大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

福井地方裁判所 昭和56年(ワ)105号 判決

原告

高木秀男

右訴訟代理人弁護士

八十島幹二

吉川嘉和

吉村悟

被告

学校法人金井学園

右代表者理事

金井兼造

右訴訟代理人弁護士

餞正市

刈野年彦

主文

一  原告と被告との間で、原告が被告の設置する福井工業大学の助教授の地位にあることを確認する。

二  被告は、原告に対し、金六四万八一六三円及び昭和六一年一〇月以降、毎月二八日限り、金三五万八四〇〇円を支払え。

三  被告は、原告に対し、金一〇〇万円及びこれに対する昭和五六年五月九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告のその余の請求を棄却する。

五  訴訟費用は、これを五分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

六  この判決は第二、三項に限り、仮に執行できる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨(原告)

1  主文第一項同旨

2  被告は、原告に対し、金一二四万八一六三円及び昭和六一年一〇月以降、毎月二八日限り、金三七万八四〇〇円を支払え。

3  被告は、原告に対し、金五〇〇万円及びこれに対する昭和五六年五月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は、被告の負担とする。

5  第2項ないし第4項について仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する被告の答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求の原因(原告)

1  当事者

(一) 被告は、昭和三四年二月二三日に認可された学校法人であり、肩書地に、福井工業大学(以下「福井工大」という。)、福井高等学校(以下「福井高校」という。)を設置している。

(二) 原告は、昭和三九年三月、東北大学理学部を卒業し、昭和四五年三月、同大学大学院理学研究科博士課程を修了すると共に、理学博士の学位を取得した者であり、被告から、同年四月、福井工大助教授として採用された。

2  原告に対する職務変更

(一) 福井工大正教授会(大学教員中の「教授」のみによつて構成された組織。福井工大には、別に教授、助教授、講師等のすべての大学教員によつて構成される「教授会」があり、両者を区別する。)は、昭和五六年四月八日、被告代表者から、原告の身分について左記理由により大学助教授職を解任し、事務職へ職務変更したい旨の要望を受け、これを承認する決議を行つた。

① 昭和五六年度の教員構成上、原告の担当を必要とする講義時間がない。

② 原告は、昭和五二年四月以降、長期に亘つて授業を担当していない。

③ 地方私立大学の財政能力からして授業をもたない教員を保有することができない。

(二) 被告は、右正教授会決議を得て、同月九日、原告の同意なく原告の福井工大助教授職を解任し、一般事務職とすること(以下「本件職務変更」という。)を決定し、同月一〇日、その旨を原告に通告した。

3  本件職務変更後の懲戒解雇

被告は、右の助教授解任により事務職としての身分になつていた原告を昭和五六年五月九日懲戒解雇(以下「本件解雇」という。)した。

4  本件職務変更の無効

(一) 労働契約違反

原告は、被告から福井工大助教授として採用された者であり、原告と被告との労働契約は、原告の従事する労働が教育研究職であることを前提としているものであつて、原告が事務職としてのみ労働することは予定されておらず、本件職務変更は、右労働契約の内容を原告の同意なくして一方的に変更するものであるから無効である。

(二) 手続的無効

原告の助教授職解任は専門職として、学者、研究者に保障されるべき身分保障上の手続を欠いており無効である。殊に本件職務変更は、実質的には、原告に対する懲戒でもあつたから、懲戒に必要な手続を経る必要があつたところ、これを経ていないのであるから、無効である。

右の点に関し、「教育・研究に関して社会的に確立している条理」として左記の四原則がある。

① 教師・研究者は、雇用関係内に置かれていても、固有の精神的創造力及び専門的能力を発揮し得る自由(専門職能的自由)を保障されなければならない。

② 教師・研究者は、教育・研究職に必要な専門的能力及び知的誠実性を備えるか否かに関しては、専ら、ないしは主として、同僚専門職能人によつて評価され、安定的身分を保障されなければならない。

③ 教師・研究者は、有形無形の集団的自律の体制を樹立することに努めなければならない。

④ 使用者・任命権者の教師・研究者に対する身分の変更にかかわる措置は、実体的には、教師・研究専門職能に通用している条理に基づき、手続的には、手続的正義の原則に適合して、行われなければならない。

以上の各原則、特に、右④の原則から第一に、懲戒事由を構成する事実を特定し、これを文書によつて事前に告知されなければならず、第二に、弁護の充分な時間的余裕を与えられた後に、公開の場において、当局の提示する証拠に反論し、これに対する反証を挙げ、かつ、自らを弁護する機会を保障されなければならず、第三に、関係証拠に接近する充分の権利を保障されなければならず、第四に、懲戒の決定は理由を付した書面によつてなされなければならないといつた手続保障が導き出されるところ、教師・教育者に対する懲戒処分である原告の本件職務変更においては、右のいずれの手続もなされていない。

