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東京高等裁判所 昭和59年(行コ)60号 判決

千葉県佐倉市下根二一九番地

控訴人

鈴木冨美子

右訴訟代理人弁護士

松崎勝一

佐藤公輝

千葉県成田市花崎町八一二番地

被控訴人

成田税務署長

小笠原久三

右指定代理人

山崎まさよ

永野重知

岩崎輝弥

斉藤敏雄

右当事者間の所得税更正処分等取消請求控訴事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴代理人は、「1 原判決を取り消す。2 控訴人の昭和四八年分所得税につき、被控訴人が昭和五二年二月二八日付でした無申告加算税の賦課決定、同年七月三〇日付でした再更正及び重加算税の賦課決定をいずれも取り消す。3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の主張及び証拠は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決事実摘示と同一であるから、その記載を引用する。

1(一)  原判決一〇枚目裏一一行目から末行にかけての「一四一万七、〇〇〇円」を「一四一万七五〇〇円」と改める。

(二)  同一一枚目裏一〇行目「一四一万七、〇〇〇円」を「一四一万七五〇〇円」と改め、一〇、一一行目「五、一四一万七、〇〇〇円」を「五一四一万四五〇〇円」と改める。

2  控訴人の主張

(一)  無申告加算税の賦課決定について

控訴人は、本件確定申告書の提出を法定申告期限後の昭和四九年九月二〇日に提出したとしても、国税通則法六六条一項但書にいう「正当な理由がある」ものである。

すなわち、控訴人は、本件確定申告書提出期限の昭和四九年三月一五日に本件確定申告により納付すべき税額を株式会社三井銀行佐倉支店から被控訴人あてに振り込み納付したのであり、また、控訴人は、税理士に対し、本件確定申告書の提出を依頼し、右税理士から右税額を指示されたのであり、万一にも右税理士が本件確定申告書の提出を遅延するとは思わなかった。

(二)  取得費について

控訴人は、江畑から本件土地を代金五〇〇〇万円の約束で買い受けたところ、その際、右代金に上乗せする趣旨で、江畑及び正一の旭信金に対する未払利息一四一万七五〇〇円を代位弁済し、また、控訴人が旭信金から右代位弁済資金として借り受けた四〇〇〇万円に対する借入の日である昭和四六年四月五日から本件土地譲渡の日である昭和四八年九月一〇日までの利息一〇三四万八二七二円の債務を負担した。

したがって、控訴人の本件土地の取得費は、右代金五〇〇〇万円、未払利息一四一万七五〇〇円、借入金利息一〇三四万八二七二円、以上合計六一七六万五七七二円である。

(三)  譲渡費用について

控訴人は、晴共産業との間の本件土地売買契約を解除したことにより、同会社に対し、違約金二七〇〇万円を支払ったから、右違約金は本件土地の譲渡費用に当る。

控訴人は、晴共産業との間で本件土地売買契約を締結したことがなければ、同会社に対し、二七〇〇万円という多額の金員を支払う筈がなく、また、同会社の右金員の使途については関知していない。

(四)  重加算税の賦課について

控訴人は、本件土地の譲渡について何らの仮装行為をせず、また、仮に控訴人と晴共産業との間の本件土地売買契約及び買戻について何らかの仮装行為があったとしても、控訴人は、その仮装行為に加担したものではなく、かえって、正一らにより二七〇〇万円を詐取された被害者であるから、本件重加算税賦課決定は違法である。

3  被控訴人の主張

(一)  控訴人の前記主張(一)は争う。

法定申告期限内に確定申告書を提出しなかったことに関する国税通則法六六条一項但書にいう「正当な理由があると認められる場合」とは、災害、交通、通信の途絶、その他法定申告期限内に確定申告書を提出しなかったことについて納税者の責に帰すべき理由がない場合をいうものと解すべきであり、控訴人の本件確定申告書提出の遅延については正当な理由であるとはいえない。

