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松江地方裁判所 昭和43年(ワ)49号 判決

原告

足立一男

右代理人

君野駿平

被告

一畑電鉄労働組合

右代表者

川上仁也

右代理人

片山義雄

主文

一、原告が被告に対し、雇傭契約上の地位を有することを確認する。

二、被告は原告に対し、

(1)  昭和四二年一一月一日から昭和四三年三月末日まで

一ケ月金三八、〇二〇円の割合による金員を

(2)  同年四月一日から昭和四四年三月末日まで

一ケ月金四三、二四六円の割合による金員を

(3)  同年四月一日から昭和四五年三月末日まで

一ケ月金五〇、二九〇円の割合による金員を

(4)  同年四月一日から昭和四六年三月末日まで

一ケ月金五八、七七八円の割合による金員を

それぞれ支払え。

三、被告は原告に対し、金六一一、〇一二円およびこれに対する昭和四六年一月一日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

四、訴訟費用は被告の負担とする。

五、この判決は主文第二および第三項にかぎり仮に執行することができる。

事実

〈前略〉

第三、請求原因

一、(当事者の関係)

被告組合は、訴外一畑電気鉄道株式会社(以下単に一畑電鉄という。)の従業員をもつて組織されている労働組合で、原告は昭和三三年一一月二三日以降被告組合に書記として雇傭され以来組織、教育宣伝、青年婦人部関係の事務を執つてきたものである。そして原告と被告組合との雇傭関係については被告組合職員規程により、被告組合と一畑電鉄との間の労働協約、就業規則、退職金支給規程(以下本件就業規則等という。)などが適用される旨定められている。

二、(雇傭関係の終了)

