大判例

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東京高等裁判所 昭和63年(ネ)1257号 判決

控訴人 森島建興有限会社

右代表者代表取締役 森島勲

右訴訟代理人弁護士 大谷喜与士

北川鑑一

被控訴人 榎本馨

右訴訟代理人弁護士 金子博人

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

理由

当裁判所も、原審と同じく、控訴人の本件請求は理由がないからこれを棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する。

一  原判決五枚目表四行目から同裏五行目までを次のとおり改める。

「しかしながら、「請求」がいわゆる絶対的効力を生じ、したがつて、連帯保証人に対する請求が主たる債務者に対しても時効中断の効力を生じる(民法四五八条、四三四条、一四七条一号参照)のとは異なり、連帯保証人に対する差押えは主債務者に対する時効中断の事由となるものではないから、控訴人の斉藤に対する二回の強制執行申立ては、朝日建設の控訴人に対する売掛金債務につき消滅時効中断の効力を生じない。したがつて、朝日建設の控訴人に対する右売掛金債務の消滅時効は、前記期限の利益喪失の日の翌日である昭和五七年三月一一日から二年の期間が満了する昭和五九年三月一〇日の経過により完成し、被控訴人が本訴において右の時効を援用したことにより、結局、被控訴人の控訴人に対する保証債務も消滅するに至つたというべきである。」

二  控訴人の当審における主張一について

控訴人と朝日建設との間で再抗弁1記載の公正証書が作成されたことは前認定のとおりであるところ、控訴人は、公正証書は民法一七四条の二にいう「確定判決ト同一ノ効力ヲ有スルモノ」に該当し、本件売掛金債権の消滅時効期間は一〇年に延長された旨主張する。なるほど、本来短期消滅時効の適用を受けるべき債権であつても、これにつき公正証書が作成されることによつて、従来存在した証拠上の不明確さも一応解消され、法律関係がより確実なものになるとともに、その決済も長期化されることが少なくないから、もはや短期消滅時効にかからせる実質的な必要性に乏しいといい得ないではないが、民法一七四条の二が「確定判決」及び「確定判決ト同一ノ効力ヲ有スルモノ」によつて確定した権利を対象としているのは、特に既判力によつて債権の存在が終局的に確定されるような場合に限つて時効期間の延長を認める趣旨であると解される。したがつて、民法一七四条の二の解釈としては、控訴人の主張するように公正証書を「確定判決ト同一ノ効力ヲ有スルモノ」に含めることはできないというべきである。

三  控訴人の当審における主張二について

仮に、控訴人の主張するように、前記の公正証書作成と同時に新たに準消費貸借契約が締結されていたとしても、右の朝日建設の控訴人に対する準消費貸借上の債務の消滅時効は、前記期限の利益喪失の日の翌日である昭和五七年三月一一日から五年の期間が満了する昭和六二年三月一〇日の経過によつて完成し、被控訴人の援用により、結局、被控訴人の控訴人に対する保証債務も消滅しているというべきである。控訴人の斉藤に対する強制執行申立てが右の準消費貸借上の債務につき消滅時効中断の効力を生ずるものでないことは前記のとおりであり、他に時効中断事由について主張立証もない。したがつて、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の当審における主張二も理由がない。

よつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却する

(裁判長裁判官 森綱郎 裁判官 小林克已 河邉義典)

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