(三) 本件職務変更の実体的無効

(1) 原告は、被告から福井工大助教授として採用された昭和四五年四月から昭和五二年三月まで、一般教育の物理の講義を担当していたところ、その後、被告代表者の意向で一方的に右講義担当を解かれたが、右講義担当の解任は原告の意思を無視して行われたもので原告に何ら責任のないものであるから、講義(授業)を担当していないことを理由とする本件職務変更が失当であることは明白である。

(2) 被告は、原告の右講義担当を解いた昭和五二年四月から、後任の物理の講義担当者として、清水啓を非常勤講師として採用し、昭和五三年四月からは、右清水を専任教授として採用し、また、右清水が昭和五五年三月末に退職すると、各務頼文を教授として採用し、結局、被告みずから原告に対する給与の外に右二名に対し順次給与を支給するという状況を故意に作出していたのであるから、財政能力を理由とする本件職務変更が失当であるのは明白である。

また、仮に、経費削減という財政上の必要性があるとしても、その検討は、多角的になされるべきであつて、このことからただちに、本件職務変更を行うというのは短絡であつて、許されない。

なお、本件職務変更が無効である以上、本件解雇はその前提を欠き無効であることは当然であり、これを論ずる必要はない。

5  原告の受領すべき給与

被告は、原告に対し、福井工大助教授の給与として次の各金員の支払をなすべきである。

(一) 昭和五六年四月分本俸の不足額 金三万六七六三円

原告の右月分の福井工大助教授としての給与は、当時の国家公務員教育職俸給表(一)に定める二等級一〇号俸に該当し、本俸金二四万九七〇〇円であつたところ、原告は、金二一万二九三七円の支給を受けたのみであるから、本来、受領すべき金員との差額は金三万六七六三円である。

(二) 住宅手当不足額 金二五万三〇〇〇円

被告の職員に対する住宅手当の最高額(一か月)は、昭和五六年四月から昭和五八年三月まで金一万三〇〇〇円、同年四月から昭和五九年三月まで金一万四〇〇〇円、同年四月から昭和六〇年三月まで金一万四三〇〇円、同年四月から昭和六一年三月まで金一万四七〇〇円、同年四月からは金一万五〇〇〇円である。

原告は、その家族と共に、昭和五六年四月以降、賃料一か月金四万五〇〇〇円の借家に居住しているため、右各最高額の住宅手当の支給を受けるべきところ、福井地方裁判所が発令した賃金仮払仮処分によつて、住宅手当として毎月内金一万円を受領しているにすぎないのであるから、昭和六一年八月分までの原告が受領すべき住宅手当の不足額は合計金二五万三〇〇〇円である。

(三) 学位手当 金五八万円

被告は、学位を有する職員に対し、昭和五九年四月から、一か月金二万円の手当を支給することとしたため、理学博士の学位を有する原告には、右月から昭和六一年八月までの二九か月分金五八万円を支給されるべきである。

(四) 昭和六一年九月分の給与 金三七万八四〇〇円

原告の右月の福井工大助教授としての給与は(本俸は、前記俸給表(一)の四級職一四号俸に該当する)次の合計金三七万八四〇〇円である。

本  俸 金三三万四四〇〇円

家族手当 金九〇〇〇円

住宅手当 金一万五〇〇〇円

学位手当 金二万円

(五) 昭和六一年一〇月分以降の給与 毎月二八日限り金三七万八四〇〇円

被告の給与支払日は、毎月二八日であるから、原告は、口頭弁論終結時(昭和六一年一〇月二四日)以降、毎月二八日、右(四)記載の給与金三七万八四〇〇円を受領できる地位にある。

6  被告の不法行為

(一) 被告は、原告が昭和四七年五月、福井工大学友会会則改正問題に関し、教授会において、被告の方針に反対して以来、次のとおり数々の不法行為を行つた。

(1) 福井臨工計画学習会への出講禁止

原告は、昭和四七年六月、日本科学者会議福井支部から推薦を受け、福井臨海工業地帯の造成及び火力発電所建設に関する「公害と教育問題を考える教員集会」という名の学習会へ、講師として出席しようとしたところ、被告は、被告代表者(理事長)の許可を得ていないとして不当にこれを禁止し、原告に出席させなかつた。

(2) 福井大学コロキウム(研究会)への参加禁止

原告は、昭和四八年ころから、福井大学における素粒子理論等についてのコロキウム(研究会)に参加していたところ、被告は、大学教官募集の際には、他大学での研究を許可していたにもかかわらず、昭和五〇年五月、原告に対し、右コロキウム参加を禁止して、原告から貴重な研究の機会を奪つた。

(3) 講義担当の解任

被告は、原告に対し、昭和五二年四月、突如、秘書室勤務を命じて被告三〇年史編さんの業務に従事させ、続いて、何ら落度のない原告の一般教育部門の講義担当を解き、その後も原告の講義担当の要請を拒否し続け、原告の教師としての能力向上の手段を奪つた。

