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福岡地方裁判所 平成6年(ワ)2130号 判決

佐賀県三養基郡〈以下省略〉

原告

右訴訟代理人弁護士

大神周一

東京都中央区〈以下省略〉

被告

三貴商事株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

新道弘康

主文

一  被告は、原告に対し、金三九九九万八六一四円及びこれに対する平成五年九月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、それぞれを各自の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、金七三三五万八五七〇円及びこれに対する平成五年六月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、商品先物取引委託契約の委託者である原告が、受託者である被告に対し、取引の勧誘及び過程につき、被告の詐欺行為又は公序良俗違反行為があったとして、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実又は証拠(各項末に掲記)により明らかに認められる事実

1  当事者等

(一) 原告は、昭和五年○月○日生まれで、昭和五〇年ころから個人で建設業を営み、平成二年には有限会社a建設を設立し、以後その代表取締役社長を務めているが、平成五年ころには実質的な経営を長男に任せていた(甲一、原告本人)。

(二) 被告は、関門商品取引所等の国内各地の商品取引所に所属する商品取引員である。

B及びCは、平成五年当時、いずれも被告福岡支店の営業担当の従業員で、Bは、Cの上司であった。

2  商品先物取引委託契約の締結

原告は、被告との間で、平成五年一月六日、関門商品取引所、東京砂糖取引所等の商品市場における商品先物取引委託契約(以下「本件委託契約」という。)を締結した(乙九)。

3  本件委託契約に基づく先物取引の概要

(一) 被告は、平成五年一月六日から同年九月二一日までの間、本件委託契約に基づき、別紙1ないし3各記載のとおり、関門商品取引所においては輸入大豆及びとうもろこしの、東京砂糖取引所においては粗糖の各商品先物取引(以下「本件取引」という。)をした(甲二の1・2)。

(二) 原告は、被告に対し、本件委託契約に基づき、委託証拠金として、次のとおり合計六三九五万円を支払った(甲二の1ないし3)。

(1) 平成五年一月六日 三〇〇万円

(2) 同月八日 二〇〇万円

(3) 同月一二日 五〇〇万円

(4) 同年二月九日 一〇〇〇万円

(5) 同年三月二五日 二一五〇万円

(6) 同年四月二三日 二〇〇万円

(7) 同月二七日 一〇四五万円

(8) 同年六月二二日 一〇〇〇万円

(三) 原告は、被告から、本件取引による差引差益金として、次のとおり合計三一九万一四三〇円の支払を受けた。

(1) 平成五年一月二一日 一九万一四三〇円

(2) 同年七月三〇日 三〇〇万円

4  自己玉の自主規制

商品取引員が建てることができる自己玉は、限月ごとの総建玉の一〇パーセント以下又は一〇〇枚以内に限られる旨の自主規制がある。

5  農林水産省の委託者売買状況チェックシステム

商品先物取引の主務官庁の一つである農林水産省食品流通局商業課は、昭和六三年一二月二七日、各商品取引所理事長あてに「委託者売買状況チェックシステムについて」及びそれに伴う「委託者売買状況チェックシステムの実施に関する細目」を発した。

それらによると、委託者事故の未然防止及び委託者保護の一層の強化並びに商品取引員の社会的信用の向上を図ることを目的とする委託者売買状況チェックシステム(以下「チェックシステム」という。)は、①商品取引員が取引開始後三か月未満の委託者に係る前一か月間の売買状況を記載した「売買取引状況報告書」及び「売買取引集計表」を作成してその所属する商品取引所に提出し、②右書面の提出を受けた商品取引所は、当該商品取引員に係る関係商品取引所間で協議し、その内容を点検し、所要の改善指導等を行うとともに、農林水産省に報告し、③右報告を受けた農林水産省は、所要の改善指導等を行うというものであり、平成元年四月一日から実施されている。

ここで、右書面の記載事項としての「売買内容」は、次の五項目であり、これらを特定売買といい、同一建玉について重複する場合は、アないしオの順位で一回として算定するものとされている。

ア 売直し・買直し

既存建玉を仕切るとともに、同一日内で新規に同じ建玉を行っているもの(限月を異にするものを含む。)

イ 途転(ドテン)

既存建玉を仕切るとともに、同一日内で新規に反対の建玉を行っているもの(限月を異にするものを含む。)

ウ 日計り(同一日建落)

新規に建玉し、同一日内に手仕舞を行っているもの

エ 両建玉

既存建玉に対応させて、反対建玉を行っているもの(限月を異にするものを含む。)

ただし、売り買い対応の建玉が同一枚数の場合を指すが、対応する建玉が不一致の場合には、順次建玉を増加させたときは同枚数及び同枚数を超えることとなるまでその都度両建玉として取り扱い、同枚数を超えたとき及び逆に分割落としによって建玉を減じたときは両建玉から除く。

オ 手数料不抜け

売買取引により利益が発生したものの、当該利益が委託手数料より少なく、差引損となっているもの

また、売買取引集計表の記載事項である「特定売買比率」とは、特定売買回数の合計延回数に対する割合をいう(甲一一の1・2、一三)。

二  争点

1  被告又はその被用者の違法行為の有無

(原告の主張)

(一) 構造的詐欺

被告は、本件取引が行われた日(以下「本件取引日」という。)に、関門商品取引所における輸入大豆及びとうもろこしの取引について、すべて売り買い同枚数の注文をし、また、東京砂糖取引所における粗糖の取引についても、ほぼ売り買い同枚数の注文をしているが、これは、委託者の売玉の枚数と買玉の枚数に差があるときは、売り買い同枚数となるように自己玉を建てている(差玉向かい又は全量向かい(委託玉が売玉又は買玉のいずれかのみである場合))ことによるものであり、このように売り買い同枚数の注文をする結果、次のことが言える。

(1) 被告の行う取引が市場の値動きに影響を与えることがないから、被告は、市場で決まった値段を付けて取引をするにすぎなくなるのであり、市場からいわば断絶した構造を作出したものである。

(2) また、被告は、市場の値動きにかかわらず差益損を発生させることがないから、原告の委託玉に利益が生じれば、被告の自己玉に損失が生じ、逆に、原告の委託玉に損失が生じれば、被告の自己玉に利益が生じるという利益相反関係が設定されることになる。

したがって、被告がこのような構造又は関係の下における取引であることを原告に秘したまま取引を行うことは、欺罔行為に当たる。

(二) 自己玉規制違反

被告は、本件取引において、委託者保護のために設けられた、自己建玉が当該限月ごとの総建玉の一〇パーセント未満又は一〇〇枚以下でなければならないという規制に違反して、自己玉を建てた。