被告組合は昭和四二年一〇月三一日をもつて原告との間の雇傭関係が終了したと主張し、原告の提供する労務を受領しない。〈後略〉

理由

一、請求原因第一、二項の事実は当事者間に争いがない。

二、よつて次に第一次解雇の効力について検討する。

〈証拠〉を総合すると次の事実が認められる。

一畑電鉄は鉄道、バス、ハイヤー、遊園地、自動車道、自動車教習所、百貨店等の事業を営む株式会社であつて、その他にホテル一畑、株式会社一畑ストアー、一畑興業株式会社等の傍系会社を支配し、合同汽船株式会社、島根BS株式会社、島根いすず自動車株式会社に対し資本参加する等、島根県下における最大の企業である。一畑電鉄従業員は昭和二九年頃まで私鉄中国地方労働組合(中国地方における私鉄関係従業員で組織されているいわゆる産業別組合であつて総評傘下の私鉄総連に加盟している。以下私鉄中国という。)に加入し私鉄中国一畑支部を組織していたが、同年頃右私鉄及び島根県労働組合評議会(以下県評という)を各脱退し企業内組合である被告組合を結成した。山陰地方における交通関係企業で一畑電鉄に次ぐものとしては鳥取県に本社をおきバス、ハイヤー等の事業を営む日の丸自動車株式会社並びに島根県西部において同様の事業を営む石見交通株式会社があり、右両会社の従業員の一部は私鉄中国に加入し、各私鉄中国日の丸自動車支部及び私鉄中国石見交通支部(私鉄日の丸及び石見支部)を組織している、山陰における交通企業労働者の経済的地位向上のため昭和三六年頃私鉄日の丸支部、同石見支部、被告組合、鳥取県ハイヤー、タクシー労働組合(以下鳥取県ハイタクという)、全但交通労働組合等が集つて山陰交通協議会(山交会)が組織され、毎年例会を開いて労働条件に関する情報及び賃上交渉の時期方法等について意見の交換を行つて来たが、昭和三九年一〇月頃被告組合は後記一畑電鉄と石見交通株式会社との合併に関する見解の不一致から山交会を脱退したので同会は自然消滅の状態になつた。被告組合は私鉄総連の階級闘争第一主義、企業合理化反対社会党支持への固執を批判して私鉄中国を脱退し、労使協調による従業員の経済的地位の向上を標榜して企業内組合を結成したが、その後企業内にとじこもつて労使協調を強調する余り、組合活動が漸次不活発になつた。同年一〇月一〇日頃一畑電鉄と石見交通株式会社の企業合併問題が起つたが、私鉄石見支部は一畑電鉄従業員の労働条件が石見交通より劣つているとして右合併に難色を示し、私鉄中国本部及び県評と結んで、被告組合員に対し同組合の御用組合化による労働条件の低下を広報する宣伝活動をなしたので、被告組合員の中にも自分達の労働条件が山陰地方の他の交通企業のそれより劣つているのではないかとの疑問を持ち、会社に癒着しがちな被告組合執行部に批判の声を上げる者(批判グループ)が現れ、被告組合も組織擁護の立場から私鉄中国、県評及び批判グループに対し極度の警戒心を抱くようになつた。昭和四〇年一月頃右合併問題は一畑電鉄の意向で打切りになつたが、批判グループは同四一年七月頃から一畑電鉄労働組合有志会の名義で「御用組合では私達の生活はよくなりません。」などの表題を付し、暗に現執行部を批難するビラ(前掲乙第四、五号証)を被告組合員の各自宅に郵送し、他方被告組合もこれに対し執行委員長名義で右ビラを攻撃し、組合員の団結を要望する趣旨のビラ(前掲乙第六号証)を各組合員に配布した。翌四二年六月に行われた被告組合執行委員の選挙に当つては、批判グループの有力メンバーである矢島が書記長、景山が執行委員長に、被告組合の執行委員長であつたが現体制に批判的であつた池尾が執行委員長に各立候補し、被告組合側より立候補した高橋堅、菊本和寿、川上仁也などと対立したが、景山及び矢島は落選した。右選挙に際して会社の職制が右景山及び矢島等に立候補の取り止めを働きかけるなど、批判グループに対する選挙干渉が露骨に行われた旨の風評が流れた。改選により執行委員長になつた池尾は山交会に復帰の意向を持つていたので、山交会事務局は右池尾に対し電話で同年七月四日松江労働会館において行われる山交会準備会への出席を案内した。同準備会には被告組合執行部から一人も出席しなかつたが、矢島及び景山が出席し、同席した私鉄日の丸支部及び私鉄石見支部の三役、鳥取県ハイタク、鳥取県ハイヤータクシシー労働組合日の丸ハイヤー支部、日の丸トラック労働組合の組合役員等と共に前記被告組合役員改選の際の会社の選挙干渉、組合の御用組合化傾向等について討議がかわされ、その結果右問題について私鉄日の丸支部及び私鉄石見支部が広報のためのビラを作成して各職場に配布する旨が決議された。その後間もなく、「一畑資本の組合弾圧“不当な手段”でますます猛威をふるう“団結強化”のため頑張る一畑の仲間達に支援を決議」と題する無記名のビラ(乙第三号証)が私鉄日の丸支部及び私鉄石見支部の組合員に配布された。被告組合は右山交会に出席した被告組合員有志が誰でありさきに配布された前掲乙第四、五号証のビラ配布の用に供された被告組合員名簿が何人により持出されたかを詮議していたところ、同月二〇日頃開かれた山交会の準備会において被告組合執行委員曽田保雄が右七月四日の山交会の会合に原告が参加していたことを伝聞した旨報告したので、原告が被告組合に無断で右会合に出席して組合を誹謗し、被告組合員名簿を持出して前記ビラ配布の便に供したものと判断した。原告は同年一〇月一四日夕方頃妻の就職先を斡旋してもらうため労働会館に県評の名原和男を訪ね、同所において、たまたま同館内の労働金庫に来ていた旧知の間柄である私鉄日の丸支部の書記長神波尚典と出会い、二人で松江駅前の一文字屋食堂に赴いたところ、同所で矢島、景山及び被告組合員千原が飲食していたのでこれと合流し、夕食を共にした。被告組合執行部は右景山等を一文字屋食堂から広瀬方面に送つていつた一畑電鉄母衣町営業所のタクシー運転手から会食の事実を知らされ、前記山交会への無断出席問題と合せて、原告は批判グループと組んで被告組合執行部を誹謗し分派活動をなしたものと断定し、同年一〇月二五日頃執行委員会において原告に対する査問を行つたところ、原告は査問に対して容易に応答せず山交会への出席及び右矢島、景山等との会食を否認し、自分は社会党員であつて、現在の執行部に対して不満をもつている旨の発言をしたので、被告組合執行委員会はその頃原告を反組合活動及び組合に対する忠実義務違反を理由に懲戒解雇する旨を決定し、被告組合は昭和四二年一〇月三一日原告に就業規則第九二条第二号、第三号及び第五号に該当する事由があるとの理由で懲戒解雇(第一次解雇)の意思表示をなした。〈証拠判断―略―〉

