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神戸地方裁判所姫路支部 昭和49年(ワ)137号 判決

原告 白鷲運送有限会社

被告 国 ほか一名

訴訟代理人 宇田川秀信 浅田安治 山本義己 山本正明

主文

原告の被告らに対する請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

被告らは各自原告に対し金六二六万一二四二円及び内金五四四万四五五九円に対する昭和四八年一二月五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言。

二  被告ら

主文同旨の判決。仮執行免脱宣言。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  本件事故

(一) 日時

昭和四八年一二月三日午後零時ころ

(二) 場所

香川県香川郡塩江町大字安原琴電バス高畑停留所南方約一、二キロメートル付近道路(国道一九三号)

(三) 事故状況

高原峯光運転、原告所有の大型貨物自動車(以下原告車という)が、時速約五〇キロメートルで北進中、約六〇メートル前方対向車道を大型乗合バス(琴電バス)がセンターラインを超えて南進してくるのを認め、同車が同一進路を維持しているため、原告車を避譲させるべく制動し、時速約五キロメートルに減速して左転把し、同道路左端に避譲したところ、同道路の左端路肩が崩れ、同所に設置されていたガードレールもその効なく、原告車は約三メートル落下して大破した。

2  被告らの責任

(一) 本件道路は、被告国が設置し、被告香川県が被告国から委託を受けてこれを管理している。

(二) 本件道路は、幅員六メートルのコンクリート舗装部分と、その左右に約三〇ないし五〇センチメートルの未舗装の路肩があり、西端にガードレールが設置されている。

本件道路は、本件事故現場付近において、北に向つて緩やかに右カーブしており、大型車の離合するには、相互にできるだけ左方へ避譲する必要があり、もし対向車がセンターラインをオーバーするときは、避譲のため左車輪が路肩に進入することが予想される。

ところで道路法三〇条一、二項により制定された道路構造令七条によれば、道路には車道に接続して路肩を設けるものと定められ、本件道路のような第三種道路においては、路肩の幅員は〇・七五メートル(長さ五〇メートル以上の橋もしくは高架の道路又は地形の状況その他特別の理由によりやむを得ない箇所は〇・五メートル)とする旨定められている。

又、路肩は、道路の主要構造部の保護又は車道の効用を保つため設置されるのであり、自動車の交通量が少ない等特別の理由がある場合を除いてセメント、コンクリート、又はアスフアルト、コンクリート舗装すると定められている(同令二条一〇号、二三条)。

しかるに、本件道路の路肩の幅員は特別の理由もないのに五〇センチメートルであり、路肩の舗装がなされていなかつた。そして、ガードレールは路肩の外に設置すべきであるのに路肩中に設置し、本件道路の状況から対向車との衝突回避のため左転把すると左車輪が路肩に進入することが十分予想されるのに、これに対応した路肩の強化がなされず、本件事故直前に電々公社が電話ケーブル設置のため、路肩を掘り起し、脆弱な土中にガードレールを突込んで放置していた。

電々公社のなした右工事は、道路の重要な部分に変更を加えるもので、道路の構成に変更ありたるものに準ずるとして、現行の道路構造令を適用して、路肩を強固にすべきであつたのに被告らはこれを怠つたものである。

(三) よつて本件道路について、被告国は設置につき、被告香川県は管理につき瑕疵があつたものであるから、国家賠償法により損害賠償責任がある。

3  損害

(一) 事故車引揚費

(1) クレーン引揚費 金二四万円

原告が徳島重量運送有限会社に事故車の道路上への引揚げを依頼し、同社に支払つた代金

(2) 事故車解体、引揚手伝い費 金一〇万円

藤本幸春に事故車の解体、引揚の手伝いを依頼し、同人に支払つた代金

(二) 修理費 金三二〇万七七三〇円

(1) 事故車の車台の修理費

日通商事株式会社に事故車の破損修理を依頼し、同社に金三一万七四三〇円支払つた。

日産デイーゼル兵庫販売株式会社にその他の部分の修理を依頼し、金四万三〇〇円を支払つた。

(2) アルミ製保冷装置新調代

原告車は、牛乳運送専用車であるためこの設備をしていたところ、本件事故により大破し修理不能となり、金二八五万円を支払つて新調した。

(三) 商品の損害

本件事故は、原告が森永乳業株式会社徳島工場から委託を受けて、その製品を姫路へ運送中に発生したものであつて、製品の破損のため同社に対し金二〇万八六七七円の損害賠償金の支払をした。

