大判例

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福岡地方裁判所 昭和47年(む)115号 決定

被告人 菅原強

決  定

(申立人・被告人氏名、事件名略)

右被告事件について、福岡地方裁判所裁判官仲宗根一郎が昭和四七年一月二八日勾留更新の命令をしなかつたことに対し、申立人から準抗告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件準抗告の申立を棄却する。

理由

一、本件準抗告申立の趣旨および理由は、申立人提出の準抗告申立書記載のとおりであるから、これをここに引用する。

二、よつて判断するに、申立人は、福岡地方裁判所裁判官仲宗根一郎が、本件勾留につき更新する旨の裁判をしなかつた点を、勾留を更新しない旨の命令ととらえ、これに対する不服申立をしたものであること明白であるが、そもそも勾留の更新決定(命令)は裁判所(官)が専ら職権でなすものであつて(この点でいわゆる逮捕中求令状の場合と同様とみうる。「求令状」とは職権発動を促すにすぎないものである。)、しかも、右決定(命令)をしないことは、たんなる事実行為であつて、何ら裁判としての実態をそなえていないのである(この点でいわゆる逮捕中求令状の場合と異なる。すなわち、この場合は、勾留状を発布すれば、それは直ちに執行され、その時点から勾留されることになるけれども、右の裁判がなされないときは、「職権を発動せず」または「釈放を命ずる」という主文の裁判がなされれば、未だ逮捕に伴う留置期間が満了していないとしても直ちに被告人を釈放せねばならない反面、何らの裁判をしないときは、被告人は右の期間が満了するまで身柄を拘束される可能性が残ることになる。したがつて、勾留状を発布しない場合にも、何らかの意思表示を裁判の形式でなすことに重要な意味がある。これに対し、勾留更新の場合は、それが勾留の継続にほかならないものであるがゆえに、その旨の裁判をなせば、その効力は前になされた勾留の期間満了の時点で発生し、逆に、その旨の裁判がない場合であつても、一律に、右期間の満了時までは被告人はやはり身柄を拘束され続けると解すべきものである。)。

勾留更新をしないことの意義が叙上のようなものである以上それを裁判とみなすことはとうていできず、従つて、この場合は裁判書も作成していないのであつて(刑事訴訟規則第五三条以下の諸条文参照。なお、当庁においては、裁判所書記官名義で検察庁宛てに勾留状失効通知書を出す例となつているが、これは、検察官らの事務の的確を期するため、裁判所(官)の勾留更新の裁判をしない旨の意向を伝達するためのたんなる「通知」にすぎないものであつて、裁判書またはこれに準ずるものと目されないこと、いうまでもないところである。)、これに対する準抗告申立は許されず、本件申立は不適法といわざるをえない。

三、そうすれば、その余の点につき判断するまでもなく本件申立は棄却すべきものであるから、刑事訴訟法第四三二条、第四二六条第一項により主文のとおり決定する。

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