大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

熊本地方裁判所 昭和36年(行)9号 判決

熊本市下通町七五番地

原告

有限会社 やぐら寿司

右代表者代表取締役

守屋千代子

右訴訟代理人弁護士

庄司進一郎

市御幸町一六番地

被告

熊本国税局長

日比野久和司

町二〇番地

被告

熊本税務署長

西慶続

右被告両名指定代理人

福岡法務局検事

大道友彦

右同

熊本地方法務局訟務課長

山口常彦

右同

熊本国税局大蔵事務官

大塚勲

右同

熊本国税局国税訟務官

三浦謙一郎

右当事者間の法人税更正決定取消等請求事件について、当裁判所は、つぎのとおり判決する。

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求める判決

一、原告

「原告会社の法人税につき被告熊本税務署長が(1)、昭和三四年一二月一二日付でした昭和三二年八月一日から昭和三三年七月三一日までの事業年度(以下三二年度と略記する。)の所得金額を一〇五万三、三〇〇円とした更正決定(2)、昭和三五年五月二三日付でした昭和三三年八月一日から昭和三四年七月三一日までの事業年度(以下三三年度と略記する。)の所得金額を七五万〇、三〇〇円とした(減額)更正決定(3)、昭和三七年六月八日付でした昭和三四年八月一日から昭和三五年七月三一日までの事業年度(以下三四年度と略記する。)の所得金額を五八万八、八〇〇円とした更正決定(4)、同日付でした昭和三五年八月一日から昭和三六年七月三一日までの事業年度(以下三五年度と略記する。)の所得金額を七四万七、八〇〇円とした更正決定をいずれも取り消す。被告熊本国税局長が、昭和三六年六月二四日付でした前記三二および三三年度分の更正決定に対する原告の審査請求を棄却するむねの裁決および昭和三八年四月三〇日付でした前記三四および三五年度分の更正決定に対する原告の審査請求を棄却するむねの裁決はいずれも取り消す。

訴訟費用は被告らの負担とする。」むねの判決

一、被告ら

主文と同旨の判決

第二、主張事実

一、請求の原因

1  原告会社は、飲料店営業を目的とする有限会社であつて昭和三二年七月三〇日設立され各年八月一日からその翌年の十月三一日までを一事業年度としている。

2  原告は、被告熊本税務署長に対し法人設立届を出すとともに昭和三二年九月中に青色申告承認申請書を提出したが、右申請に対しては承認も却下もなく従つて法人税法第二五条第六項の規定により右申請は承認があつたものとみなされ、爾来今日に至るまで右承認の取消しがなされたようなこともない。

3  よつて原告会社は、各事業年度の法人税につきいずれも青色申告書により左記のとおりの申告をした。

(イ) 三二年度所得金額一八万四、九三九円(法人税額六万一、〇一〇円)

(ロ) 三三年度所得金額一二万三、一〇三円(法人税額四万〇、六二〇円)

(ハ) 三四年度所得金額二万一、〇四四円(法人税額六、九三〇円)

(ニ) 三五年度所得金額二五万三、七八九円(法人税額八万三、七二〇円)

4  ところが被告熊本税務署長は前記(イ)、(ロ)の各申告に対しては昭和三四年一二年一二日付で、同(ハ)、(ニ)の申告に対しては昭和三七年六月二八日付で左記のとおりの更正決定をした。もつともそのうち(ロ)の更正決定は昭和三五年五月二三日付で(ロ)のとおり減額更正決定がなされている。

(イ) 三二年度 所得金額 一〇五万三、三〇〇円

法人税額 三四万七、五八〇円

納付の確定した基本税額 六万一、〇一〇円

差引法人税額 二八万六、五七〇円

過少申告加算税額 四、一五〇円

重加算税額 一〇万一、五〇〇円

更正決定により納付すべき税額 三九万二、二二〇円

(ロ) 三三年度 所得金額 八三万一、九〇〇円

法人税額 二七万四、五二〇円

納付の確定した基本税額 四万〇、六、二〇円

差引法人税額 二三万三、九〇〇円

重加算税額 九万〇、五〇〇円

更正決定により納付すべき税額 三二万四、四〇〇円

(ロ)   所得金額 七五万〇、三〇〇円

法人税額 二四万七、五九〇円

納付の確定した基本税額 四万〇、六二〇円

差引法人税額 二〇万六、九七〇円

重加算税額 九万〇、五〇〇円

減額更正決定により納付すべき金額 二九万七、四七〇円

(ハ) 三四年度 所得金額 五八万八、八〇〇円

法人税額 一九万四、三〇〇円

納付の確定した税基本税額 六、九三〇円

差引法人税額 一八万七、三七〇円

過少申告加算税額 九、三五〇円

更正決定により納付すべき税額 一九万六、七二〇円

(ニ) 三五年度 所得金額 七四万七、八〇〇円

法人税額 二四万六、七七〇円

納付の確定した基本税額 八万三、七二〇円

差引決人税額 一六万三、〇五〇円

過少申告加算税 八、一五〇円

更正正決定により納付すべき税額 一七万一、二〇〇円

5  前記各更正決定については左記のとおりのかしがある。

(イ) 各更正決定は原告会社の帳簿書類を調査しその調査の結果課税標準または欠損金額の計算に誤のあることを認めてなされたものではなく推計により所得金額を決定したものである。従つて法人税法第三一条の四第一項に違反している。

(ロ) 右各更正決定の通知にはいずれも理由が附記してない。従つて同法第三二条後段に違反する。

(ハ) 原告会社には右各更正決定で認定されたような所得はなく、右所得算出についての推計方法もきわめて不合理で到底容認できないものである。すなわち

(A)被告税務署長は原告会社の売上帳簿の記載を全く信用せず、材料の仕入れ洩れ部分を調査しこれから原告会社の売上高を推計したが、所得額算出にあたつて売上高から控除すべき営業経費については、原告会社申請にかかる分のみを経費として認定控除した。しかしながら売上高の増加にはそれに対応する営業経費の増加が伴うことは当然のことであるから右の売上高の増額修正に伴う経費の増額を認めなかつたのは不合理である。(B)被告らはその調査にかかる米穀、酒、厚焼等の一部の材料の仕入洩額からその他のすべての材料の仕入洩額を推計し各事業年度の総材料仕入額を算出したが原告会社は右の米、酒、厚焼以外の材料の仕入はすべて正確に記帳し申告しており仕入洩れは全くない。(C)魚類の仕入高につき原告会社は、他店と異なり卸売価格にほぼ等しい廉価で仕入をしており他業者はすしに使用する魚類は一般小売価格よりも高価な品物を仕入れている。