(三) 公序良俗違反

被告又はその被用者は、本件取引に関して次のような行為をしているから、本件取引は、公序良俗に反し無効である。

(1) 危険性の不告知

B及びCは、原告に対し、商品先物取引の危険性について十分な説明をしなかった。

(2) 断定的判断の提供

B及びCは、原告に対し、「必ず儲かります。」などの文言を用いて勧誘した。

(3) 過大な建玉

Bは、実質的に新規委託者といえる原告に対し、三か月以内に八六〇枚という極めて過大な取引を勧めた。

(4) 無断売買・手仕舞拒否

Bは、再三無断売買をし、原告の手仕舞指示を無視した。

(5) 手数料稼ぎ目的の取引

Bは、原告に対し、無断で又は虚偽の事実を告げるなどの誘導をして、「同日売直し・買直し」、「利益・無益両建て」、「両建て同日切り」、「同日両建て」等の無用の建玉を頻繁に行わせ、手数料稼ぎを目的とする取引を繰り返させた。すなわち、商品取引員は、委託者の十分な理解を得ないで、短期間に頻繁な売買取引を勧めることを禁止されているところ(取引所指示事項2(1))、当該取引が無意味な反復売買に当たるかについては、チェックシステムにおける特定売買比率並びに売買回転率及び手数料化率の三つの指標によって判断することができ、具体的な取引について、特定売買率が二〇パーセント、売買回転率が月間三回、手数料化率が一〇パーセントの各基準を上回っていれば、その取引業者が手数料稼ぎのみを目的とした取引をしていた事実が強く推認されるというべきである。

本件では、全取引が五〇回で、そのうち売直し・買直しが二三回、途転が九回、両建玉が一二回、手数料不抜けが二回で特定売買は合計四六回であるから、特定売買率は九二パーセントであり、売買回転率は、全取引期間日数が平成六年一月六日から同年九月二一日までの二五九日であるから、一か月を三〇日として平均では月間五・七九回であり、また手数料化率は、手数料合計が五九八六万二二〇〇円で、差引差損益合計が七〇五四万四六八二円であるから、前者の後者に対する割合は八四・九パーセントであり、いずれも前記基準を上回っている。したがって、被告が手数料稼ぎを目的として本件取引をしたことは明白である。

(6) 脅迫

Bは、原告に対し、原告の妻が入院中の病院に赴く旨の脅し文句により、委託証拠金の拠出を強要し、また、取引との関係など説明もしないまま、立替金を支払う義務がある旨述べて昔気質の原告に支払を強要した。

(被告の主張)

(一) 構造的詐欺について

被告が本件取引日に行った関門商品取引所における輸入大豆及びとうもろこしの取引がすべて売り買い同枚数であったわけでは必ずしもないし、売り買い同枚数であった場合においても、売りには売建て(注文)と売落ち(決済)が、買いには買建て(注文)と買落ち(決済)がそれぞれあり、売建ての枚数と買建ての枚数とは同じではない。

また、仮に被告が差玉向かい又は全量向かいをしていたとしても、次のことが言える。

(1) 被告の行う取引が市場の値動きに影響を与えることは当然であり、被告は、市場からいわば断絶した構造を作出してはいない。

(2) 原告の建玉と被告の建玉との間に対応関係があって初めて利益相反関係が問題となるところ、単に売玉、買玉の各枚数が一致し、委託者の注文枚数が売玉と買玉とで異なる場合に同枚数になるように向かい玉を建てたからといって、委託玉が売建てで自己玉が買落ちであるとき、あるいは委託玉が買建てで自己玉が売落ちであるときは、利益相反関係は生じないのであり、委託玉が売建てで自己玉が買建て又はその逆であるときにのみ利益が相反する。すなわち、委託玉と自己玉が、成立-存続-消滅のすべてにわたり運命を共にする場合でなければ、委託玉と自己玉は、利益相反とはならない。

むしろ、向かい玉は、委託者からの大量の注文があっても、売買を成立させることができたり、売り又は買いに委託者の注文が偏った場合に委託者に不利に相場が変動することを防止したりするなど、委託者の利益のために作用することもあり、商品取引員の相場予測か絶対に確実であったり、商品取引員が相場操縦することができたりする場合でない限り、向かい玉を建てたからといって、常に商品取引員が自ら利益を得るとは限らないのである。

(二) 自己玉規制違反について

原告主張の規制が設けられたのは、商品取引員が自己の資力を超えた自己売買を行い、その結果多大の損失を負担するに至れば、経営悪化を招き、そうなれば、委託者に迷惑を掛けることになるからである。したがって、右規制に違反したからといって、直ちに取引が違法になるわけではない。

(三) 公序良俗違反の(5)について

(1) 特定売買率

本件取引における特定売買の回数は、次のとおり合計二四回であり、取引延べ回数は五二回であるから、特定売買比率は、約四六・二パーセントである。

そもそも、チェックシステムは、農林水産省が商品取引員に対する規制措置として位置付けているのではなく、各商品取引員が新規委託者について三か月間の売買において特定売買がどのくらいあるかを各商品取引所に報告し、その評価を受ける材料とするものにすぎないのであって、委託者から注文が入ったのにもかかわらず、特定売買に当たるから又は特定売買比率が二〇パーセントを超えるからという理由で注文を拒否することは、むしろ委託契約違反になる。

輸入大豆

日付 番号 内容

一月一八日 ①・3 買直し

二月四日 4 5 両建玉(売・買各二〇〇枚)(2 3の買建玉に対して)

二月一八日 ④⑤・6 売直し

二月二二日 ⑥・7 途転

三月一日 ⑦・8 買直し

三月三日 9 10 両建玉(売・買各四三〇枚)(2 3 8の買建玉に対して)

四月五日 ⑨・11 途転

四月一二日 ⑩・12 売直し

四月二〇日 13 14 両建玉(売・買各五三〇枚)(2 3 8 11の買建玉に対して)

五月一一日 ②③ 手数料不抜け

七月七日 ⑧⑪・15 途転

七月一二日 16 両建玉(売三〇〇枚・買三〇枚)(15の売建玉に対して)

七月三〇日 ⑮・17 途転

八月一三日 ⑰・18 途転

粗糖

日付 番号 内容

五月一七日 ①・2 途転

五月二〇日 ②・3 4 売直し

五月二六日 ③④・5 6 7 売直し

五月二七日 ⑤⑥⑦・8 9 10 売直し

五月二八日 ⑧⑨⑩・11 12 13 売直し

六月七日 14 15 16 両建玉(売一〇三七枚・買五〇〇枚)(11 12 13の売建玉に対して)

六月三〇日 ⑪⑫⑬・17 18 19 途転

七月五日 ⑰⑱⑲・23 24 25 26 買直し

七月二六日 ⑳・27 28 29 売直し

とうもろこし

日付 番号 内容

八月一三日 2 両建玉(売・買各七〇枚)(1の買建玉に対して)

(2) 売買回転率

売買回転率とは、一か月当たりの売買回数をいい、一か月の営業日数を平均建玉日数で除して算出される。平均建玉日数とは、建玉から落玉までに要した平均日数をいい、月間残玉累計×二÷月間売買高によって算出される。

これに従えば、本件取引のうち輸入大豆については、建玉残玉累計は八万五九四一枚、売買高は五六九四枚であるから、平均建玉日数は、三〇・二日であり、売買回転率は、一か月の営業日数を二二日とすると、二二÷三〇・二=〇・七となる。

また、粗糖については、残玉累計は一〇万四八三四枚、売買高は一万一二四二枚であるから、平均建玉日数は、一八・七日であり、売買回転率は、二二÷一八・七=一・二となる。

