大判例

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横浜地方裁判所 昭和60年(行ウ)48号 判決

神奈川県横浜市緑区竹山三丁目二番四号

竹山団地三二〇一号棟一四二号室

原告

坂本勝彦

右訴訟代理人弁護士

山内忠吉

小口千恵子

山田泰

同県同市同区長津田四丁目一番一二号

被告

神奈川税務署長事務承継者 緑税務署長

松田邦夫

右指定代理人

細田美知子

江口育夫

赤穂雅之

藤巻優

大谷勉

中村有希郎

右当事者間の頭書請求事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

一  本件訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  神奈川税務署長が原告に対して昭和五八年三月一二日付けでした次の処分をいずれも取り消す。

(一) 原告の昭和五四年分以後の所得税の青色申告書提出承認の取消処分

(二) 原告の昭和五四年分ないし同五六年分の各所得税更正処分及び各過少申告加算税賦課決定処分(但し、昭和五四年分については、同六〇年六月二七日付けの審査裁決により一部取り消された後のもの)

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  本案前の答弁

主文と同旨

2  本案に対する答弁

(一) 原告の請求をいずれも棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は、内装工事業を営み、所得税の青色申告書の提出承認を受けていたところ、神奈川税務署長は、昭和五八年三月一二日付けで原告の同五四年分以後の所得税の青色申告書の提出承認を取り消す旨の処分をした。

2  また、神奈川税務署長は、昭和五八年三月一二日付けで原告の同五四年分ないし同五六年分の所得税についていずれも更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分をした。これらの処分の内容及びその前後の課税の経緯は、別紙一ないし三のとおりである。

3  緑税務署長は、右1、2の各処分後に神奈川税務署長の事務を承継した。

4  しかしながら、右1の青色申告承認の取消処分には処分事由を欠く違法があり、右2の各処分には原告の所得を過大に認定した違法がある。よつて、原告は右各処分(一括して、以下「本件処分」という。)の取消しを求める。

二  被告の本案前の主張

本件訴えは、次に述べるとおり、出訴期間を徒過した不適法なものであるから、却下されるべきである。

1  処分の取消しの訴えは、処分につき審査請求することができる場合において、審査請求があつたときは、その審査請求をした者については、これに対する裁決があつたことを知つた日から起算して三か月以内に提起しなければならない(行政事件訴訟法一四条四項、一項)ところ、本件に係る審査請求についての裁決書謄本(以下「本件裁決書謄本」という。)は、昭和六〇年七月三一日、原告に送達された。したがつて、原告は、同日裁決があつたことを知つたものであるから、同年一一月一日に提起された本件訴えは、出訴期間を徒過した不適法な訴えである。

2  仮に、昭和六〇年七月三一日に本件裁決書謄本在中の郵便物を受領したのが原告の妻であり、原告自身はこれを同年八月一日に受領し同年八月四日に開披したとしても、原告の不在中にあつても原告宛郵便物を受領する権限を有する原告の妻が「裁決書謄本在中」と明記された封筒を受領した以上、原告は、原告の妻が本件裁決書謄本を受領した日である昭和六〇年七月三一日に行政事件訴訟法一四条の「裁決のあつたことを知つた(日)」ものというべきである。

三  請求の原因に対する被告の認否

請求の原因1ないし3記載の事実は認め、同4は争う。

四  本案前の主張に対する原告の反論

郵便局員が本件裁決書謄本在中の原告宛の郵便物を配達するため昭和六〇年七月二六日ころ原告方を訪れたが、原告はこのとき不在であつた。そこで、原告の妻が同年七月三一日右郵便物を郵便局において受領し、翌八月一日これを原告に交付した。そして、原告は、同月四日神奈川民主商工会事務所においてこれを開披した。

以上のとおり、原告が本件に係る裁決(以下「本件裁決」という。)を知つたのは昭和六〇年八月四日であり、本件訴えは出訴期間を遵守した適法なものである。

第三証拠関係

本件記録中の書証目録及び証人等目録に各記載のとおりであり、これを引用する。

理由

一  請求の原因1ないし3の本件処分の存在及び課税の経緯等は当事者間に争いがない。

二  そこで、本件訴えが出訴期間を遵守しているか否かを検討する。

1  成立に争いのない乙第二号証の一ないし五及び原告本人尋問の結果(後記措信しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨によれば、本件裁決書謄本在中の郵便物には裁決書謄本在中と明記されていたところ、右郵便物は、原告にとつて重大な関心事であつたことから、昭和六〇年七月三一日原告の妻が神奈川県竹山郵便局に赴き、これを受領したこと、原告はこのころ旅行等で長期不在中というわけでもなかつたことが認められ、これを左右するに足りる証拠はない。そうすると、特段の事情がない限り、原告は、同日妻から右郵便物を受領したものと推定するのが相当である。

なお、原告本人の供述中、原告は、右同日に自宅と離れた作業現場で壁紙を貼る内装工事(原告が内装工事業を営むことは当事者間に争いがない。)を終え、完成した注文品をを同日の午後一一時ころ注文者のサンワホーム株式会社に引き渡し、深夜になつて自宅に帰宅したため、妻から右同日中には前記郵便物を受領しなかつた旨の供述部分は、請負人が午後一一時ころという遅い時間に注文者に対して完成した注文品、特に、日中に点検することが必要である壁紙を貼るという内装工事の引渡しをするということは通常考えられないところであり、たやすく措信することはできない。

そうすると、他に特段の事情も認められないので、原告は、前記のとおり、昭和六〇年七月三一日、仕事先から帰宅し、直ちに、妻から本件裁決書謄本在中と明記された郵便物を受領したと認めるべきである。

2  ところで、行政事件訴訟法一四条四項の「裁決があつたことを知つた日」とは、裁決があつたこと自体を知つた日であれば足り、同日に裁決書謄本在中の郵便物を開披して裁決書の内容までを了知する必要はないものと解するのが相当である。

そうすると、右1のとおり、原告が裁決書謄本在中と明記された前記郵便物を昭和六〇年七月三一日に妻から受領した以上、たとえ原告がその後になつてこれを開披したとしても、原告は本件裁決のあつたことを昭和六〇年七月三一日に知つたものといわなければならない。

3  右のとおり、原告は昭和六〇年七月三一日に本件裁決のあつたことを知つたものであるから、同日から起算して三か月を経過した後の同年一一月一日に提起されたことが記録上明らかな本件処分取消しの各訴えは、出訴期間を徒過したものとしていずれも不適法といわざるを得ない。

ちなみに、原告が妻から本件裁決書謄本在中の郵便物を昭和六〇年八月一日に受領した旨の原告の主張を前提としても、行政事件訴訟法一四条四項の期間計算については初日を算入すべきである(最高裁判所昭和五二年二月一七日第一小法廷判決・民集三一巻一号五〇頁参照)から、昭和六〇年八月一日を算入して同日から三か月を経過した後の同年一一月一日に提起された本件訴えは、やはり出訴期間を徒過した不適法なものといわざるを得ないのである。

三  以上のとおり、本件処分の取消しを求める原告の本件訴えは、いずれも出訴期間を徒過したものとして不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 古館清吾 裁判官 岡光民雄 裁判官 竹田光広)

別紙一 昭和五四年分

〈省略〉

別紙二 昭和五五年分

〈省略〉

別紙三 昭和五六年分

〈省略〉

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