しかるに被告らの推計は右の点を無視し、他店の材料総仕入高中に占める魚類の仕入高の比率を直ちに原告会社に適用の不合理な方法で原告の魚類仕入高を推計算出している。(D)仕入材料のうち原告会社従業員の消費分として控除した量が過少である。(E)被告らは所得金額算定の資料となる原告会社売上高の算出方法として材料使用高を売上差益率と一との差で除している(材料使用高÷(1-売上差益率)=売上高)が、売上差益率が各年度ごとに変動しており、その変動についてなんらの合理的根拠がない。その結果前記各更正決定で認定した原告法人所得額と(本訴で主張する所得額とが著しくくい違うと言う結果を生じている本訴で主張する所得額の方が更正決定で認定されたそれよりはるかに大)(F)原告会社が損金として主張している遊興飲食税について、被告らは右税額を原告が売上金額中に計上していないと言う理由で経費として認定することを拒否した。しかしながら遊興飲食税は顧客の要望により徴収しないこともままあるのであつて原告会社も客からは遊興飲食税の徴収をしていない。従つて原告納入の遊興飲食税はそれが売上に計上されていなくとも経費として認定すべきである。また以下は特に三二、三三年度分の推計について(G)酒類の仕入額の算定にあたつては総仕入額から空びん代金相当額は控除すべきであるのにそれをしていない。また右両年度分につき前主張の差益率による売上高算定が公正であることの裏づけとして別の推計方法によるもほぼ同一売上高が算出されるとし、仕入洩分から売上洩分を推計する方法(本判決事実中被告らの主張7および8参照)を示しているが右売上洩の推計に関しても(H)酒類の売上洩の推計につき公給領収証に表示されたものを参考にしているが原告会社の経営形態では公給領収証を発行する遊興飲食税の課税対象について基礎控除額があるから同額未満の売上の存在を認めねばならないのにこれをせず、(I)原告会社では酒一升をかんぴん一一本に分割して客に提供しているのに右推計では一升が一二本に分割されるものとして売上高を計算し(J)原告会社はすしの廉価大量販売を営業方針としており、従つて酒と酒付料理との販売高の比率は他同業者のそれと比べて著しく異つている(原告会社は酒付料理の販売額の占める割合が低い。)のに右の推計はこの点を無視している。

6  そこで原告は前主張の各更正決定(三三年度分については前記減額更正決定)に対し再調査の請求を経たうえで被告国税局長に対し審査の請求をしたが同被告は三二および三三年度分に対する審査請求に対しては昭和三六年六月二四日付で、三四および三五年度分に対する審査請求に対しては昭和三八年四月三〇日付でいずれも請求棄却の裁決をした。

7  右の審査請求を棄却するむねの被告国税局長の裁決の通知書にはいずれも理由が記載してないがこれは国税通則法第七五条、行政不服審査法第四一条第一項に違反するかしがある。

二、請求の原因

1  請求の原因1、4および6の事実の全部および同3のうち原告会社がその主張どおりの内容の所得金額および法人税額の申告(ただし右が青色申告書による申告であるとの点をのぞく)をした事実は認める。

2  同2の事実は否認する。原告会社では青色申告承認申請書を提出したことはない。

3  同3の事実中原告会社の申告が青色申告書によるものであるとの事実は否認する。

4  同5の主張事実中被告税務署長の更正決定に取り消されるべきかしがあるとの点はすべて争う。原告会社の申告が青色申告書によるものでなく、しかもその申告内容が信用できないとき推計によつて所得金額を算出できることは法の許容するところ(法人税法第三一条の四第二課)であり、また更正決定の通知に理由の記載を欠くことはそれ自体ではなんの違法を構成するものではなく(同法第三二条)、被告税務署長の推計には後に主張するとおりの次第でなんら原告主張のような不合理な点はない。

5  同7の事実は否認する。審査請求の通知書に理由を附記しなければならない(法人税法第三五条第五項)のはそれによつて判断の恣意を防止するとともに決定のなされた根拠を示して納税者を納得させようとする趣旨であると解されるから、右の理由も必らずしも通知書の記載自体により審査棄却決定のなされた根拠の明細まで遂一明らかにする必要はなく原処分の内容その他の手続を綜合して原処分を推持した審査庁の見解がうかがえる程度の記載があれば足りると解すべきである。本件については原処分は原告法人の帳簿類の保存が殆んどなされておらずこれによる収支計算が不能であつたので原告の仕入材料を調査確認のうえで同業者の売上差益率等を勘案して所得金額を推計算出したものであつて右の事情は原更正決定当時原告会社代表者その他会計係員が十分知悉しており、右推計算出の不当であることを再調査および審査請求においてみずから申し述べているところである。ところで本件審査請求棄却裁決の通知書には三二年度分につき「貴社は商品売買差益率は平均してせいぜい四割程度であるから税務署の推定売上まで差引経費の三分の一程度減額さるべきであるとして審査の請求をされておりますが、酒類、すし米の仕入数量等により売上高を推計同業者の平均差益率を勘案して審査しますと更正金額に誤りがあるとは認められません。」との理由記載があり三三年度分につき「……(前略)酒類、すし、米の仕入数量等により売上高を推計同業者の平均差益率等を平均し推計しますと更正金額に誤りがあるとは認められません。」との理由記載があり三四、三五年度にも同趣旨の理由記載がある。

右の各記載は前主張の原更正決定がなされた際の事情と相まつて審査請求棄却の裁決に理由の記載を要求している法の要請を満たしていると云うべきである。

6  原告会社の所得金額を推計算出した数額の明細は、これを原告の法人税申告の際の表示額(右申告の際の表示額は原告が法人税申告書に添付した損益計算書に表示されたものである。)と比較対応させて便宜上損益計算書の形式により表示すれば三二年度分につき別表一、三三年度分につき別表二、三四年度分につき別表三、三五年度につき別表四にそれぞれ記載したとおりとなる。ただし別表一、二の原告表示額と云うのは原告が申告額の内訳として主張した金額であり別表三、四の材料仕入高等の対照表のうち原告審査請求額欄に記載してある数額は、原告が右各年度分法人税更正決定に対する審査請求の際主張した金額であつて申告税とは若干の相違がある。

また右各表中原告申告額または原告審査請求額と被告ら主張額とが一致する科目は被告らが原告主張額に特に不正確な点を発見しえなかつたのでこれらをそのまま正当として認容し被告ら主張の所得金額推計の基磯としたものである。

右推計の各年度分についての特有事項は後に主張するとおりであるが通有の事情および推計の基本方式は以下に主張するとおりである。

すなわち原告申告の所得金額が各年度を通じ著しく過少であると思料されたので被告税務署長が調査したところ、原告会社の商業帳簿はその記載内容が不正確で実額と一致せず帳簿の記載から実際の所得金額を算出することは到底不可能であると認められ、さらに調査の結果各年度につきそれぞれ相当多額の仕入計上洩れのあることが発見された。そこで原告会社の所得金額を算出するために仕入実額(実地確認および推計による)を基礎資料の一つとすることとし、先ず所得は総益金(これは営業上の収益と営業外の収益とから構成される。)から総損金(売上原価、営業上の経費および営業外費用とから構成される。)を控除して得られるとの基本的思考方法を採用した。

