大判例

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横浜家庭裁判所 昭和29年(家イ)168号 審判

申立人 西村みや(仮名)

相手方 西村定吉(仮名)

主文

一、申立人と相手方とを離婚する。

一、当事者間の長女正子(昭和十八年○月○日生)長男一郎(昭和二十一年○月○○○日生)二男二郎(昭和二十三年○月○○○日生)の親権者を申立人と指定する。

一、調停費用は各自の負担とする。

理由

本件申立の要旨は申立人は相手方と昭和十七年○月○日婚姻し夫婦の間に長女正子、長男一郎、二男二郎があり、婚姻以来夫婦協力扶助により家庭生活の幸福を念願とし家庭にあつて子女の監護養育と家政の切廻しに精進してきたが相手方は昭和二十八年七月から横浜市所在の日本○○○○株式会社に勤務中同年十一月から○○市内の同会社営業所へ転勤することとなり単身同地へ赴任した。

よつて申立人は三人の子女と共に申立人の実家にて生活していたが相手方は勤務会社の事業不振のため退職することとなり同地に於て他の会社へ就職した。

処が昭和二十八年十一月から相手方は申立人等親子に対する扶養費を送金せずして勝手気儘な生活をするようになつたので申立人は生活に困窮し当裁判所に対し昭和二十九年(家イ)第一〇八号夫婦同居調停の申立をなした結果同年七月二十二日「相手方は申立人に対し申立人及び当事者間の一郎、二郎の生活費として昭和二十九年八月から当分の間月額参千円を支払うこと」に調停が成立したのであるが相手方は三ヶ月間だけその履行をなし、その後は全然これを履行せず申立人の同人宛の窮状を訴えた手紙に対し返事すら寄越さないような状態であつた。

申立人は相手方の以上のような無責任不誠意な態度にも拘らず○○小学校の学校給食の賄婦として働き三人の子女の養育監護に努め相手方の改心の機を待つたのであるが相手方の夫婦として共同生活をする意思が全く窺れないような生活態度に最早その希望も絶え、到底相手方と夫婦関係を継続してゆく見込もなくなつたのでここに相手方との離婚を求めると共に前記子女の親権者を申立人に指定することの調停を求めるため本件申立に及んだものであるというにある。

本件調停委員会において調査した結果並に当事者本人の陳述によれば、申立人の主張する事実を認めるに難くなく右事実に現われた相手方の所為は悪意を持つて妻たる申立人を遺棄したものと認めざるを得ない。

殊に相手方はさきの昭和二十九年(家イ)第一〇八号の調停において申立人及び子女の生活費を支弁すべき旨調停が成立しておるのに拘らずその履行もせず又同居もしようとせずに漫然之を放擲しておる事実は相手方の人間的誠実を疑わざるを得ないところであつて本件婚姻が破綻するに至つた責任は挙げて相手方の側にあるものといわねばならない。従つて申立人の本件離婚の請求が正当なものであることは勿論、申立人と相手方との間の長女正子、長男一郎二男二郎の親権者は現実にその監護養育の責に任じておる申立人に定めることが正当と考える。

本件の調停委員会においてできるだけ双方の互譲により協議による妥結の得られるよう尽力したのであるが、相手方の誠意に欠くるところがあり、終に不調のやむなきに至つたのであるが、しかしながら家庭裁判所は本件の一切の事情を考慮した結果、調停不成立のまま本件を終らせず調停に代わる審判においてその結論を明かにするのが相当と認め家事審判法第二十四条第一項に則つて主文の様に審判する次第である。

(家事審判官 安藤覚)

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