大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

甲府地方裁判所 昭和39年(行ク)4号 決定

申立人 高村市平

被申立人 富士吉田市外二ケ村恩賜県有財産保護組合議会

主文

申立人の申立を却下する。

本件申立費用は、申立人の負担とする。

理由

一、申立人代理人は、「被申立人富士吉田市外二ケ村恩賜県有財産保護組合議会が昭和三八年九月七日なした申立人の右議会議長辞職の件を許可する旨の議決は、本案判決あるまで、その効力を停止する。」との決定を求め、申立の理由として次のように述べた。

(一)  申立人は、被申立人議会の議員である。

(二)  被申立人議会は、昭和三八年九月七日同議会議長の選挙を行うにつき、議長の任期を昭和三九年六月二六日までとすることを決定したうえ選挙を行つた。その結果申立人は、右議長に選挙されたので、その就任後直ちに、右決定に従い前記昭和三九年六月二六日をもつて議長の職を辞する旨の辞職願を被申立人議会に提出し、同議会は、即日(昭和三八年九月七日)右辞職を許可する旨の議決(以下本件議決という。)をなした。

(三)  しかしながら、本件議決は、左の理由により違法であつて、無効であるか、もしくは取消されるべき行政処分である。

(1)  地方自治法(以下「法」という。)第一〇三条第二項によれば、議長の任期は議員の任期によるものであるところ、被申立人議会議員の任期は、その議員の属する市村議会の議員の任期に従うものである。しかして、申立人の属する市村議会議員の任期は、昭和四二年四月二九日までであるから、被申立人議会議員の任期も右同日までであり、従つて被申立人議会議長の任期もこれと同様である。ところで、法第一〇八条によれば、議長は議会の許可を得て辞職することができるが、右(二)のごとき被申立人議会の許可は、議長の任期を法第一〇三条に違反して会議規則に定めたのと実質的には同じであり、従つて同条に違反するものとして無効である。

(2)  仮に、右主張が理由なしとするも、申立人は、昭和三九年五月二八日書面をもつて、前記辞職願を撤回したので、遡つて議長辞職の意思表示をしなかつたことになるから、右議決は前提を欠き、効力を生ずる余地はない。

(3)  仮に、右議決が右理由によつては無効といえないとしても、少くとも、取り消さるべき行政処分である。

(四)  よつて、申立人は、甲府地方裁判所に対し右議長辞職許可の議決の無効であることの確認および予備的にこれが取消しを求める本案の訴えを提起したが、被申立人議会は、申立人の議長の地位を否認し、本件議決を有効として後任議長を選出しようとしており、このまま放置すると、申立人は、回復の困難な損害を受けることとなり、これを避けるため緊急の必要があるので、本申立におよんだ。

二、当裁判所は、次のとおりに判断する。

本件に現われた資料によれば、被申立人議会の置かれている富士吉田市外二ケ村恩賜県有財産保護組合が地方自治法上の特別地方公共団体の一である一部事務組合であることは明かである。

しかして地方公共団体の議会の議決は、その議会としての本質上自主的に、かつ、自律的に行われなければならないことはいうまでもないところ、本件のように、地方公共団体議会の議長の辞職を許可する旨の議決の如きは、議長の権限が専ら議会の正常な運営にあり(法第一〇四条参照)、その地位の得喪が政治的判断にのみ委ねられるべき性質のものである点に想到すれば、自律的団体である議会の内部的問題として議会内部において自主的に処理するのを妥当とし、裁判所の審査権はこれに及ばないものと解するのが相当である。

従つて申立人の本件申立は、その余の判断をするまでもなく理由がないからこれを却下し、費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおりに決定する。

(裁判官 須賀健次郎 藪田康雄 神崎正陳)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com