右を算式によつて示せばつぎのとおりになる。

所得=総益金(営業収益+営業外収益)-総損金

(売上原価……本件では当期営業用材料使用高+営業経営+営業外費用)

右の算式にあてはめる数額を認定するため先ず仕入先を実地調査して仕入実額を確認し、資料の不足により仕入実額を確認できないものは原告表示の仕入額と確認できた仕入実額との比率、他同業者の各材料の仕入比率等を勘案して合理的に推計算出しよつて各年度材料総仕入高を算出した。

右の各年度材料総仕入高から売上原価(本件では当期営業用材料使用高)を算出するため当期営業用材料仕入高から交際用および原告会社役員および従業員の賄費として自家消費した分を控除しこれに材料期首卸高を加えそれから材料期末棚卸高を控除した。右は前同様算式によつて示せばつぎのとおりとなる。

各事業年度分材料総仕入高-自家消費分+期首材料棚卸高-期末材料棚卸高=当期営業用材料使用高(売上原価)

右の売上原価から当期売上高を推計するために原告会社の各年度分の損益計算書から算出される売上差益率(売上高との売上利益との比率)を使用し(もつとも三二年度の売上差益率は四六%であつて実際より多少高率にすぎるのではないかとの疑があつたので三二年度の売上高の算出にあたつては特に原告会社の利益を考慮して三三年度の差益率四三%を使用した。)、当期営業用材料使用高を一と売上差益率との差で際して当期売上高を推計した。

右を算式によつて示せばつぎのとおりである。

売上高=当期営業用材料使用高÷(1-売上差益率)

かようにして得られた各数値を前主張の

所得=総益金(売上高営業収益+営業外収益)-総損金(売上原価+営業費+営業外費用)

の基本方式にあてはめ計算して各年度の所得を算出したのである。

7  三二年度分(別表一)について

右のとおりの次第で三二年度分の材料につきその仕入先の実地調査を行つたところ原告表示額と著しく異なり米につき一四二万七、五〇〇円、酒類につき一六〇万五、八〇〇円の仕入を確認した。米、酒以外の材料の仕入額が原告表示の仕入額に比して著しく過大であるときは原告会社の業態から見て魚類、厚焼その他の材料の仕入実額も原告表示額をはるかにこえていることは当然のことであるからこれら材料の仕入実額を推計する必要を生ずる。そしてその方法としては原告表示のその他材料の仕入額に前記、米、酒の実仕入額と原告表示の仕入額との比率二二八・四%を乗じて算出するのが合理的であるが従に主張するとおり三三年度分の比率は一四二・二%と低下しているのでこれをも参考に供し三二年度分のその他材料の仕入高推計にあたつては右三二年度と三三年度の平均値である一八五・三%を原告申告のその他材料仕入額に乗じ四九四万四、〇五九円の金額を認定した。なお仕入酒類のうち七万五、〇〇〇円を交際費として認定した営業用に信用した材料類の推計に当つては総仕入額から控除した。かくで別表一に記載してあるとおり三二年度営業用材料使用高は七八九万三、七八九円となる。

なお同年度における原告会社の損益計算額から算出される売上差益率は四六%であるが前主張のとおりやや高率に過ぎる疑があるので特に原告会社の利益を考慮しかつ推計を合理的ならしめるために三三年度損益計算書から算出される売上差益率四三%を使用して売上高を算定した。

損金中交際費については原告申告額以上の七万九、一八〇円を認定し、公租公課については原告会社は遊興飲食税額を売上金額中に計上していないのにこれを損金中に計上していることを発見したので右売上金中に計上してない遊興飲食税額は損金として認めずこれを差し引いた(遊興飲食税は預り金の性格を有するのであるから右を売上金中に計上したときはじめて損金として控除されるべきものであることは論をまたない。)。

右の被告らの推計が合理的であることは試みに別の推計方法により原告会社の売上額を算出してみるとほぼ同一数値が得られることによつても裏づけられる(別表一、参考推計試算、参照)。すなわち被告税務署長の実地調査によつて確認し得た酒類、米類の仕入計上洩れ分を勘案しこれら材料を加工して客に販売したときの売上高を推計すると原告会社はビールを一本一六〇円で一級酒をかんびん一本一〇〇円、二級酒をかんびん一本七〇円で、またすし一人前の平均価格は一〇〇円でそれぞれ販売しており、また他同業者の実態調査により酒一升はかんびん一二本に分割して客に提供されることおよびすしに使用する一人前の米の量は平均訴〇、一五キログラムであることが認められるので酒類〇売上計上洩は一四六万六、〇二〇円と米(すしに加工)の売上洩れは四〇六万三、一〇〇円となる、また酒の販売高と酒付料理の販売高の比率は原告会社では八三・八%になることが認められるので右率により酒付料理の売上計上洩を計算(酒の売上計上洩額に八三・八%を乗じて算出)すると一二二万八、五二四円となり、かくして売上計上洩額合計は前主張の推計によつて算出した売上洩高六三八万三、一八九円にほぼ等しい六七五万七、六四四円となるのである。

さらにまた原告会社は前主張の売上額の増額認定に対しそれに伴い簿外の必要経費も認定控除してほしいむね申し出て簿外支払いと称する給料一覧表を提出したので被告税務署長はその一部を経費として認定所得金額から控除するとともに右給料その他に対する源泉徴収税を課すむね決定したところ今度は原告は簿外経費の支出はなく右の給料経費は架空のものであるむね申し立てるので改めて調査したところ右簿外給与と称した分の支払は全く架空のものである事実が判明しこれに対応する源泉所得税の賦課決定を取り消した事実もある。

8  三三年度分(別表二)について

三三年度分についても原告会社の帳簿の記載を信用することができなかつたので前同様の実地調査により酒類の仕入一二五万七、七八〇円米類の仕入一三九万一、四〇〇円を確認(うち酒類七万二、五〇〇円は交際用として控除)し厚焼の仕入先まるみや商店こと宮崎剛也方を調査したところ同店では原告の要望により原告への納入商品の一部の納入先を単に「上様」として記帳しもつて納入先を第三者に不明ならしめていた事実が判明しなお調査の結果三三年八月一日から三四年五月三一日までの仕入実額は計三八万五、〇九〇円であることも確認できた。同年六月および七月分の仕入実額は全く把握できなかつたが三三年六月、七月分の仕入実額は計四万八、〇六五円であることが確認できたので三四年六、七月も少なくとも右と同額の仕入があつたものと推認して三三年度の厚焼仕入額を四三万三、一五五円と認定した(原告会社の厚焼仕入方法についてはなお三五年分についての被告らの主張参照)。ところでその他の材料の実仕入額は全く判明しないので(魚類につき後記三四年度に関する主張参照)米、酒、厚焼の仕入についての原告の表示額合計と被告税務署長の前記調査認定にかかる仕入額合計との比率一四二・二%を原告表示のその他の原材料仕入額に乗じてその他の原材料仕入実額高を推計算出した。かくして別表二記載のとおり三三年度の売上原価は六八三万三、八八九円となり、これに当期売上差益率四三%を使用して売上高を逆算推計すると一、一九八万九、二七九円となる。なお売上高から所得金額を算出するに際し控除する経費のうち交際費については原告申告の一万〇、七七〇円をこえる八万三、二七〇円を認め、公租公課については前同様不当に計上された遊興飲食税一一万六、一〇〇円を控除し前年度分の法人税更正決定により増額さるべき前期未納事業税引当八万一、六〇〇円を加算し、かくして最終的に一五五万六、五五一円の所得金額が推計算出される。

