大判例

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神戸地方裁判所 昭和42年(わ)677号 判決

被告人 美濃捷四郎

主文

被告人を罰金五、〇〇〇円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

訴訟費用中証人岸本武志、同谷生幸載に支給した分は、被告人の負担とする。

本件公訴事実中公文書毀棄の点は、被告人は無罪。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、法定の除外事由がないのに、昭和四一年一〇月二三日午前九時四五分ごろ、兵庫県公安委員会が道路標識により一時停止の場所と指定した神戸市長田区本庄町七丁目三番地先の交差点を、営業用普通自動車を運転して、西から東に向つて通過するに際し、一時停止することなく進行したものである。

(証拠の標目)〈省略〉

(法令の適用)

被告人の所為につき、道路交通法四三条、九条二項、一一九条一項二号、同法施行令七条一項、昭和三五年兵庫県公安委員会告示九一号(昭和四二年六月三〇日改正前のもの)(罰金刑選択)

労役場留置につき、刑法一八条。

訴訟費用の負担につき、刑事訴訟法一八一条一項本文。

(本件公訴事実中の無罪について)

本件公訴事実第二は

被告人は、昭和四一年一〇月二三日午前一〇時ごろ、神戸市長田区野田町七丁目四番地の一、長田警察署野田派出所において、道路交通法違反(一時停止違反)の被疑者として同派出所勤務司法巡査岸本武志より取調べを受け、同巡査からその作成に係る交通切符の告知票、免許証保管証一通の交付を受けるや「こんなもの破つてもかまわんやないか」と言つて右告知票を引き裂き、ついで同巡査が再度作成し交付した交通切符の告知票、免許証保管証一通を「何回書いても同じや」と言つて細かく引き裂き、もつて公務所の用に供する文書を毀棄したものである。

といい、罪名罰条として公文書毀棄、刑法二五八条を掲示するものであるが、刑法二五八条所定の公務所の用に供する文書とは、公務所で現に使用中又は保管中の文書と解すべきで、刑法二五八条は通常公文書毀棄罪の規定とは称するが、仮令公文書であつても、又将来公務所の使用に供することになる文書であつても、公務所が現に使用中又は保管中の文書でない文書は、公務所の用に供する文書とはいえない。ところで、本件証拠によれば、右公訴事実の本件交通切符の告知票、免許証保管証二通は、いずれも司法巡査の作成した公文書で、被告人はこれが交付を受けるや、後日指定の日に警察官のもとに出頭しこれを提出するものであるが、公訴事実にも記載のとおり、同巡査が作成後これを被告人に交付し、この交付を受けたものを被告人において引き裂き破つたことが認められる。してみると、この交通切符の告示票、免許証保管証は既に同巡査の手を離れ、一私人である被告人の保管に移つていたもので、公務所の現に使用中又は保管中の文書とはいえない。

従つてこれを引き裂き破つても、公務所の用に供する文書を毀棄したものにあたらない。よつて右本件公訴事実は罪とならないので刑事訴訟法三三六条により無罪の言渡しをすべきものである。

以上主文のとおり判決する。

(裁判官 三木良雄)

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