大判例

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盛岡地方裁判所 昭和34年(む)71号 判決

被告人 成載門

決  定

(被告人氏名略)

右の者に対する盛岡簡易裁判所昭和三三年(ろ)第一二七号窃盗被告事件に関してなされた保釈許可決定に対し、盛岡区検察庁検察官から準抗告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

盛岡簡易裁判所裁判官が右被告人にかかる窃盗被告事件につき昭和三四年二月六日になした保釈許可決定はこれを取消す。

被告人の保釈請求を却下する。

理由

本件準抗告申立の要旨は、被告人成載門にかかる盛岡簡易裁判所昭和三三年(ろ)第一二七号窃盗被告事件につき、昭和三四年一月二七日に同被告人から保釈の請求がなされたところ、同年二月六日同裁判所裁判官は保釈許可決定をなした。しかしながら、被告人は罪証を隠滅すると疑うに足る相当な理由があるのに保釈許可決定したのは判断を誤まつたものであるからこれが取消と右保釈請求の却下の裁判を求める。すなわち、本件について被告人は警察以来賍品であるカメラをその情を知らずに富塚栄子から買受けたものであると主張して事実を否認しておるが捜査の結果、同人は架空人である疑が濃厚であり、また盛岡警察署留置場で昭和三三年一二月四日から同月二四日まで同房した岩間与一と通謀し、本件窃盗は岩間の犯した旨の上申書を同人に提出させた疑いも濃厚であり、また被告人は本件窃盗の被疑事件で逮捕中の昭和三三年一二月五日に盛岡警察署の留置場から逃走するなどのこともあつて罪証を隠滅すると疑うに足りる相当の理由がある、というにある。

よつて案ずるに、職権をもつて取寄せた盛岡簡易裁判所の被告人成載門の窃盗被告事件の一件記録および盛岡区検察庁の右被告事件に関する捜査記録を精査すると、松本信、原田主計、崔竜国、佐々木三男の検察官に対する各供述調書によれば、被告人成載門が昭和三三年一一月六日に盛岡市本町二七番地写真機販売業松本源蔵方店舗において同人所有の写真機二台を窃取したと疑うに足りる相当な理由のあることが認められるところ、被告人の検察官に対する昭和三三年一二月二三日付供述調書、司法警察員に対する同年一二月四日付供述調書、被告人作成の保釈願、岩間与一作成の上申書、司法巡査佐々木昭作成の看守勤務日誌謄本一二通、昭和三三年一二月二三日付発信浅草警察署受信盛岡警察署長名義の再照会についてと題する書面、司法巡査作成の同月二五日捜査報告書によれば、被告人は捜査の過程において、右松本源蔵の窃取せられた右カメラを、被告人の元使用人富塚栄子または浅草の曙カメラ店から購入したと主張して窃取の事実を否認しているのみならず、右窃取の被疑者として盛岡署に拘禁中、同房した岩間与一に対し、同人が右カメラを窃取して同人の妻に依頼して誰かに売却させた旨の上申書を盛岡区検察庁検察官に提出させるなど、自己の弁疎に符合するよう積極的に工作していることが推認され、被告人が保釈されるならば罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由のあることが認められる。

なお、検察事務官作成の前科調書、被告人の司法警察員に対する昭和三三年一二月三日付供述調書によれば、被告人は昭和二六年二月二六日に盛岡地方裁判所花巻支部において横領罪等により懲役八月、同二八年一一月二八日に八戸簡易裁判所において窃盗罪により懲役一年六月、同三一年二月一五日に盛岡簡易裁判所において窃盗罪により懲役一年四月の各刑に処せられていることが認められ、この事実によれば被告人は本件窃盗被告事件につき常習としてこれを犯したものと見るのが相当である。以上認定のとおり被告人は刑事訴訟法第八九条第三号および第四号に該当し且つこれを勾留する理由ならびに必要がある。よつて本件準抗告の申立はその理由があるからこれを認容し、被告人に対する原裁判所裁判官のした保釈許可決定を取消して被告人の昭和三四年一月二七日保釈請求を却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 山村仁 岡垣学 野口喜蔵)

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