大判例

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東京高等裁判所 昭和62年(う)1258号 判決

主文

原判決中被告人に関する部分を破棄する。

被告人を懲役一年に処する。

原審における未決勾留日数中六〇日を右刑に算入する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人小林正憲が提出した控訴趣意書に、これに対する答弁は、東京高等検察庁検察官検事丸山利明が提出した答弁書にそれぞれ記載されたとおりであるから、これを引用する。

ところで、所論に対する判断に先立ち職権をもつて調査するに、原判決は原判示のとおりの事実を認定した上、これに対する法令の適用において、各児童福祉法違反罪は併合罪の関係に立つとして、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条により犯情の最も重い原判示二の罪の刑に法定の加重をしている。しかし、本件は同一の児童を継続的に反覆して淫行させたという事案であるから、その回数が多数回にわたつていても、これを包括的に観察して一罪として処断すべきである。したがつて、原判決がこれを併合罪として、法定の加重をした刑期の範囲内で処断すべきものとしたのは、法令の適用を誤つたものというべく、かつ、右誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。

よつて、控訴趣意に対する判断を省略し、刑訴法三九七条一項、三八〇条により原判決中被告人に関する部分を破棄し、同法四〇〇条ただし書を適用して直ちに当裁判所において自判すべきものと認め、更に次のとおり判決する。

(罪となるべき事実)

「一 被告人は

(一)  アダルトビデオテープの企画制作等を業とする株式会社○○○経営者B及びCと共謀の上、昭和六一年一一月二一日ころの午後一時ころから翌二二日ころの午後二時ころまでの間、静岡県下田市〈以下省略〉貸別荘○△において、「おもちやアクメのバースデー」と題するビデオカセットテープの撮影録画をするにあたり、出演者として雇用した満一八歳に満たない児童であるA女(昭和四五年九月一五日生・当時一六年)をして、同所において、出演者Dを相手に性交させ、

(二)  アダルトビデオテープの企画制作等を業とする有限会社「○△○△プロデュース」の代表者E及びCと共謀の上、同年一二月五日ころの午後一時ころから翌六日ころの午後一時ころまでの間、同県伊東市〈以下省略〉貸別荘△○において、「特訓オリンポスの少女」と題するビデオカセットテープの撮影録画するにあたり、前A女をして、同所において、出演者F及びGを相手に性交させ、

二 被告人は、アダルトビデオの企画制作等を業とする有限会社「△△」の代表者Hと共謀の上、昭和六一年一二月一七日ころの午後三時ころから翌一八日ころの午前零時ころまでの間、前記一の(二)記載の場所において、「ほてり炎照り」と題するビデオカセットテープの撮影録画をするにあたり、A女をして、同所において、出演者Iを相手に性交させ、

もつて、児童に淫行させたものである。」

(証拠の標目)〈省略〉

(法令の適用)

被告人の判示所為は包括して刑法六〇条、児童福祉法三四条一項六号、六〇条一項に該当するところ、所定刑中懲役を選択し、その所定刑期の範囲内で処断すべきところ、一件記録にあらわれた本件犯行の罪質、動機、態様、被告人の生活態度、前科関係、当審取調の結果認められる犯行後の情状等の諸事情を考慮しても再度刑の執行を猶予すべき特に憫諒すべき情状まであるとは認められないので、被告人を懲役一年に処し、刑法二一条を適用して原審における未決勾留日数中六〇日を右刑に算入することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官時國康夫 裁判官花尻尚 裁判官神作良二)

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