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熊本地方裁判所 昭和33年(行)5号 判決

原告 山田時一

被告 熊本国税局長

訴訟代理人 小林定人 外四名

主文

原告の請求は、いずれもこれを棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「被告が原告に対し昭和三十二年十二月二十七日附をもつてなした原告の昭和二十七乃至二十九各年度所得税に関する各審査決定は、昭和二十七年度分につき、総所得金額六十六万七千四百円中六十四万九千二十五円を超える部分を、同二十八年度分につき、総所得金額百八十万五千四百円中百三万四千四百五十円を超える部分を、同二十九年度分につき、更正処分の一部取消の部分を除き、総所得金額九十八万八千三百円中六十二万八千六百円を超える部分をそれぞれ取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として、

「原告は、開業医を本業とするものであるが、大分税務署長に対し、昭和二十八年三月十五日、昭和二十七年度所得税につき、同年中の所得税を五十四万四千九百円として、昭和二十九年三月十五日、昭和二十八年度所得税につき、同年中の所得額を七十三万一千円として、昭和三十年三月十四日、昭和二十九年所得税につき、同年中の所得額を五十万四千五百円として、それぞれ確定申告をなしたところ、同税務署長は、いずれも昭和三十年七月十五日附をもつて、昭和二十七年度分につき、原告の申告所得額五十四万四千九百円を同金額に同年中の雑所得額として十二万二千五百円を加算した六十六万七千四百円に、昭和二十八年度分につき、原告の申告所得額七十三万一千円を同金額に同年中の雑所得額として百七万四千四百円を加算した百八十万五千四百円に、昭和二十九年度分につき、原告の申告所得額五十万四千五百円を同金額に同年中の雑所得額とし六十三万二千七百円を加算した百十三万七千二百円にそれぞれ更正する旨の決定をした。そこで原告は、右決定に対して同税務署長に再調査の請求をしたところ、同税務署長はこれに対する調査と決定を行わず、みなす審査請求として被告に送付し、被告は、いずれも昭和三十二年十二月二十七日、昭和二十七年度分につき熊協第一二九四号をもつて、同二十八年度分につき熊協第一二九七号をもつてそれぞれ右審査請求を棄却する旨の決定を、同二十九年度分につき熊協第一二九八号をもつて前記更正決定の一部を取消し、同年中の雑所得額を四十八万三千八百円と訂正して総所得額を九十八万八千三百円とする旨の決定をした。

しかしながら、昭和二十七乃至二十九各年度における原告の総所得額は次のとおりである。すなわち、各年度における事業所得、給与所得、配当所得等(以下「雑所得以外の所得」と略称する)の合計所得額は、前記確定申告のとおりであるが、その他に、非営業貸金による雑所得として、昭和二十七年度においては十万四千百二十五円の、同二十八年度においては三十万三千四百五十円の、同二十九年度においては十二万四千百円の各所得があつたので、結局原告の総所得額は、前記雑所得以外の所得額に、右の雑所得額を加算して、昭和二十七年度にあつては、六十四万九千二十五円、同二十八年度にあつては、百三万四千四百五十円、同二十九年度にあつては、六十二万八千六百円である。

よつて、原告は、被告のなした前記各審査決定中、各年度の総所得額につき、原告主張の各総所得額を超える所得額を是認した点を争い、同超過部分の取消を求めるため本訴に及んだ」旨陳述し、被告の答弁に対し、係争各年度における原告の雑所得額が被告主張の額であることを争うが、以下これを被告主張の別表第四乃至第九の記載に則して具体的に明らかにすれば、

(一)  被告主張の、昭和二十七年度において原告の収入すべき金額(別表第四)及び被告が仮定的に主張する同年中に原告が現に受領した収入額(別表第七)については、原告が訴外相田文亀に対し、昭和二十七年十二月、五十万円及び二十万円を、同首藤厚に対し、同二十六年四月二十六日二十万円を各貸与したこと、同谷口光夫に対する同二十七年中の貸付回数、利率、累計金額及び同人から同年中受領した利子収入額が六万七千五百円であることは、いずれもこれを認めるが、相田、首藤関係の貸付利率並びに利息額は争う。しかして、原告が、同年中の雑所得額として主張する十万四千百二十五円算出の明細は、別表第一に表示するとおりである。

