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東京高等裁判所 昭和63年(行ケ)31号 判決

原告 日本交通産業株式会社

被告 サンポール株式会社

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

「特許庁が昭和六一年審判第二二五五号事件について昭和六一年一二月二八日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

二  被告

主文同旨の判決

第二請求の原因

一  特許庁における手続の経緯

被告は、別紙のとおり「オセロスポンジ」なる片仮名七文字を横書きして成り、指定商品を商標法施行規則別表第一九類「スポンジ製台所用品、日用品」とする登録第一四一一五一七号商標(昭和四八年九月二八日商標登録出願、昭和五五年三月二八日設定登録。以下「本件商標」という。)の商標権者であるが、原告は昭和六一年二月五日被告を被請求人として、商標法第五〇条の規定に基づき、商標登録取消の審判を請求し(昭和六一年三月一四日同登録)、昭和六一年審判第二二五五号事件として審理された結果、昭和六二年一二月二八日、「本件審判は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は昭和六三年一月三〇日原告に送達された。

二  審決の理由の要点

1  本件商標の構成、指定商品及びその登録日は、前項記載のとおりである。

2  請求人(原告)は、「本件商標の登録は、取り消す。審判費用は被請求人(被告)の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由として、本件商標は商標法第五〇条に該当するものであるとしている。

3  被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として、本件商標を指定商品について使用している旨述べ、証拠方法として乙第一号証の一、二、同第二号証、同第三号証の一、二、同第四、第五号証、同第六号証の一、二、同第七号証(本項における書証番号は審判手続における書証番号による。)を提出した。

4  よつて按ずるに、被請求人が提出した前記乙号各証によれば、被請求人は、本件審判請求の登録前三年以内に日本国内において本件商標を指定商品中の「手袋付き摺り洗い用スポンジ」について使用していたことを認めることができた。

したがつて、本件商標の登録は、商標法第五〇条の規定により取り消すべき限りでない。

三  審決の取消事由

審決は、本件商標が、その指定商品について、本件審判登録前三年以内に使用されていたと誤つて判断したものであるから、違法であり、取り消されるべきである。

1  審決は、本件商標を、指定商品中の「手袋付き摺り洗い用スポンジ」(以下、「本件商品」という。)に使用していたと認定したが、本件商品は「手袋」であつて、商標法施行規則別表第一七類中の「被服」に属する商品である。してみると、審決は、本件商標の指定商品に包含されない商品の使用をもつて、本件登録商標の使用と認定したものであり、事実誤認に基づく違法がある。

2  審決は、審判における乙各書証によれば、本件商標の使用の事実が証明されたとする。しかしながら、

(一) 被告が、本件商品の使用状態を示す写真と称する甲第六号証の一(原審判の乙第一号証の一)には、本件商標を見いだすことができず、これをもつて本件商標の使用証明とは認められない。

(二) 甲第六号証の二(原審判の乙第一号証の二)には、本件商品と本件商標を表示した商品説明書(以下「本件商品説明書)という。)が写されており、本件商品説明書には、本件商標が表示されていることは認められるが、これが作成された年月日、数量、並びに印刷業者名等が明示されておらず、この証拠より直ちに本件商標が使用されていたと認めることはできない。

(三) 甲第七号証(原審判の乙第二号証)は、単なる被告の社内稟議書であつて、本件商標の使用の事実を何ら証明するものではないばかりか、右書類の作成時点では、本件商標が未だ使用に至つてなかつたことが示されている。

(四) 甲第八号証の一、二(原審判の乙第三号証の一、二)は、訴外有限会社多摩フジゴム工業(以下「多摩フジゴム工業」という。)が昭和六一年二月二七日付で本件商品を被告に納品した際の納品書、請求書の写であつて、右書類には、「オセロスポンジ」なる文字が表示されてはいるが、その作成者である多摩フジゴム工業は、本件商標の使用に関し、何らの権原を有しない者であり、このような者が自己の商品にかかる取引書類に本件商標を表示したからといつて、被告による本件商標の使用証明とはならない。さらにいえば、甲第七号証に「有限会社多摩フジゴム工業より紹介のあつた手袋付きスポンジ」なる記載があることから、本件商品は多摩フジゴム工業が自ら企画し、その現物を被告に提示し取引を申し込んだ事実がうかがえ、被告自身が本件商品を企画したうえで、これを多摩フジゴム工業に下請生産させたものとは認められず、この点からみても、右書類に記載された「オセロスポンジ」の文字が被告による本件商標の使用に該当しないこと明白である。

(五) 甲第九号証以下の書証(原審判の乙第四号証以下)は、単なるサンプルとしての、わずか数個の商品授受に関する連絡書あるいは取引書等であるところ、商標は「業として商品を生産し、加工し、証明し、または譲渡する者がその商品について使用するもの」であるから、その商品についての取引も反復継続性が認められなければならず、右のような、ただ一度の取引による使用は、法が意図する商標の使用にあたらない。また、甲第一〇号証の以下の書証は、本件審判請求予告登録日以後の作成にかかるものであるから、本件商標の使用を証明し得ないものである。

第三請求の原因に対する認否及び被告の反論

一  請求の原因一及び二の事実は認める。

二  同三は争う。審決の認定、判断は正当であり、審決に原告主張の違法はない。

1  本件商品は、台所用品又は日用品として使用するスポンジの取扱を容易にするために、スポンジに手袋状のビニールを接着したものであつて、本件指定商品であるスポンジ製台所用品、日用品に属するものである。

