大判例

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浦和家庭裁判所川越支部 昭和63年(少)2983号 決定

少年 O・Y(昭49.11.27生)

主文

少年を教護院に送致する。

この少年に対して、昭和63年10月18日から向こう1年間に90日を限度として、強制的措置をとることができる。

理由

(ぐ犯事由及び非行事実)

少年は、

第一  ひったくり等の事件で、昭和63年7月18日埼玉県川越児童相談所に一時保護し、教護院に入所させる方針であったが、同年8月18日同児童相談所を無断外出し、1か月以上も所在不明となり、同年9月23日岩手県盛岡市で自動車事故を起こして保護されるまで、ほか数名と一緒になって自動車窃取、自動販売機荒し、恐喝などを繰り返していたもので、正当の理由がなく家庭ないし児童相談所に寄りつかず、犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖を有し、その性格、環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする恐れがある

第二  A、B、C、D子、E子、Fと共謀の上、

1  昭和63年9月16日午前零時ころ、埼玉県富士見市○○×丁目××番××号先駐車場内において、G所有の軽貨物自動車1台(時価45万円相当)を窃取した

2  同日午前1時ころ、同所××番先駐車場内において、H所有の軽貨物自動車1台(時価90万円相当)を窃取した

3  同日午前3時20分ころ、同県大宮市○○町×丁目××番地I方東側舗道上において、同人所有の自動販売機から現金約6万円を窃取した

4  同日午前5時10分ころ、同県富士見市○○×丁目×番××号先路上に駐車中のJ所有のワゴン車から、同人所有のガソリン約15リットル(時価1620円相当)を窃取した

ものである。

(適用法令)

ぐ犯 少年法3条1項3号ロ、ハ、ニ

触法(窃盗) 同法3条1項2号(刑法235条)

(教護院送致の理由)

少年は、小学校5年生ころから不登校が目立つようになり、小学校6年時にバイク窃取などを行い、昭和62年4月中学入学後も、怠学が続き、夜間外出が多くなり、バイクや四輪車を窃取して乗り回すなど非行化が進み、同年11月ころからは東京都東村山市の叔母の家に行っていたが、そこで従兄弟とひったくり7件、自転車の横領などの非行を次々重ね、中学2年になっても学校へはほとんど登校せず、本件ぐ犯事由記載の事情に至り、同年8月に児童相談所無断外出後は、同所で知り合ったBのもとに身を寄せ、その後共犯者らと共に本件触法(窃盗)事件を敢行するに至ったものである。

少年は、学習遅滞が著しく、潜在的な能力が未開発なままで人格的に未熟で耐性に乏しく、幼児的欲求充足行動に出やすい傾向がうかがえる。学校へは、周囲からのいじめなどのため適応できない状態が続き、健全な交友関係をもつことができないまま、不良な遊び仲間とつきあい、非行範囲も広がり、ぐ犯性が増している。

少年の実母は、酒乱で飲み過ぎては大騒ぎし、少年や姉に暴力を振るったり、時には包丁を持ち出し、あるいはガス栓を抜いたりして、そのため少年らが安眠すらできない状態が続いたこともある。その上、幼い妹を少年と姉に世話をさせ、自分はパチンコに行き、まともに食事も作らず、洗濯もしないため、少年は着たままで何日も過ごし、友人からもからかわれ惨めな体験をしている。少年の実父も飲んではすぐに寝てしまい、少年らが問題を起こすと叱責するのみである。少年の保護環境は劣悪というほかない。

このような少年に対しては、かかる保護環境から引き離し、健全な家庭的雰囲気の中で、基本的生活態度の習得及び規範意識の養成が必要不可欠であり、少年を教護院に送致して、少年本来の資質を開発して自信を持たせ、社会復帰に必要な実力をつける処遇が相当である。

(強制的措置許可申請事件について)

本件申請の趣旨は、「教護院送致後、無断外出を繰り返す可能性が高く、ひったくり、バイク窃取、自動車窃取等の問題があるため、大事故、大事件を起こすことが考えられるため、180日の期間強制的指置が必要と認められる。」というにあり、上記事情によれば開放施設では逃走するおそれが強いこと、他面で少年は衣食住の生活が安定すれば、素直に指導を受け入れる姿勢を有していると認められることにかんがみると少年に対して、昭和63年10月18日から向こう1年間に90日を限度として、強制的措置を許可することが相当と認められる。

(まとめ)

よって、少年法24条1項2号、18条2項を適用して、主文のとおり決定することとする。

(裁判官 小宮山茂樹)

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