(二)  被告主張の、昭和二十八年度において原告の収入すべき金額(別表第五)及び被告が仮定的に主張する同年中に原告が現に受領した収入額(別表第八)については、相田文亀、首藤厚に対し、同表記載の月、金額の各貸借があつたこと及び山田順三、谷口光夫に対し同表記載の月、約定利率、金額の各貸借があつたことは、いずれもこれを認めるが、各貸金の利息額及び相田、首藤関係の貸金利率は争う。しかして、原告が同年中の雑所得額として主張する三十万三千四百五十円算出の明細は、別表第二に表示するとおりである。

(三)  被告主張の、昭和二十九年度において原告の収入すべき金額(別表第六)及び被告が仮定的に主張する同年中に原告が現に受領した収入額(別表第九)については、谷口光夫に対し同年中十六回に亘り合計二百六十七万円を利率月五分の約定で貸与したことは認めるが、各利息金額はすべて争う。しかして、原告が同年中の雑所得額として主張する十二万四千百円算出の明細は、別表第三に表示するとおりである。

なお、原告主張の雑所得額算出の基礎となる利子収入額の計算については、所得税法第十条の「収入すべき金額」によらず、「現実に収入した金額」によつたが、右は、次のような特別の事情があつたゝめであつて、正当な計算方法というべきである。すなわち、原告の本件各貸金は、谷口光夫に対する分を限き、いずれも貸付元金の回収が不能ないし極めて困難な状態にあつたゝめ、原告は、専ら、元金の回収に意を用い、未収約定利息金の請求権は、事実上抛棄されていたのであつて、原告が現実に支払を受けた利子収入額以上の「収入すべき金額」は存しないのである。また、仮に、右特別の事情による利息請求権の抛棄が認められないとしても、本件各貸金の約定利率は月五分であつて、これを年利に換算すると年六割となり、旧利息制限法第二条所定の千円以上年一割、新利息制限法第一条所定の十万円以上百万円未満年一割八分の制限を超え、その超過分は裁判上無効とされ、且つ、強制力を伴わない自然債権であるから、これを「収入すべき金額」として計算すべきではなく、結局、本訴において、原告の雑所得額算定の基礎となる収入金額は、現に支払を受けた利子収入額と未収利息中利息制限法所定の限度に引直した金額の合計額に止むべきである。従つて、被告が雑所得額を算出するにつき、前記のごとき貸付元金の回収が不能ないし極めて困難な特別の事情ある場合を斟酌せず、通常の場合と同様、期限到来の利息債権額をそのまゝ収入すべき金額として計算した方法及び利息制限法所定の限度を超える約定利息分につき、その自然債権である性質を無視して、これを収入すべき金額として計上した方法はいずれも不当な算定方法といわざるをえない、と述べた。

(立証省略)

被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、答弁として、

「原告主張の請求原因事実中、昭和二十七乃至二十九各年度における原告の雑所得額、従つて亦、その限りにおいて同各年度における原告の総所得額が、その主張のとおりであることを争う外、その余の事実は、すべてこれを認める。

原告の係争各年度における雑所得額は、被告の調査によれば、原告主張の額、更正決定の額及び被告の審査決定の額をいずれも上廻り、昭和二十七年度においては、別表第四のとおり十五万千二百十五円、同二十八年度においては、別表第五のとおり、百六十三万四千百二十五円、同二十九年度においては、別表第六のとおり、百六十万千二百六十八円であるから、原告の課税総所得額は、右雑所得額に原告申告の雑所得以外の所得額を合算して、昭和二十七年度にあつては、六十九万六千百十五円、同二十八年度にあつては、二百三十六万五千百二十五円、同二十九年度にあつては、二百十万五千七百六十八円となる。