(四) 事故現場復旧費

高畑用水水利組合に対し、原告車落下による農業用水破損復旧費として金一〇万四五三二円を支払つた。

(五) 営業上喪失利益

原告車は、乳製品運搬専用車として、毎日徳島、姫路間を運送のため稼働していたところ、本件事故のため、昭和四八年一二月四日から昭和四九年一月一七日まで稼働不能となり、その間の営業利益(必要経費控除)金一五八万三六二〇円を失つた。

(六) 弁護士費用 金八一万六六八三円

原告は、本件訴訟を原告訴訟代理人に委任し、請求損害の五分を着手金、一割を報酬とする旨約した。

4  よつて、原告は、被告ら各自に対し本件事故の損害賠償として金六二六万一二四二円及び内金五四四万四五五九円に対する本件事故の翌日である昭和四八年一二月五日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告らの認否

1  請求原因1の事実について

原告主張の日時、場所において、原告車と大型乗合バスが対向し、原告車が約三メートル落下して大破したことは認め、原告車の運転状況は不知。その余は否認。

2  同2の事実について

本件道路は、被告国が設置したものであること、力ーブの状況が原告主張のとおりであること、ガードレールが設置されていること、電々公社が工事を行つたこと(但し、工事の時期は、本件事故直前ではなく、昭和四八年二月である)は認め、その余は否認。

本件道路は、被告香川県が管理しているものではない。道路法一三条に基づいて国の機関としての香川県知事が管理しているものである。

本件道路の設置、管理の瑕疵の主張は争う。

本件道路は、昭和二八年七月一四日告示第四六〇号(道路区域決定に関する告示)により徳島高松線として香川県知事が管理する二級国道となつた。ところで、原告は現行の道路構造令(以下現行構造令という)を基準にして、本件道路がその基準に適合しないと主張する。しかし、現行構造令は、昭和四六年四月一日施行されたものである。そして現行構造令附則三項の経過規定によれば、現行構造令の施行のさい現に新設又は改築工事中の道路について、現行構造令の規定に適合しない部分がある場合には、その部分には現行構造令の規定を適用しないこととされている。その反面解釈として、現行構造令施行後に道路の新設又は改築工事をする場合は、現行構造令に適合させなければならない。ところで本件道路については、(一)昭和三六年度施行道路舗装工事(二)昭和四二年度施行ガードレール設置工事日昭和四七年度施行落石防災工事が施行されたが、そのうち右(一)は現行構造令施行前のものであるから、昭和三三年八月一日施行道路構造令(以下旧構造令という)の適用を受け、(二)(三)は道路の新設又は改築に当らないから現行構造令は適用されない。したがって本件道路の構造基準は旧構造令の定めるところにより判断されるべきである。

原告は、本件道路につき昭和四八年二月施行された路肩部分の電話ケーブル埋設工事は、道路の重要な部分に変更を加えるものであるから、道路の構成に変更があつたものに準じて現行構造令を適用して路肩を強固にすべきであつたと主張する。

しかし、新旧いずれの道路構造令を適用すべきかは、当該構造令の施行後、道路の新築又は改築に当る事実があつたか否かにより決すべきものであり、その他の場合、例えば修繕や災害復旧の場合はいずれの構造令も適用されないものである。

そこで右電話線ケーブルの埋設工事が、現行構造令の「改築」に該当するか否かであるが、ここに「改築」とは従前の道路構造に変更を加えて原状より積極的に改良するための工事をいうのであつて、右電話ケーブル埋設工事は従前の構造と同様の機能を回復する工事にすぎず、修繕や災害復旧工事と同様であるから「改築」とはいえない。したがつて、右工事には新旧いずれの道路構造令の適用もないものである。

そして旧構造令一一条によれば、路肩の幅員は〇・五メートルとされており、本件道路の路肩はこれに適合している。

現行構造令二三条に対応する旧構造令二四条は、歩道及び車道は舗装するものと定めていたが、路肩については舗装すべき旨の定めはない。したがつて、本件道路の路肩の未舗装であることは旧構造令に違反しない。

本件事故現場は、道路構造令には規定されていないが、付近の地形を考慮して路肩部分のうち幅約二五センチメートルを舗装していた(この舗装路肩部分は、現行構造令に定め側帯をも含んだものである)。