そこで、まず昭和四二年七月四日原告が前記山交会の会合に出席したとの点(第五の一の(三)の1の事実)について検討してみるに、〈証拠〉を総合すると、原告は同日午後零時半頃、勤務先の大社工芸有限会社の倒産により失職した妻の再就職先を斡旋してもらうため労働会館内の県評事務所に旧知の名原を訪ね、右倒産会社の従業員数名と共に名原と再就職問題について懇談したことが認められるが、〈証拠判断―略〉、他に原告が前記山交会の会合に出席したとみられる証拠はない。又〈証拠〉によれば前掲無記名のビラ(乙第三号証)の文案は私鉄石見支部の書記長佐々木辰美の筆になるところ、右ビラの内容について原告が関係していたと認めるに足る証拠はない。被告組合は原告が無断で組合員名簿を持ち出し、前掲乙第四、五号証のビラの配布の用に供した旨主張する(第五の一の(三)の3の事実)が、原告が組合員名簿を無断で持ち出したと認めるに足に足る証拠はなく、かえつて(証拠)によれば右名簿は昭和四二年一月に行われた衆議院選挙に際して被告組合から県下の社会党総合対策本部に提出されており、同年七月当時他の組織においてこれを利用しうる状態におかれていたことが認められる。原告が第一次解雇前に批判グループと意を通じ「有志会」等の活動に関係していたとの点については(証拠)を総合すると被告組合執行部のたんなる憶測にとどまるものであつて、これを認めるに足る証拠はない(もつとも前記認定のとおり原告は昭和四二年一〇月一四日頃批判グループに属する矢島及び景山と一文字屋食堂で会食しているが、この事から直ちに原告が批判グループと関係していたものと認めることはできない)。同年一〇月二五日頃の被告組合執行委員会の査問において原告が査問に容易に応答せず、侮辱的態度をとつたことはある程度認められるが、右査問が原告の懲戒を目的とするものである以上原告にも自己負罪不強制の特権を認めるべきであるから、査問に対し正直に応答しなかつたことをもつて被告組合執行部を侮辱したとはいえず、又前記認定の程度では原告の行為が本件就業規則第九二条第二号又は第三号の解雇事由に相当する程度のものであつたとは到底認めがたい。

以上の次第で第一次解雇は本件就業規則第九二条所定の解雇事由を欠いているからその手続上の瑕疵について判断するまでもなく、無効であるといわなければならない。

三、そこで次に第二次解雇の効力について検討する。

(証拠)によれば被告組合は第二次解雇にさいして原告に対し解雇の理由として、本件就業規則第一〇四条第三号、第四号の事実即ち、被告組合と一畑電鉄との間に新たに締結された組合専従者協定に基づき被告組合の三役を組合専従者としたので男性書記は不要となつたこと、被告組合の人件費節約のため高給者である原告を解雇する必要のあることを告知したことが認められるが、(証拠)を総合すると、第二次解雇は右理由の他に次の理由、即ち、原告が被告組合と対立関係にある私鉄中国地方労働組合一畑支部(以下私鉄一畑支部という)及びその上部団体である県評に加担し、被告組合に反抗する態度を示し本件仮処分決定後も一畑支部の業務に従事する等、被告組合の書記として忠実性を欠いていることを本件就業規則第一〇四条第三号、第四号の「やむを得ない業務上のつごう、或はその他のやむを得ない事由」に当るものと解したことが認められる。

一般に労働組合の書記局などに雇傭されている労働者は私生活においても当該組合の結成された趣旨及び目的と基本的に牴触する行動を慎しむべき忠実義務があり、右労働者の職場外におる私的活動いえどもそれが雇主である労働組合の団結を侵害し、または侵害する虞れのある場合は解雇の正当事由に当るものと解するを相当とするから、被告組合の従業員に右のような事由の存するときは本件就業規則第一〇四第第三号、第四号によりこれを解雇するこができるものと解せられる。

