大判例

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松山地方裁判所 昭和36年(わ)80号 判決

被告人 西山幸一

昭一五・一・二〇生 大工

主文

被告人を懲役八月に処する。

但し本裁判確定の日から弐年間右刑の執行を猶予する。

本件公訴事実中、被告人が昭和三六年三月二五日午前一〇時頃松山市藤原町四八三番地の自宅において、業務その他正当の理由がないのに、刃渡一四・六センチメートルのあいくちに類似する登山用ナイフ一振を携帯したとの点は無罪。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は

第一、大阪方面に出稼を希望していたが両親に反対されたことに憤慨し、酒勢をかりて、昭和三六年三月二五日前九時頃松山市藤原町四八三番地の自宅において斧をもつて自宅のガラス戸その他建具、家財道具等を損壊したが、これを制止しようとした父西山佐太郎に対し鋸を振つて暴れ廻り、これを同人の左顔部に当て、更にこれを制止しようとした母西山さだえに対しても右同様鋸を振つて暴れ、これを同女の左腕に当て、因つて右佐太郎に対し治療約五日間を要する顔面挫創の傷害を、右さだえに対し治療約五日間を要する左前腕擦過創の傷害をそれぞれ負わせ、

第二、同日午前一〇時頃前同所において、犯罪防止のため急を聞いて駈けつけた松山東警察署勤務制服巡査秋山豊外三名及び同私服巡査高橋博外四名が前項の暴行を制止しようとするや、右斧を振り上げ「近寄つたら叩き殺すぞ」と威かくし、同巡査等に斧を取り上げられるや自己の腹部に隠し持つていた登山用ナイフを振りかむつて右高橋巡査に突きかかる等し、もつて同巡査等に脅迫暴行を加えて同巡査等が共同して行う職務の執行を妨害し

たものである。

(証拠の標目)(略)

(適条)

判示第一の各傷害につき刑法第二〇四条罰金等臨時措置法第二条第三条(いずれも懲役刑選択)、判示第二の点につき刑法第九五条第一項(懲役刑選択)。同法第四五条前段第四七条本文第一〇条、第二五条第一項

なお、本件公訴事実中、第三の被告人が昭和三六年三月二五日午前一〇時頃前記被告人方自宅において、業務その他正当の理由がないのに、刃渡一四・六センチメートルのあいくち類似の登山用ナイフ一振を携帯したとの点について考えるのに、銃砲刀剣類等所持取締法第二二条にいわゆる携帯とは、日常生活を営む自宅ないし居室以外の場所においてこれを身辺に置くことを謂うのであつて、居宅内でこれを所持していたとしても右法条の携帯には当らないものと解するのが相当であるところ、いま本件についてこれをみるに、前記各証拠によると、被告人は前同刃渡一四・六センチメートルの登山用ナイフを被告人方自宅において所携していたに過ぎないことが明らかであるから、この点は結局罪にならないと解するので、刑事訴訟法第三三六条により無罪の言渡をなすべきものである。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 加藤竜雄)

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