さらに、とうもろこしについては、残玉累計は五八一〇枚、売買高は二八〇枚であるから、平均建玉日数は、四一・五日であり、売買回転率は、二二÷四一・五=〇・五となる。

(3) 手数料化率

手数料化率とは、平成元年一月二三日付け通商産業商商務室長通達に基づく売買状況に関するミニマムモニタリング(MMT)の実施に当たり定められた「売買状況に関するミニマムモニタリング(MMT)処理要領」によれば、「取引員より提出された『月間残高試算表』に基づき、対象期間の受取委託手数料の合計を預り委託証拠金の合計で除したもの」と定義されており、当該月の新規委託者全体について算出されるものであるが、仮に原告個人に限って算出するとしても、チェックシステムが適用される取引開始後三か月間(平成五年一月ないし三月)の手数料化率は、次のとおりであるから、平均約五パーセント強にしかすぎない。

月 受取委託手数料 預り委託証拠金 手数料化率

一月 三九万六〇〇〇円 一〇〇〇万円 四%弱

二月 二〇五万九二〇〇円 二一二五万円 九%強

三月 一五三万円 四三〇〇万円 三%強

2  原告の被った損害(原告の主張)

(一) 未返還の委託証拠金 六〇七五万八五七〇円

(二) 慰謝料 六〇〇万円

原告は、B及びCによる巧妙かつ悪質な勧誘、無断売買、手仕舞拒否により著しい精神的苦痛を被るとともに、経営する建築業まで苦境に立たされたことによっても精神的苦痛を被った。さらに、妻の入院及び死亡という精神的苦痛も被った。これらの精神的苦痛を慰謝する賠償額としては六〇〇万円を下らない。

(三) 弁護士費用 六六〇万円

3  過失相殺(被告の主張)

原告には、次のとおり、著しい落ち度があるから、大幅な過失相殺がなされるべきである。

(一) 原告には商品先物取引の知識は十分あった。

(二) 原告は本件取引をすべて承諾していた。

(三) 原告は本件取引の経過を十分熟知していた。

(四) 原告は毎月の現在高を知っていた。

(五) 原告は度重なる利益の発生に目が眩んでいた。

(六) 原告は明確な手仕舞の指示をしなかった。

第三当裁判所の判断

一  本件取引の経緯等

前記第二の一1ないし3の事実及び証拠(甲一、五の1・2、乙三ないし五、七ないし一二、一四の1ないし4、一五、一七、一八の1ないし40、一九の1ないし10、二九、三二の1ないし3、四一の2、四二の1、五三、五四、証人B、同D、原告本人)によれば、本件取引の経緯等として次の事実が認められる(甲一、乙七、八、一五及び二九並びに証人Bの証言及び原告本人尋問の結果のうち、右認定に反する部分は、いずれも信用することができない。)。

1  原告は、二十数年前、手亡の商品先物取引で損をした経験があった。

2  平成四年一二月二九日ころ、Cが原告方を訪ね、原告に対し、商品先物取引を勧誘し、その後も、何度か電話で勧誘を続けた。原告は、前記経験があったため慎重に構えていたが、結局これに応じることにした。

そこで、平成五年一月六日、B及びCが原告方を訪ね、原告との間で本件委託契約を締結した。その際、Bは、原告に対し、「受託契約準則」及び「商品先物取引-委託のガイド-」を交付するとともに、「追証」、「両建」、「ナンピン」などの用語を説明し、原告は、約諾書及び通知書に署名押印してこれらをBに交付した。

3(一)  被告は、右同日、早速、本件委託契約に基づき、別紙1記載の番号1のとおり、輸入大豆につき六〇枚の買建てをしたのを皮切りに、平成五年一月中に別紙1記載の番号2、①及び3の各取引をした。

(二)  他方、原告は、前記第二の一3(二)(1)ないし(3)のとおり、被告に対し、右各取引の委託証拠金(輸入大豆については一枚につき五万円)として合計一〇〇〇万円(右番号①と3は買直しであるので、都合二〇〇枚分となる。)を預託したが、これはa建設の金を流用したものであった。

また、同月一八日、原告は、被告に対し、決済等により預託されている委託証拠金の額が預託すべき委託証拠金の額を超過することになった場合、その超過額を新たに預託すべき委託証拠金の額に充当することに同意する旨の「準備金による委託証拠金充当同意書」(以下「充当同意」という。)に署名押印してこれを提出した。

(三)  同月二一日、原告は、被告から、右番号①の差引差益一九万一四三〇円を受領した。

4(一)  同年二月、被告は、本件委託契約に基づき、輸入大豆につき別紙1記載の番号4、5、④、⑤、6、⑥及び7の各取引をした。

(二)  そこで、原告は、同月九日、被告に対し、再びa建設の金を流用して、右番号4及び5の委託証拠金として一〇〇〇万円を預託した。

(三)  他方、原告がその後の取引に伴って預託すべきことになった委託証拠金を入金しなかったため、被告は、充当同意に基づき、次のような処理をした。

(1) 同月一八日の取引である右番号④及び⑤と6の売直しにより、売建玉の枚数の差一二枚について、原告に委託証拠金六〇万円を預託すべき義務が生じたので、同日、右番号④及び⑤の差引差益合計六三万八〇九六円から充当した(その結果、差引差益累計額は三万八〇九六円になった。)。

(2) 同月二二日の取引である右番号⑥と7の途転により、決済玉と新規玉の枚数の差一三枚について、原告に委託証拠金六五万円を預託すべき義務が生じたので、翌二三日、右差引差益累計額に右番号⑥の差引差益六三万七三五六円を加えた六七万五四五二円から充当した。

(四)  その結果、同月二六日現在で、差引差益累計額は二万五四五二円、実際に預託されている委託証拠金は二一二五万円になった。

5(一)  同年三月、被告は、本件委託契約に基づき、輸入大豆につき別紙1記載の番号⑥'、⑦及び8ないし10の各取引をした。

(二)  同月一日の取引である右番号⑥'の決済及び⑦と8の買直しにより、決済玉と新規玉の枚数の差五枚について、原告に委託証拠金二五万円を新たに預託すべき義務が生じたが、原告がこれを入金しなかったので、被告は、充当同意に基づき、前記4(二)(2)の差引差益累計額二万五四五二円に右番号⑥'の差引差損及び番号⑦の差引差益の差額四二万一五三四円を加えた四四万六九八六円から充当した。

(三)  また、原告は、同月一五日、a建設の事務所において、同年一月二八日現在及び同年二月二六日現在の各残高照合回答書に、「残高照合の通り相違ありません。」と記載された1欄に○印をした上で、署名押印し、これをBに渡すとともに、同社の運転資金と偽って、取引銀行から二〇〇〇万円の融資を受けた上で、同年三月二五日、被告に対し、右番号9及び10の委託証拠金として二一五〇万円を預託した。

(四)  その結果、同月二九日現在で、差引差益累計額は一九万六九八六円、実際に預託されている委託証拠金は四三〇〇万円になった。

6(一)  同年四月、被告は、本件委託契約に基づき、輸入大豆につき別紙1記載の番号⑨、11、⑩及び12ないし14の各取引をした。

(二)  右取引の結果、原告には輸入大豆二〇〇枚分の委託証拠金一〇〇〇万円を新たに預託すべき義務が生じた。そこで、Bは原告から、右委託証拠金として、同月二三日に二〇〇万円、同月二七日には原告の妻が入院している病院の駐車場において一〇四五万円の各交付を受けた。

