大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

神戸地方裁判所 昭和37年(ワ)246号 判決

原告 甲野太郎(仮名)

右訴訟代理人弁護士 村井禄楼

被告 乙野一郎(仮名)

右訴訟代理人弁護士 宮内勉

主文

被告は原告に対し金一〇万円およびこれに対する昭和三七年四月四日より完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを三分し、その二を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

この判決は原告の勝訴部分にかぎり、原告が金二万円の担保を供することを条件に、仮りに執行することができる。

事実

≪省略≫

理由

被告が原告主張の日時、場所において、訴外K子と情交関係を結んだこと、およびその当時、原告と同女とが夫婦関係にあり、かつ被告がその事実を知つていたことは当事者間に争いがないから、右情交が、被告の強制によるものであると否とにかかわらず、被告は故意に、原告の夫権を侵害したものというべきであり、したがつて、それにより原告の蒙つた精神的苦痛を慰藉すべき義務を負うことは明かである。

そこで、その慰藉料の金額について検討するに、その金額を算定する基礎となるべき事情としては、当事者間に争いがない甲第一ないし第七号証≪中略≫によれば、原告および訴外K子の出生日時、学歴、職歴、婚姻日時が原告主張のとおりであり、原告らが婚姻以来、正常な夫婦生活を営んでいたこと、および右情交後間もなく、訴外K子が懐姙し、原告主張の日時に、女児を出産したことが認められ、また証人K子≪中略≫の結果によれば、被告は右情交当時、小野浜運輸株式会社の会計係事務員として、訴外K子と一緒に勤務していたものであることを認めることができる。しかし、右情交が被告の強制によるものであるかについては、この点を肯定する証人K子(第一、二回)の証言はにわかに採用しがたく、その他にこれを確認するに足る証拠は存在しない。かえつて、証人K子≪中略≫を総合すれば、訴外K子は昭和三六年六月○株式会社に入社した当初同会社の関係者に対し、原告と婚姻関係にあることを秘し、むしろ、原告が同女の兄であると称していたこと、被告と同女とは、同女の入社直後より親しく交際し、誘合わせて野球見物や喫茶に出かけ、とくに同年八月ごろには、被告が二回にわたり、しかも原告の不在中を選んで、神戸市≪省略≫の原告方自宅に同女を訪問していること、さらに同女は、右情交後も、同女がその事実を原告に告白した同年一一月三日ごろに至るまで、従前どおり右会社に通勤、被告と一緒に仕事をしていたことが認められるのであり、これらの事実と右情交の日時、場所の関係からすれば、被告と訴外K子とは、双方合意のうえ、右情交関係を結んだのではないかとの疑いも否定することができない。しかも、証人K子≪中略≫によれば、原告は、右情交以前に、被告と訴外K子とが前記のごとく、親しく交際し、とくに原告の不在中、かつ夜間、原告方自宅に同女を訪問した事実を知つていたことが認められるのにかかわらず、これに対し、適切な注意や措置をしていたとの事実は認められない。以上の各事情を総合して判断すれば、被告と訴外K子との右情交により原告の蒙つた精神的苦痛を慰藉するためには、被告が原告に対し金一〇万円を支払うべきが相当である。

よつて、原告の本訴請求は、慰藉料金一〇万円およびこれに対する遅延損害金の支払いを求める限度においては、正当であるからこれを認容し、その余は失当としてこれを棄却すべきであり、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条を、原告の勝訴部分に関する仮執行の宣言につき同法第一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 奥村長生)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com