右の被告ら主張の推計が合理的であることは三二年分についてと同様売上計上洩の推計から算出した原告会社の売上高が右の差益率を適用して算出した売上高とほぼ一致することによつても裏づけられる(別表二参考推計試算参照)。

9  三四年度分(別表三)について

米穀については原告の仕入の主体をなしている熊本市出水町国府原田商店につき実地調査を行い同商店から九九万四、二〇〇円の仕入をしていることを確認し、これに原告が審査請求において表示している北島商店から仕入二七万六、一四八円、吉瀬商店からの仕入一三〇万〇、六九〇円を加算した。魚類については原告がその大部分を仕入れている西垣商店(原告の元使用人)およびその仕入先大海水産株式会社、熊本魚株式会社について実地調査したが現金取引が多くその記帳状況が悪く西垣商店について云えばその取引を記載した通帳は表紙のみ古くその背部は切断されホツチキスでとめてありその記載筆跡はきわめて新しく原告会社総勘定元帳に合わせて一時に作成された形跡があり実地調査による仕入実額の確認はできなかつた。

ところですし業者は一般に総仕入材料中魚類の占める仕入比率はきわめて高いものであるところ原告会社提出の審査請求書によるとその比率は僅か三〇%にすぎず到底容認できないので同業者のうち、のりまきずし、いなりずし等魚類を材料として使用しない種類のものの販売比率が高く、従つて魚類の使用割合のきわめて低いと思料される者の魚類の総仕入材料に対する平均割合三八・八%を原告会社にも適用し総仕入材料に対する割合で原告会社の魚類仕入高を推計し、なお総仕入高から原告が交際用として使用した酒類四万円、役員および従業員の賄高三〇万五、五〇〇円を控除し当期使用高を推計した。なお右使用高から売上高を算出するに際して使用した売上差益率は三八%であつて前年までの四三%に比し変動しているがこれは後記の事情によるものである。すなわち三四年度には鮮魚等のすし用材料の価格が騰貴してすし業界は一般に苦境に立つたのに加えて原告会社はこの年度に五〇円ずしの販売をはじめたのでために売上差益率は前年度に比し当然低落していると考えられるからであつてその率は三八%が適当と認めた。なお営業費勘定のうち公租公課が原告主張額より五万一、一七六円増加して認定してあるのは原告会社の計算に前年度分法人税更正決定に伴い増額せられるべき前年度法人事業税引当金を計上加算し原告会社に有利に計算したしものである。

10  三五年度分(別表四)について

仕入材料中米穀については原告は従前の主要取引先である前記原田商店に対し前主張のとおり被告税務署長の調査が実施されため三五年度は主要仕入先を北島商店に変更した。その後の実地調査により原告会社の元帳には二万一、一三二円の脱漏のあることが発見され原告会社の米穀仕入額は別表四の内訳に記載してある被告ら主張の金額であることが確認された。

魚類の仕入高については前年同様仕入実額が確認できなかつたため同業者らの仕入総材料に対する魚類仕入高の占める割合の平均四一・三%を原告会社に適用して推計算出した。

厚焼は熊本市京町二の一三一宮崎剛也方から仕入れているが宮崎は、原告会社の要望をいれ取引の際納品書には実際取引のあつた種類、数量のみを記入し金額は故意に記入せず、代金請求時には現実の金領代金の二分の一の金額を記載した請求書を原告会社に交付し原告申告額ほ右請求書に記載された金額の合計を基磯にしていることが判明した。よつて申告書の倍額が仕入実額と推認した。

なお仕入総材料から交際費として使用した酒類四万円原告会社役員および従業員の賄費として三五万一、〇〇〇円を控除して当期使用高を計算した。

また材料当期使用高から当期売上高を算定するに際し使用した売上差益率は原告会社審査請求書に添付してある損益計算書から算出される四一%であるがこれは前主張の魚類の値上がりに伴い前記五〇円ずしの販売を廃止しさらに一〇〇円ずしを一二〇円に値上げする等の手段をとつたために差益率が上昇したものである。

以上の次第で原告会社に対する三二ないし三五年度法人税更正決定における原告所得金額の認定ほいずれも合理的な推計によつて算出される所得金額未満の範囲内でなされており右各更正決定にほなんら取り消すべきかしはない。

第三、証拠関係

一、書証

1  原告提出の甲号証

第一ないし第二号証、第四号証の一と二、第五号証、第六号証の一と二、第七ないし第九号証

2  甲号証の成立についての被告らの認否

第一ないし第三号証の全部、第七、八号各証のうち税務署の押印部分の成立ほ認める。その余の書証またに書証部分の成立は知らない。

3  被告ら提出の乙号証

第一ないし第三号証、第四号証の一と二、第五ないし第七号証、第八号証の一と二第九ないし第二一号証、第二二号証の一と二、第二三号証の一と二、第二四号証の一と二第二五ないし第四〇号証、第四一号証の一ないし四、第四二号証の一と二、第四三ないし第四七号証

なお第九、第一二号証の各上部欄外に「青色」と記載してあるのは原告が記入被告がこれを抹消したものである。

4  乙号証の成立についての原告の認否

第一号証、第九号証、第一二号証、第一五ないし第一九号証、二二号証の一と二、第二三号証の一と二、第二四号証の一と二、第二五ないし第二八号証、第三六ないし第三八号証、第四〇号証、第四一号証の一と二、第四二号証の一と二、第四三ないし第四七号証の成立はいずれも認める。その余の各証の成立は知らない。