そこで先ず原告に右のような忠実義務違反があつたかどうかを検討する。

〈証拠〉を総合すると次の事実が認められる。

第一次解雇後被告組合は原告の就労を拒否し、賃金を支払わないので、原告は昭和四二年一二月二二日松江地方裁判所に対し地位保全仮処分申請をし、同裁判所は原告の申請を認容し同年一二月二八日本件仮処分決定をした。被告組合は右決定に従い原告に対し第一次解雇後の諸給与を支払つたが、その就労をあくまで拒否した。原告は昭和四三年三月二二日に被告組合を相手方として右裁判所に対し第一次解雇の無効確認訴訟(本訴)を起し、県評及び批判グループが中心となつて原告を守る会が結成された。批判グループは昭和四二年三月頃一畑労組民主化同志会の名称で一畑電鉄バス従業員の労働条件が日の丸自動車及び石見交通株式会社の従業員のそれに比していかに劣つているかを広報するパンフレット(甲第七号証の一ないし四)を組合員に配布し、次いで会社職制の民主化同志会員に対する不当弾圧及び原告の解雇を攻撃し、被告組合執行部側を御用幹部と呼び、同月二五日行われる被告組合執行委員の改選には民主化同志会の池尾勇、今岡祥明等に投票するよう呼び掛けるビラ(前掲乙第七ないし九号証、第一一ないし一四号証)を配布したが改選の結果批判グループの立候補者はいずれも落選し、執行委員長に川上仁也、同副委員長に田儀享興、書記長に高橋堅が各当選した。一畑電鉄は同年一月一七日出向拒否を理由に景山を、同年三月三一日タクシーの不正使用を理由に矢島を、同年二月二七日右選挙の際会社を誹謗するビラを撤いたことを理由に今岡を、同月二二日回数券の横領を理由に安倉久夫を、同年四月九日飲酒して寮で暴行脅迫を働いたとの理由で岩成貞幸を各懲戒解雇したが右五名はいずれも民主化同志会の主要なメンバーであつた。被告組合は前記認定のとおり昭和二九年頃私鉄中国を脱退してからは中立労組の立場を貫いて来たが、同四三年五月二五日頃同盟に加盟し、同日頃批判グループは被告組合を脱退して私鉄中国に加入し、私鉄一畑支部を結成した。被告組合は昭和四二年頃から一畑電鉄に対し専従協定の締結を申し入れていたが、一畑電鉄は執行委員長と書記長が半日組合業務に従事することを黙認するとして協定の締結を拒んでいたところ、同年七月に至つて突如右申し入れを受け入れ、被告組合との間で組合員八〇〇人につき一名、八〇〇人をこえるものについては五〇〇人につき一名の割合で従業員が組合の業務に専従することを認め、その間は休職とする旨を骨子とする専従協定を締結し、その結果翌八月頃までに前記川上執行委員長、田儀副執行委員長及び高橋書記長が専従を開始した。右専従開始前の被告組合書記局の陣容は、女子事務員五名(内一名は臨時雇)と原告の六名であり、第一次解雇前原告は唯一の男性書記として組合の福利厚生に関する事務の他、広報のためのビラの起案、職場集会への出席など被告組合の教宣及びオルグ活動を行い、更に執行委員会及び本部委員会に出席し議事録を作成する等、被告組合において重要な職務を担当していた。原告は被告組合が本件仮処分後もその復職を許さないので、第一次解雇から第二次解雇までの間県評に出入りし、前記原告を守る会のメンバーと連絡をとつたり、民主化同志会及び私鉄一畑支部発行のビラの作成を手伝つたり、前記一畑電鉄より解雇された者の地労委提訴及び訴訟提起を支援する活動などに従事してきた。以上認定に反する原告本人尋問(第一回)の結果は前掲各証拠に照して採用できず、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。

