大判例

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浦和家庭裁判所飯能出張所 昭和62年(家)131号 審判

申立人 岸田モエ子

相手方 大下光一 外2名

被相続人 大下きみ

主文

申立人の本件申立を却下する。

理由

1  申立の要旨

(1)  被相続人大下きみ(以下「亡きみ」ともいう。)は、昭和59年12月13日死亡し、同人の遺産について相続が開始した。

(2)  亡きみの相続人は、五女の申立人(昭和9年3月3日生)と、昭和50年6月24日に死亡した二男大下佐千雄の代襲相続人である相手方光一(長男)、同由美子(長女)及び同昌光(二男)の合計4名である。

(3)  亡きみの遺産は、別紙目録記載の物件を含む財産であつたところ、同人の遺言により同目録記載の物件は相手方3名が相続取得し、その余の財産はすべて、亡佐千雄の妻大下和子らに対する遺贈等により処分されている。

(4)  申立人は、昭和27年以降、被相続人の亡夫大下富治郎が経営していた大下燃料店の業務を手伝い、同人が所有していた不動産の保全、管理等に努力し、被相続人の入院にも付添うなどした。すなわち、申立人は、上記のとおり特別の寄与をしたものである。

(5)  申立人は、相手方らと、申立人の寄与について協議したが、整わない。

よつて、相当額の寄与分を定める旨の審判を求める。

2  当裁判所の判断

(1)  本件記録によれば、申立の要旨(1)、(2)のほか、亡きみは、昭和59年12月13日飯能市内で死亡したが、同女には相手方らと申立人以外にも共同相続人があるというべきところ、これらの者は、相続放棄の申述手続を経ておらず、本件申立の相手方ともなつていないことが認められる。

(2)  本件記録申立人に対する審問及び審判の全趣旨によると、次のとおり認められる。

(イ)  本件については、申立人はもとより、その他の者からも遺産分割の申立はなされていない。

(ロ)  申立人は、被相続人の遺産がその遺言により、別紙物件目録に記載のとおり、すべて相手方ら他において相続取得するなどして皆無となり、これがため結局遺産分割の実体審判を受ける余地がないか、あるいは遺産分割申立の利益を欠くことになり、自己の遺留分が侵害されているとして、昭和60年7月頃当出張所に相手方らに対する遺留分減殺請求の家事調停(昭和60年家イ第46号)の申立をしたが、同年12月20日不成立に帰した。

(ハ)  そこで申立人は、昭和61年2月14日浦和地方裁判所川越支部に相手方ら及び前記大下和子を被告として、遺留分減殺請求訴訟(同支部昭和61年ワ第57号)を提起し、同訴訟は現に係属中であつて、申立人は、本件について、今日まで遺産分割の申立をしていない。

(3)  叙上認定の事実及び前記訴訟の経緯等に照して考えると、本件については、申立人を含む誰からも遺産分割の申立はなされていないところ、申立人は、遺産分割の対象とすべき財産は既に皆無であるとして、夙に遺産分割申立の方法によらずに相手方(被告)に対する上記訴訟を提起し、同訴訟で主張した寄与分による自己の取得分の増大に資するため、今日本件申立に及んだものであるということは明らかである。

(4)  ところで、寄与分は、遺産分割の前提問題としての性格を有し、従つて寄与分を定める申立は、遺産分割審判の申立がある場合に限つて、これが申立をすることができるのである。しかるに、本件申立はその申立がされないままになされているものであるから、その余の点について判断するまでもなく、要件を欠いた不適法な申立として却下を免れない。

(5)  よつて、主文のとおり審判する。

(家事審判官 中橋正夫)

別紙 物件目録〈省略〉

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