而て被告は、前記原告の雑所得額(別表第四乃至第六)を算出するに当り、各貸金の弁済期到来毎に確定した約定利息債権額をもつて、その雑所得額算定の基礎となるべき収入金額としたものであるところ、原告は、この点に関し、貸付元金の回収が不能乃至極めて困難である等特別の事情がある場合には、所得税法第十条の「収入すべき金額」ではなく、現実に受領した金額をもつて雑所得額算出の基礎とすべきである旨主張するが、右主張は明らかに不当である。けだし、原告主張のごとき事情が存し、そのため、事実上約定利息を請求する余地がない状態であつても、利息債権の放棄又は免除をしない限り、右債権は、法律上収入すべき利息として存在しており、これを雑所得額算出の基礎とすべきは当然である。しかして、本件においては、係争各年度の利息債権につき、原告はこれを抛棄又は免除した事実はない。また、約定利息中、少くとも利息制限法所定の利率を超える部分については、これを収入すべき金額として所得額算定の基礎とすべきでないとの原告の主張については、同超過分のごときいわゆる自然債権でも、債務者の任意の履行により、収入を期待しえない金額とはいえず、従つて、これを雑所得額算定の基礎となるべき収入金額とみなすは正当である。

仮に被告の右雑所得額の算出方法が誤りで、原告が係争各年度において現実に受領した利子収入額を基礎とすべきものであるとしても、その方法により算出される雑所得額も、前同様、原告主張の額、更正決定の額及び審査決定の額をいずれも上廻り、昭和二十七年度においては、別表第七のとおり、十六万千七十五円、同二十八年度においては、別表第八のとおり、百二十五万三千四百二十五円、同二十九年度においては、別表第九のとおり、五十四万六千二百二十二円であるから、原告の課税総所得額は、右雑所得額に原告申告の雑所得以外の所得額を合算して、昭和二十七年度にあつては、七十万五千九百七十五円、同二十八年度にあつては、百九十八万四千四百二十五円、同二十九年度にあつては、百五万七百二十二円となる。

従つて、右何れの計算方法を採るにせよ、被告の調査計算に係る雑所得額及び総所得額を各下廻る額をもつて、原告の雑所得額及び総所得額を認定した被告の各審査決定には、なんら原告の所得を過大に認定した違法は存しないから、右各決定の一部取消を求める原告の本訴各請求は、到底失当たるを免れない」と述べた。

(立証省略)

理由

原告が開業医を本業とし、傍ら非営業貸金をなしていたこと、昭和二十七乃至二十九各年度の所得税につき、原告が大分税務署長に対し、その主張のごとき日時、内容の各確定申告をなしたところ、同税務署長は、原告主張の日、原告が申告した各年度所得額の外に、新たに、非営業貸金による雑所得として、昭和二十七年度分十二万二千五百円、同二十八年度分百七万四千四百円、同二十九年度分六十三万二千七百円を各認定した上、これに前記申告額を加算して、各年度の総所得額を、昭和二十七年度六十六万七千四百円に、同二十八年度百八十万五千四百円に、同二十八年度百八十万五千四百円に、同二十九年度百十三万七千二百円にそれぞれ更正する旨の各決定をしたこと、右各決定に対し、原告が同税務署長に再調査の請求をしたところ、これが審査請求とみなされ、原告主張の日、内容の各審査決定があり、昭和二十七、二十八各年度についての各審査請求はいずれも棄却され、昭和二十九年度分の雑所得額に限り、更正決定の一部を取消し、四十八万三千八百円と訂正され、これに応じて、同年度の総所得額も九十八万八千三百円に訂正されたことは当事者間に争がない。

