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神戸地方裁判所 平成8年(ワ)1291号 判決

原告

谷元澄子

ほか二名

被告

岡田大志

主文

一  被告は、原告谷元澄子に対し金八九三万八〇五一円、原告谷元洋一及び原告島田泰子に対し各金四四六万九〇二五円並びに右各金員に対する平成七年七月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その二を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告谷元澄子(以下「原告澄子」という。)に対し金三〇〇九万三八二七円、原告谷元洋一(以下「原告洋一」という。)及び原告島田泰子(以下「原告島田」という。)に対し各金一五〇四万六九一三円並びに右各金員に対する平成七年七月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、後記の交通事故(以下「本件事故」という。)により死亡した訴外谷元清司(以下「清司」という。)の妻及び子である原告らが、被告に対し、民法七〇九条により、損害賠償を求めた事案である。

一  争いのない事実等

1  本件事故の発生

(一) 日時 平成七年七月五日午前七時四〇分頃

(二)場所 神戸市長田区庄山町四丁目七番地先交差点(以下「本件交差点」という。)

(三) 加害車 被告運転の自家用自動二輪車(以下「被告車」という。)

(四) 被害車 清司運転の自家用原動機付自転車(以下「原告車」という。)

(五) 態様 清司運転の原告車と被告運転の被告車が本件交差点で出会い頭に衝突をした。

2  清司の受傷内容及び死亡

清司は、本件事故により、右大腿骨骨折、脾損傷、外傷性小腸穿孔、外傷性S状結腸挫滅の傷害を負い、その対処のための手術が行われたが、出血性シヨツクが回復せず、平成七年七月一〇日、多臓器不全により死亡した(乙一の六、原告洋一本人)。

3  被告の責任

被告は、本件事故当時、見通しの悪い本件交差点を通過しようとしていたが、同交差点の手前に一時停止の標識があつたから、一時停止のうえ、安全確認をすべき義務のあるところ、一時停止したか否かは明確でないが、右前方の安全確認を十分にしないまま本件交差点に進入したため、本件事故を発生させたものであるから、民法七〇九条により、後記損害を賠償する責任がある(乙一の一ないし五・八)。

4  身分関係及び相続

原告澄子は清司の妻で、原告洋一及び原告島田は清司の子であり、原告らは、清司の相続人である(甲二の一ないし三)。

二  争点

1  過失相殺

被告は、清司は、左右の安全を確認せず、減速しないで、本件交差点に進入したから、四割の過失相殺がなされるべきである旨主張する。

原告らは、被告は、一旦停止せず、安全確認もしないで、本件交差点に進入したものであるから、清司の過失はせいぜい二割である旨主張する。

2  清司の損害額

第三争点に対する判断

一  争点1について

1  証拠(乙一の一ないし九、弁論の全趣旨)によると、次の事実が認められる。

(一) 本件交差点は、車道幅員五・四ないし四・七メートルの西行一方通行道路(以下「東西道路」という。)と車道幅員四・五ないし四・七メートルの南行一方通行道路(以下「南北道路」という。)とが交差する交差点である。同交差点は、交通整理が行われておらず、見通しが悪いところ、被告が進行していた東西道路の手前に一時停止の標識が設置されていた。

(二) 被告は本件事故後に同事故及びその前後の記憶を喪失し、清司が意識不明のまま死亡し、目撃者がいないため、被告と清司の同事故及びその前後の行動が明確ではない。

(三) 被告は、本件事故直前、被告車を運転し、通学のために東西道路を西進しており、通常は本件交差点の手前で一時停止しているが、同事故当時、一時停止したか否かは不明である。

(四) 清司は、本件事故直前、原告車を運転し、通勤のために南北道路を南進し、徐行しないで、ある程度の速度で本件交差点に進入した。

(五) 原告車と被告車の衝突場所は路面の擦過痕から本件交差点のほぼ中央、衝突箇所は双方の車の擦過痕等から被告車の前輪右側と原告車の左側が衝突したものと推測される。右衝突後、被告は六・七メートル南に跳ね飛ばされ、清司は五・二メートル南西に跳ね飛ばされた。

2  右認定によると、清司は、徐行せず、左前方の安全確認を十分にしないまま見通しの悪い本件交差点を進行したというべきであるから、相当の過失があるといわざるをえない。