(三)  その結果、同月二八日現在で、原告が被告に対し預託すべき委託証拠金は五三〇〇万円であり、実際に預託されている委託証拠金は五五四五万円、差引差損累計額は二四四万四六八四円であった。

(四)  原告が右差引差損累計額を弁済しなかったため、同月三〇日、被告は、これを預託されていた右委託証拠金から充当した(その結果、差引差益損の累計額は零となり、実際に預託されている委託証拠金は五三〇〇万五三一六円で、預託すべき委託証拠金との関係では五三一六円の余剰が生じた。)。

7(一)  同年五月、被告は、本件委託契約に基づき、輸入大豆につき別紙1記載の番号②、③及び⑫ないし⑭、粗糖につき別紙2記載の番号1、①、2、②、3、4、③、④、5ないし7、⑤ないし⑦、8ないし10、⑧ないし⑩及び11ないし13の各取引をした。

(二)  原告が右取引に伴って預託すべきこととなった委託証拠金を入金しなかったため、被告は、充当同意に基づき、次のような処理をした。

(1) 同月一一日の取引である別紙1記載の番号②、③及び別紙2記載の番号1並びに同月一七日の取引である別紙2記載の番号①と2の途転の結果、差引差益累計額は三〇七万一六五一円となるとともに、委託証拠金については、右番号②及び③の決済により一〇〇〇万円預託する必要がなくなったが、右番号1の買建てにより九九〇万円(粗糖の平成六年七月限ないし平成七年一月限については一枚につき六万円)、右途転により決済玉と新規玉の枚数の差五〇枚につき三〇〇万円をそれぞれ預託すべきこととなった結果、前記6(四)の五三一六円を控除すると、原告が被告に対し新たに預託すべき委託証拠金は二八九万四六八四円となった。そこで、平成五年五月一八日、右金額を右差引差益累計額から充当した(その結果、差引差益累計額は一七万六九六七円、実際に預託されている委託証拠金は五五九〇万円となった。)。

(2) 同月二〇日の取引である別紙1記載の番号⑫並びに別紙2記載の番号②と3及び4の売直しの結果、差引差益累計額は三六七万〇四〇一円となるとともに、委託証拠金については、右番号⑫の決済により一二五〇万円預託する必要がなくなったが、右売直しにより決済玉と新規玉の枚数の差二六九枚につき一六一四万円を預託すべきこととなった結果、原告が被告に対し新たに預託すべき委託証拠金は三六四万円となった。そこで、同日、右金額を右差引差益累計額から充当した(その結果、実際に預託している委託証拠金は五九五四万円、差引差益累計額は三万〇四〇一円となった。)。

(3) 同月二六日の取引である別紙2記載の番号③及び④と5ないし7の売直しの結果、差引差益六一八万四六七〇円が生じるとともに、委託証拠金については、決済玉と新規玉の枚数の差一〇三枚につき六一八万円を預託すべきこととなった。そこで、同日、右金額を右差引差益から充当した(その結果、実際に預託している委託証拠金は六五七二万円、差引差益累計額は三万五〇七一円となった。)。

(4) 同月二七日の取引である別紙1記載の番号⑬及び⑭並びに別紙2記載の番号⑤ないし⑦と8ないし10の売直しの結果、差引差益五六一万四八三八円が生じるとともに、委託証拠金については、右番号⑬及び⑭の決済により一四〇〇万円預託する必要がなくなったが、右売直しにより決済玉と新規玉の枚数の差三二六枚につき一九五六万円を預託すべきこととなった結果、原告が被告に対し新たに預託すべき委託証拠金は五五六万円となった。そこで、同日、右金額を右差引差益から充当した(その結果、実際に預託している委託証拠金は七一二八万円、差引差益累計額は八万九九〇九円となった。)。

(5) 同月二八日の取引である別紙2記載の番号⑧ないし⑩と11ないし13の売直しの結果、差引差益七三六万三二五八円が生じるとともに、委託証拠金については、決済玉と新規玉の枚数の差一二四枚につき七四四万円を預託すべきこととなった。そこで、同日、右金額を右差引差益から充当した(その結果、実際に預託している委託証拠金は七八七二万円、差引差益累計額は一万三一六七円となった。)。

8(一)  同年六月、被告は、本件委託契約に基づき、粗糖につき別紙2記載の番号14ないし16、⑪ないし⑬及び17ないし22の各取引をした。

(二)  同月七日の右番号14ないし16の粗糖合計五〇〇枚の買建てにより、原告には新たに委託証拠金三〇〇〇万円を預託すべき義務が生じたが、原告はなかなかこれを預託しようとせず、同月二二日に至り、ようやく友人のEから借り入れた一〇〇〇万円を預託した。

他方、原告は、同日現在の残高照合回答書に、「残高照合の通り相違ありません。」と記載された1欄に○印をした上で、署名押印して、これをBに渡した。

(三)  右委託証拠金の残り二〇〇〇万円については、その後もB及び同人の上司であるFが、原告に対し、電話で何度か請求したものの、原告は、支払おうとせず、このころから手仕舞を強く言い出した。

(四)  同月二八日現在で、原告が被告に対し預託すべき委託証拠金は一億〇八七二万円であり、実際に預託されている委託証拠金は八八七二万円、差引差益累計額は一万三一六七円であった。

(五)  同月三〇日の取引である右番号⑪ないし⑬と17ないし19の途転及び20ないし22の結果、差引差益七七〇万四二二六円が生じるとともに、委託証拠金については、決済玉と新規玉の枚数の差二〇七枚につき一二四二万円預託する必要がなくなった結果、原告が被告に対しなお預託すべき委託証拠金は、右二〇〇〇万円との差額である七五八万円となった。そこで、翌七月一日、被告は、充当同意に基づき、右金額を右差引差益から充当した(その結果、実際に預託されている委託証拠金は九六三〇万円、差引差益累計額は一三万七三九三円となった。)。

9(一)  同年七月、被告は、本件委託契約に基づき、輸入大豆につき別紙1記載の番号⑧、⑪、15、16、⑮及び17、粗糖につき別紙2記載の番号⑰ないし⑲、23ないし26、⑳ないし及び27ないし29、とうもろこしにつき別紙3記載の番号1の各取引をした。

(二)  原告が右取引に伴って預託すべきこととなった委託証拠金を入金しなかったため、被告は、充当同意に基づき、次のような処理をした。

(1) 同月五日の取引である別紙2記載の番号⑰ないし⑲と23ないし26の買直しの結果、差引差益四二一万七一五四円が生じるとともに、委託証拠金については、決済玉と新規玉の枚数の差七〇枚につき四二〇万円を新たに預託すべきことになった。そこで、同日、右金額を右差引差益から充当した(その結果、実際に預託している委託証拠金は一億〇〇五〇万円、差引差益累計額は一五万四五四七円となった。)。

