大判例

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熊本家庭裁判所 昭和46年(家)745号 審判

主文

被相続人の相続財産である南九州財三第九九四八号昭和四〇年発行分額面金八万円の農地被買収者国庫債券を申立人に与える。

理由

(1)  申立人は民法九五八条の三による主文同旨の審判を求めるとの申立をした。

(2)  昭和四五年(家)第二五四号相続人不存在による財産管理人選任事件と同四六年(家)第一一号相続人捜索事件および本件の各記録を精査すると「昭和四五年五月一二日に当庁は被相続人の相続人不存在による財産管理人として金田光夫を選任し、同年五月二二日の官報に管理人選任の公告が掲載されたが法所定二か月の期間内に相続人が分明せず、同年九月二日の官報に相続債権者受遺者への期間二か月とする請求申出催告の公告が掲載されたが期間満了後も相続人が分明せず、昭和四六年一月二八日の官報に同年八月一八日までを期間とする相続権主張催告の公告が掲載されたが期間内に相続人の申出はなく、同年九月一七日に本件申立がされたこと。」が認められるから本件申立は適法である。

(3)  当庁調査官本田力の調査結果と前記昭和四六年(家)第一一号事件の記録を総合すると「被相続人の相続財産は日本銀行○○支店に保管されている主文掲記の本件国庫債券だけであるところ前記相続債権者受遺者への適法な請求申出催告公告期間内に債権の申出がなく、そして申立人は身よりがない従姉妹である被相続人と昭和二〇年九月から死亡時まで生計を同じく且つ被相続人の療養看護に努めたこと。」が認められるから民法九五八条の三により本件国庫債券を申立人に与えるのが相当である。

付言するに本件国庫債券は農地被買収者等に対する給付金の支給に関する法律によるもので該法律七条四項により譲渡が禁止されているところ民法九五八条の三による特別縁故者分与制度が無償譲渡の性質をもつとして譲渡禁止の国庫債券は特別縁故者分与の対象にならないとの見解があるが賛成できない。すなわち自分の遺産は血縁者にやりたい、もし血縁者がいなければ世話をしてくれたなどの特別縁故者にやりたいという人間の一般的意思を実現させるための遺産承継制度が相続と特別縁故者分与であつて両者は制度的に同質類似のものであるから譲渡は禁止されていても相続はできる国庫債券については相続の類推により特別縁故者分与ができるのであり本件国庫債券については前記法律の七条五項で相続ができることになつているからつまりは特別縁故者分与の対象になる。

(家事審判官 田尻惟敏)

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