二、人証

1  原告援用の分

証人梅木正彦、同今和泉弘、同上田政人、同本田雅信、同村田忠道、同内田英雄、同本田寅勝および同岡常介の各証言

2  被告ら援用の分

証人梅木正彦、同徳村武次、同北原晴久、同下脇二則、同小野峻、同小倉光、同玉田忠雄および同田川修の各証言

理由

一、請求の原因1、4および6の事実の全部、同3のうち原告主張の法人税の申告が青色申告等によつてなされたとの点をのぞくその余の事実は当事者間に争いがない。

よつてまず原告の三二ないし三五年度の法人税の申告が青色申告書によつてなされたものであるかどうかについて判断する。

二、証人村田忠道の証言(以下証人の証言は村田証言等と略記する)。中には原告会社はその設立を熊本税務署に届け出ると同時に青色申告承認申請書を提出しこれに対して承認または却下の通知が全くなかつたむね述べる部分があるけれども同証言はその内容自体において甚だしく信用できない部分がある(たとえば他の証言部分で熊本税務署長が原告会社申請の売上高を増額認定したので原告側から売上額を増額するならそれに見合う経費の増額もある筈であるからそれを認めてほしいと交渉した結果同税務署長ほか同署幹部数名がいかなる架空のものであつても原告会社側からの申出さえあれば経費として認定すると確約したなどと証言)のみならず右青色申告承認申請書を提出したむねの村田証言部分は成立について争いのない乙第一、第九、第一二号証、第四五ないし第四七号証、北原証言によつて真正に成立したものと認められる同第八号証の一、文書の形式体裁から公務員がその職務上作成したものと認められ従つて真正に成立したものと推定される同第八号証の二、同第一〇、第一一号証、同第一三、第一四号証、同第二二号証の一と二および梅木、徳村、内田各証言とに比較して到底信用できず、今和泉および岡各証言も原告主張の青色申告承認申請書提出およびそのみなし承認の事実を認めしめるに足りず、他に右の点に関する原告主張事実を認めしめるような証拠はない。

三、却つて前示乙第一、同第八号証の一と二、同第九ないし第一一号証、同第一三、第一四号証、第二二号証の一と二、第四五ないし第四七号証に徳村、梅木、内田、今和泉各証言(ただし今和泉証言はその一部)とをあわせ考えると原告会社ではなんら青色申告承認申請をした事実はなく、従つてその承認を受けていないのにもかかわらず、各事業年度の法人税確定申告に際しては度々青色申告用紙を使用し、または普通申告用紙に自ずから「青色」と記入した用紙を使用して確定申告をしていた事実を認めることができ、右判定に反する村田証言の信用できないことは前説示のとおりであり、また右認定に反するかのような今和泉、岡各証言は村田忠道(村田証人)からの伝聞または原告会社が前認定のとおり青色申告用紙を使用して法人税確定申告を行つたことからの臆測に基ずくものでいずれも右認定を覆えすに足りず他に右認定に反するような証拠はない。

従つて原告が、青色申告の承認を受けていることを前提とする原告主張(本件各更正決定通知書に理由を附記してないことおよび右各更正決定が総計により原告の法人所得を算出したことがそれぞれ違法であるとの主張事実)はいずれも理由がない。

四、ところで青色申告の承認を受けていない法人につきその申告税額の更正をする場合においては当該法人の財産若しくは債務の増減の状況、収支の状況又は生産、販売その他の取扱量、従業員数その外事業の規模により各事業年度の所得金額を推計算出することは法人税法(第三一条の四第二項)の容認するところであつて、また前記主張事実欄二、6に記載した被告ら主張の基本方式のうち総益金から総損金を控除して所得を算出する方法は損益的計算法として簿記学上承認されているところであり、売上差益率と言うのは売上利益を売上高で除した割合のことであり、売上利益と云うのは売上高から売上原価(本件では原告会社の飲食店と云う業務の特殊性の故に当期営業用材料使用高で表示されている。)を控除したもののことであるから売上差益率は 売上差益率=(売上高-売上原価)÷売上高

の算式で表示され、右算式を売上高を得るための形に変形すると 売上高=売上原価÷(1-売上差益率)

なる形となり(右各算式のうち後者は簿記学上平均利益歩合法と称せられる帳簿上の棚卸計算法中の一算式としてさらに変形されて利用される。)かつまた当該営業用材料使用量を当期総材料仕入額から交際用および自家消費分を控除して算出することはこれまた会計学上当然そのようにあるべきことであるから右の基本方式にあてはめる各個の金額が合理的なものであるかぎりこれによつて算出される原告会社の各事業年度の所得は合理的に推計されたものというべきで、従つて右合理的に算出された推計所得額を越えて所得額を認定したものでないかぎり本件各法人更正決定にはなんら取り消べすきかしはないこととなる。

なお別表記載の各会社のうち原告申告額欄中に記載してあるのは原告が法人税確定申告をした際の申告額であり、原告審査請求額欄中に記載してあるのは原告が審査請求に際して主張した金額であり、原告表示額とあるのは原告が申告額の内訳として主張した金額であり、これらと被告ら主張額とが一致する科目は被告らが原告主張額をそのまままとめて各事業年月の所得金額算出の基礎としたものである各事実は被告らの主張するところであつて原告は右各事実を明に争わないのでこれを自白したものとみなす。

よつて各事業年度ごとに被告ら主張の推計が合理的であるかどうかについて判断する。

五、三二年度分(別表一)について

1  小倉証言により真正に成立したものと認められる乙第二および同第四号証言の一、二に右小倉および梅木、徳村各証言をあわせるとつぎの事実を認めることができ右認定に反する証拠はない。

すなわち原告会社が被告税務署長の三二、三三年度分更正決定の認定所得額が過大であるむね主張して再調査の申立をなしたため当時熊本国税局法人税係に勤務していた梅木正彦らが調査したところ原告は抽象的に認定所得額が高額にすぎるむね主張するのみで不明申立の具体的根拠はなんら提示するところがなかつた。また小倉光らの調査により原告会社は三二年度につき熊本市出水町国府変電所通り米店原田芳雄から米穀一四二万七、五〇〇円を、同市上鍛治屋町二三番地酒店合資会社菊屋から一六〇万五、八〇〇円の酒類(日本酒・ビール等を含む)を購入していることが判明したが厚焼、魚貝類その他すし料理等を作るためののり、す(酎)等の材料仕入額は原告会社およびその取引先の記帳が全く体をなさず、また後に設定するとおり原告会社の依頼により仕入先が故意に過少記帳している等の事実もあつてその仕入実額の把握は全くできなかつた。

2  原告が主張する仕入額は酒類につき六四万七、六九〇円、米穀につき六八万〇、四四〇円(右額については前示のとおり原告が自白したものとみなす。)であるので前認定の実際仕入額との間に著しい差があり、かように、米、酒類についての仕入に著しい脱漏があるときは特段の事情がないかぎりその他材料の仕入にもまた著しい脱漏があることは当然に推認され、このような場合その他材料の仕入実額を推計する方法として原告主張のその他材料の仕入額に前記米、酒の仕入の脱漏割合(右の酒・米の原告主張の仕入額と仕入実額の比率は一〇〇対二二八、四となる。)を乗じて算出しても必らずしも不合理とは云えない。しかしながら前認定の事実と本論の全趣旨によれば後に説示するとおり三三年度分の原告主張の材料仕入高と被告らの確認し得た材料仕入高の比率が一四二、二%にすぎなかつたので被告らはこの両者を平均し、原告申告のその他材料仕入高に平均値一八五、三%を乗じその他材料の実仕入高四九四万四、〇五九円を推計しこれを合計して当期材料仕入高七九〇万六、八五九円を算出した事実を認めることができ、右評定に反する証拠はない。