(2) 同月七日の取引である別紙1記載の番号⑧及び⑪と15の途転並びに別紙3記載の番号1の結果、差引差益四六〇万一四一一円が生じるとともに、委託証拠金については、右途転による決済玉と新規玉の枚数の差三〇枚につき一五〇万円預託する必要がなくなったが、右番号1の買建てにより五六〇万円(とうもろこしについては一枚につき八万円)を預託すべきこととなった結果、原告が被告に対し新たに預託すべき委託証拠金は四一〇万円となった。そこで、翌八日、右金額を右差引差益から充当した(その結果、実際に預託している委託証拠金は一億〇四六〇万円、差引差益累計額は六五万五九五八円となった。)。

(3) 同月一二日の取引である別紙1記載の番号16及び同月二六日の取引である別紙2記載の番号⑳ないしと27ないし29の売直しの結果、差引差益四六八万九八〇三円が生じるとともに、委託証拠金については、右売直しによる決済玉と新規玉の枚数の差一〇枚につき六〇万円預託する必要がなくなったが、右番号16の買建てにより一五〇万円を預託すべきこととなった結果、原告が被告に対し新たに預託すべき委託証拠金は九〇万円となった。そこで、同月二七日、右金額を右差引差益から充当した(その結果、実際に預託されていた委託証拠金は一億〇五五〇万円、差引差益累計額は四四四万五七六一円となった。)。

(4) 同月三〇日の取引である別紙1記載の番号⑮と17の途転の結果、差引差益累計額は五四〇万二六七一円となったが、委託証拠金については、決済玉と新規玉が同枚数であったので、原告が被告に対し新たに預託すべき委託証拠金はなかった。

(三)  ところで、同月二八日現在で、原告の委託玉の値洗い損は六〇三六万五〇〇〇円に達し、預託すべき委託証拠金一億〇五五〇万円の五〇パーセント相当額を超えているため、原告は、被告に対し、右相当額である五二七五万円の委託追証拠金を預託すべき義務が生じていた。

しかし、被告は、同月三〇日、原告に対し、前記(一)(4)の差引差益累計額から三〇〇万円を返還した(その結果、差引差益累計額は二四〇万二六七一円となった。)。

10(一)  同年八月一三日、円相場が急騰し、輸入大豆及び粗糖の価格が急落し、ストップ安になった。

(二)  被告は、同日午後、別紙1記載の番号⑰及び18、別紙2記載の番号⑯及びないし並びに別紙3記載の番号2の各取引をした。その結果、差引差損五九三八万三二八一円が生じるとともに、委託証拠金については、輸入大豆につき三五〇万円、粗糖につき二四六〇万円預託する必要がなくなる一方、とうもろこしにつき五六〇万円預託すべきこととなった結果、通算では二二五〇万円預託する必要がなくなった(その結果、原告が被告に対し預託すべき委託証拠金は八三〇〇万円、差引差損累計額は五六九八万〇六一〇円となった。)。

(三)  同月三〇日現在で、原告の委託玉の値洗い損は四八三八万円で、右委託証拠金の五〇パーセント相当額を超えているため、原告は、被告に対し、右相当額である四一五〇万円の委託追証拠金を預託すべき義務が生じていた。

11(一)  原告は、同年九月一七日、被告に対し、「拠出金返還請求通告書」と題する内容証明郵便を送付した。

(二)  被告は、同月二一日、別紙1記載の番号⑯、⑰'及び⑱、別紙2記載の番号⑭、⑮、⑯'及びないし並びに別紙3記載の①及び②のとおり、原告の委託玉をすべて決済して取引を終了した。右決済の結果、差引差損累計額は一億一五二八万六一一二円となった。

二  違法性について

1  構造的詐欺について

(一) まず、被告が本件取引日に差玉向かい又は全量向かいをしたかについて検討すると、証拠(甲五の1・2、八の14・15、九の1ないし18)によれば、被告が売建玉と買建玉の枚数が完全に一致する差玉向かいをしたことは認められないが、輸入大豆の取引のうち平成五年四月五日の平成六年三月限に関するもの並びに粗糖の取引のうち平成五年七月五日の平成六年七月限及び同年九月限に関するものについては、原告の各買建玉に対当する被告の各売建玉が同場節に同枚数建てられていること(全量向かい)、また、輸入大豆の取引のうち平成五年一月六日の同年一一月限に関するもの、同年一月一八日の同年九月限に関するもの、粗糖の取引のうち同年五月一一日の平成六年一一月限に関するものなど少なからぬ取引において、全量向かいに準じて、原告の各買建玉にほぼ対当する数量の被告の各売建玉が建てられていることが認められる。

(二) そして、証拠(甲六の2、乙二〇、二二の1、二六)によれば、向かい玉は、かつては顧客の建玉とともに市場に出されないまま(このことから懐玉とも言われた。)、建てられてから決済されるまで反対ポジションで運命を共にするものであったので、顧客と利害が対立する関係にあると考えられたこと、そのため、向かい玉はかねてから問題視され、業界による自主規制が試みられてきたところ、農林省農林経済局長から各商品取引所理事長あての昭和四五年五月三〇日付け「農産物の商品取引に関する取引方法の改善について」と題する通達中の「農産物商品取引関係取引方法改善要領」において、向かい玉の禁止がうたわれるに至ったことが認められる。

(三) しかしながら、商品取引員である被告も、自ら市場において取引をすることができることは言うまでもなく、また、委託者の売り注文(又は買い注文)と商品取引員の買い注文(又は売り注文)とが互いに向かい合っているとしても、いわゆる呑み行為が横行していた時代であれば格別、懐玉としての向かい玉が存在し得なくなった現在においては、必ずしも互いに相手方となって取引が成立するわけではなく、それぞれ市場において、売り集団又は買い集団のいずれかに加わり、その個性を失った集団の中で売買が成立するものである。したがって、商品取引員が向かい玉を建てることそれ自体が、直ちに委託者との間で利益相反関係を作出するということにはならないのであって、商品取引員が、自己の利益を図るために、委託者を意のままに操縦して損失を被らせようとする(「客殺し」)などの特段の事情が認められて初めて利益相反関係を作出したものとして、違法性を帯びることになると解すべきであるところ、本件においては、被告について右特段の事情は証拠上認められないから、この点に関する原告の主張は、採用することができない。

なお、被告が前記認定のような向かい玉を建てていることを原告に告げていなかったことは明らかであるが、原告も被告もそれぞれの相場観に基づいて取引をするものである以上、被告がいかなる自己玉を建てているかを一々原告に告知すべき義務はないから、右不告知の故をもって本件取引が違法になるわけではない。

2  自己玉規制違反について

(一) 証拠(甲五の1、九の1ないし20)によれば、本件取引日における、輸入大豆及び粗糖についての被告の各限月ごとの自己建玉の枚数とそれの総建玉枚数に対する割合は、いずれも概ね前記第二の一4の自己玉規制に違反していることが認められる(なお、とうもろこしについては、甲第五号証の2によっても、自己玉規制に違反していることは認められない。)。