(4) 原告の研究室の明渡

被告は、昭和五五年三月二五日、福井工大一号館三階の原告の研究室から原告の研究資料を実力で搬出して、右研究室を明け渡させて、原告の研究の能率向上の場を奪つた。

(5) 本件職務変更及び本件解雇

被告は、昭和五六年四月九日、本件職務変更を行い、続いて同年五月九日、本件解雇を行つたが、これらの措置によつて、原告は、経済的にも苦しい状況に置かれ、研究条件が悪化し、また本件解雇がなければ当然利用し得た全国共同利用大型計算機センターの利用も制限される等、現実的にも著しく不利な研究環境に陥つた。

(二) 原告は、高度に知的かつ創造的な性格を持つ研究という業務を行う者であり、その中でも、特に、研究業績のみで評価される傾向にある大学教員であるところ、年令的にも研究者として極めて重要な時期に、被告から長期間にわたつて加えられた右一連の不当不法な行為によつて、研究者生命を失うに等しい打撃を受け、かつ著しい精神的苦痛を蒙つた。

被告の不法行為による原告の右精神的苦痛を慰藉するための相当な金額は金五〇〇万円を下らない。

7  結び

よつて、原告は、被告に対し、原告が福井工大助教授の地位にあることの確認を求めるとともに、雇傭契約上の給与支払請求権に基づき金一二四万八一六三円(昭和五六年四月分本俸の不足額金三万六七六三円、昭和五六年四月から昭和六一年八月までの住宅手当未受領分合計金二五万三〇〇〇円、昭和五九年四月から昭和六一年八月までの学位手当合計金五八万円、昭和六一年九月分の給与金三七万八四〇〇円の合計)及び昭和六一年一〇月以降毎月二八日限り給与として金三七万八四〇〇円の支払を、前記不法行為による慰藉料請求権に基づき金五〇〇万円及びこれに対する昭和五六年五月一日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。

二  請求の原因に対する認否〈省略〉

三  被告の主張

1  本件職務変更の理由

本件職務変更は、被告の職員就業規則二九条の「業務の都合により職員に勤務の配置転換、又は職務の変更を命ずることがある。」との規定に基づき行われたものである。

そして、本件職務変更は、「職員の人事に関すること」であるから、その前提として、福井工大学長の諮問機関であつて、右人事に関して実質的決定権を有する正教授会の協議が必要なところ(教授会規程三条参照)、学長の招集によつて、昭和五六年四月九日、開催された正教授会において、協議の結果、出席した一九名の教授(一八名の出席者及び電報で本件職務変更に賛成した一名)の全員一致で本件職務変更に賛成する旨議決された。

被告は、正教授会の右決議に従つて、本件職務変更を行つたが、その理由(必要性)は次のとおりであつた。

(一) 原告の建学の精神に対する反抗的態度

被告の建学の精神は、「悠久なる日本民族の歴史と伝統とに根ざした愛国心を培い、節義を重んずる人格の育成、科学技術の研鑽に努め、以つて人類社会の福祉に貢献する。」ことであり、その校風は保守的傾向が強く、これに反する理念とは相入れないという傾向を有する。

しかるに、原告は、私立大学の職員として、右建学の精神に基づく被告の大学運営方針に従うべき義務があるにもかかわらず、次のとおり、被告が右建学の精神に基づいてなした措置に対し、福井工大の教員にしておくことは好ましくない反抗的態度を持続した。

(1) 学友会会則改正問題

原告は、昭和四七年五月一三日に開催された福井工大の学友会総会においてなされた改正手続に違反する違法な学友会会則の改定を支持し、右改定をめぐつて、同月一五日、開催された教授会において、違法な改定であるから、その公示に応じないこととする被告の方針に反対し、更に改定の公示に応じない学長疋田強をなじつたもので、右態度は、右改定により学友会が穏健保守的組織から変貌して、学生のみの自治会として尖鋭化する懸念があつた状況下では、保守的傾向を有する被告の教員として穏当でないといわざるを得ない。

(2) 福井臨工計画学習会講演問題

被告は、福井県下唯一の私立の工業大学として、同県が進める福井臨海工業地帯造成計画に積極的に取り組むべく期待されているところ、原告は、右造成、火力発電所建設に伴い排出される公害についての学習会へ、日本科学者会議福井支部から支部会員として講師の推薦を受け、福井工大助教授の肩書で講演しようとし、他方右学習会を臨工計画反対の趣旨で開かれると理解していた被告は、福井工大の派遣と誤解されることのないよう、福井工大助教授の肩書付ならやめることを指示したところ、この被告の指導を不服とした。このため、被告は、右講演が就業規則(乙第一九号証)二一条二号の「理事長の承認を受けないで学校以外の業務に従事(すること)」に該当するため、禁止した。

(3) 福井大学コロキウム(研究会)への参加問題

昭和五〇年四月四日の教授会で、学外に講師として又は研究のため出講することは原則として認めないとの決議を経て、被告がこれを禁止したにもかかわらず、原告は、これに非を唱え、参加を強行しようとした。

(4) 研究室明渡への非協力

被告は、昭和五二年四月一日被告三〇年史編さんのため原告に対し秘書室勤務を命じ、授業担当を解いたが、折から被告は、定員増に伴う教員増のため、施設が不足したため、同日、原告に対し、研究室の明渡を命じたが、原告は、これに従わず、抵抗を続けようやく昭和五五年三月二五日に至り明け渡させた。