右認定の材料仕入高の算出は米、酒以外のその他材料を仕入高の推計方法においてむしろ少額に失するのではないかとの事さえあり、これは原告に対して有利(右仕入高から推計される総売上高が低くなり従つて所得金額は低く算出されることになる。)なことであるから原告自身が右の少額に失することに対する不服を主張し得ないことは当然である。

3  成立に争いのない乙第一六、第一七号証によれば原告会社の損益計算書から三二年度売上差益率は四六、六%と三三年度売上差益率は四三、一%と算出できることが認められ、小倉証言により真正に成立したことの認められる乙第六号証によるとすし屋営業は売上差益率が四〇%程度はないと経営が困難であることも認められ右各認定に反するような証拠はないので右の三二、三三両年度の売上差益率のうち低い方の四三%を使用して三二年度の原告会社売上高を算出した推計についてもなんら不合理な点は認められない。

4  三二年度経費につき徳村証言により真正に成立したものと認められる乙第二一号証に同証言および梅木証言をあわせ考えると原告会社は三二年度分につき二〇万九、七一七円の遊興飲食税を売上金額中に計上しないでおきながらこれを経費として損金中に計上した所得金額算出に際しては総益金から控除していた事実を認めることができ、右認定に反するような証拠はない。ところで遊興飲食税は業者が遊興飲食代金とともに客からこれを徴収し後にこれを納税する預かり金的性格を有するものであるから、これを売上金中に計上したときはじめて経費、損金中に計上できるものであることは当然であつて、これを売上金またはその他の益金中に計上せずに損金としてのみ計上することは所得額をその分だけ不当に低く算出する結果となるから右金額を損金として認めない被告らの態度はきわめて当然でなんら不合理なことはない。

5  成立について争いのない乙第二三号証の一と二に徳村証言をあわせ考えると交際費七万九、一八〇円については審査請求に際し原告が支出したと申し出た分を被告らがそのまま認めて当期営業用使用材料の算出に際し材料総仕入高から控除したものであることが認められ右認定に反する証拠はない。

以上によれば三二年度原告会社の法人所得を二七九万六、七五四円とした被告らの推計方法には特別に不合理な点を見出すことはできない。

6  なお前示乙第二号証、同第四号証の一と二、同第六号証小倉証言によつて真正に成立したものと認められる同条第五、第七号徳村証言によつて真正に成立したものと認められる同第二〇号証に徳村、梅木、小倉各証言をあわせて考えると別表一に記載した参考推計試算もおおむね妥当であることが認められ、右認定に反するような証拠はない。

7  さらにまた成立について争いのない甲第一号証に前記徳村、小倉、村田(ただし村田証言は一部)各証言をあわせると原告会社は売上高を増額認定せられるや、売上増額に伴う簿外の経費があるむね主張して全く架空の一九三万七千余円の従業員給与を経費として申し出て、法人所得を減額認定されたたが、被告税務署長により右給与に対する二二万三千余円の源泉徴集税を課するむねの決定を受けるや今度は右給料経費は架空のものであるむね申し立て被告税務署長の調査によりそれが確認され源泉徴集税賦課決定は取り消されたがこれに伴う法人税の増額更正決定はなされないままで今日に至つている事実を認めることができ右認定に反するような証拠はない。

六、三三年度分(別表二)について

1  前示乙第二号証、第四号証の一と二に梅木、徳村、小倉各証言をあわせると前示五、1で認定したところと同様小倉光らの仕入先の実地調査により原告は三三年度においては前示原田米店らから米穀一三九万一、四〇〇円を菊屋酒店から一二五万七、七八〇円の酒類を購入していたことが確認された事実を認めることができ右認定に反する証拠はない。

2  梅木証言により真正に成立したものと認められる乙第三号証に右梅木および小倉証言をあわせ考えるとつぎの事実を認めることができる。

すなわち原告の厚焼仕入先である宮崎剛也商店は原告会社の要請により昭和三三年五月以降原告会社への納品分のうち一部は正当にやぐらずし名義で納品の記帳をし、その余の部分は上様名義で記帳ももつて第三者には納入先が不明なようにしてありなお三四年六月および同年七月分は記帳が全くなかつた。調査により判明したかぎりでは三三年八月一日から三四年五月末までのやぐらずし名義の納品額は二〇万七、八七〇円であり上様名義で納品した分は一七万七、二二〇円であつた。三四年六、七月分の仕入期は右のとおり全く判明しなかつたが三三年六、七月分につきやぐらずし名義分が二万六、四八五円上様名義分が二万一、五八〇円であることを確認し得たので被告らは三四年六、七月分も少くとも右と同額の厚焼の仕入があつたものとみなしこれを合計して当期の厚焼仕入額四三万三、一五五円を設定した。

右の認定に反するような証拠はない(ちなみに三三年五月から三四年五月までの期間内の厚焼総仕入額とやぐらずし名儀での納品額の割合は一八四、九%と算出される。)。

3  前記五、2で表示したところと同様の理由により右の米、酒、厚焼をのぞくその他の材料の仕入額にも相当の計上洩れのあることが当然推認される。そこで被告らはこれらその他材料の仕入実額を推計するため右の米、酒、厚焼の原告申告額に対する実仕入額の比率一四二、二%を原告申告にかかるその他材料仕入額に乗じその仕入実額は三八一万五、二六八円と設定しこれらを合計して当期総仕入高六八九万七、六〇三円を算出した。また当期営業用使用材料高算出に当つては原告が審査請求において申の出た交際費七万二、五〇〇円を経費として認めこれを控除した。右設定に反するような証拠はない。

4  梅木、徳村、小倉各証言によると被告らは前示乙第一七号証により原告会社の当期売上差益率は四三%と認めこれを使用して当期営業用使用材料高から当期売上高を一、一九八万九、二七九円と推計した。

右設定事実に反する証拠はない。

5  前示乙第二一号証に、梅木・徳村各証言によれば被告らは前記五、4で説示したところと同様不当に損金に計上された遊興飲食税一一万六、二〇三円を損金から除外し、また三二年度分法人税更正決定に伴い当然増額変更されることになる事業税八万一、六〇〇円を損金として加算した事実を認めることができ右認定に反するような証拠はない。