(二) ところで、前記「農産物商品取引関係取引方法改善要領」は、各商品取引所による向かい玉についての常時重点監査の実施の実効を期するため、向かい玉が現状においては自己玉と紛らわしい場合が少なくないので、商品取引員の自己玉規制を二つの類型に区分して行うこととされ、そのうちの一つの類型が「農産物の種類別、各限月別建玉の五%以下」の自己玉規制であると定めており(甲六の2)、これによれば、自己玉規制は向かい玉規制と密接不可分の関係にあるものということができる。しかるに、同じく農林省農林経済局長から各商品取引所理事長あての昭和四六年六月三〇日付け「『農産物商品取引関係取引方法改善要領』の一部改正について」と題する通達によれば、右「建玉の五%以下」が「建玉の一〇%以下又は一〇〇枚以内」に改められたこと(甲六の2)、東京工業品取引所は、平成八年四月一日から、貴金属と同様にゴムについても、純資産額に応じて取引員を七段階に分けて自己玉規制を緩和したこと(乙五五)がそれぞれ認められ、右事実からすれば、前記自己玉規制の趣旨は、これにより向かい玉禁止の趣旨を全うし、委託者を保護するということもさることながら、商品取引員が自己の資力を超えた自己売買を行った結果、相場の動向により当該資力では賄い切れない損失を被ることにより倒産の事態を招来することを防止し、もって委託者の財産を保護する点に移行してきているものと解される。

右に検討したところに照らせば、いずれにしても、商品取引員が右規制に違反したからといって、委託取引そのものが直ちに違法性を帯びることにはならないというべきであり、この点に関する原告の主張も採用することができない。

3  公序良俗違反について

(一) 前記一1及び2で認定したところによれば、原告は、商品先物取引の危険性について既に一定の経験的知識を有していたのであるから、新規委託者ということはできず、また、Bは、本件委託契約締結に際し、原告に対し、「追証」や「両建」等の用語を説明し、約定書等の法定書類の交付をしているから、被告は、商品先物取引についてそれなりの説明義務を果たしているものということができる。

さらに、Bらが原告に対し、「必ず儲かります。」などと言ったことを認めるに足りる証拠はない(原告の陳述書(甲一)には、平成四年末に、Cが原告に対し、「必ず儲かります。」と言ったとの記載があるが、原告本人尋問の結果は誠に曖昧で、供述が一貫しないことなどに照らすと、右陳述書の記載は俄かには信用し難い。)。

そうすると、原告が実質的には新規委託者であることを前提として、取引開始後三か月間の習熟期間中の建玉枚数に関する制限違反を主張する点は、既に右前提を欠いているものと言わざるを得ないし、商品先物取引の危険性の不告知や断定的判断の提供を言う原告の主張も採用することができない。

(二) 手数料稼ぎ目的の取引

(1) まず、原告が主張するように、本件取引が特定売買率、売買回転率及び手数料化率の各基準に違反し、全体として手数料稼ぎの目的で行われたものと認められるか否かを検討する。

ア 特定売買率について

原告の主張する二〇パーセントの基準につき、甲第一一号証の1及び2には右主張に沿う記載があるものの、いずれもチェックシステムが導入される前の業界紙の記事であって、必ずしも信用性が高いとは言えず、むしろ、チェックシステム自体にはこの点につき何らうたわれておらず、特定売買率は商品の細分ごとの平均値との比較で評価する旨記載されていること(甲一三)、特定売買が行われる度合、傾向は、その時々の相場水準、値動き、市場の繁閑等により大きく左右されること(乙五二)に照らせば、チェックシステムにおいて右基準が設けられているとは認め難いというべきである。

そうであるとすれば、本件取引における特定売買率がどうであれ(被告の自認するところでは四六・一パーセント)、それとの比較の対象となるその当時の市場における特定売買率の平均値が証拠上明らかでない以上は、その違法性を論じることはできないと言わざるを得ない。したがって、この点に関する原告の主張は理由がない。

イ 売買回転率について

前記ア同様、チェックシステム自体には、原告の主張する月間三回という基準が設けられているとは認められないから、原告の主張は理由がない。

ウ 手数料化率について

前記ア同様、チェックシステム自体には、原告の主張する一〇パーセントという基準が設けられているとは認められないから(甲第一三号証によれば、通商産業省所管の商品先物取引について平成元年四月一日から導入された売買状況に関するミニマムモニタリングの基準の一つとして、直近六か月間の委託証拠金に対する委託手数料の比率が八パーセント以上であることが挙げられていることが認められるにすぎない。)、原告の主張は理由がない。

(2) もっとも、原告主張の各基準が認められないからといって、直ちに本件取引が手数料稼ぎの目的では行われなかったということにはならない。チェックシステムが特に特定売買を取り上げたのは、特定売買が、委託者である一般投資家にとって相場の動向に対応して適確に使いこなせるような手法とは決して言えず、むしろ商品取引員が専ら委託手数料を取得するために用いたのではないかという警戒の目で見るべきものであるからにほかならないところ、被告が、前記第二の二1の(被告の主張)(三)記載のとおり、多数回にわたって特定売買を行っているということは、被告が手数料稼ぎのためにこれらの取引をしたのではないかとの疑念を生ぜしめないではおかないからである。

そこで、以下、特定売買の類型ごとに検討する。なお、ここでは一応本件取引日を通じて検討を加えることとするが、後記(四)との関係において言えば、平成五年六月三〇日以降の取引については視野の外に置いてもよい道理であり、仮にそれより前の取引に限定するならば、以下の検討の結果は一層適合することが明らかである。

ア まず、売直し及び買直しについては、一般に特定売買の中でも最も合理性を見出し難い類型の取引であり、特に当該建玉の限月を同じくする場合において、仕切り値と売直し又は買直しの値段が同じか又は著しく近接しているときには、客観的には委託者にとって委託手数料等が余分に掛かるだけの無益な取引であることは否定し難いところである。

もっとも、例えば、値下りを見越して買建玉を決済したところ、更に値上りが見込まれそうな値動きをしているので、敢えて同じ値段で買直しをするというような場合もないわけではなく、このように相場の動向を読み間違えたことが明らかである場合などには手数料等の損失を覚悟してでもこの種の取引をすることも考えられるから、直ちに売直し及び買直しが委託者の利益(したがって、その通常の意思)に反するものであるとか、商品取引員が手数料稼ぎのために委託者を誘導したものであるといった結論を導くのは早計のそしりを免れない。

このような観点から本件の売直し及び買直しを検討すると、別紙1及び2記載のとおり、輸入大豆の場合はその殆どが限月を異にしているし、粗糖の場合は逆に殆どが限月を同じくするが、いずれの場合も(ただし、平成五年七月五日の粗糖の買直しを除く。)、決済玉については勿論のこと、建て直した玉についてもその多くが差引差益を生じさせているところからすると、とりあえず一定の利益を確保した上で、更に値動きを見通して売直し又は買直しに踏み切ったものであり、しかも、その見通しは大筋で間違っていなかったものということができ、被告が専ら手数料稼ぎの目的で行ったものであるとは認められない。

イ 次に、途転については、例えば、売りから買いに転じる動機として、市場価格が値上りに転じるとの予測を立てていることが通常であろうから、当該途転の合理性を裏付けるためには右予測につき相当の根拠があることが必要であるが、別紙1及び2記載のとおり、平成五年七月三〇日の途転を除き、いずれも転じた建玉に利益が生じており、相場の動向の予測が適確であったことを窺わせるし、同日の途転のみが結果的に莫大な損失を生じさせているのは、同年八月一三日の急激な円高ドル安による市場の暴落に起因するものと認められ、被告がこれを予測することができなかったことに落ち度はないというべきであるから、一応の合理性があり、手数料稼ぎの目的があったとまでは認められない。