(二) 被告の財政状況

被告は、高等学校と大学を設置しているところ、出生率の変化に伴ない高校では昭和五四年度から昭和五七年度にかけての新入生徒数の激減ののち漸増して昭和六十三、四年度をピークとして再び激減に転じ、大学ではこの三年遅れで、新入学生数の右各増減がある。

そして、昭和五〇年の私立学校振興助成法の成立に伴い、その対象となる大学に対し大学設置基準による指導も強化され、従来の「水増し入学」に対しては、国の補助金が減額されることになつた。このため、被告は、福井工大の入学者数を昭和五一年度以降、減少させ、また、学生の実員を定員に近づけるため、昭和五二年度に、一学年一六〇名定員を二八〇名に、昭和五六年度に、これを四六〇名にする各定員増認可を受けたが、右認可の条件としては、認可年度の新学期開始時までに、定員増に見合う教員(定員増に対しては、必要教員数の二分の一以上が教授でなければならない)と校地が確保されていなければならず、これに多大の経費を支出せざるを得なくなつた。

右の状況及び大学運営の将来予測から、被告は、財政改善を強く迫られており、種々の経費節減策の一環として福井工大において、講義を担当する時間を持たない原告に対し、本件職務変更を行い、助教授職給与を削減したものである。

2  仮に被告の右主張は理由がないとしても、本件職務変更は、実質的決定権を有する正教授会の決定に基づくものであるから、学校教育法五九条の解釈上もこれを尊重すべきであり、右正教授会決定を無視して、原告の助教授の地位を学校法人である被告との間のみで確認することは法的に不可というべきである。

3  本件解雇の理由

原告は、右一連の建学の精神に対する反抗的態度に加えて、本件職務変更にも何らの理解を示さず、違法不当としてその反抗的態度を表明したものであつて、これらの原告の行為は、被告就業規則五八条一号ないし三号(①学園の建学の精神又は教育方針に違背する行為のあつた場合。②定められた服務規律等に違反し、又は上司の職務上の指示に従わなかつた場合。③職務上の義務に違反し又は職務を怠つた場合。)に該当し、かつ、その情状も重いため、懲戒解雇としたものである。

四  被告の主張に対する原告の認否〈省略〉

第三  証拠〈省略〉

理由

第一原告の地位の確認について

一請求の原因1(当事者)、同2(原告に対する職務変更)及び同3(本件職務変更後の懲戒解雇)の事実は、当事者間に争いがない。

二本件職務変更の効力

1  原告は、本件職務変更が、原告と被告との間の労働契約の内容を一方的に変更するものであるから無効である旨を主張するので、この点についてまず検討する。

2  前記争いのない事実(当事者及び原告に対する職務変更)に加え、〈証拠〉を総合すると次の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない(なお、右証拠中、後記認定に反する部分は、他の証拠に照らし採用しない。)。

(一) 被告の常勤の職員は、被告管理規則上、教育職員(教授、助教授、講師、助手、教諭、助教諭、技術員及び実験助手。なお、被告職員就業規則上は、右技術員及び実験助手を教育職員から分離して技術職員と呼称していると解される。)、事務職員(事務局長、部長、次長、室長、課長、科長、課長補佐、その他一般職員)及び労務職員(夜警員、用務員。なお、右就業規則上の呼称は、用務職員である。)に区別され、いずれも理事長(被告代表者)が任用ないし任命するが、その基準は、職種ごとに異なつている。また、職員の給与本俸は、福井県人事委員会の定める行政職給料表、教育職給料表(一)及び同表(二)が準用され、職種ごとに異なつて定められている。

そして、特に教授、助教授、講師等の任用基準は他の職員に比して厳格であり、被告職員任用・任命規定上、助教授については「人格が高潔で将来性に富み、博士の学位を有し教育及び研究指導上の能力を有すると認められる者又はこれに準ずる者」等と定められ(被告の職員の任用・任命の実際の運用も概ね同規定に従つている)、極めて高い能力が要求されている。また、助教授の職務内容について、右管理規則上は、「教授の職務を助け学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する」と定められている。

(二) 原告は、昭和四五年三月二五日に理学博士の学位(学位論文は、「プラズマポーズの生成に関連する電離層外圏の研究」)を取得した者で、東北大学大学院理学研究科(地球物理学専攻)の博士課程在学中の昭和四四年一一月ころに被告から同大学大学院生らに対してなされた福井工大の物理教官募集(その募集要項において被告が提示した勤務条件の内容は、概ね①一般教養の物理、応用物理の講義、物理の基礎実験の指導手伝いを行うべきこと、②待遇は公立大に準じ福井大学と比べて決定すること、③週二日位は福井大学又は金沢大学、その他へ研究のため、行つてもよいこと、④研究費、学会出張費は配慮するほか、私立大学協会から恩給に類するものがでること等であつた。)に応じ、昭和四五年四月一日付で、福井工大助教授として被告に採用された。