以上の次第で三三年度の原告会社法人所得の推計算出にも三二年度分と同様特段の不合理な点は見当らない。

7  前示乙第二号証、同第四号証の一と二、同第五ないし第七号証、同第二〇号証に梅木、徳村、小倉各証言をあわせると別表二に記載した参考推計試算もおおむね妥当であることが認められ、右認定に反するような証拠はない。

七、三四年度分(別表三)について

1  米穀仕入高について

文書の形式、体裁から真成に作成された公文書であることが推定される乙第四一号証の一、下脇証言により真正に成立したものと認められる同証の二、田川証言により真正に成立したものと認められる同証の三、四に北原証言をあわせるとつぎの事実を認めることができ右認定に反するような証拠はない。

すなわち原告は、当期法人税確定申告に際しては別表三、材料仕入高内訳表中、米穀の原告審査請求額欄に表示してある金額をはるかに下まわる額を仕入額として申告したが仕入の脱漏を発見され審査請求においては仕入実額にかなり近い金額を表示するに至つたがなお審査請求における表示額も実額には六万一、四三〇円不足し実額は計一四〇万一、〇三八円であつた事実

2  魚類仕入高について

文書の形式、趣旨により公務員が職務上作成したものと認められる乙第二九号証、同第三一号証、玉田証言により真正に成立したものと認められる同第三一号証、同第四号証に同証言をあわせると熊本市鷹匠町四〇番地岩田信子経営にかかるすし店「だるまずし」および同市上通町三丁目七六番地有限会社武蔵ずし(代表者白石一郎)はいずれも原告会社よりも経営規模がかなり小さく、販売種目はすしだねとして魚類を使用することの少ないいなりずし、まきずしが比較的高率であり従つて総仕入高に対する魚類の仕入割合は原告会社に比し高いとは考えられず、しかも前者は昭和三五年度までにすでに六年間も青色申告をしていて経営状態の記帳はほぼ正確と考えられるところ前者の昭和三五年営業年度(昭和三五年一月一日から同年一二月末日まで)の総仕入材料に対する魚類の仕入割合は三九、七%であり、後者の同期間内の同比率三八%でありその単純平均は三八、八%余であることが認められ右認定に反する証拠はない。

また前記各証書によればなお(三五年度分魚類仕入額に関する認定事実参照)原告の魚類仕入実額は記帳状況が作為的且つ不正確であり全く判明しなかつたので被告らは原告会社においても魚類の仕入高の総仕入材料高に対して占める比率を右三八、八%とみて当期魚類仕入高を三四一万二、二五一円と算定した。

右に対し原告会社では他店より二割は安く魚類を仕入れており従つて魚類の総仕入材料に対する仕入比率は他店より低くなるかの如く証言する本田証言は正確な営業帳簿上の記載その他確たる証拠に基づくものでなく(原告会社が帳簿上の記載をきわめて不正確不明瞭ならしめてその経営実態を第三者が把握することを困難ならしめていたことは前認定の各事実および後に認定する三五年度の仕入に関する認定事実から容易に推認される。)単なる主観的感じに基づくものであつて到底信用し難く、本田証言により真正に成立したと認められる甲第四号証の二、および同証の一(同証の一は成立の真正も確認できない。)の記載も右認定を覆えすに足りず他に右認定に反するような証拠はない。

よつて被告ら主張の右の魚類仕入額に対する推計にはなんら不合理はないと云うべきである。

3  弁論の全趣旨によれば三四年度交際費および賄費の控除部分は審査請求の際の原告の申出をそのまま認容したものであることが認められ右認定に反するような証拠はない。

4  当期売上差益率について

成立について当事者間に争いのない乙第一八号証によると原告会社の当期損益計算書から算出される売上差益率は三七、八%余でありこれを使用して当期営業用材料使用高から売上高を推計すると一、三五三万〇、六八一円となる。被告らは当期売上差益率を三八%として売上高を推計しているが当期売上差益率を三八%とするについての根拠はなんら見当らず右率の適用は誤算に基いたものと思料される。

右により後記で認定した事情を考慮すると原告の当期所得金額は六四万四、八〇五円となる。

5  経費中公租公課の増額について

弁論の全趣旨によれば損金としての公租公課の額の認定が原告申告額以上に認められているのは、三三年度分法人税更正決定により原告の所得金額が増額認定されたのに伴い当然増額更正されるべき事業税引当金を被告らが損金として計上したものと認められ右認定に反するような証拠はない。

以上によれば被告らの推計計算には多少の誤りがあるがおおむね合理的であり、また右計算上の誤を訂正したうえでの所得金額も三四年度更正決定で認定された金額五八万八、八〇〇円を上まわつている。

従つて右の推計が不合理であり、その不合理が三四年度更正決定に原告の有利に影響を及ぼすものであることを前提とする原告の主張は理由がなく、右更正決定にはこれを取り消すべきかしは見当らない。

八、三五年度分(別表四)について

1  米穀について

北原証言によつて真正に成立したものと認められる乙第四二号証の一、小野証言により真正に成立したものと認められる同証の二に右北原、小野証言をあわせると当時の原告の米穀購入高は一六一万九、五四五円であることを認めることができ右認定に反する証拠はない。

2  北原証言によればつぎの事実を認めることができる。

すなわち当期の原告の申告にかかる魚類仕入高が過少であると判断した被告らは北原晴久にその主要仕入先である西垣魚店を実地調査せしめたところ同商店の原告会社との取引を記帳した「通帳」なる帳簿は表紙と裏表紙のみが古く裏表紙は切離されてホツチキスでとめてあり中味が新しい紙質でしかも内容の筆跡は全部が等しくて一年分を一括して記載したかの如き印象を与えるものであり、他に西垣商店、原告間の魚類取引の実額を認定せしめるような資料の発見はできなかつたため当期も魚類仕入高は推計によつて算出せざるを得なくなつた。

右認定事実に反するような証拠はない。

また前示乙第三一号証、同第三四号証および成立について争いのない乙第三六号証、第三七号証、玉田証言により真正に成立したものと認められる同第三〇号証、同第三三号証、同第三五号証と玉田および北原証言をあわせれば前記岩田信子(だるまずし)すし店における昭和三六年度(同年一月一日から同年一二月三一日まで)の魚類の仕入額の総材料仕入額に対する比率は三九、七%であり前記有限会社武蔵ずしの同期間内における同比率は四二、九%であり、原告会社より経営状況が若干良好で魚類仕入比率も多少原告会社より高率と考えられる熊本市花畑町九四の一所在の合資会社寿司豊の同年度の同比率は五三、五%であり魚の仕入率の低い前二者の平均が四一、三%であるので被告らは厚焼その他材料を合計した額に対し右の平均比率を使用して原告会社の魚類仕入額を四三二万九九九八円と推算した。