2  商標法第二条第三項第一号の使用について

被告は、本件商品を、本件商標である「オセロスポンジ」と本件商品の製造元が被告であることを示した本件商品説明書とともに、透明のビニール袋に封入している。そして、このビニール袋は、外部から認識できるように表側に向けられた本件商品説明書を、ビニール袋と本件商品の間においてその両者に接着させ、かつ、これを固定するような大きさになつている。すなわち、このビニール袋は本件商品を保護するとともに、本件商品と本件商品説明書を接着・固定する機能を果たしているのである。このことは、本件商品自体に本件商品説明書、つまり、本件商標を付したものといえる。仮にそうでないとしても、本件商品説明書が本件商品の包装であるビニール袋の内部に接着し、外部から認識でき得る状態で固定しているのであるから、本件商品の包装に本件商標を付したものといえる。

そして、被告は、昭和六〇年一一月八日ないし同月一〇日、本件商品の立案企画及び本件商標を付することを決定し、これを受けて、本件商品説明書とともに本件商品が透明のビニール袋に封入されたものの製造を多摩フジゴム工業に請け負わせ、昭和六一年二月二七日、同会社からそれらを一〇〇〇個受領した。したがつて、被告は、遅くても前同日には本件商標を使用していたのである。

3  同条同項第二号の使用について

被告は、本件商品説明書の付いた本件商品を、昭和六一年三月一日から同月九日までの間、本件商品の販売宣伝・販売調査を兼ねて、景品として、数店のスーパーマーケツトの店頭において一般消費者に広く配布・譲渡した。

4  同条同項第三号の使用について

被告は、昭和六一年三月一日付けで高島屋百貨店宛に、本件商標を付し、定価を示した本件商品の案内書(甲第九号証)を配布・紹介したものであり、これは、商品に関する広告、定価表に標章を付して頒布した行為に該当する。

第四証拠関係〈省略〉

理由

一  請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1  原告は、本件商品は手袋であつて、商標法施行規則別表第一七類の「被服」に属する商品であると主張する。

そこで検討するに、成立に争いのない甲第九号証、本件商品及び本件商品説明書を写した写真であることについて当事者間に争いのない乙第六号証の一ないし六によれば、本件商品は、ウレタン製のスポンジに薄い透明な手袋状のビニールを接着させたもので、スポンジの部分に洗剤等を塗布して、風呂場、窓ガラス、洗面所、台所用品等の洗浄、自動車の洗車、靴磨き等に使用するものであること、使用にあたつて、手は手袋状のビニールに被われるため手が汚れず、手の荒れを保護することを特長とするものであることが認められる。右認定事実によれば、本件商品の用途は、スポンジを使用して台所用品、洗面所、窓ガラス等を洗浄するものであつて、日用品である清掃用具の一つにほかならず、これに接着した手袋状のビニールはスポンジの使用に当つて手の汚れを防ぐという副次的作用を持つものにすぎず、これが人の身にまとうことを用途としたものを意味する商標法施行規則別表第一七類にいう「被服」に該当しないものであることは明らかである。

2  次に、本件商標の使用状況についてみるに、前掲乙第六号証の一、二、成立に争いのない甲第七号証、同第八号証の一、二並びに証人飯田英宣の証言によれば、被告は、昭和六〇年一一月一〇日ころ、本件商品に本件商標を付して販売することを決定し、これに基づいて、本件商標である「オセロスポンジ」及び本件商品の製造元が被告であること等を記載した本件商品説明書とともに本件商品が透明のビニール袋に封入されたものの製造を多摩フジゴム工業に請け負わせ、昭和六一年二月二七日、同会社よりそれらを一〇〇〇個受領した。右受領時、本件商品は、前記のことを示した本件商品説明書とともに、透明なビニール袋に封入されており、右ビニール袋は、外部から認識できるように表面に向けられた本件商品説明書を、ビニール袋と本件商品の間においてその両者に接着させ、かつ、これを固定させるような大きさになつていたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定事実によれば、被告が昭和六一年二月二七日、製造下請け先である多摩フジゴム工業より本件商品の納入を受けた際、本件商品は、被告の指示どおり、本件商標を記載した本件商品説明書とともに透明のビニール袋に封入されており、右商品説明書は本件商品を包み込むビニール袋の内側に接着・固定され、右透明のビニール袋と一体として本件商品を包装し、かつ本件商標を外部から認識し得る状態におかれ、これによつて本件商品を他の商品と識別し、かつ他の商品との出所の混同を防止しているものであるから、このことは、商標法第二条第三項第一号にいう「商品の包装に標章を付する行為」に該当するというべきである。そして、前記認定事実によれば、本件商品の製造及び前記態様での本件商標の使用はいずれも被告の指示判断に基づいて行われているものであつて、原告が主張するように、多摩フジゴム工業が本件商品を企画、製造し、同社の製品に本件商標を付し、これを被告に売却したものとは認められない。

そうすると、本件商標は本件審判請求の登録日である昭和六一年三月一四日前三年以内である同年二月二七日、スポンジ製台所用品、日用品に区分される商品に使用されていたことが認められるから、この点に関する審決の認定、判断に誤りはない。

3  以上のとおりであるから、「本件商標の登録は、商標法第五〇条の規定により取り消すべき限りでない。」とした審決の認定、判断は正当であつて、審決に原告主張の違法はないというべきである。

三  よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担については、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 藤井俊彦 竹田稔 岩田嘉彦)

別紙

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