そして、原告は、被告に就職後、昭和四五年度前期(四月一日から九月一〇日まで)から昭和五一年度後期(九月一一日から翌年三月三一日まで)まで、一般教育の物理又は数学の講義を担当し、また、昭和四六年から昭和五二年にかけて、福井工大研究紀要等に数回論文を発表する等、教育・研究的業務に従事していた。

(三) 原告が、本件職務変更によつて担当することを命ぜられた業務は一般の事務職であつて、その職務内容に教育、研究的要素は含まれず、また、本件職務変更の結果、原告に支給される給与本俸は、右変更直前の昭和五六年四月の助教授職本俸の金二四万九七〇〇円から、金八万六六〇〇円減少した事務職員本俸の金一六万三一〇〇円となつた。

(四) 従来から被告の職員中、教育職員と事務職員を兼務する者は相当数あり、昭和五六年当時は、事務局長上木隆夫が福井工大教授を、事務局次長野島利栄及び同西田常夫がそれぞれ福井工大助教授を兼務する等、十数名の福井工大事務局の事務職員が教育職員を兼務して福井工大又は、同大学付属福井高校で授業を担当していた例はあるが、本件職務変更のように教育職員で、しかも教授に次ぐ立場にある助教授を管理職ではない一般事務職員専任に変更することは例がなく、もとより原告がこれに同意していないことが明らかである。

(五) 被告職員就業規則二九条には、原告の前示採用の当時から「業務の都合により、職員に勤務の配置転換又は職務の変更を命ずることがある」旨の条項が定められている。

3  ところで、一般に、職種等を限定した労働契約において、それに定められた範囲を超えて職務内容の変更を命ずる場合は、労働契約変更の申し入れであつて労働者の同意が必要であり、使用者の一方的命令によつてはなしえないというべきである。

もつとも、本件においては、右2(五)のとおり、被告職員就業規則二九条には配転又は職務変更に関する条項が定められているのであるから、原告は、職務変更につき事前に包括的同意を与えているものとして被告の一方的職務内容の変更命令に従うべき労働契約上の義務があると解される余地がないではない。しかし、就業規則中に右のような配転予定条項を設け、かつ、原告が前示採用の際右と異なる意思表示をした形跡のないことをもつて直ちにその文言に則し被用者が無制限に職務の変更を予め承諾し、使用者に一方的な職種の変更権を与えたものと解するのは必ずしも相当ではない場合もあり、労働契約締結の際の事情、従来の慣行、当該職務変更における新旧両職務間の差異等を参酌して、被用者が右文言にかかわらず職務内容の一方的な変更権を限定して使用者に与える旨を同意したにすぎないものと解するべき余地もある。

そこで、本件についてみると、まず、被告の前示採用時における右労働契約における職種は、その労務提供について法規及び被告の職員任用・任命規定、管理規則の定めるところ並びに前示職種間の処遇の状況に徴し、教育・研究的職務に限定されたものと解すべきであり、本件職務変更は、右労働契約において限定された原告の職種を変更する場合にあたる。そして、前示のような原告の右職種の内容、教官募集の経緯、本件職務変更の前後における原告の処遇状況、及び福井工大における前示慣行に照らせば、右配転予定条項にいう被告の変更権も、せいぜい原告の教育・研究的職務(当初の職種)に兼ねて一般事務を担当する程度のものにとどまるものというべきであり、原告の助教授職を解き一般事務職員を命ずるような本件職務変更を正当化すべき変更権が被告にないことは明らかである(なお、前記証拠によれば本件職務変更と同時に、佐々木健治助教授についても、助教授職から事務職員への職務変更がなされていることが認められるが、右は、佐々木助教授が当時、被告の常務理事であること及びその健康上の理由からされたものと認められるから、前示認定判断の妨げとはならず、他に右認定に反する資料はない。)。そうすると、本件職務変更につき原被告の個別具体的な合意ないし原告の同意の主張立証のない本件にあつては、右変更を正当とすべき根拠はなく、本訴請求中原告の地位確認を求める部分は、その余の点について判断をすすめるまでもなく理由があるというべきである。

更に、被告は、本件職務変更は、原告を助教授として認めるか否かの実質的決定権を有する正教授会の決定に基づいてされたものであるから、原告の地位の確認を原告と学校法人である被告との間で確認することは許されない旨をるる主張する(被告の主張2)が、被告の右主張は独自の見解であり、失当である。

第二原告の給与支払請求について

一第一で認定したとおり、本件職務変更は無効であるから、事務職員としての原告に対する本件解雇もその前提を欠き無効と言わざるを得ない(更に、本件解雇それ自体も、後記第三の三の4のとおり理由がない。)。

二よつて、被告は、原告に対し、福井工大助教授職の給与を支払うべき義務があるところ、請求の原因5(原告の受領すべき給与)については、同5(三)(学位手当)を除いて、当事者間に争いがない。

そこで同5(三)(学位手当)について検討するに、〈証拠〉(被告の給与規程)によれば、被告の業務に特別功績のあつた者に対し支給し、その額は理事長が定めるいわゆる「特別手当」は、被告の給与体系上、存在するが、本件全証拠によるも、「学位手当」なるものを認めるに足りない。また、被告が、原告に対し、右特別手当を支給することを決定したことを認めるに足りる証拠もない。

