大判例

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福岡家庭裁判所 昭和54年(少)1264号 決定

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(経過的事情)

1  少年は、父T・D(昭和一一年一月一九日生)と母T・K子(昭和一二年四月一日生)との間の第一子(長女)として、本籍地で出生した。

少年の同胞には、妹T・E子(昭和三七年一〇月一二日生)と妹T・W子(昭和四〇年六月五日生)がいる。T・E子は高校に、T・W子は中学に通っている。

2  少年が出生した当時、少年の両親は農業を営んでいたが昭和四一年に農地を売却してしまつて農業をやめ、以後、父は魚市場関係の仕事をし、母は自宅で内職等をしていた。

その後、父は、昭和四二年頃から鮮魚商をはじめ、昭和四五年には店舗を構えるまでになつた。

この間の昭和四三年四月に、少年は○○小学校に入学した。その後、昭和四七年に両親が現住居に家屋を新築し、そこに移ることになり、同年四月に、同地の○○○小学校に転校(小学五年生)した。昭和四九年三月同校を卒業した。

小学校時代の学業成績は良好とは言えないが、素行等の面で特に問題を起したことは無かつたようである。もつとも、昭和四八年三月に喫煙しているところを母に発見され、叱責を受けたことがある。

3  少年は、昭和四九年四月に○○中学校に入学した。少年は中学校に入学した頃から急速に性への関心と興味を覚えるようになり、異性(男生徒)への関心も強くなつた。中学三年生になると、男生徒との交際、喫茶店への出入り、喫煙などが頻繁になり、万引きも経験した。少年は、このような問題を持ちつつ、昭和五二年三月に同中学校を卒業した。

そして、同年四月、福岡市の私立○○○○高校に入学した。

4  少年は、高校に入学したものの、勉学意欲は当初から乏しかつた。関心は専ら異性との交際に向けられた。

高校に入学して間もなくの昭和五三年五月には暴走族の少年達とドライブに行き、ここで性経験を持つことになつた。そして一段と不純異性交遊が頻繁になつた。同年六月頃にはシンナー、ボンド類の吸入をはじめた。また、お金欲しさのあまり売春行為もするようになつた。このようなことから、同年九月には高校を退学するのやむなきに至つた。

5  高校中退後も、少年の不純異性交遊はとどまるところを知らず、暴力団系統の男性との交際がはげしくなり、覚せい剤の注射も度々に及び、かつ妹(高校生)をも同種非行に巻き込んだ。

かくて、少年の処遇に窮した父が警察署に事情を話したことから、本件の立件となつたものである。

(非行事実)

少年は、上記のように、保護者の正当な監督に服さない性癖および自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖があり、正当な理由がなく家庭に寄り附かず、犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、かつ、いかがわしい場所に出入りし、その性格、環境に照らし、将来、罪を犯す虞がある。(少年法三条一項三号)

(少年の知能・性格等)

1  知能は、テストでは知的機敏さに欠け、また誤答もみられ、軽愚域(IQ=六二)を示しているが、国語力はあり、その他のテスト結果や面接所見から限界程度はあると考えられる。(鑑別結果による)

2  情緒は未熟で、涙もろい。思考は単純で深刻性がなく、気軽に他と同調し、軽はずみな言動に出がちである。周囲からの影響や暗示を受け易く、他からのおだてにも乗り易い。意志面はかなり薄弱で、物事に飽き易く、長続きしない。

(家庭環境等)

1  父は鮮魚商をし、母はスナックを経営している。経済的には若干の不安があるが、現状では一応問題とするまではなかろう。住居は建売住宅を銀行ローン等を利用して購入したものである。周囲の環境は必ずしも良好とは言い難い一面がある。

2  父は、若い時から大酒飲みであつた。事件を起こして警察沙汰になつたことも幾度かあるように窺える。短気で粗野で、子女の教育についての関心は高くない。躾をするについては暴力的な行為に出るところもあり、却つて子女の反感を買つている面がある。

母は、少年が小学生の頃には、いわゆる教育ママ的行動をとつたことがあるが、今は生活維持に懸命で、少年の教育についてまでは手が届かない状態である。

3  少年の妹T・E子は、県立高校に通つているが、既に少年と同種の非行を犯している。余後が憂慮される。今後、少年の悪影響を受けないように配慮すべきであろう。

4  少年の友人や知人は男女とも相当数にのぼるが、何れも問題の多い未成年者や成人で、少年の健全な育成のためには好ましくない。

(処遇について)

少年の本件虞犯行為の態様、少年の生活歴、資質、環境、保護者の保護能力、少年の現在の心境等を考えると、少年の健全育成を期するためには、この際、少年を相当期間少年院に収容して矯正教育を授ける外ないと考える。よつて、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項を適用して主文のとおり決定する。

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