なお、ガードレールは路肩の外に設置しなければならない法令上の根拠はない。

路肩の設置目的は、第一に道路の主要構造部を保護すること、第二に車道の効用を保つことにある(旧構造令二条)。ここに主要構造部の保護とは、道路本体の形を保持することを意味し、車道の効用を保つとは、自動車の走行速度を確保するための余裕幅をもつことをいう。この余裕幅がなければ、車道部分全体、特にその端が十分利用されず、交通容量が低下するのでこれを防ぐため、車道幅員のすべてが自動車の通行に有効に利用される必要がある。なお、副次的には、歩車道の区別のない道路においては、自転車や歩行者が緊急に避難するためにも利用される。

このような目的を有する路肩を車両が通行することは、車両同志がすれ違う場合であつても禁止されている(道路交通法一七条一項、車両制限令九条)。

原告は、本件道路の路肩が脆弱であつたと主張するが、これは事実に反する。

電話ケーブルの埋設工事に伴う路肩の埋戻し工事は、地下一・二メートルに通信線を埋設後その上部に砂一〇センチメートル、良質の花崗土六〇センチメートル、その上にクラツシヤラン(経五〇ミリ以下の割りばなしの砕石で、五ミリの篩を通過するものを一五ないし四〇%、二五ミリの篩を通過するものを五ないし二五%含んでいるものであつて、転圧によつて緊密化し、硬度を増す性質を有し、路肩の材質としては最良のものである。)を埋め、この間約二〇センチメートルごとに計五回ほどランマーで転圧し、さらに砕石上部を花崗土で目潰ししたうえ、法面にも花崗土を敷き、芝を植付けるもので、その支持力は他の同種の路肩と何ら変らないものである。しかも本件事故は、右工事完了後二八〇日余も経過後に発生したものであつて、雨水浸透による自然転圧のため、当初より相当硬度が増していたものであつて、車輪の一部が通過した程度で崩壊するはずのない支持力を有していた。

以上、いずれの点よりするも、本件道路に設置、管理の瑕疵はない。

本件事故の原因は、専ら、原告車の運転手高原峯光の運転操作ミスと違法行為によるものである。

原告車運転手としては、本件道路の一車線の車道幅員が二・七五メートルであり、原告車の車幅が二・四八メートル、対向車も同程度の大型車でセンターライン寄りに走行してくるので、徐行又は停止して対向車の通過を待つて進行すべき義務がある(道路交通法七〇条)。しかるに原告車運転手はこれを怠り、時速五〇キロメートル以上の速度で離合せんとしたため、離合後にガードレールに接触することをおそれて急ブレーキをかけたり、ハンドルを右へ切ろうとしたが間に合わず、車体でガードレールを押し倒し、転落するに至つたものである。

原告車運転手は、積荷を満載し、重心が上部にある大型車は、急ブレーキや急激なハンドル操作によつて積荷や重心が移動し、これがため転倒のおそれがあるので、そのような急激な操作を避けるべきであつたのに、高速度のまま急激なブレーキ操作等をした。

原告車は、路肩を通行しないで容易に離合できたのに漫然と路肩を通行した。そのため、離合時のスピードの出しすぎからガードレールに接触したものである。原告は、対向車のバスがセンターラインを四〇ないし五〇センチオーバーしていたから路肩に進入したと主張するが、これは事実に反する。

原告車は、積載制限九・五トンを超える一一・二トンを積載しており、これは一・七トンの積載超過であつて、これが車両の運転を不安定にし、運転操作ミスによる転倒の一因をなしている。

3  同3の事実は不知。

4  同4は争う。

第三証拠〈省略〉

理由

一  本件事故について

昭和四八年一二月三日午後零時ころ、高原峯光運転の原告車が大型乗合バスと対向し、原告車が約三メートル落下して大破したことは当事者間に争いがない。

そして、〈証拠省略〉によれば、高原峯光は、原告車(姫路一一か六六八号)を運転して、香川県香川郡塩江町安原下第一号一四二七番地二国道一九三号線を南から北へ時速約五〇キロメートルで進行中、折から対向して北から南へ時速約四〇キロメートルで進行してきた琴電大型バス(香二い二〇八八号)とすれ違うさい、左側の路肩に進入し、ガードレールを破壊して、約三メートル転落し、原告車は大破したことが認められる。

