線(アスフアルト舗装、車道幅員約八メートル)を先行する永野車に続いて約一三メートルの車間距離をおいて時速約四〇キロメートルで走行していたところ、その前方において県道と直角に交差する幅員約四メートルの道路(ただし、交差点で交通整理は行われていない。)の左方から控訴人車が突然時速約三五キロメートルのスピードで飛び出してきて永野車の前部に控訴人車の右横後部を衝突させ、永野車が急停車したため、永野車に後続していた阪本車が停止しきれずに永野車に追突したことが認められる。そして、成立に争いがない乙第二号証及び前掲被控訴人阪本本人尋問の結果によれば、時速四〇キロメートルで走行中の普通乗用自動車の制動距離は一六メートル強であつて、被控訴人阪本が十分な車間距離を保つていたならば阪本車の永野車への追突は避けられたか又は軽微な被害が生ずる程度で済んだものと認められる。

以上認定したところからすれば、被控訴人阪本の損害の発生について主たる原因となつたのは控訴人車が突然永野車前方に飛び出したことであるが、永野車に後続していた阪本車が十分な車間距離を取つていなかつたことも右損害発生の一因となつていることが明らかであるから、控訴人の損害賠償の額を定めるにつき右被控訴人阪本の過失を斟酌すべきであり、その割合は五パーセントと認定するのが相当である。

よつて、控訴人は前記被控訴人阪本の損害一一九万一〇二〇円と三一万〇六七〇円の合計一五〇万一六九〇円の九五パーセントに当たる一四二万六六〇五円を被控訴人阪本に対して支払う義務がある。」

2  同九枚目裏一〇行目「(六)」を「(七)」と改める。

3  同一〇枚目表一行目「阪本の損害額合計金一、五〇一、〇二〇円」を「前記一四二万六六〇五円」と改め、二行目「右(六)」を「右(七)」と改め、同行「三一万円」を「二三万五五八五円」と改める。

4  同一一枚目表七行目「三一万円」を「二三万五五八五円」と改める。

5  控訴人は、阪本車と永野車との衝突は専ら被控訴人阪本の車間距離不保持の過失によるものであつて控訴人車と永野車の衝突とは相当因果関係がない旨主張する。

しかしながら、阪本車と永野車との衝突は控訴人車の突然の飛出しに起因するものであり、永野車らの走行していた道路が車道幅員約八メートルの県道であつたことからすれば、横道からの飛出しがあれば、直接衝突された車両のみならずこれに追随する他の車両にも影響が生ずることは通常予測できるところであるから、阪本車と永野車の衝突と控訴人車の飛出しとの間には相当因果関係があるというべきである。したがつて、控訴人の右主張は理由がない。

6  控訴人は、被控訴人永野は本件交差点に進入するに際しては前方の安全を確認しつつ減速して進行すべきであつたのに前方の安全を確認することなく漫然と時速四〇キロメートルのままで交差点に進入したため控訴人車と衝突したものであるから相当の過失相殺がされるべきである旨主張する。

しかしながら、前記のとおり永野車の走行していた県道の車道幅員は約八メートル、控訴人車の進行してきた道路幅員は約四メートルであり、前者は後者に比して幅員が明らかに広い道路であるから、永野車につき特に徐行義務等があつたわけではない(道路交通法三六条二、三項参照)うえ、前掲乙第一号証の五及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人永野は本件交差点に進入するに際し十分の注意を払つていたことが認められるから、控訴人の右主張は理由がない。

二  よつて、原判決主文1項及び2項を主文一項括弧内のとおり変更し、原審第一五〇〇号事件につき、控訴人の被控訴人永野哲司に対する本件控訴を棄却し、原判決主文3項には、その表現に明白な誤謬があるから、これを主文三項括弧内のとおり更正し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、九二条、八九条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 川添萬夫 佐藤榮一 石井宏治)

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