ウ また、両建玉については、既存建玉に生じている値洗い損の拡大を防止するため、右建玉をすべて決済してしまうことも考えられるところ、相場の動向から見て必ずしも右値洗い損が拡大の一途をたどるとも限らないとの予測が立つ場合に、反対建玉を建ててとりあえず市場の様子を窺うというときに用いられる手法であるから、当該両建玉の合理性を裏付けるためには、既存建玉に値洗い損が出ており、かつ、相場の動向が不安定であるとか先行きが予測しかねるといった事情があることが必要であると考えられるが、証拠(乙三三ないし三五、五三)によれば、本件のいずれの両建玉においても、既存建玉には値洗い損が出ており、かつ、相場の動向についてもそれぞれ右事情があることが認められるから、やはり一応の合理性があり、手数料稼ぎの目的があったとまでは認められない。

エ さらに、手数料不抜けについては、別紙1記載の番号2及び3は、いずれも建玉時から約四か月が経過しているところ、輸入大豆については、算定方法上、建玉期間が長くなれば長くなるほど委託手数料がかさんでくるというシステムになっていること(乙三)に加え、それを優に超えるだけの利益が生じるほど値上りを期待することはできないと判断した点もやむを得ないことからすれば、生じた差引差損もさして大きいとは言えないことも併せ考慮して、手数料稼ぎの目的であったとまでは認めることはできない。

(3) なお、Bは、別紙2記載の番号17ないし19の買建て及び20ないし22の売建てについて、手数料稼ぎの目的であったことを自認する(乙七、証人B)ところ、右買建てについては、前記(2)で認定したとおり、別紙2記載の番号⑪ないし⑬との関係で途転となり、これは手数料稼ぎの目的で行われたとは認められないものの、右売建ては、実質的には右買建てとの関係では両建玉になることが認められ、右買建てと同日に建てられていることからすれば、被告は、確実にいずれかの建玉に利益が生じるとともに、他方の建玉には同額の損失が生じることを見込んでいることが窺えるから、結局のところは専ら委託手数料を取得する目的で行われたものであることが客観的にも裏付けられる。したがって、右売建ては、原告の意思に反するものと言え、この点で違法性を帯びるものというべきである。

(三) 脅迫

Bは、平成五年四月二七日、原告から、同人の妻が入院している病院の駐車場で委託証拠金を受領しているが、Bが、右証拠金の請求をするについて、社会通念上相当性を欠く言動に及んだことを認めるに足りる証拠はない。また、Bが原告に対し、必ずしも明確な説明をしないままに委託証拠金の支払を請求した形跡は窺えるが、更に進んで支払を強要した事実までは証拠上認められない。

したがって、この点に関する原告の主張は理由がない。

(四) 無断売買・手仕舞拒否について

(1) 原告の陳述書(甲一)及び拠出金返還請求通告書(乙一五)には、大きく値崩れするから一〇〇〇万円入金して両建玉をすべきだというBの勧めに従って、被告に対し、平成五年二月四日に輸入大豆二〇〇枚の売建てを委託し、同月九日にその委託証拠金一〇〇〇万円を預託したにもかかわらず、予期された値崩れが見られなかったことから、その後翌三月中旬ころまで、Bに対し、直接又は電話で手仕舞を指示し続けたものの、聞き入れられなかったこと、また、同年三月末ころ、Bから委託追証拠金として要求された二一五〇万円を取引銀行からの借入れで調達して入金した後、取引銀行に使途を偽ったことが露見して取引中止を通告され、a建設の経営が困窮したため、再びBに対し、何度も手仕舞を指示したものの、無視されたこと、さらに、同年四月七日には妻が発作を起こして倒れ、その安否が気遣われる事態が重なり、心身も疲弊し、同年五月一五日ころ、a建設の資金調達に窮したので、強く手仕舞を要求したが、やはり、無視されたことが記載されている。

しかし、輸入大豆は、Bの予想どおり、同年二月四日以降値を下げており(乙三三)、右売建玉は、同月一八日に決済されて原告に利益をもたらしていること(別紙1記載の番号④、⑤)、同年三月末ころは委託追証拠金が必要となるほど値洗い損は発生しておらず(乙一九の3)、原告が言う二一五〇万円の委託証拠金は、被告が新たに別紙1記載の番号9及び10の売建てをしたことに伴う本証拠金であること(前記一5)からすれば、右及びはいずれもその前提を異にするものである。しかも、原告は、同年三月二五日、同年四月二三日及び同月二七日にそれぞれ委託証拠金を預託し、その会計額は三三九五万円にまで達しているのであるから(前記第二の一3)、及びのころ、原告に手仕舞の意思があったとは到底窺えず、したがって、Bに手仕舞を指示したという事実をたやすく認めることはできない。さらに、同年五月にはBの提案で取引の軸足を輸入大豆から粗糖に移しているところ、原告は、その点につき特段異議を唱えていない(証人B、原告)ばかりか、盛んに利食いをしていたこと(別紙2)に照らせば、の手仕舞要求の事実も到底認めることができず、結局、右陳述書等の記載はいずれも採用することができない。

(2) もっとも、原告は、同年六月七日以降、預託すべき義務が生じた三〇〇〇万円の委託証拠金の拠出を渋り出し、同月二二日には何とか一〇〇〇万円は預託したものの、残りの二〇〇〇万円はついに入金せず、被告において、決済によって得られた差引差益から必要な委託証拠金を充当処理した結果、必要な委託証拠金が預託されているものとされていたにすぎない。また、原告には同年七月下旬ころからは委託追証拠金の支払義務が生じていたにもかかわらず、原告はこれを履行することもしなかった。加えて、Bは、同年六月下旬ころから、原告が手仕舞を強く言い出したことを認めた上で、さらには同月三〇日の三三〇枚の買建て(別紙2記載の番号17ないし19)及び五〇〇枚の売建て(別紙2記載の番号20ないし22)が委託手数料稼ぎの目的であったことも自認している。右の諸事実によれば、原告には遅くとも同月末日までにはもはや本件取引を続ける意思はなくなっており、Bにおいてもそのことを認識していながら、同日以降もなお本件取引を継続したものと認めるのが相当である。

そうすると、被告としては、原告の手仕舞の意思が明らかになった時点で原告の委託玉を全部決済すべきであるし、まして、それ以降は新たな取引をしてはならなかったのに、原告の意思に反して、直ちに全部の決済に着手しなかったばかりか、その後も独断で取引をしたものであり、このことが不法行為を構成する(以下「本件不法行為」という。)というべきである(なお、前記(二)(3)の違法な売建ては、結局、本件不法行為に吸収されることとなり、全体として一個の不法行為と評価される。)。

(3) これに対し、被告は、原告が手仕舞を言い出した時点で決済した場合、原告にいくら返還されるかを算定したところ、それまでに預託した委託証拠金が全額返還されることにはならないため、原告は明確には手仕舞を求めなかったものであるとか、原告は、本件取引日の各日の取引内容を記載した委託売付買付報告書および計算書に対しても、毎月末に発送された残高照合通知書に対しても、何ら異議を述べなかったし、Bが原告に対し、その都度取引内容を口頭で説明しているなどとして、右同日以後の取引についても原告の承諾はあった旨主張する。そして、原告が、被告から送付された残高照合通知書等に対して異議を述べていないことはそのとおりであり、その他についても被告の主張に沿うBの証言がある。