二  本件道路の設置、管理について

被告国が本件道路を設置したものであることは当事者間に争いがない。〈証拠省略〉及び弁論の全趣旨によれば、本件道路の管理は、被告国の指定に基づいて香川県知事が行つていることが認められる。

三  本件道路の瑕疵について

1  路肩の幅員が〇・七五メートルに足りないことについて

本件道路の路肩の幅員が〇・五メートルであることは当事者間に争いない。現行道路構造令七条二項によれば、第三種道路(地方部普通道路)においては、特別の理由のない限り車道の左側に設ける路肩の幅員は〇・七五メートル以上と定められている。

しかし、昭和四六年四月一日施行の現行構造令附則三項(経過規定)によれば、現行構造令の施行のさい現に新設又は改築工事中の道路について、現行構造令の規定に適合しない部分がある場合には、その部分には現行構造令の規定を適用しないものと定められている。

そして、本件道路は、昭和二八年七月一四日告示第四六〇号道路区域に関する告示により、二級国道徳島高松線として決定されたものである(〈証拠省略〉)。しかも〈証拠省略〉によれば、本件道路について、現行構造令施行の昭和四六年四月一日以降道路の新設又は改築に該当する事実がないことが明らかである。

そうすると、本件道路については、現行構造令ではなく、旧構造令が適用されることとなる。

旧構造令一一条によれば、路肩の幅員は〇・五メートル以上とすると定められている(〈証拠省略〉)。したがつて本件道路の幅員が〇・七五メートルに足りないことは道路構造令に違反しない。

なお、原告は、本件道路は昭和四八年二月中旬から下旬にかけて、電々公社が電話ケーブル設置のため路肩を大きく掘り起したから、道路の重要部分に変更を加えるもので、道路の構成に変更ありたるものに準ずるものとして現行構造令を適用すべきであつたと主張するが、「改築」とは、道路を原状より改良するための工事をいうのであつて、電話ケーブルの設置は道路自体に何らの変更を加えるものではなく、道路の改築に該当せず、これに準ずべきものでもないから、右主張は失当である。

2  路肩が舗装されていないことについて

原告は、現行構造令二三条を根拠として、路肩の舗装がなされていない点に本件道路の瑕疵が存すると主張するけれども、本件道路については現行構造令の適用はなく、旧構造令の適用がなされるべきであることは前記のとおりである。そして旧構造令によれば、路肩の舗装をなすべき規定は存在せず、右主張は失当である。

3  ガードレールの設置場所、設置方法について

原告は、ガードレールは路肩外に設置すべきであるのに路肩中に設置してあることを非難するが、ガードレールを路肩外に設置しなければならない法令上の根拠はなく、右主張は失当である。

本件道路においては、路肩とガードレールまで二〇センチメートルの間隔があるが、これは歩行者、自転車の通行のためである(〈証拠省略〉)。

又、原告は、電々公社が本件事故直前電話ケーブル設置のため掘り起した路肩の脆弱な土中にガードレールを突込んで放置したと主張するが、〈証拠省略〉によれば、電々公社が電話ケーブル設置工事を行つたのは昭和四八年二月ころであり、その工事のさい路肩を掘り起したが、その後は強固に転圧され、その後の雨水の自然転圧も加わつて路肩は脆弱ではなかつたこと、ガードレールの設置目的は主として、正常運転をしている車両の路外脱出防止にあるが、副次的には、ガードレールに当つた車の正常方向への復元、乗員の安全確保、歩行者の安全、ガードレールに当つた車の故障により他の交通事故を惹起するのを防止すること、物損を最少限に押さえること、視線誘導等の機能も備えることが望ましいとされていること、したがつて強度のみを考えてガードレールを設計すると、軽車両の衝突のさい加速度が大きく働き乗員の安全確保が困難となる等の難点があること、本件道路に設置されたガードレールは土中埋込方式により支柱が設置されており、脆弱な土中に突込んで放置したものではないことが認められる。原告は、〈証拠省略〉の添付写真を根拠に路肩が崩れ落ちていると主張する。しかし右写真から必ずしも路肩崩壊の事実は認められない。

4  本件道路は、その道路状況からみて車両が路肩を通行することが予測されるのに、これに対応した路肩の強化がなされていないことについて

路肩とは、道路の主要構造部を保護し、又は車道の効用を保つために車道又は歩道に接続して設けられている帯状の道路の部分をいう(旧道路構造令二条五号、車両制限令二条七号)。ここに車道の効用を保つとは、自動車の走行速度を確保するための車道に対する余裕幅を持たせることをいう。すれ違いのさい路肩を通行することまでも許しているものではない。そもそも自動車は、その車輪が路肩にはみ出して通行することを禁止されているのである(車両制限令九条)。車両のすれ違いの場合であつても同様である。