以上のとおり、原告の福井工大助教授職の給与の支払を求める請求は、学位手当を除いて合計金六四万八一六三円と昭和六一年一〇月以降毎月二八日限り金三五万八四〇〇円の支払を求める限度で理由がある。

第三不法行為に基づく損害賠償(慰藉料)請求について

一請求の原因6(被告の不法行為)のうち、原告が福井工大学友会会則改正問題に関し、教授会において、被告の方針に反対したこと、被告が原告に対し、福井臨工計画学習会への出講を禁止したこと、福井大学コロキウム(研究会)への参加を禁止したこと、原告の講義担当を解任したこと、原告の研究室の明渡をさせたこと、並びに本件職務変更及び本件解雇をしたことは当事者間に争いがない。

二右争いのない事実に加え、〈証拠〉を総合すれば、次の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない(なお、右証拠中、後記認定に反する部分は、他の証拠に照らし、採用しない。)。

1  福井臨工計画学習会への出講禁止

(一) 原告は、昭和四七年六月一八日(日曜日)に三国町福祉センターで開催されることになつていた福井臨海工業地帯の造成及び火力発電所建設に伴い発生する公害及び環境変化について学習することを目的とする「公害と教育問題を考える教員集会」へ、日本科学者会議福井支部から推薦を受け、右工業地帯の造成と将来の公害問題等について講演するべく準備を進めていた。

(二) 被告は、工業大学を設置する法人として、地域産業振興のため右工業地帯の造成を積極的に推進する立場をとつていたところ、原告の右講演予定を同月九日の新聞報道等で聞知した。被告は、右集会は右工業地帯の造成に反対する趣旨で開催されると考え、福井工大助教授の地位にある原告が右講演を行うことは右被告の立場とは相入れず好ましくないとの判断から、福井工大学長、中村主任教授らにおいて原告に対し、講演を中止するよう指導したが、原告は、これを拒絶した。

(三) 被告の職員就業規則二一条二号は、職員の遵守事項として「理事長の承認を受けないで、学校以外の業務に従事し、又は他の職場に志願、勤務しないこと」を定めており、職員は、勤務時間外においても学外の業務を行う場合は、被告代表者(理事長)の許可を必要とする運用がされていた。

(四) 被告は、原告が前記(二)の指導に応じなかつたため、原告に対し、右集会の前日(同月一七日)、右講演は、就業規則二一条二号に違反するからこれを禁止する旨の業務命令文書を交付したため、結局、原告は、右講演をとりやめ、右集会では、原告に代わつて、金沢大学助教授飯田克平が講演した。

2  福井大学コロキウム(研究会)への参加禁止

(一) 被告が、昭和四四年一一月ころ、原告を含む東北大学大学院生らに対し行つた物理教官募集には、「週二回位は、福井大学、金沢大学等へ研究のため行つてよい」旨の条件が付されていたことは、前記判示のとおりであるところ、原告は、昭和四八年ころから、福井大学教員の好意により、同大学における素粒子・原子核理論を専攻する研究者によるコロキウム(研究会)に、福井工大講師大高成介と共に、週一回(半日程度)参加していた。

また、原告及び右大高は、コロキウム参加に際し、福井工大事務局に右参加を告げて、講義にさしつかえないよう時間割を調整してもらつていた。

(二) 昭和五〇年四月四日、開催された福井工大教授会において、当時の事務局次長上木隆夫から「学外に講師として、又は研究のために出講する場合は理事長の決裁を得ること、学園を留守にすることは学生指導上、好ましくないので学外出講は原則的に認めず、学園にとつてメリットのある場合のみ許可をしていきたいので協力を願いたい」旨の依頼がなされた。

(三) 被告によつて、昭和四九年度から、福井工大講師として採用された梶川某は、採用の際の条件であつたこともあつて、昭和四九年度及び昭和五〇年度の週末(金曜及び土曜日)、金沢大学において研究を続けていたが、被告代表者(理事長)は、右研究については、許可(承認)を与えていた。

(四) 原告及び大高成介は、右教授会の後も、被告代表者の許可を得ることなく、右コロキウムに参加していたところ、被告は、これを問題とし、原告に対し、昭和五〇年五月二〇日、右コロキウム参加について、被告代表者への参加願書を提出するよう指示した。

原告は、被告代表者に対し、同月二二日、原告の右コロキウム参加の許可を要請する福井大学教授佐々木靖文の私信と共に、参加許可伺書を提出し、更に、翌二三日、福井大学工学部長五十嵐某において原告の右コロキウム参加の許可を要請する文書を被告に提出した。

(五) これらを受けて、被告は、同月二六日、被告代表者も出席のうえで、各主任教授並びに学長及び副学長で構成される主任教授会を開き、原告の右コロキウム参加について協議した結果、右参加を許可すべきでないとの方針を決定し、同年六月五日、原告に対し、右コロキウム参加を認めない旨を前記上木隆夫から告知した。