右事実によれば、原告は第一次解雇から第二次解雇に至るまでの間被告組合と対立関係にある県評、被告組合から分裂し第二組合を結成した批判グループ及び私鉄一畑支部の構成員と交流し、民主化同志会、私鉄一畑支部等が被告組合を御用組合呼ばわりし、批判攻撃したビラの作成に関与し、一畑電鉄より解雇された私鉄一畑支部組合員の地労委提訴及び訴訟提起を支援する活動をしたのであるから、その行動は一応被告組合書記としての忠実義務に違反し、被告組合の団結を脅やかすものであるということができる。しかしながら前記認定事実に〈証拠〉を総合すると、原告が右のような行動に出たのは被告組合が違法な懲戒解雇をあえてし、原告との雇傭関係は終了した旨抗争して原職復帰を命ずる本件仮処分決定に従わず、原告の就労をあくまで拒否し、原告を落胆させ、その結果原告を支援団体である県評及び批判グループ側に追いやつたためであつたことが窺われる上、被告組合としても原告との間に雇傭関係がない旨主張している以上、平常の場合と同じような忠実義務を被解雇者である原告に要求できない立場にあるから、原告の前記行為は本件就業規則第一〇四条第三号、第四号の「やむを得ない業務上のつごう或はその他のやむを得ない事由によるとき」には当らないものといわなければならない。

そこで次に人件費節約のための解雇の必要が同条所定の解雇事由に当るかどうかにつき検討する。

〈証拠〉並びに前記認定事実を総合すると次の事実が認められる。

昭和四三年当時の被告組合の組合員総数は約二、〇七〇名、同四四年度における総収入額は一九、三七三、九六六円(内訳前期繰越金三〇六、四九九円、組合費一八、三六四、九四七円、雑収入一、三一五、五一八円)支出のうち人件費は七、七〇三、四九四円(内訳役員手当二、二四三、四〇〇円、給料五、〇三六、〇二三円、その他四二四、〇七一円)であつて人件費が総収入の約四〇%をしめていた。昭和四三年九月当時被告組合の書記局職員は女子事務員五名(内一名の臨時雇は同月頃原告と同様解雇された)と原告の六名であつたが、被告組合三役が専従する前は原告が唯一の男性書記として前記認定のとおり組合書記の仕事の他本来専従役員が行うべき業務までも代つて行つていたところ、昭和四三年八月三役専従が開始されてからはその大部分を専従役員自らが行うことができるようになつた。当時原告は被告組合職員のうち最高給者でその給与は一ケ月約三八、〇二〇円、専従者三名の給与は一ケ月約一五万円であつた。以上認定を動かすに足る証拠はない。

組合財政の面から見ると人件費が総収入の四〇%に及んでも特に過大であるとはいえないが、人件費を節約し、その分を組合員の福利厚生及び組合活動費にまわすことは健全財政の建前から望ましいことであり、特に三役専従によつて組合書記局の人員が一挙に五割方増加したのであるから、書記局職員を一部解雇し人件費の節約をはかる必要のあつたことは一応認められる。しかしながら〈証拠〉によれば、私鉄日の丸支部では組合員一、四五〇名に対し書記局の人員は専従者三名、職員八名であり、一般には組合員三〇〇名につき専従者一名、職員一名を擁していることが認められる。右事実に〈証拠〉を総合すると専従開始後においても被告組合書記局の人員は他組合に比して過大であるとはいえない上、組合活動を充実し組合員に対し木目細かいサービスをするためにはこの程度の人員を必要とすることが認められる。そうだとすると人件費節約を理由としているものゝ被告組合の第二次解雇の真の動機は前記認定にかゝる原告の不忠実性及び反組合活動並びに原告の就労を拒否しながら本件仮処分に従つて諸給与を支払わねばならぬ経済的苦痛にあるものと認めるのが相当である。従つて被告組合の主張する過員整理は本件就業規則第一〇四条第三号、第四号の「やむを得ない業務上のつごう、その他やむを得ない事由によるとき」に当らないものというべきである。

四、以上の次第で被告組合主張の第一次、第二次解雇の意思表示はいずれもその要件を欠くから無効であつて、原告、被告組合間の雇傭関係は依然として存続しているところ、右雇傭関係が存続するとすれば、原告が被告組合に対し原告主張のような賃金及び臨時給与金請求権を有することは当事者間に争いがないから、原告の本訴請求をすべて認容することにし、訴訟費用の負担につき民訴法第八九条、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項を各適用して主文のとおり判決する

(元吉麗子 野間洋之助 今井俊介)

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