大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

松江地方裁判所浜田支部 昭和38年(わ)44号 判決

被告人 藤田正昭

昭二・八・一五生 貸席業

主文

被告人を懲役参月に処する。

未決勾留日数中拾五日を右本刑に算入する。

押収にかかる日本刀一振(昭和三八年押第一五号)は、これを没収する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

罪となるべき事実

被告人は奥田貞和を会長とする港祐会の幹部会員であるが

第一、昭和三十八年四月二十八日頃の夜浜田市琵琶町五十二番地オーシヤン・バーこと小谷寿美男方店舗において酔客早稲本勉(三十五年)と右奥田のことから口論となり、早稲本を同店前路上に連れ出して顔面を右手で二、三回殴打して暴行を加え

第二、被告人の情婦河崎ミヤと本田唯市(四十九年)とが情交関係を結んだうわさを聞き、そら真偽を糺すべく同年五月上旬頃同市紺屋町八十三番地の二被告人居宅に右本田を連行し、同所奥六畳の間において同人を難詰中「不義をすれば二つに重ねて四つに切られても仕方があるまい」と申し向け、同人の生命、身体に危害を加うべき旨を暗示して脅迫し

第三、法定の除外事由がないのに同年七月八日頃前記被告人方居宅において刃渡り約四十五糎の日本刀一振(昭和三八年押第一五号)を所持し

たものである。

証拠(略)

累犯加重となる前科

被告人は松江地方裁判所浜田支部において(一)昭和三十年六月二十九日傷害罪等で懲役八月執行猶予三年に処せられ、該執行猶予は同三十二年三月五日取消され(同月九日確定)、(二)同三十二年二月十二日恐喝罪等で懲役一年に処せられ、当時右刑の執行を受け終つたものであることは被告人の当公廷における供述並びに前科調書、刑執行に関する電話聴取書により明らかである。

弁護人の主張に対する判断

弁護人は判示第三の日本刀は、銃砲刀剣類等所持取締法にいう刀剣の実質を具えていないから同法の刀剣に該当しないと主張する。そこで本件日本刀を観察すると、刀身の上身部が折損し、残部の刀身部分は錆びつきしかも切先は鈍角のような状態になつており、現状のままでは刀として人畜に対する殺傷機能を有しないことが明らかである。また一方刀身の上身部を継ぎたさなくとも鈍角な切先を研磨すれば、右機能を回復するに至ることも明らかである。

而して同法にいう刀剣類には損障のため刀剣としての機能に障害があつても通常の修理をすればその機能の回復が可能のものも含むと解するを相当とするところ、本件日本刀と被告人の検察官に対する供述調書の記載を綜合すると、被告人は刀身の刃の部分を鑢で削り落したため前記のように鈍角な刃となつたものであるが、特別高度の技術、知識を有する者でなくとも更に鑢等を使用して研磨し殺傷機能を有するに足るだけの修復は可能であることが認められるから、弁護人の右主張は採用できない。更に弁護人は、警察官がしばしば被告人宅を訪れ判示第三の日本刀を被告人が所持している事実を知りながら何等の処置もなさず、いわば黙認していたものであるから、被告人に違法の認識がないと主張するけれども、かりに右事実があつたとしてもそれだけでは故意を阻却するものということはできない。この主張もまた採用できない。

適条

第一事実につき、刑法第二百八条(懲役刑選択)

第二事実につき、同法第二百二十二条第一項(懲役刑選択)

第三事実につき、銃砲刀剣類等所持取締法第三条第一項第三十一条第一号(懲役刑選択)

累犯加重につき、刑法第五十六条第五十七条

併合加重につき、同法第四十五条前段、第四十七条、第十条(第三の罪の刑に加重)

その他 同法第二十一条第十九条第一項第一号第二項刑事訴訟法第百八十一条第一項本文

(裁判官 荒石利雄)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com