このため、原告及び大高成介は右コロキウム参加をとりやめた。

3  原告の講義担当の解任

(一) 原告は、被告に採用以来、福井工大において、一般教育部門の物理又は数学の講義を担当してきたところ、被告は、原告に対し、昭和五二年四月一日、突如、秘書室勤務を命じ、昭和五一年に発足していた被告の三〇年史編さん委員会の委員に新たに加えた。

(二) 右措置に続いて、被告は、同月五日、原告の昭和五二年前期の物理の講義担当を原告の同意なく解いたが、右委員会の原告以外の委員は、福井工大又は福井高校の教員であつたところ、それぞれの講義担当を解かれることなく、右三〇年史編さんの業務を兼務した。

(三) 原告は、右委員として、被告の三〇年史編さん及び三〇周年記念事業の後始末等の業務に従事していたが、右委員会が解散した直後の昭和五五年二月一日、被告から、新たに図書館勤務を命ぜられ、図書の整理等の業務に従事した。

(四) 原告は、右各業務に従事していた際には、助教授職の給与は維持されていたものの、その各業務内容は、前記のとおり、教育、研究的要素のない一般事務であつたため、昭和五二年七月ころから、昭和五五年三月ころの間に、被告代表者に対し、数回、手紙を出して、右編さん業務等と兼務の上での講義担当の再開を要請し、また、被告常務理事金井土生(被告代表者の弟)、一般教育の主任教授鉄井弘行、図書館長で物理担当教授清水啓らにも面会して、講義担当の再開を依頼したが、結局、右依頼は叶えられず、講義担当は実現されなかつた。

4  原告の研究室の明渡

(一) 被告は、原告に対し、講義担当を解いた後の昭和五二年四月一八日、原告が講義を担当せず、前記三〇年史編さんの業務に従事していることを理由に、原告が従来から使用してきた福井工大一号館三階の研究室(個室)を明け渡して右編さん委員数名がその業務に従事している三〇年史編さん室へ移動するよう求めたが、原告はこれを拒否した。

その後、被告は、同年五月下旬、原告の研究資料等を右研究室から右編さん室へ移動させるべく、その作業に着手したが、原告及び原告が依頼していた本件の訴訟代理人である弁護士らの抗議によつて、右作業は中止された。

(二) 被告は、原告に対し、昭和五五年二月一日に図書館勤務を命じたが、その際再び、原告が講義を担当していないこと及び同年四月から福井工大の新任教員が一〇名程度着任することを理由に、右研究室を明け渡して、図書館へ移動するよう求め、結局、同年三月二五日、原告らの反対を押し切つて、右研究室から原告の研究資料等を図書館へ移動させて、右研究室の明渡を完了させた。

(三) 被告が原告に対し、右(一)、(二)の研究室の明渡を求めた当時、週一、二回の講義担当を持つにすぎない福井工大の客員教授の中には、二人で一つの研究室を共用している者もあつたが、専任の教員は、すべて個室の研究室を与えられ使用していた。

5  本件職務変更及び本件解雇

(一) 被告は、原告に対し、右研究室明渡後の昭和五五年四月二三日、減給処分を行い、続いて、同年五月一七日、自宅待機を命じたが、右各措置は、申請人を原告、被申請人を被告とする地位保全等仮処分事件において同年八月九日当庁で成立した裁判上の和解により撤回され、その後、原告の処遇をめぐつて行われた原告と被告の話合が不調に終る等の紆余曲折を経て、昭和五六年四月九日の本件職務変更、同年五月九日の本件解雇に至つた経緯が窺われる。

(二) 原告は、本件職務変更及び本件解雇の結果、右解雇後の賃金仮払の仮処分により原告の給与相当額は、概ね確保されていたものの、大学教員として有する各種の研究費等を現実に受給することができなくなり、また、方法を講じなければ原告自身では大学教員に開放されている全国共同利用の大型計算機センターの利用ができない等、従来に比して著しく不利な研究環境に陥つた。

三次に、右認定事実中の被告の行為が違法性を帯び、不法行為に該当するか否かについて判断する。

1  福井臨工計画学習会への出講禁止

前記二1の認定事実を総合すると、原告の右集会への出講は、被告の職員就業規則二一条二号が規定する学外業務従事に該当し、右集会への出講を禁止した被告の措置は、被告代表者の右出講に対する不承認(不許可)の宣明であると解されるところ、右就業規則の文言に照らすと、職員の学外業務従事に対し、承認(許可)するか否かは、原則として被告代表者の裁量に委ねられていると考えるのが相当である。

そして、前記認定事実によれば、右集会は、被告の福井臨工計画積極的推進の立場とは一線を画する立場で開催されることは明らかであつて、これにおける福井工大助教授の地位にある原告の講演に対し、承認(許可)をしないことが、直ちに右裁量権を逸脱しているということはいえない。