原告は、係争各年度における総所得額の実際は、昭和二十七年度六十四万九千二十五円、同二十八年度百三万四千四百五十円、同二十九年度六十二万八千六百円に過ぎないから、いずれも右金額を超えて、昭和二十七年度分につき、大分税務署長の更正決定どおり六十六万七千四百円、同二十八年度分につき、同様百八十万五千四百円、同二十九年度分につき、更正決定の一部を取消したものゝ、なお九十八万八千三百円に及ぶ額をそれぞれ是認した被告の各審査決定は、その超過する限度において違法で取消を免れないと主張するに対し、被告は、係争各年度における原告の正確な総所得額は、昭和二十七年度六十九万六千百十五円、同二十八年度二百三十六万五千百二十五円、同二十九年度二百十万五千七百六十八円であるから、その範囲において、原告の所得額を認定した被告の各審査決定には、なんら所得を過大に認定した違法の廉はないと抗争するのであるが、係争各年度における原告の雑所得以外の所得額が、それぞれ原告主張の確定申告額のとおりであることは当事者間に争がないので、本訴の争点は、要するに、係争各年度における原告の雑所得額について、原被告いずれの主張額が正当であるかの点に帰するわけである。そこで、以下この点について順次審究することゝするが、先ず、非営業貸金による雑所得額算定の基礎となる利子収入額の計算方法につき、原告は、(一)貸付元金の回収が不能乃至極めて困難であつて、利子収入については事実上その請求権が抛棄されているに等しい特別の事情の存する場合には、所得税法第十条の「収入すべき金額」はありえないから、現に支払を受けた額によつて計算されるべきである。仮に然らずとするも、(二)約定利息中利息制限法所定の利率を超える部分は、いわゆる自然債権にすぎないから、これをもつて収入すべき金額とすることは許されない旨主張し、被告は、これを争い、(一)に対しては、仮にそのような事情が存する場合でも、法建上の抛棄又は免除がない限り、利息債権は、所得税法第十条の収入すべき金額として存在するから、これによるべきである。また(二)に対しては、たとえ自然債権であつても、債務者の任意の履行により収入を期待しえない訳ではないから、右超過分を収入すべき金額として計算するのは当然であると抗争するので考えるに、(一)については、雑所得額算定の基礎となる収入金額が所得税法第十条の「収入すべき金額」の謂であることは、同条により明らかであるが、右収入すべき金額とは、法律上収入する権利の確定した金額を指称し、事実上収入の見込みがない利息債権であつても、その支払期が到来したに拘らず抛棄又は免除をせず、なお法律上の請求権を留保している状態にある以上、税法上収入する権利の確定した金額というを妨げないのであつて、利息債権の一部を放棄した旨の原告本人の供述は信用できず、他に放棄又は免除の事実を認めるに足る証拠は存しないので、原告主張のごとき事情の存否如何を問わずこの点に関する原告の主張は失当と解すべきであり、また、(二)については、なるほど、利息制限法所定の利率を超える部分は裁判上無効ではあるけれども、貸主において、約定利率の改訂の措置をとらない限り、同超過分は、法律的には、借主の任意の履行を正当に受けうる自然債権として存続し、経済的には、貸主の資力の一部を構成するものであるから、弁済期の到来している以上、履行前と雖も、これを収入すべき金額として、課税対象たる所得額とみなすことを充分の根拠がある、というべきである。従つて、いずれも被告の主張は正当であつて、原告の主張は理由がないから、以下、原告の雑所得額算出の基礎となる利子収入額の計算については、特に収入すべき金額が算定できない場合には現に受領した金額による外、約定利率による収入すべき金額を算出してすることゝする。

一、昭和二十七年度

(1)  相田文亀関係

原告が、昭和二十七年十二月、相田に対し、五十万円及び二十万円を貸与したことは当事者間に争がない。

ところで、証人相田文亀の証言により成立の真正が認められる乙第七号証及び同証言によれば、右各貸金の約定利率は月六分であることが認められる(原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は、右の各証拠と対比して措信しがたい)から、同年中において原告の収入すべき利息金額は、五十万円につき三万円、二十万円につき一万二千円計四万二千円である。

(2)  首藤厚関係

原告が昭和二十六年四月二十六日首藤に対し、二十万円を貸与したことは当事者間に争がない。

しかして、成立に争のない乙第二号証によれば、右貸金の約定利率は月六分であることが認められ(原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は同号証と対比して措信しがたい)、且つ昭和二十七年一月一日現在の貸付残元金が十五万円であること、及び首藤は、同年六月、右十五万円中十一万円を返済したことは、いずれも被告が自陳するので、同年中において、原告の収入すべき利息金額は、十五万円につき五万四千円、四万円につき一万四千四百円計六万八千四百円である。

(3)  谷口光夫関係

被告は谷口関係の貸金については、貸金返済の日時、金額の詳細が不明のため、同年中において原告の収入すべき金額の算定ができないから現実に受領した利息金額六万七千五百円をもつて同年中の収入額とみなす旨主張し、右金額については当事者間に争がない。

よつて昭和二十七年度における原告の収入利息金額は、右合計十七万七千九百円であるから、別表第四記載のとおり、右金額に所得標準率八十五パーセント(この点については当事者間に争がない)を乗じて算出される十五万千二百十五円が原告の同年中の雑所得額となる。

