大判例

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東京高等裁判所 昭和62年(ラ)97号 決定

抗告人 藤崎幸子

右代理人弁護士 大平弘忠

右の者から、東京地方裁判所八王子支部昭和六〇年(ケ)第五四号土地建物競売事件について、同裁判所が昭和六一年一二月一五日付けで発した不動産引渡命令に対し執行抗告の申立てがあったので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件執行抗告を棄却する。

理由

本件執行抗告の趣旨及び理由は、別紙執行抗告状及び抗告理由書の各写し記載のとおりであるが、その理由の要旨は、抗告人は本件建物を譲渡担保として取得したものであるが、占有権原は賃借権であり、かつ差押えの効力発生前から右権原に基づいて本件建物を占有しているというのである。

そこで検討するに、民事執行法八三条一項が抵当権の実行としての不動産競売に準用される場合、同条にいう「債務者」とは抵当権実行時における不動産所有者を意味すると解すべきであり、したがって、右所有者に対しては、その占有開始の時期が差押えの効力発生の前後いずれであるかを問わず、不動産引渡命令を発することができるというべきところ、抗告人が本件不動産競売事件における所有者であることは抗告人の自認するところであり、競売事件の記録によっても明らかであるから、前記抗告理由の主張は失当であるといわなければならない。この結論は抗告人の所有権取得原因が譲渡担保契約であることによって左右されるものではない。また、抗告人は自己の賃借権が買受人に対抗しうるものであるとも主張するが、建物の賃借人が当該建物の所有権を取得した場合には右賃借権は特段の事情のないかぎり混同によって消滅すると解されるのみならず、競売事件の記録によれば抗告人の賃借権は抵当権設定後になされた短期賃貸借にあらざる賃貸借に基づくものであるから、これが買受人に対抗しえないものであることは明らかである。

よって、本件執行抗告は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 森綱郎 裁判官 高橋正 清水信之)

〈以下省略〉

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