本件事故現場は、北に向つて緩やかに右カーブしていること、本件道路西側にはガードレールが設置されていることは当事者間に争いがない。

そして、〈証拠省略〉によれば、次の事実が認められる。

(一)  本件現場は、コンクリート舗装のほぼ平らな道路であり、幅員は、舗装部分六メートル、路肩部分約〇・五メートルであつて、南から北に向つて緩やかな右カーブを描いているが、見とおしは比較的良好である。

(二)  現場道路の舗装部分の中央には幅一五センチメートルの白線でセンターラインが引かれ、車道両端部分にも同様の白線で外側線が引かれている。

(三)  本件道路西側部分には、長さ約一〇〇メートルにわたつてガードレールが設置されている。

以上の事実によれば、本件道路において大型車同志がすれ違うさい一応の困難が予想されると推認される。しかし、比較的見とおしが良好である上、カーブも緩やかであるから、相互に左方に寄り、場合によつては減速、徐行、一時停止する等して接触事故を起すことなくすれ違うことが困難ではない。ましてや、路肩に進入することが予想されるわけではない。

なお、原告は、本件事故のさい、対向する大型バスがセンターラインをオーバーして来たため、原告車が路肩に進入するのもやむを得なかつたと主張するかの如くであるが、この点に関する〈証拠省略〉は、〈証拠省略〉に照らし採用することができず、その他右事実を認めるに足りる証拠はない。

したがつて原告車の路肩通行は違法であり、このような違法通行を予想して路肩を強化すべき義務は存在しない。

〈証拠省略〉によれば、電々公社は、昭和四八年二月ころ、本件道路の路肩部分を深さ約一・五五メートル、幅約八五センチメートルにわたつて掘削して溝を作り、その中に直径約一〇センチメートルの通信管を埋設し、その後に砂、花崗土、砕石(クラツシャラン)を順次入れて埋めもどし、約五回ランマーで転圧し、さらに砕石上部に花崗土で目潰しをして、法面にも花崗土を敷き、芝の植付けをしたものであることが認められる。右工事のため、路肩が軟弱になつていたことを認めるに足りる証拠はない。しかも、本件事故は右工事後二八〇日余も経過して発生したものであるから、雨水浸透による自然転圧により路肩は一層強固になつたことが確認される。

5  以上のとおりであつて本件道路の設置、管理の瑕疵はない。

四  本件事故の原因

〈証拠省略〉の結果を総合すると、次の事実が認められ、右認定に反する〈証拠省略〉は採用しない。

1  本件道路は、車道幅員約六メートル(一車線二・七五メートル)であり、原告車の車幅は二・四八メートルであり、対向するバスも大型であつた。

2  原告車運転手高原峯光は、対向する大型バスと離合後、時速約五〇キロメートルのまま、接触の危険を感じ、警音機を鳴らし、急制動するとともに左転把した。

3  ところがその直後、高原峯光は、バツクミラーが割れるような音を聞き、左にハンドルをとられそうに感じ、あわてて右転把したが間に合わず、路肩中に設置されたガードレールを押し倒して道路下に原告車は転落した。

4  原告車は、制限積載量九・五トンを一・七トン超過する一一・二トンの積載をしていた。

5  大型バスは原告車との離合のさい、センターラインをオーバーしていなかつた。

以上の事実によれば、原告車運転手高原峯光は、徐行又は一時停止等の対向車との接触事故防止のための臨機の措置をとるとともに、一一・二トンもの積載をしているのであるから、高速度で急激な運転操作をすれば重心の移動によつて転倒するおそれがあるから、急激な運転操作を控えるべきであるのに、時速約五〇キロメートルのまま離合し、対向車との接触の危険を感ずるや急激に左転把して制動し、ガードレールとの接触の危険を感ずるや、さらに右転把したため、自車の積載超過と相まって路肩に進入し、ガードレールを押し倒して左方に転落するに至つたものである。本件事故は、原告車運転手高原峯光の右過失により生じたものと認められる。

五  よつて、その余について判断するまでもなく、原告の被告らに対する請求は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 塩田武夫)

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