二、昭和二十八年度

(1)  相田文亀関係

原告が相田に対し、昭和二十八年二月、三十万円及び五十万円、三月、五十万円、六月、五十万円二口を各貸与したことは当事者間に争がない。

ところで、前顕乙第七号証、証人相田文亀の証言及び弁論の全趣旨によれば、右各貸金及び前年度の各貸金につき、その約定利率は、昭和二十八年六月、までは月六分であつたが、同年七月以降いずれも月五分と改められたことが推認できる(原告本人尋問の結果中、右認定に反する部分は右相田の証言と対比して措信しがたい)ので、右各貸金につき、同年中に原告の収入すべき利息金額は、別表第五記載のとおり、合計百五十七万二千円である。

(2)  首藤厚関係

前記貸金二十万円の残四万円につき同年中に収入すべき利息金額は、約定利率が前記認定のとおり月六分であるから、計二万八千八百円である。

(3)  山田順三関係

原告が昭和二十八年九月、山田に対し五十万円を利率月五分の約で貸与したことは当事者間に争がないので、原告が同年中に収入すべき利息金額は十万円である。

(4)  谷口光夫関係

前年同様の理由により、昭和二十八年中において現実に受領した利子金額を算出すべきところ、成立に争のない乙第五号証によれば、被告主張のとおり、二十二万一千七百円であることが認められ、他に右認定を左右する証拠はない。

よつて昭和二十八年度における原告の収入利息金額は、右合計百九十二万二千五百円であるから、別表第五記載のとおり、右金額に所得標準率八十五パーセントを乗じて算出される百六十三万四千百二十五円が原告の同年中の雑所得額となる。

三、昭和二十九年度

(1)  相田文亀関係

前記昭和二十七年十二月貸付の二十万円及び五十万円につき、前者は昭和二十九年十一月内金五千円、同年十二月内金二万円が、後者は同年五月全額がそれぞれ返済されたことは、被告の自陳するところであるから、右貸金と前記昭和二十七、二十八年中の各貸金につき、約定利率月五分の割合によつて計算すれば、同年中に原告の収入すべき利息金額は、別表第六記載のとおり、計百六十二万四千七百五十円である。

(2)  首藤厚関係

首藤が、同年四月、原告に対し、前記貸金残四万円を返済したことについては、被告の自陳するところであるから、同年中に原告の収入すべき利息金額は、九千六百円である。

(3)  山田順三関係

山田が昭和二十八年十二月、前記貸金のうち二十五万七千五百円を返済したこと、残二十四万二千五百円につき、原告は、昭和二十九年六月以降その利息債権を免除又は抛棄したことはいずれも被告の自陳するところであるから、約定利率月五分の割合によつて計算すれば、同年中に原告の収入すべき利息金額は六万六百二十五円である。

(4)  谷口光夫関係

前同様の理由により、昭和二十九年中において現実に受領した利子金額を算出すべきところ、成立に争のない乙第五号証によれば、被告主張のとおり、十九万三千五百円であることが認められ、他に右認定を左右する証拠はない。

よつて、昭和二十九年度における原告の収入利息金額は、右合計百八十九万八千四百七十五円であるから、原告の同年中の雑所得額は、右金額に所得標準率八十五パーセントを乗じて算出される百六十万五千二百三円(銭以下切捨)である。

以上の次第で、原告の各係争年度における雑所得額は、昭和二十九年度分を除き、すべて被告の主張額が正当と認められ、昭和二十九年度分についても被告の主張額を三千九百三十五円上廻る額が正当と認められるが、右認定の雑所得額と当事者間に争のない雑所得以外の所得額とを合算すれば、本件各係争年度における原告の課税総所得額は、昭和二十七年度六十九万六千百十五円、同二十八年度二百三十六万五千百二十五円、同二十九年度二百十万九千七百三円となるから、被告の認定した原告の課税総所得額の、昭和二十七年度六十六万七千四百円、同二十八年度百八十万五千四百円、同二十九年度九十八万八千三百円は、いずれもこれを下廻ることが計数上明らかであり、その意味において、昭和二十七、二十八各年度については、大分税務署長の各更正決定を是認し、同二十九年度分については、更正決定の一部を取消し、それぞれ原告の所得額を右のとおり認定した被告の各審査決定には、なんら所得額を過大に認定した違法は存しないというべきである。

よつて、原告の本訴各請求はいずれも理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 浦野憲雄 村上博己 鍋山健)

(別表省略)

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