2  福井大学におけるコロキウム(研究会)への参加禁止

前記二1及び2の認定事実を総合すれば、原告の前記コロキウム参加は、右就業規則二一条二号が定める学外業務従事に含まれ、また、被告の昭和五〇年六月五日の原告に対する右参加を認めない旨の告知は、被告代表者の右学外業務従事に対する不承認(不許可)の宣明であると解されるところ、職員の学外業務従事に対する承認(許可)は、原則として被告代表者の裁量に委ねられていることは、右1の認定のとおりである。

そこで、原告のコロキウム参加に対し承認(許可)を与えなかつた前記被告代表者の措置が右裁量権を逸脱しているか否かについて検討するに、前記二2で認定した①コロキウム参加は福井工大と近接した福井大学において週一回半日程度にすぎないこと②原告の採用の際の募集要項③従来から参加を続けてきた経緯④他の大学教員に対する被告代表者の承認(許可)状況等の諸事情を総合すると、原告の右コロキウムへの参加によつて学生指導上の問題が生ずるとは言い難く、そうとすれば、右不承認(不許可)の措置は、合理性を欠き、その裁量権の範囲を超えた違法なものといわざるを得ない。

3  原告の講義担当解任及び研究室の明渡

前記認定のとおり、被告は原告に対し、昭和五二年四月一日秘書室勤務を命じ三〇年史編さん委員に加え、続いて講義担当を解いた直後の同月一八日、原告が講義を担当せず三〇年史編さん委員に従事していることを理由に右研究室の明渡を求めるに至つたが、原告はこれを拒み、その後被告は原告に対し、昭和五五年二月一日図書館勤務を命ずると共に原告が講義を担当していないことなどを理由に再度研究室の明渡を求め、原告はこれに抵抗して明渡を拒んだものの、同年三月二五日被告において右明渡しを強行したものであつて、これらは相互に関連する一連の措置とみられるところ、その間原告は被告代表者らに対し度々講義担当の再開を上申していた経緯やこれに対する被告の応待の状況等の諸事情にかんがみると、被告の措った右一連の措置は大学助教授の身分を保有する原告に対し、いわば実質的な処遇面で、意図的にいわれのない嫌がらせを内容とする不法行為を行つたものとみるほかなく、結局右一連の措置は全体としてみれば違法性を否定しえないものと評価せざるをえない。

なお、被告は、被告の以上一連の措置は、学長、副学長及び主任教授らが協議した結果に基づいて被告代表者が発令したものであるから正当である旨主張するが、右一連の措置に至るまでの被告内部における意思形成過程がどのようなものであれ、違法性を有する右措置を正当化する理由にはならない。

4  本件職務変更及び本件解雇

本件職務変更は、労働契約に違反するものであることは前記第一認定のとおりであつて、被告が、このような職務変更を行つたのは、違法な措置であり、更にこれに引続いて行われた本件解雇は、本件職務変更が有効になされたことを前提とするもので、前提を欠き無効であることは前説示のとおりである。

のみならず、本件解雇自体について検討するに、被告が問題として指摘する原告の被告に対する反抗的態度や非協力的態度その他の各行為は、被告の主張するところによるも、結局、被告の命令や措置に原告が素直に従わなかつたということに帰するものであつて、それらが直ちに、被告の建学の精神に基づく教育方針を敵視し、これに対する反抗的態度を示したものとみるのは困難である。

また、学友会会則改正問題における原告の態度は、被告の主張によるも、右問題を討議した被告内部の教授会において、被告の方針に口頭で強く反対したにとどまり、それ以上の挙措に出たことを窺うべき資料はないこと、原告は福井臨工計画に関する出講を被告の措置に従つてとりやめたものであること、被告の原告に対する福井大学におけるコロキウム(研究会)への参加の不承諾、原告の講義担当の解任及び研究室の明渡の一連の措置並びに本件職務変更が違法な措置であることは前記認定説示のとおりであるから、原告がこれらの措置に異を唱えたとしても何ら非難すべき筋合ではないこと等を総合して考察すれば、本件解雇の理由には合理性がなく、被告には、その解雇権を濫用した違法があるというべきである。

四以上のとおりであつて、請求の原因6(不法行為)の主張中前記肯認しうる関係事実を総合すれば、被告の不法行為責任は免れ難いといわねばならない。

しかして、被告の不法行為により原告の蒙つた原告の精神的苦痛を慰藉する金額は、本訴において、原告の請求を容れ、原告の助教授の地位を確認することをもつて精神的に慰藉される面があることを考慮にいれても、金一〇〇万円を下らないと認めるのが相当である。

なお、原告は、右慰藉料請求権について昭和五六年五月一日からの遅延損害金を求めているが、右一連の不法行為は、同月九日の本件解雇によつて終了したものと解するのが相当であるから、遅延損害金の発生時期は、同月九日である。

第四結論

以上の次第であるから、原告の本訴請求は、主文掲記のとおり福井工大の助教授の地位の確認並びに学位手当を除く給与等及び慰藉料金一〇〇万円の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文を、仮執行宣言について(主文第二、三項については相当と認め、その余は相当でないからこれを却下する。)は同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官横山義夫 裁判官園部秀穗 裁判官白石 哲)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com