大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

東京高等裁判所 昭和61年(ネ)1725号 判決

控訴人

有限会社吾妻製作所破産管財人

副島洋明

被控訴人

東西商事株式会社

右代表者代表取締役

谷村康二

右訴訟代理人弁護士

伊東隆

主文

原判決中、甲事件のうち供託金還付請求権確認に関する部分及び乙事件に関する部分をいずれも取消す。

控訴人が別紙供託目録記載の供託の供託金還付請求権を有することを確認する。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

事実

控訴人は主文同旨の判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示中控訴人と被控訴人関係部分のとおりであるから、これを引用する。

一  当審における新たな主張

(控訴人)

1  破産会社と被控訴人間の本件売掛代金債権譲渡契約は、破産会社と訴外東芝機械との間の取引から現在までに発生し又は将来発生する売掛代金権一切を譲渡の対象とするものである。

2  ところで、破産会社と訴外東芝機械との間の取引は、昭和五四年三月締結された資材取引基本契約に基づくものであり、訴外東芝機械がそれについて供託した売掛代金債権は、破産会社が東芝機械から別紙売掛代金一覧表記載の年月日に、記載の代金で注文を受けて製作した油圧シリンダーにかかるものであつて、昭和五八年一〇月四日までに具体的に発生、成立しているものである。

3  本件売掛代金債権譲渡契約は被控訴人主張の如き停止条件付のものではないから、その締結が昭和五八年九月三〇日であるとしても、同年一〇月四日には訴外東芝機械が供託した売掛代金債権のすべてにつき譲渡の効力を生じ、訴外東芝機械に同月二七日到達した債権譲渡通知は、破産会社の支払停止後で債権譲渡の日から一五日を経過した後に悪意でなされたものである。

4  控訴人は、破産法七四条一項の規定により、第三者に対する対抗要件である前記債権譲渡通知を否認する。

(被控訴人)

1  控訴人の右主張1、2項は認める。

2  同3項は争う。

二  当審における新たな証拠関係

〈省略〉

理由

一破産会社が昭和五八年一〇月二〇日手形の不渡りを出し、取引先に倒産した旨通知したこと、破産会社が東京地方裁判所において同五九年二月二七日破産宣告を受け、同時に控訴人が破産管財人に選任されたこと、破産会社が訴外東芝機械に対し、同五八年一〇月四日現在、同五四年三月締結した資材取引基本契約に基づき訴外東芝機械から別紙売掛代金一覧表記載の年月日に、記載の代金で注文を受けて製作、販売した油圧シリンダーの売買代金債権金一六四万四八〇〇円を有していたこと、同五八年九月三〇日に締結したものか、同年一〇月二六日締結したものかは別として、被控訴人が破産会社との間で、破産会社の訴外東芝機械との取引から締結日現在までに発生し又は将来発生する売掛代金債権一切を譲受ける旨の債権譲渡契約を締結し、破産会社が訴外東芝機械に対し同年二七日到達の内容証明郵便をもつて譲渡通知をしたことは当事者間に争いがない。

二〈証拠〉によれば、右債権譲渡契約は、昭和五八年九月三〇日被控訴人が破産会社に金一八〇万円を貸し付けるとともに右貸付債権の担保とするため締結したものであることが認められ、右証人高梨の証言(一回)中これに反する部分は信用できず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。また、右債権譲渡契約が被控訴人主張のような条件付のものであることは、本件債権譲渡の通知日の点や証人水内の証言によつてもこれを認めるに十分でなく、他にこれを認めるに足りる証拠がない。

三そうすると、本件債権譲渡契約による売掛金債権の譲渡については、破産者の義務なき行為の否認を規定する破産法七二条四号の適用はない。しかし、対抗要件否認の場合の破産法七四条一項本文にいう一五日の起算点は将来債権については現実に債権が発生した日と解するのが相当であるところ、前記債権譲渡通知(通知を発した日を基準とすべきものとするも、証人水内順仁の証言(原・当審)により該債権譲渡通知書と認められる乙第四号証が郵便局に差し出された日が昭和五八年一〇月二六日であることは、成立に争いのない官署作成部分により認められる。)は、破産会社の支払停止後で最も遅い譲渡債権発生の日である同月四日から一五日を経過した後になされたものであることは明らかである。そして右乙第四号証、証人水内順仁の証言(原・当審)によれば、右債権譲渡通知は破産会社の支払停止を知つた被控訴人において、破産会社から予め委任されて交付を受けていた内容証明用紙乙第四号証の内容の記載なきものを用いてなしたものであることが認められるから(これに反する証人高梨永雄の供述は信用できない)破産会社は悪意で右債権譲渡通知をなしたものというべきである。従つて、控訴人は右債権譲渡通知につき破産法七四条一項による対抗要件の否認をすることができる。

四控訴人が被控訴人に対し本件債権譲渡通知を否認する旨の意思表示をしたことは訴訟上明らかであるから、被控訴人は控訴人に本件債権譲渡を対抗できないものである。

五訴外東芝機械が本件売掛代金債権につき真の債権者を確知することができないとして本件各供託をしたことは当事者間に争いがない。そうすると、右供託の供託金還付請求権は被控訴人にではなく控訴人に帰属し、かつ被控訴人との間でこれを確認すべき利益がある。

六以上の次第で、控訴人の供託金還付請求権確認請求は理由があるのでこれを認容し、被控訴人の同請求は棄却すべきであるから、原判決中これと異なる部分を取消し、右のとおり請求を認容及び棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条を適用して注文のとおり判決する。

(裁判長裁判官田中永司 裁判官豊島利夫 裁判官加藤英雄)

別紙供託目録

(一) 供託所 東京法務局

供託年月日 昭和五八年一二月五日

供託番号 昭和五八年度第九九三九四号

供託金額 金四二万四、八〇〇円

供託者 東芝機械株式会社

被供託者 有限会社吾妻製作所又は東西商事株式会社

(二) 供託所 (一)に同じ

供託年月日 昭和五九年四月三日

供託番号 昭和五九年度金第九一九号

供託金額 金一二二万円

供託者 (一)に同じ

被供託者 (一)に同じ

別紙売掛代金一覧表〈省略〉

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com