大判例

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気仙沼簡易裁判所 平成5年(ア)71号 決定

被審人

甲野太郎

主文

本件について被審人を処罰しない。

理由

一当裁判所は、平成五年七月一四日、気仙沼市長から、被審人につき住民基本台帳法四五条に該当する事実があるとして通知を受けた。

二本件記録によれば、次の各事実が認められる。

1  被審人は、昭和五七年一二月二八日ころまで、住所地を生活の本拠地としながら、漁船員として遠洋漁業に従事していたが、北海道にある実家の面倒を見る必要等から、北海道に転居してアワビ漁等に従事しようと考え、同日、気仙沼市役所に転出届出をなし、その後、北海道へ赴いた。

2  しかし、被審人は、一旦は北海道に赴いたものの、北海道内で思うような仕事を見つけることができなかったため、新住所地を定めて転入届出をする間もなく、気仙沼市に戻った。

3  ところが、被審人は、気仙沼市役所に対してその旨を連絡することを失念していた。

4  被審人は、現在も元の住所地を生活の本拠地としながら、今日まで遠洋漁業に従事している。

5  なお、被審人の住民票は、平成五年五月二七日付けをもって、職権で回復されている。

三以上の認定事実によれば、被審人には、転出の意思があり、この意思に基づいて、気仙沼市役所に対し昭和五七年一二月二八日付け転出届出がなされたのであるから、被審人が虚偽の届出をしたことにはならない。

また、実質的には、被審人の住所には何らの変動もなかったのであるから、被審人には、転入届出及び転居届出をすべき義務もない。そして、一度転出届出をしながら、その後、転出を取り止めた場合の義務違反については、住民基本台帳法に処罰規定が設けられていないのであるから、この点においても、被審人に義務違反があるとはいえない。

四以上によれば、被審人には、住民基本台帳法四五条所定の義務違反があったとはいえない。したがって、本件につき被審人を処罰しないこととし、主文のとおりに決定する。

(裁判官夏井高人)

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