大判例

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福岡地方裁判所小倉支部 昭和33年(わ)1151号 判決

被告人 ジョン・アーレン・ジュニア

主文

被告人を禁錮八月に処する。

但し本裁判確定の日から参年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は米国駐留軍々人として昭和三十一年九月以来福岡県遠賀郡芦屋町所在米空軍芦屋基地に勤務し、日常自動車の運転に従事していた者であるが、昭和三十三年十一月十七日午前一時三十分頃、酒に酔い正常な運転ができない虞れがあるのに拘らず、自己所有の普通乗用自動車一九五三年式フォード福三A六七二九号に友人七名を同乗させ、小倉市到津方面より三萩野方面に向け、幅員約十六、六米の一級国道三号線を、福岡県公安委員会の指定する最高制限速度毎時四十粁を超え、時速約六十粁の高速度で運転して無謀な操縦をなし、小倉市昭和町五丁目七九五番地先国道にさしかかつた際、ラーメン屋宋又石(当四十六年)が四十燭光位のランプをつけた屋台を曳いて前方路上を右側より左側に横断し暫時停車したのを、約十一、四米の至近距離に接近して初めて発見し、直ちに急停車の措置を執つたが時既に遅く、自己の運転する自動車の前部を右屋台の後部に激突させて、右宋を路上にはね飛ばし、因て同人に右下腿複雑骨折、骨盤骨折、膀胱損傷等の傷害を負わせ、翌十八日午後二時十分頃同市馬借町一三五番地小倉市立病院に於て同人を右傷害のため死亡するに至らしめたもので右は被告人が当時酒に酔い身体上精神上正常な運転ができない虞れがあつたのに敢えて自動車を運転し、且つ法令に定められた制限速度を遵守せず前記高速度で暴走した過失により、危険の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務を果すに欠けるところがあつたことに基くのである。

(証拠の標目)〈省略〉

(法律の適用)

被告人の判示所為中、酩酊運転並びに制限速度に違反して無謀操縦を為した点は道路交通取締法第二十八条第一号第七条第一項第二項第三号第五号、第十条、福岡県公安委員会告示第八号、罰金等臨時措置法第二条に、業務上過失致死の点は刑法第二百十一条前段、罰金等臨時措置法第二条第三条に各該当するところ、右は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五十四条第一項前段第十条に則り重い業務上過失致死罪の刑に従うべく所定刑中禁錮刑を選択しその刑期範囲内で被告人を禁錮八月に処し、但し諸般の情状を考慮し同法第二十五条第一項第一号により本裁判確定の日から参年間右刑の執行を猶予すべく、訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項本文に従い全部被告人の負担とする。

(弁護人の裁判権に関する主張に対する判断)

弁護人は本件公訴事実中、道路交通取締法違反の罪については、該犯罪につき最初の通知の日の翌日から五日内に起訴することによつて裁判権を行使する旨の通告が為されていないから、該犯罪が業務上過失致死罪と併合罪の関係にあるものとして起訴されている本件の場合、日本国には裁判権がない旨主張するが、当裁判所は右両罪を観念的競合の関係にあるものと認定し結局重い業務上過失致死の一罪として処断するので、該犯罪につき最初の通知のあつた日の翌日から二十日以内に起訴されている以上、これと処断上一罪の関係にある道路交通取締法違反の罪についても、日米両国間の行政協定第十七条改正議定書等に関する合意に従う適法な通告のあつたものとして日本国に裁判権が存するものと言うべく、此の点に関する弁護人の前記主張は採用しない。

よつて主文の通り判決する。

(裁判官 安仁屋賢精)

注 刑事裁判資料八七号五二頁以下裁判権分科委刑事部会合意事項第二部40参照

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