大判例

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横浜地方裁判所 昭和39年(行ク)3号 判決

申請人 横浜勤労者音楽協議会

被申請人 東京国税局長

訴訟代理人 岩佐善己 外三名

主文

本件申請を却下する。

申請費用は申請人の負担とする。

理由

申請人は「被申請人に対し別紙滞納金目録記載の入場税及同加算税の滞納処分として別紙差押物件目録記載の物件に対し為した差押については横浜地方裁判所昭和三九年(行ウ)第一〇号課税処分取消請求事件の判決ある迄強制執行の続行を停止する。」との裁判を求め、その理由として、

「一、横浜中税務署長は申請人に対し別紙滞納金目録記載のとおり入場税及び同加算税の課税処分をなし、被申請人は右税金の徴収手続を引継ぎ、滞納処分として昭和三九年一一月一二日別紙差押物件目録記載の物件を差押えた。

二、しかし右課税処分は違法であり取消を免れない。すなわち申請人は横浜市及びその周辺の勤労者の音楽愛好者のサークルを単位として組織され、会員の自主的な企画運営により、よい音楽を安く聞く一切の活動を行い、我国のすぐれた音楽遺産を継承し、その普及と発展に努力することを目的とする団体で、その活動の一つとして、会員各自が協同して定期的な音楽会等を開催しているが、申請人が主催するのでないから申請人は入場税法第二条の主催者ではない。又申請人は入場料金を何人からも領収していない。会員が醵出する会費は、会員たる身分の取得存続の条件で音楽会を観賞すると否とに拘らず醵出する義務を負い、これは例会の諸費用のほか申請人の諸活動の為に使用されるのであつて音楽、舞踊を観賞するための入場の対価ではない。従つて申請人は入場税法第三条に定める入場税の納付義務者ではないから課税処分を受けるいわれはない。

三、そこで申請人は右課税処分取消の本訴を昭和三九年九月八日横浜地方裁判所に提起し(当庁昭和三九年(行ウ)第一〇号)右訴は現に係属中である。

四、そして右課税処分の滞納処分として被申請人より差押を受けた物件中別紙差押物件目録一、二、四は申請人が日常の用務に使用しており、同三の扇風機も夏季には使用するからこれらにつき搬出、公売処分がなされたときは回復し難い損害を蒙るので、これを防止するため行政事件訴訟法第二五条により本件申請に及んだ。」と述べた。

よつて判断するに申請人は強制執行の続行の停止を求めているが滞納処分の続行の停止を求める趣旨と解されるところ申請人提出にかかる疏明資料によれば差押物件目録記載一、二、四の物件は現に日常使用され、同三の物件も夏季には使用されるいずれも申請人の日常の用務に必要な物件であることは認められるから、これらにつき換価処分が行われれば、通常これら処分を受けることにより当然生ずる不利益を申請人が蒙るべきことは容易にうかがわれるところであるが、しかしこれにより回復が困難な損害を蒙り、且つその損害を避けるために緊急の必要があることにつき疏明がない。

以上の次第で本件申請は認容し難いからこれを却下することとし、申請費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり決定する。

昭和三九年一二月二五日

(裁判官 石橋三二 深田源次 千葉庸子)

滞納金目録〈省略〉

差押物件目録〈省略〉

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