元来、無申告加算税については、法定申告期限内に当該確定申告書が提出されたかどうかが問題となるのであって、右期限内に国税が納付されたかどうかは直接関係のないことである。そして、本件において、控訴人が法定申告期限内に確定申告書を提出せず、自己の計算にかかる税額を被控訴人にあて銀行に振り込んだとしても、右期限内に確定申告書を提出しなかったことの正当な理由には当らない。また、控訴人の依頼した税理士がその確定申告書の提出を遅延した場合に、その効果は本人である控訴人に帰属するのは当然であり、税理士の責任問題は、委任者である控訴人と受任者である税理士との間で解決すべき問題であり、税理士が右のように確定申告書の提出を遅延したことは正当な理由には当らない。

(二)  同(二)のうち、控訴人が本件土地の取得費として旭信金から代位弁済資金として借り受けた四〇〇〇万円に対する控訴人主張の期間内の利息一〇三四万八二七二円の債務を負担したことは認めるが、その余の点は争う。

控訴人と江畑との間には本件土地の代金を五〇〇〇万円とする旨の売買契約書(甲第一号証)が存在するところ、控訴人は、江畑及び正一の旭信金に対する五〇〇〇万円の借入金債務を代位弁済することとし、その代償として、本件土地を取得しようとしたものであった。

ところで、控訴人は、右代位弁済に際し、江畑及び正一が旭信金から借り受けた四八六万三四二八円(元本五〇〇万円から利息等一三万六五七二円を控除した残額)右五〇〇〇万円の弁済に充て、控訴人自身の負担においては、右五〇〇〇万円から四八六万三四二八円を控除した四五一三万六五七二円を弁済したにすぎないから、本件土地の代金も右四五一三万六五七二円である。

また、江畑及び正一の旭信金に対する未払利息一四一万七五〇〇円は、同人らの旭信金からの借入金五〇〇〇万円については江畑が昭和四六年三月三一日に支払い、残額一一万二五〇〇円については控訴人が支払ったが、控訴人は、右金員を江畑及び正一のために立替え支払ったにすぎないから、右立替利息をもって本件土地の取得費とすることはできない。

したがって、本件土地の取得費は、控訴人が江畑及び正一の債務を代位弁済した四五一三万六五七二円、右代位弁済資金調達のため旭信金から借り受けた四〇〇〇万円に対する借入の日であるため昭和四六年四月五日から本件土地譲渡の日である昭和四八年九月一〇日までの前記利息一〇三四万八二七二円、以上合計五五四八万四八四四円である。

(三)  同三、四は争う。

4  証拠

当審における証拠関係は、本件記録中の当審書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所は、控訴人の本訴訟請求を失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正、削除するほかは、原判決の理由と同一であるから、その記載を引用する。

1  原判決一八枚目表八行目「争いがなく、」「争いがない。また、成立に争いのない乙第三六号証の一、」と改め、一〇行目「第一二号証、」の次に「弁論の全趣旨により成立を認める乙第三六号証の二、」を加える。

2  同一八枚目裏五行目「認められ、」の次に「当審証人江畑昇平の証言、」を加え、七行目「第一二号証」の次に「、第三六号証の一」を加える。

3  同一九枚目裏一〇行目「乙第七号証」の次に「、第三六号証の一、」を加える。

4  同二〇枚目表七行目「前掲の同」を「前掲の乙」と改める。

5  同二三枚目表六行目「乙第一号証、」の次に「成立に争いのない甲第一一号証、」を加え、七行目「前掲の同」を「前掲の乙」と改め、末行「第二五、」を「第二四号証の二、第二五号証、」と改める。

6  同二三枚目裏二行目「第一三、」を「第一三号証、」と改め、同行「第二四号証の二、」を削り、一一行目「と原告」から末行「五〇〇万円」までを削る。

二  よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤榮 裁判官 篠田省二 裁判官 関野杜滋子)

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