しかし、一般に商品先物取引は極めて専門的で複雑な仕組みになっているため、その仕組みを十分理解した上で自らの相場観に基づいて主体的に取引を委託することは決して容易なことではなく、このことは過去に若干の取引の経験がある原告にあっても例外ではない。したがって、そのような原告にとって商品先物取引は危険に満ちたものであることを失わないところ、手仕舞はその取引に完全に終止符を打つものであるから、最大かつ最善の安全策である。これに対して、商品取引員の収益は顧客からの委託取引の際に得られる委託手数料に依拠しているわけであるから、商品取引員にとって顧客の手仕舞は最も望ましくない事態にほかならず、それ故、顧客が手仕舞の意向を示している場合にあっても、取引員としては、ともすれば、その損失を取り戻すことを口実に取引の継続を勧めるなどして、簡単には手仕舞をさせないというようなことが起こりがちである。それだけに、この点については委託者保護の見地から厳格に解すべきであり、したがって、顧客が一旦手仕舞を指示した以上は、取引員としては右指示に直ちに従わなければならず、決して取引を継続させる方向に誘導するようなことがあってはならないのである。

そうすると、手仕舞を求める原告の態度にやや曖昧な側面があったり、その後の対応に原告の真意を訝るような部分があるからといって、原告が平成五年六月末日以降の取引に承諾を与えていたものとするのは相当ではなく、結局、被告のこの点に関する主張は採用することができない。

三  損害額について

1(一)  前記二において認定判断したところからすれば、本件取引のうち平成五年六月末日前に行われたものについては何ら問題はない。

したがって、別紙1記載の輸入大豆に関する取引については、同年七月七日以降の番号15ないし18の取引(その決済である番号⑮ないし⑰、⑰'及び⑱の取引を含む。)が無断売買とされるべきものであり、番号⑧及び⑪については、決済が同年六月末日ではなく、同年七月七日に至ってようやくなされたことが不法行為を構成することになる。

同様に、別紙2記載の粗糖に関する取引については、同年六月末日以降の番号17ないし29の取引(その決済である番号⑰ないしの取引を含む。)が無断売買とされるべきものであり、番号⑭ないし⑯及び⑯'については、決済が同年六月末日ではなく、同年八月一三日又は同年九月二一日に至ってようやくなされたことが不法行為を構成することになる。

さらに、別紙3記載のとうもろこしに関する取引については、番号1及び2の取引とも(その決済である番号①及び②の取引を含む。)無断売買とされることになる。

(二)  右の無断売買とされたものについては、その効果を原告に帰属させることができない筋合であるが、被告は、これについても原告の計算においてした上で、平成五年九月二一日になって全部の委託玉を決済してようやく本件取引を終了した結果、差引差損累計額が一億一五二八万六一一二円であることが確定して、これを原告が支払わないために、原告が被告に対して実際に入金した六三五〇万円を含む委託証拠金を右支払債務に充当することによって、右金額が全く返還されないことになっている。

したがって、本件不法行為による損害額としては、右無断売買による差引差益損は無視し、同年六月末日の時点で全部の委託玉が決済されたと仮定した場合に差引差益損の合計額を計算して、損失が生じたときは、預託されている委託証拠金からこれを控除して残額があればその額、また、利益が生じたときは、預託されている委託証拠金にこれを加えた額であると解するのが相当である。

(三)  そこで、これを算定すると、平成五年六月末日の時点で決済した場合の各建玉の差引差益損は、同日時点の帳入値段を基準にして計算するほかないところ、別紙1記載の番号⑧及び⑪並びに別紙2記載の番号⑭ないし⑯及び⑯'の同日における各帳入値段は、別紙4記載の帳入値段の欄のとおりである(乙三四、五三)から、同日時点で決済した場合の差引差益損の合計額は、四〇三九万〇七九九円の損失となる(各建玉の差引差益損の計算式については、別紙4参照)。そして、同日時点の差引差益累計額は、前日までの一万三一六七円に別紙2記載の番号⑪ないし⑬の差引差益の合計七七〇万四二二六円を加えた七七一万七三九三円であったから、これを右損失に充当すると、原告の損失額は三二六七万三四〇六円となり、他方、同日時点で預託されている委託証拠金は八八七二万円であった(前記一8)。

したがって、損害額は、右委託証拠金の額から右損失額を控除した五六〇四万六五九四円となる。

(四)  ところで、原告は、既に被告から合計三一九万一四三〇円の返還を受けている(前記第二の一3)から、結局、原告の損害額としては五二八五万五一六四円となる。

2  他方、原告は、本件不法行為によって精神的苦痛を受けたとして慰謝料六〇〇万円の支払を請求するが、まず、原告の妻Gの入院及び死亡の点については、証拠(甲一、三)によれば、平成五年四月七日、Gが脳卒中で倒れて入院したこと、Gが、そのころ、本件取引のために原告が取引銀行から二〇〇〇万円を借りたことが取引銀行に発覚し、取引停止を通告されたことを知ったこと、平成六年三月一五日、Gは、視床出血のため六四歳で死亡したことが認められるものの、他方、原告本人尋問の結果によれば、Gは、原告が本件取引を開始する前から、高血圧であったことも認められるから、本件不法行為とGの死亡との間に因果関係があるとまでは認めることはできないし、また、財産的損害は、特段の事情のない限り、その賠償によって精神的損害も慰謝されるのが通常であると解されるところ、前記認定に係る事実によれば、右特段の事情を認めるに足りる証拠はない。したがって、この点に関する原告の主張は失当である。

四  過失相殺について

原告は、平成五年六月二二日ころ、Bに対し、手仕舞したい旨告げていたにもかかわらず、同年七月二八日付け及び同年八月三〇日付けの各残高照合通知書について異議を唱えた形跡も窺えないし、それどころか、同月五日には、同日現在の残高に相違ない旨の残高照合回答書に署名押印してBに交付する(乙一四の4)など、真実手仕舞を求めているのかどうか疑問視されてもやむを得ないような曖昧な態度を取っており、そのことが被告の無断売買を放任する結果にもつながったものと言わざるを得ない。したがって、前記損害の発生及び拡大に原告も相当程度寄与しているものと言うべく、これまで見てきた諸事情に照らせば、原告の過失割合は三割とするのが相当であり、その割合により過失相殺がなされるべきである。

そうすると、被告が原告に対して賠償すべき損害額は、三六九九万八六一四円となる。

五  弁護士費用

本件事案の内容、本件訴訟の審理経過、認容額等を考慮すると、本件不法行為と相当因果関係のある損害として被告に請求し得る弁護士費用は、三〇〇万円と認めるのが相当である。

第四結論

以上によれば、原告の請求は、三九九九万八六一四円及びこれに対する本件不法行為が最後に行われた日である平成五年九月二一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容するが、その余は失当として棄却すべきである。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 西理 裁判官 神山隆一 裁判官 森剛)

〈以下省略〉

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