他方、被告は、本件交差点手前の一時停止の標識に従い一時停止したか否かは明確でないものの、通常どおり一時停止したと推認すべきであるが、同標識設置の趣旨を考慮すると、特に安全確認の義務を尽くすべきところ、右前方の安全確認を十分にしないまま同交差点に進入したことは前記のとおりであるから、その過失は大きいというべきである。

そこで、原告車と被告車の車種、推測される本件事故当時の速度その他本件に現れた一切の諸事情を考慮のうえ、清司と被告との過失を対比すると、その過失割合は、清司が三割、被告が七割とみるのが相当である。

二  争点2について

1  葬儀費用(請求額・一九九万四七二八円) 一五〇万円

証拠(甲四、原告洋一本人、弁論の全趣旨)によると、清司の葬儀諸費用として仏壇仏具代四八万四二七三円を含め、合計一九九万四七二八円程度を要したことが認められる。

右認定に清司の年齢、職業等を考慮し、一五〇万円を相当な葬儀費用とみることとする。

2  逸失利益(請求額・二九六五万五八九七円) 二三七六万一八八三円

証拠(甲二の一、三の一・二、四、乙一の六、原告洋一本人、弁論の全趣旨)によると、清司は、ケミカルシユーズの仕事を自営していたが、病気のため廃業し、しばらく通院生活をしていたが、平成七年四月からケミカル関係の会社にアルバイトとして勤務し、一日当たり六一二一円の支給を受けていたこと、そして、清司は、体調も回復し、そろそろ正社員にしてもらおうとしていたこと、本件事故当時、パートをしていた妻と二人暮らしであり、五六歳であつたことが認められる。

右認定によると、清司は、本件事故当時、アルバイト中であつたが、まもなく正社員になる可能性が十分あつたから、アルバイトの収入をそのまま相当な収入とみることも、同年齢男性の平均給与を相当な収入とみることも相当とはいえない。結局、その当時のアルバイト収入と同年齢の男性の平均給与との平均額を相当な収入とみるべきである。すると、賃金センサス平成六年産業計・企業規模計・学歴計男子労働者五五歳ないし五九歳の年収が六三六万一二〇〇円であることが顕著であるから、次の計算式のとおり、清司の相当な年収は四二九万七六八二円(円未満切捨、以下同)となる。

(6,121×365+6,361,200)÷2=4,297,682

また、右認定によると、清司は、本件事故がなければ六八歳までの一二年間、右収入を得られたものと推認でき、その生活費としては四〇パーセント程度を要するものとみるのが相当である。

そこで、ホフマン方式により年五分の割合による中間利息を控除し、清司の本件事故当時における逸失利益の現価を算定すると、次のとおり二三七六万一八八三円となる。

4,297,682×(1-0.4)×9.215=23,761,883

3  慰謝料(請求額・二六〇〇万円) 二四〇〇万円

本件事故の態様、結果、清司の年齢、職業及び家庭環境等本件に現れた一切の事情を考慮すると、清司の慰謝料としては二四〇〇万円が相当である。

4  小計 四九二六万一八八三円

5  過失相殺

清司の過失が三割であることは前記のとおりであるから、その割合で過失相殺すると、その後に清司が請求できる損害賠償金額は三四四八万三三一八円となる。

6  損害の填補

清司が、本件事故に関し、労災保険金から葬儀費用分として四六万二九七〇円、年金分として一五九万二二〇〇円及び政府保障事業から一六一五万二〇四六円の合計一八二〇万七二一六円の支払を受けたことは、当事者間に争いがない。すると、その控除後に清司の請求できる損害賠償請求金額は一六二七万六一〇二円となる。

11 弁護士費用(請求額・三〇〇万円) 一六〇万円

本件事案の内容、訴訟の経過及び認容額その他諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は一六〇万円とみるのが相当である。

12 相続

原告澄子が清司の妻で、原告洋一及び原告島田が清司の子であり、原告らが清司の相続人であることは前記のとおりである。そこで、清司の死亡により、原告らが清司の損害賠償請求権を相続したが、その相続後の原告らの被告に対する損害賠償請求金額は、原告澄子につき八九三万八〇五一円、原告洋一及び原告島田につき各四四六万九〇二五円となる。

第四結論

以上のとおり、原告らの本訴請求は、主文第一項の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからいずれも棄却することとする。

(裁判官 横田勝年)

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