大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

水戸地方裁判所 昭和51年(ヲ)75号 決定

申立人

寺門為蔵

右訴訟代理人

大谷久蔵

相手方

吽野耕平

右訴訟代理人

林四郎

主文

一  当裁判所が、昭和五一年(モ)第四二六号換価命令申請事件において、相手方の申請により昭和五一年六月二一日なした換価命令はこれを取消す。

二  相手方の換価命令申請を却下する。

三  訴訟費用は相手方の負担とする。

理由

〈前略〉

第三当裁判所の判断

一〈略〉

二係争物に関する仮処分の目的物についての換価手続が許されるかという点については、仮処分においても債権者は保全の目的を全て特定物の給付に固執し目的物の個性に着眼しているものとは限らず、その物の持つ交換価値、経済価値の把握、即ち財産的利益の維持把握を主たる目的とする場合が多いのであるから、客観的にも主観的にも金銭的補償によつて債権者の請求保全の目的が代表される場合が考えられる。そして、このような場合に、仮処分の目的物が滅失毀損し、あるいは価額の減少が著しく、若しくは貯蔵に不相当な費用を生ずるときは、原則として、債権者の申立による換価命令を許容すべきであると考えられる。

さらに、債務者においても、仮処分の執行により異常な損害が発生するような場合、たとえば、目的物の価値の著しい下落を生ずるようなとき等は、債務者にも換価命令の申立を許容して権利の客体に代るものとして売得金を保管しておくことが債権者との均衡上、あるいは一般経済上からも妥当であり、右のような場合、債務者の申立による換価命令も許容されるものと思料される。

三そこで次に本件換価命令の適否について判断する。

1  前記当裁判所の換価命令申請事件記録、本件昭和五一年(ヲ)第七五号強制執行の方法に関する異議事件記録によれば、昭和三六年(ヨ)第一八号不動産仮処分申請事件において決定された仮処分は、別紙目録記載の物件に伐採、譲渡、質権、賃借権等の設定その他一切の処分禁止の仮処分であつて、目的物に対する執行官保管の仮処分決定はなされておらず、その後も目的物に対する差押、仮差押あるいは執行官保管の仮処分はなされていないことが認められる。

2  ところで、民事訴訟法七五〇条四項の換価命令は執行官の占有を前提とし、執行官に対してなされるものであるから、右条項を準用してなされる仮処分における換価命令も目的物が執行官の占有保管にあるものでなければならない。執行官は自己の占有保管下にあるもののみ競売できるのであつて、自己の占有保管していないものは、まず自己に占有を移転した後にはじめて競売しうるのである。したがつて、執行官の占有保管していない目的物に対する換価命令は、執行官に不能を命じるものであつて先当といわざるを得ない。

3  よつて、この点を看過してなされた昭和五一年(モ)第四二六号換価命令は失当であるから、その余の点について判断するまでもなく、本件申立は結局理由があることになる。

四以上により、当裁判所が昭和五一年六月二一日になした、昭和五一年(モ)第四二六号換価命令申請事件の換価命令は、前記のとおり発付の要件を欠く失当なものと解されるから申立人の異議を認容してこれを取消し、相手方の換価命令申請は理由がないから本決定においてこれを却下することとし、訴訟費用につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり決定する。

(菅原崇)

物件目録〈省略〉

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com