大判例

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神戸地方裁判所 昭和31年(行)27号 判決

原告 兵庫運河株式会社

被告 兵庫県知事

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「被告が昭和三十一年四月五日原告に対してなした公有水面埋立工事竣工認可書再交付申請却下処分はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として、原告は、大正二年十二月一日附内務大臣発付、内務省土第三二四七号に基く命令書及び右命令に基く大正二年十二月九日附兵庫県知事発付兵外土第五八八号運河命令書に関する通牒により原告が第三期工事として埋立をした埋立地、すなわち神戸市長田区苅藻島町一丁目無番、二千六百七十坪一合、同所一丁目二番地の四、二千七百二十五坪七合七勺、以上合計五千五百七十坪一勺につき、大正六年四月十八日兵庫県知事より埋立工事竣工認可書の下付を受け、公有水面埋立法第二十四条により即時右埋立地につき所有権を取得したが、爾来未登記のままこれを占有するうちに昭和十九年末頃、右埋立地周辺に護岸工事を施す必要に迫られその経費の融資を兵庫県に求めるため、当時兵庫県庁内に存在した兵庫県水産組合連合会に右竣工認可書を寄託していたところ、右書面は昭和二十年三月十七日の第一次空襲の際、戦災により県庁舎とともに焼失した。右埋立地は戦時中は陸軍部隊の高射砲陣地として使用され、その後原告の所有埋立地であること明かであるにも拘らず一般第三者の中にもこれが使用関係に介入して来るもの等があつたので、原告は至急保存登記の必要上、昭和三十一年二月二十四日被告に対し埋立工事竣工認可書再交付申請をしたところ、被告は原告の申請につき事実関係を精査することなく同年四月五日右申請を却下した。しかし被告の右却下処分は叙上のところよりして違法であるから、これが取消を求めるため本訴に及んだと述べ、被告の答弁に対し、本件認可書再交付申請は右公有水面埋立工事の再認可及びその再認可書の交付を求めているものであり又被告はさきに本件埋立工事を認可しておきながらその認可書の交付を不法に拒否するのは明らかに違法な行政処分であると述べ、

被告指定代理人は、本案前の答弁として、「本件訴を却下する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、その理由として、原告の公有水面埋立竣工認可書再交付申請を排斥した被告の行為は行政処分ではない。すなわち、抗告訴訟の対象となる行為処分は行政庁が公共団体又は国民に対してなす公法上の行為であつて、これらの者の権利義務に法律上の効果を及ぼすものでなければならないところ、原告主張の竣工認可書は行政庁の竣工認可の意思の表示方法に過ぎず、かつ、その当時原告に到達することにより既にその目的を遂げたものであるから、これが再発行をなすべき理由もなければ、又、これが再発行の申請を認めた法令上の根拠もなく、したがつてこれが申請を排斥したとしてもこれにより原告の権利義務に法律上の効果を及ぼすべき道理がないから、被告の右行為は抗告訴訟の対象となる行政処分でないこと明かである。よつて本件訴は取消を求める対象となる行政処分を欠く不適法なものとして却下されるべきである。と述べ、

本案の答弁として、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、原告の請求原因事実中、原告が被告に対して原告主張のとおり埋立工事竣工認可書の再交付申請をしたことは認めるが、その余は争う。と述べた。

理由

先ず、本訴取消の対象である被告の行為が行政処分であるかどうかについて判断する。およそ、抗告訴訟の対象となる行政処分は、行政庁が公共団体又は国民に対してなす公法上の行為であつて、これらの者の権利義務に法律上の効果を及ぼすものでなければならないものと解するところ、公有水面埋立法によると、埋立工事竣工認可があるときは埋立免許を受けた者は埋立地の所有権を取得するのであるから、その竣工認可書は行政庁の竣工認可の意思の表示方法にすぎず、原告の主張するところによれば、原告は、さきに埋立工事竣工認可書の交付を受けて即時埋立地の所有権を取得したというのであるから、その後原告が右認可書を紛失したとしても、既に認可が有効に効力を発している以上、被告が右認可書を再発行する理由もなく、又、これが再発行の申請を認めた法令上の根拠もないから、被告が原告の再交付申請を却下したとしても、原告の権利義務に法律上の効果を及ぼすものではない。

原告は右認可書再交付申請は右埋立工事の再認可の申請をも包含するものであると主張するけれども、右申請はさきになされた認可の表示方法である認可書の再発行の申請であること弁論の全趣旨により明白である。すると、被告のなした却下行為は抗告訴訟の対象となる行政処分ということはできない。

よつて右却下行為を取消の対象とする原告の本訴請求はその余の争点について判断するまでもなく失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 村上喜夫 尾鼻輝次 大西一夫)

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