右認定に反するような証拠はない。

3  厚焼について

成立について争いのない乙第三一号証に小野、北原各証言をあわせ考えると原告の仕入先宮崎剛也は原告会社の要望により取引の際の納品書には取引実額数量のみを記入し取引代金は故意に記入せず代金請求時には現実の請求額の二分の一の金額を記入した請求書を作成して原告会社に交付しかようにして取引の帳簿上の表示額を実額の二分の一になるように操作し右操作に基づき当期厚焼仕入額を申告していた事実が確認されたため被告らは原告申告にかかる厚焼仕入額の倍額が現実仕入高であると認定した。

右認定に反するような証拠はない。

4  交際費および自家消費分の控除について

弁論の全趣旨によれば被告らは審査請求に際し原告が主張した交際費額および原告会社役員および従業員の自家消費分としての額をそのまま認めてこれを当期営業用材料使用高の算定にあたつて材料総仕入額から控除した事実を認めることができ右認定に反するような証拠はない。

5  経費について

弁論の全趣旨によれば被告らは三四年度分の法人税更正決定に伴い当然増額更正になるべき事業税引当金を損金として計上し右の経費となるべき公租公課を原告申請の一七万一、三〇〇円から二一万六、七八五円に増額認定した事実を認めることができ右認定に反する証拠はない。

また北原証言によれば原告会社の当期減価償却費額の計算に誤があつたので被告らはこれを訂正し右原告ら申告にかかる四九万五、〇五九円から四一万一、九六三円に減額した事実を認めることができ右認定に反するような証拠はない。

6  売上差益率について

成立について争いのない乙第一九号証と弁論の全趣旨によれば原告会社の損益計算書から算出される当期売上利益率は四一であつて被告らはこれを使用して原告会社の当期売上高を推算した事実を認めることができ右認定に反する証拠はない。

7  かくして推算された資料により総益金から総損金を控除して当期所得金額を算出すると一二三万四、二六〇円となり右算出金額の範囲内で原告会社の三五年度所得金額を認定した更正決定にはこれを取り消すべきかしは見当らない。

九、以上に認定説示したとおり原告会社の三二年度分ないし三五年度分の所得金額算出に関する被告らの推計方法は原告会社が自己の記帳すべき商業帳簿類の内容をことさらに不明確にし所得額算出の根拠を明確にしない本件にあつては、三四年度分に些少の違算が認められるほかはすべて合理的であつて右推計に基いて算出される所得金額の範囲内でなされた三二ないし三五年度分法人税更正決定はなんらこれを取り消すべきかしを有するものとは認められない。

また右三四年度分についての右違算もこれを訂正して推計した所得金額自体が前認定のとおり同年度の更正決定で認定通知された所得金額を上まわつている以上なんら同年度分更正決定を取り消すべきかしとはならないことも前説示のとおりである。

一〇被告らの推計の不合理性を云う原告の主張について

1  売上額を増額認定しながら経費の増額をしなかつたとの点について

所得金額を算出するに際し総益金から控除すべき経費は右益金を取得するに必要であると認められた現実に支出した経費額であることは論をまたないところ原告は自身においてはなんら右経費の現実支出のあつたことは主張立証せず単に売上増額に伴う経費増額を認めないのは不当であるとの主張をなすのみであるので到底採用するに由ない(なお所得金額を過少に見せるためには売上高を実額より少くなく記帳し、経費額は現実支出分を全部経上することがその一つの手段であることは論をまたない。)。

2  請求原因5、(ハ)、(B)、(C)、(D)、(F)、(G)で主張する事実も原告自身前示推計を不当とする具体的理由をなんら主張立証せず、いたずらに被告ら主張の推計方法の不合理を説くのみであつて到底採用できない。

3  原告会社の売上高を算出するにあたつて使用した売上差益率が各事業年度毎に変動しているのは前認定のとおり原告会社自身が作成した損益計算書から算出されているものでありそれが寿司業界の経営実体から見ても必らずしも不当でない以上(前示乙第正九号、第三〇号証、同第三二、三三号証によれば前示だるまずしの昭和三五年度昭和三五年一月一日から同年一二月三一日まで―の売上差益率は三七、八%、同三六年度のそれは三九、四%別示武蔵ずしの昭和三五年度売上差益率は三五、九%、三六年度の売上差益率は四二、四%と算出される。)右差益率の変動はすこしも不合理とは云えない。

4  請求の原因5(ハ)、(H)、(I)、(J)で主張する事由はいずれも被告らが単に参考として供した三二、三三年度分の試算推計に関するものにすぎないのみならず、右の試算自体がおおむね妥当であることは前認定のとおりであるので右の原告の主張も理由がない。

一一、成立について争いのない甲第二、第三号証、乙第四三、第四四号証によれば三二年度分更正決定に対する原告の審査請求を棄却した裁決の通知書には「貴社は商品売買差益率は平均してせいぜい四割程度であるから税務署の推定売上まで差引経費の三分の一程度減額さるべきであるとして審査の請求をされておりますが、酒類、すし米の仕入数量等により売上高を推計、同業者の平均差益率等を勘案して審査しますと更正金額に誤りがあるとは認められません。」との理由記載があり三三ないし三五年度分の審査請求棄却の裁決の通知書にもほぼ同趣旨の理由記載があることが認められ、右認定に反するような証拠はない。

右の各理由記載によれば被告国税局長は原告会社の仕入洩額の調査推計から総仕入額を算出しこれに同業者の実態を勘案した売賃差益率を使用して売上高を推計しこれから経費損金を控除すると云う方法で原告会社の所得額を推算しよつて更正決定に違法はないとの結論に達したものであることを容易に理解できる。

右各書証によれば三二ないし三五年度分の審査請求棄却の裁決の通知書理由中に記載された売上差益率、売上額と被告らが本訴で主張する率、額とは若干相違していることが認められるけれども、右理由記載により原告の各年度の所得を推計するに際し被告国税局長の採用した基本的方法が明らかに認識できるのであるから右棄却裁決の通知書に理由を記載していないとの事実を認めることは到底できず、右の若干の率、額の相違はなんら右棄却裁決を取り消す違法とはならないと云うべきである。

以上の次第で原告の主張はすべて理由がなく三二ないし三五年度分の法人税更正決定およびそれらに対する審査請求を棄却した裁決にはなんら取り消すべきかしはなく原告の本訴請求はすべて失当であるから棄却することとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 後藤寛治 裁判官 石川哲男 裁判官 高橋金次郎)

別表一 (三二年度)

〈省略〉

原材料仕入高内訳表

〈省略〉

参考推計試算 売上計上洩

〈省略〉

別表二 (三三年度)

〈省略〉

原材料仕入高内訳表

〈省略〉

参考推計試算 売上計上洩

〈省略〉

別表三 (三四年度)

〈省略〉

材料仕入高内訳表

〈省略〉

別表四 (三五年度)

〈省略〉

材料使用高内訳表

〈省略〉

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

本サイトは報道(不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること)を事業としており,掲載された全ての情報は報道等に活用することを目的としています。

©daihanrei.com